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【📕小説:四字熟語】人生ゲーム‼︎①

第一話「人生ゲーム・四字熟語編」



 日曜の午後。商店街の外れにある古びた骨董屋で、俺たちはあの「おじいさん」と出会った。

 ――いや、正確には「出会わされた」というほうが正しいかもしれない。

 「君たち、人生……ちょっと変えてみたくないかい?」

 しわがれた声とともに差し出されたのは、見たこともないボードゲーム。箱には金文字で「人生ゲーム・四字熟語編」と書かれている。サイコロの横には、謎の木札がぎっしり詰まっていた。

 「いや、怪しいやろ」
 と、俺――ハードンが言うと、横でノーマルドがうなずく。
 「でも、ちょっと面白そうじゃない?」と、いつも楽観的なナイスンが笑う。

 おじいさんは薄い笑みを浮かべながら言った。
 「サイコロを振り、止まったマスの四字熟語を語る。すると、その言葉が、お前たちの“人生”に刻まれるだろう――」

 不気味すぎるだろ、それ。
 だが気づけば、俺たちはその人生ゲームを手にして帰っていた。



◆ゲーム開始

 リビングに集まり、盤を広げる。金の駒に、六面サイコロ。そして、無数の四字熟語カード。

 「……普通に遊ぶんじゃねえんだな?」
 俺が訝しむと、ナイスンが説明書を読み上げる。
 「止まった四字熟語にまつわる話を語れ……それが、ルールだって」

 ……何だよそれ。だがやるしかない。



◆1ターン目:ノーマルド

 ノーマルドがサイコロを振る。
 コロコロ……「4」。

 引いたカードは――
 「七転八起」。

 「おお、定番きたな」

 ノーマルドは椅子に座り直し、淡々と語り始めた。
 「小6のときさ、逆上がりがどうしてもできなくてさ。7回目の挑戦で、やっとできたんだよ。それが嬉しくて、翌日から毎日10回練習したら……今じゃ鉄棒逆立ちも余裕だわ」

 ……普通。あまりにも普通。

 「いや、安定して普通やな」と俺が言うと、ナイスンも笑った。
 「でも、ちゃんと“七転八起”してるよね。いいじゃん」



◆2ターン目:ハードン

 次は俺だ。サイコロを振る。
 「6」……引いたカードは――

 「電光石火」。

 「おっしゃ、速そうなやつ来たな!」

 俺は胸を張って語りだす。
 「高校の時、コンビニの福引きでさ、1等の温泉旅行当てたんだよ。レジ横でガラガラ回した瞬間、鐘が“カランカランカラン!”って鳴ってさ。速攻で温泉いったんだけど……」

 「……ん?」
 「温泉、着いた瞬間に閉館した」

 「は?」とノーマルド。
 「いや、速すぎやろ。到着したら石火のごとく閉まるなよ!」
 「現実味ゼロだな……」とナイスンも呆れ顔。

 「でも電光石火っぽいやろ?」
 「いや、ぽくねぇよ!」



◆3ターン目:ナイスン

 最後にナイスンがサイコロを振る。
 「3」……カードは――

 「温故知新」。

 「おお、渋いやつ来たな」

 ナイスンは少し目を細めて、ぽつりと話し始めた。
 「去年さ、亡くなったおばあちゃんの古い日記帳を見つけたんだよ。戦後の苦しい時代の話がいっぱい書いてあってさ。『米一粒を大事に』っていう文字が何度も出てきて……」

 俺たちは黙った。
 「それ読んでから、無駄にしてた時間とか、ちょっと恥ずかしくなったんだ。だから、最近は“古いことを知って、新しい自分になろう”って思ってる」

 ――急に、いい話やん。

 「ナイスン……お前、ずるいわ」
 「いや、これが“温故知新”ってやつさ」



 ゲームは一巡し、気づけば夕暮れ。
 机の上に並んだ四字熟語カードが、なんだか俺たちの心を映しているように見えた。

 ――そしてその夜。
 玄関の影から、あの「おじいさん」が静かにこちらを見ていたことに、俺たちはまだ気づいていなかった。



つづく

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