【映画「サンダーボルツ*」】日本人だからこそハマる、この映画の魅力について
どうも、まろん亭奏字と申します。
人間というのは、「ダメな大人」というものになぜか心惹かれる生き物のようです。
古今東西、エンターテイメントでは多くのダメな大人を描いてまいりました。
映画というジャンルに絞ってみても、その黎明期から活躍されていたCharles Chaplinという方は多くのダメ大人を演じておられますな。
日本でも「男はつらいよ」の主人公、フーテンの寅さんなどはそのダメな大人の典型と言えるでしょう。
藤原竜也さんが演じられている「カイジ」もダメな大人として人気がございますね。
今回はアメコミ(アメリカンコミック)に登場するダメな大人たちを描いた映画「サンダーボルツ*」についてネタバレありでお話したいと思います。
闇バイトをしていた女の子が指示役の甘い言葉に騙される話
アメリカ合衆国という国に、エレーナという若い女性がおりました。
この女性、CIA長官のヴァレンティーナに雇われているスパイでして、これまでずっと雇い主の命令で汚れ仕事をたくさんこなしてまいりました。
ただ、そんな生活にいい加減嫌気がさしてきたエレーナは、「この仕事が終わったら、表舞台に立てるような仕事をさせてあげる」という甘い言葉に誘われ、とある秘密基地に侵入した人物をやっつけるように命じられます。
ところがこの「仕事」、ヴァレンティーナにとって都合の悪い存在であるエレーナを始末するために仕組まれたもので、彼女と同じように裏仕事をさせられてきた3人と秘密基地で鉢合わせになり、「こんなところで死んでたまるか」と結託して脱出します。
この映画は悩めるエレーナが「ボブ」という謎の青年と出会い、ダメな大人たちと一緒にニューヨークに襲い掛かる脅威から人々を救うというお話です。
わかりやすく言えば、「闇バイトをしていた女の子が指示役の甘い言葉に騙されて酷い目に遭う話」ですな。
冒頭でもチラッと書きましたように、この映画はアメコミを原作とした「マーベルシネマティックユニバース」(通称MCU)という長い長~いシリーズものの最新作でございます。
どのくらい長いかというと、この映画で34本目になります。
しかも、ドラマシリーズも含めると40本以上の歴史がございます。
そのすべてを観ていないとこの映画が楽しめないかというとそうではありませんが、「ブラック・ウィドウ」、「アントマン&ワスプ」の2本の映画と、「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」というドラマシリーズはご覧になっておくと、より楽しめるかと思います。
MCUについては私より詳しい方がいろいろお書きになっているでしょうから、この文章ではこのくらいにしておきましょう。
もしこの手のお話がお嫌いでなければ、「アイアンマン」から始まる23作品で構成されるフェーズ1からフェーズ3まではご覧になっても損はないと思います。(それでも23本ありますが)
そんなヒマはないよという方は「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」と「アベンジャーズ/エンドゲーム」だけご覧になればよろしいのではないでしょうか。
「サマータイムマシン・ブルース」がお好きな方であれば絶対楽しめると思います。
ちなみにこのMCUシリーズ、必ず始まる前に「チャーララララーチャーラララー」というジングルが流れるんですが、作品によってアレンジされていることがあり、私はいつもと違う音色で演奏されているとちょっとテンション上がります。
「じゃない方」のヒーローたち
では、この「サンダーボルツ*」、その長いシリーズの中でどういう立ち位置かというと、オードリーの若林さん、ツービートのビートきよしさん、麒麟の田村さんがメインを務めるバラエティー番組、石田三成と今川義元と明智光秀の同盟軍、バイキンマンとスネ夫とジャイアンが・・・・・・もうこのくらいにしておきましょう。
要するに「じゃないほう」の話です。
主人公エレーナは、ナターシャじゃないほう。
ジョン・ウォーカーは、スティーブ・ロジャースじゃないほう。
エレーナのパパ・アレクセイは、キャプテン・アメリカじゃないほう。
エイヴァは、アントマンじゃないほう。
判官びいきの日本人にとって、実は結構、ツボる話なんですね。
あと、日本人って地味めなキャラクター深掘りするの好きじゃないですか。
「カイジ」のハンチョウを主人公にしたマンガとか、「名探偵コナン」の犯人を主人公にした話とか。
ドラマとかも、深夜の時間帯やネット配信で、サブキャラをフィーチャーした番組とかよく見かけますよね。
この前、取り上げた「古畑任三郎」でも深夜枠で今泉君を主人公にしたドラマとかやってましたし。
この映画、日本でもそこそこお客さんが入っているというのは、そういう日本人好みの要素が入っているからかもしれませんね。
ジャパニメーション的なラストバトル
もう一つ、この映画が日本人にウケそうな要素として、ラストバトルのあり方が挙げられるかと思います。
ご案内の通り、ヒーローもののラストバトルというのは得てして大ボスとの一騎討ちと相場が決まっているようですな。
しかも、俳優に配慮してなのか、それまでマスクで顔を隠していたヒーローたちはなぜか素顔で敵と殴り合いを始めます。
Black Lives Matterを扱ったことで、ヒーロー映画の枠を超えて高く評価された「ブラックパンサー」でさえも、ラストはライバルのキルモンガーとの殴り合いで決着をつけます。
「ドクター・ストレンジ」は少し毛色が変わっておりましたが、あれも魔法使いらしい知能を使った殴り合いと呼べなくもありません。
ところがこの映画、なんとラストは精神世界で、しかも心に傷を負った青年が自らのシャドー(暗黒面)を殴り殺そうとしているのをヒーロー全員で「止める」という極めて異例の方法で決着をつけるのです。
そのため、爽快感はあまりないし、なんかモヤモヤするんですが、「あー、また最後は殴りあいなのね」と思っていた私は度肝を抜かれましたね。
その戦い方はまるで日本のアニメ作品。
なんか「エヴァンゲリオン」か新海誠監督の映画でも観ているような気分になりました。
日本人としては結構、すんなり受け入れられると思うんですが、海外の方はどうなんでしょうね。
その直前の絶望的な状況もアメコミ映画としてはちょっと異質な感じがしました。
最後の敵が次々と人間を一瞬にして黒い影に変えてしまうんです。
その描写はちょっと原爆を想像させ、日本人としては複雑な気持ちですが、今までのどのMCU作品に比べ、ダントツの怖さでした。
その前のシーンで、ダメダメだったサンダーボルツの面々がいい感じでヒーローっぽいムーブをかまし、「やっぱりヒーローは人助けをしてナンボよね」とアツい気持ちになっていたところに「それ」ですからね。
さらに前のシーンではエレーナとパパがニューヨークの路上でコスプレ感丸出しの格好で親子喧嘩かましてたり、さすがA24のスタッフが多く関わっているだけあって、感情のジェットコースター感がエグい。
ただ、あんだけひどい状況になりつつ、「全部元通りになりました。めでたしめでたし」というオチには、なんなんだと脱力しましたが。
人間、ダメなくらいでちょうどいい
あとこの映画、エレーナを演じているFlorence Pughがとっても魅力的です。
「ブラック・ウィドウ」の時はそれほど惹かれなかったんですが、適材適所ってあるんだなあと思いました。
全然悪びれない黒幕のヴァレンティーナもなかなか魅力的でしたね。
ダメな大人たちを引率する担任の先生的なウィンターソルジャーも良かったです。
S級のヒーローたちが集まったため、なんとなくまとまり感の欠ける元祖アベンジャーズよりもむしろダメ大人という共通項で結ばれたサンダーボルツの方がチームとして座りがいい印象でした。
というか、元祖アベンジャーズだって考えてみたらダメ大人の集団ですからね。
人間というのは少しくらい欠点があったほうがチャーミングなのかもしれません。
私は嫌な奴やダメな奴に出会うと、「落語みたいだ」と思うことにしています。
落語には多くのダメ人間が出てきます。
だから、どんな嫌な奴もダメな奴も落語の登場人物だと思えばあまり腹も立ちません。それどころか、ちょっといいじゃないかとさえ思えてきます。
もちろん、自分もまた、落語の登場人物の1人なのかもしれません。
というわけで、今回は「サンダーボルツ*」という映画についてお話させていただきました。
それでは、また。
「サンダーボルツ」
2025年公開
アメリカ映画
監督: ジェイク・シュライアー
出演: フローレンス・ピュー、セバスチャン・スタン、ワイアット・ラッセル、オルガ・キュリレンコ、ルイス・プルマン、ジェラルディン・ヴィスワナサン、デヴィッド・ハーバー、ハナ・ジョン=カーメン、ジュリア・ルイス=ドレイファス
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