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【聖なる経済学】 マイナス金利:現代における応用と理論③

訳者コメント:
現在の融資は成長を前提としているので、成長できないビジネスプランを提示しても融資は受けられません。しかし、換金できるコモンズが枯渇し、そんなうまい儲け話が枯渇してしまうのが低成長・ゼロ成長の社会です。成長できない、成長しないのが普通なのに、成長しないというだけで資金が回らなくなってしまうのです。すると、成長が無いところには雇用がない、生きられないということになり、過疎化と都市一極集中の流れが止まらないのです。それが今の日本で起きていることです。金利がマイナスであれば、ゼロ成長どころか、わずかにマイナス成長の事業でさえ、融資を受けて実行できるようになります。


②から続く

注意深い読者なら、通貨や銀行預金がマイナス金利の対象となった場合、人々は価値の保存手段としてもっと優れた他の交換手段、例えばきんやコマーシャル・ペーパーなどに乗り換えるだろうと反論するかもしれません。もしあなたがこの異議申し立てをしたのなら、あなたを支える論客は大勢います。ゲゼルの考えを称賛する中で、ジョン・メイナード・ケインズは次のような但し書きを述べています。「したがって、紙幣が印紙制度によって流動性プレミアムを奪われた場合、その役割を、銀行貨幣〔当座預金残高、手形、信用証券など〕、要求払い融資〔貸し手の要求があればいつでも全額返済しなければならない貸付〕、外貨、宝石や貴金属全般など、多くの代替手段が担うことになるだろう。[30]」この反論にはいくつかの側面から対抗できます(ケインズもこれを克服できない障害とは見なさず、ゲゼルの「直面しなかった」単なる「困難」と見ました)。銀行貨幣は、前述のように、物理的な現金と同じく減価の対象となります。要求払い融資は流動性プレミアムを相殺するリスクプレミアムを必要とします[31]。商品や宝飾品などは高いキャリーコスト〔保管・保険のコスト〕がかかります。しかし最も重要なのは、貨幣は突き詰めれば社会的な合意であり、法定通貨法や慣習といった形の合意を通じて、意識的に選択され、適用されるということです。最終的にケインズは、「印紙貨幣の背後にある考え方は健全である」と判断しました[32]。

実際問題として、物質世界や社会世界のあらゆるものにはキャリーコストがかかります。これはゲゼルが新聞やジャガイモなどを例に挙げて指摘した通りです。機械や設備は故障し、メンテナンスが必要となり、やがて時代遅れになります。金やプラチナのような酸化されないごくわずかな物質でさえ、輸送、警備、盗難保険が必要となります。貴金属貨幣は削り取らることもあります。貨幣がこの普遍的な法則、すなわち回帰の法則の例外であるというのは、自然に対する人間の優越性という、より広いイデオロギーの一部です。したがって、貨幣の劣化は単なる仕掛けではなく、現実の認識を受け入れることなのです。古代ギリシャ人は、貨幣と呼ばれるこの新しいものの特性を、無意識のうちに利用して生み出した精神スピリットという概念は、同じように自然の法則を超越し、永遠で抽象的で非物質的なものでした。世界を精神と物質に分けるこの考え方、その結果として生まれた、世界を神聖なものとして扱わないという考え方は、終焉を迎えつつあります。それと共に、そもそもこの区分のきっかけとなったこの種類のお金も、終焉を迎えるのです。お金はもはや、普遍的な無常の法則の例外ではなくなるのです。

ケインズのいう「困難」は、現代の貨幣のような自然の法則に反する人為的な富の貯蔵手段を作らないことの重要性を浮き彫りにしています。その一例が土地の所有権であり、歴史的に見て、現代の貨幣がもたらしたのと同じような富の集中を引き起こしてきました。ジョージ主義やゲゼル主義に基づく土地への課税、そして実際には他のあらゆる「経済的レント」の源泉にも、通貨に対するマイナス金利を課さなければなりません。土地、ゲノム、生態系、電磁スペクトルの帯域といった物理的なコモンズ、そしてアイデア、発明、音楽、物語といった文化的なコモンズも、貨幣と同様のキャリーコストの対象とならなければ、ケインズの懸念は現実のものとなります。幸いなことに、偶然にも正しさと論理が一致し、コモンズの利用に伴う社会的義務が、あらゆる価値貯蔵の代替手段に対する流動性税としても機能します。根本的に、それを課すのが貨幣であろうとコモンズであろうと、同じ原則が問われています。つまり、社会的に生産的な方法で利用した場合にのみ、私たちはそれを保持する機会を与えられるのです。ただ蓄積するだけなら、失って当然なのです。

マイナス金利の制度から、少なくとも短期的には、誰でも恩恵を受けるわけではありません。インフレと同様に、減価する通貨は債務者(借り手)に利益をもたらし、債権者(貸し手)に損害を与えます。インフレについて論じたこの評論家は、それを簡潔にまとめています。

極めて低いインフレ率への欲求の根本原因は、債券保有者層がリスク無しの投資や預金に対して実質利益を得たいという欲求にある。…中央銀行が発行した現金を中央銀行に貸し戻すことで、人々が実質利益を受け取るというのは、とんでもないことだ。…富裕層の税率を軽減することが必要なのは、彼らがリスクを取る余裕があり、それによって実体経済への投資と成長を促進できるからである。彼らが有価証券の一部をリスク無しの預金に投資したいのであれば、それが相対的な富を維持できると期待すべきではない。[33]

この議論は、私が拠りどころにしてきたジョージとゲゼルの長年の系譜に基づいています。彼らの認識は、人々が単に所有しているという事実から利益を得るべきではないというものです。富の保有者はその管理者・世話人であり、もし彼らがそれを社会にとって有益な用途に使わないのであれば、いずれその富は有益な使い方をする人々のところに流れていくべきなのです。

過去の革命家たちは、富の蓄積のほとんどが不当であることを認識し、没収と再分配によってすべてを一掃しようとしました。私は、もっと穏やかで段階的なアプローチを提唱します。一つの考え方として、これを貨幣保有に対する課税と捉え、富を維持する唯一の方法は、リスクを負って投資すること、あるいは人間の創造性の魔法のような流れをどのように導くかについて賢明な判断を下すことにあるとするのです。確かに、これは報酬を与えられるべき能力であり、これこそが、資本配分における起業家精神の側面を無視したマルクス主義の価値理論に、本質的に欠けている部分なのです。

私が言及した大胆ながらも主流派の経済学者たちは、マイナス金利はあくまで一時的なもので、融資を促進し、デフレ的な流動性の罠から抜け出すための措置だと見ていますが、その真の意義ははるかに深いものです。流動性の罠はバブル崩壊によって引き起こされる一時的な異常事態ではなく、資本の限界効率の低下による恒常的なデフォルト状態であり[34]、資本自体が技術革新と競争の結果なのです。ケインズは次のように指摘しています。

資産のストックが、少なくとも利子率と同等の限界効率を持つところから始まって、それが次第に増加するにつれて、限界効率は(既に述べたように十分に明白な理由により)低下する傾向がある。したがって、ある時点で、それらを生産することがもはや採算に合わなくなるが、その例外は、利子率が同時に低下する場合である。限界効率が利子率に達するような資産がなくなると、資本資産のさらなる生産は停止する。[35]

すでに述べたように、この結末を長い間遅らせてきたのは、技術と帝国主義がコモンズから財とサービスを貨幣経済へ移したためでした。しかし、コモンズが枯渇するにつれて、ゼロ金利の壁を取り除く必要性は高まっていきます。これを予見したケインズは、「したがって改革者たちが救済策を探して、貨幣の人工的なキャリーコストを作り出すために、法定通貨が貨幣としての性質を維持する条件として、定められた額で定期的に刻印することを義務付ける手段、あるいは類似の方法に頼ろうとしたのは、正しい道を歩んでおり、彼らの提案の実際的な価値は検討に値する」と述べています[36]。このような措置(および私が議論した現代版)を取るなら、限界効率がマイナスの資本投資も可能になるでしょう。言い換えれば、銀行は投資収益がゼロあるいはゼロよりわずかに低い企業にも喜んで資金を貸し出すでしょう。

経済危機の根本原因が成長の鈍化という避けられない事態であり、また我々が生態学的で定常的な経済へと移行しつつあることを考えると、減価する通貨という提案がもたらすのは、停滞した経済に対する一時的な解決策以上のものです。それは、永久に成長しない経済のための持続可能で長期的な基盤を約束するものです。歴史的に見て、経済の収縮や成長の停滞は、人々の苦しみを意味してきました。すなわち経済的二極化、富裕層と貧困層の格差拡大です。マイナス金利貨幣は、成長に依存した融資に頼ることなく資金が流通する手段を提供することで、こうした事態を防ぎます。

本書で取り上げるその他の変化と組み合わさって、マイナス金利貨幣は人間の経済と心理に深い影響を与えるでしょう。私たちは高利貸し的な貨幣の世界に慣れすぎているので、その影響の多くを経済の基本法則や人間の本性と勘違いしています。これから説明するように、新たな自己意識と人々の新たな物語、つまり地球との共創的なパートナーシップの中で生きる〈つながり合う自己〉を体現する貨幣制度は、全く異なる影響をもたらすでしょう。何世紀にもわたって培われてきた直感はもはや真実ではなくなります。強欲、欠乏、あらゆるものの定量化と商品化、即時消費を求める「時間選好」、現在のために未来を割り引くこと、金銭的利益と公共の利益の根本的な対立、あるいは安全=蓄財という方程式は、もはや自明の理ではなくなるでしょう。


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注:
30. ケインズ、『雇用・利子および貨幣の一般理論』第4巻、第23章、第4節。
31. さらに、この制度では、流動性の高い要求払い融資の金利はデマレージ率に近づく傾向があります。
32. ケインズ、『雇用・利子および貨幣の一般理論』357頁。
33. http://blogs.ft.com/maverecon/2009/05/negative-interest-rates-when-are-they-coming-to-a-central-bank-near-you/ への匿名のコメント。
34. 資本の限界効率とは、新規投資1ドルあたりの期待収益率を指します。
35. ケインズ、『雇用・利子および貨幣の一般理論』第17章、第2節。
36. ケインズ、『雇用・利子および貨幣の一般理論』第17章、第3節。

原文リンク:https://sacred-economics.com/sacred-economics-chapter-12-negative-interest-economics/

翻訳メモ:
carry cost:キャリーコスト。資産を保有し続けることで発生するさまざまなコストの総称。現物資産の場合は、保管・保険のコスト。
electromagnetic spectrum:電磁スペクトルの帯域。コモンズとして価値を持つのは「2.5GHz帯」のような帯域なので。
marginal efficiency:限界効率。marginalとは、微小差分。微分でいうところのδデルタのこと。つまりグラフの傾き、増加率。


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