テニス上達メモ556.山本由伸はなぜ「笑わせても動じない」のか──集中と自己肯定が生む相乗効果
山本由伸に対するキケのコメント。「後ろで笑わせても全く動じない」。集中が深いのか、自己肯定が高いのか。それともただの冷たい野郎か(冗談)。動じなさの裏には、脳の原理「一時に一つ」と、自分を優先できるメンタル構造がある。集中×自己肯定が揃うと、雑音が消え、精度が跳ね上がる。山本の遠投とイチローのレーザービーム、その共通項へと話は続く。
▶山本由伸が「ウェイトをやらない」ことよりも……
上記記事で注目すべきは、どこでしょうか?
山本由伸が「ウェイトをやらない」とか、「野球界で一番きれい」と評した投球フォームや投げ方ではありません。
今回私が最も注目したのは、エンリケ・ヘルナンデスによる「僕が後ろで笑わせようとしても全然動じない」というコメントです。
▶動じない人間には、「3つの理由」がある
この「笑わせようとしても動じない」について、解釈は3つ。
1つは、笑わせようとしても集中力が高い山本だから、キケの働きかけが山本の耳目に入らない。
2つは、山本の自己肯定感が高くて、山本は自分の都合を優先できる。
3つは、山本はキケを無視する冷たい野郎(笑)。
3つ目は冗談として、1、2は、能力を発揮する上で重要だし、互いに関わり合っているといえます。
▶挨拶スルーは、失礼or集中?
まず集中力が高くて耳目に入らない件。
いつもお伝えしているように人が備える「眼耳鼻舌身意(げんにびぜつしんい)」の認識システムは、「一時に一つ」が原理原則です(関連記事「人間の認識システムの話」)。
集中している人を笑わせようとしても、彼が深く集中していると、彼は気づけません。
たまにいる、こちらが挨拶するのだけれど「無視する相手」は、そのたぐい。
その人は、ほかの何かに集中しているのです。
あるいは、単に失礼な野郎です(笑)。※注1
▶自分を優先できて初めて、集中は成立する
そして2つ目の自己肯定感が高い件。
他人に話しかけられたとしても、たとえば自分が数をかぞえているなどして、その都合を優先させたいときに「スルー」できるのは、自己肯定感がある程度高くないとできないのでしたね(関連記事「ノールックに必要な『自己肯定感』by宮本武蔵」)。
数をかぞえているのに、話しかけられたら「はい! 今すぐ!」などと応じてしまうのは、相手への気遣いというよりも、「自分ないがしろ問題」です。
また1から数え直さなければならなくなる始末なのですから、仕事のパフォーマンスは上がらないはず。
ついでにいうと、数をかぞえながらだと、聞いているつもりでも人の話は、頭に入ってきません。
それくらい、脳はマルチタスクに非対応です。
▶集中力が低いのは、自己肯定感が低いから
そして1(集中)と2(自己肯定感)とは、密接に関わり合っています。
自己肯定感が低いと、「価値の低い自分よりも他人を優先しなきゃ」という感じ方だから、目の前の作業に集中できず、周りの人目や気配が気になる。
だからパフォーマンスがますます下がる相関です(関連記事「どうやったら周りを気にせずプレーできる?」)。
逆に言えば自己肯定感が上がると、(もちろんその時々のプライオリティを判断しながら)自分の都合を優先できるため、目の前の作業に集中できる。
人目が気にならず、集中力も上がる相関。
テニスでいえば、たとえば相手前衛のポーチを気にせず、ノールックでリターンをたたき返せるようになります(関連記事「ノールック打法は効果絶大でした」)。
▶山本由伸の遠投と、イチローのレーザービーム
ちなみに山本についてキケは、「400フィート(約122メートル)でも、まるでホームベースにストライクを投げるみたいに正確なんだ」と絶賛。
これについては、レーザービームのイチローが公開した「目瞑り投球練習」の話題を絡めて、改めてサロン楽屋話にて取り上げます。
▶おまけ・※注1について「ニコニコは優しさ? それとも保険?」
単に冷たい野郎……。
とはいえこれは冗談ではなく、過剰な挨拶は、自己肯定感が低めのサイン。
自他の振る舞いからチェックしてみてはいかがでしょうか(関連記事「過剰な挨拶、謝罪、へりくだり、笑顔のワケは?」)。
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(テニスゼロ)
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero