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MCUインフィニティ・サーガ 全作品感想

    どうも、まろん亭奏字と申します。

世の中には「クロスオーバー」という言葉がございます。
異なる要素が混ざり合うことを指す言葉だそうですが、エンターテイメントの世界では主にある作品の登場人物が別の作品に顔を出すような時に使われたりします。

私は子供の時分から、このクロスオーバーというものにワクワクするタチでございまして、「ウルトラマンA(エース)」という作品に、シリーズのそれまでの主人公たちが集合するシーンに興奮したものです。

2012年、子供の頃の興奮が蘇るような映画が公開されました。
アベンジャーズ」という作品です。
それまで別々の作品の主人公だった4人の主人公が一堂に会したのです。

今回は2008年に公開された「アイアンマン」から始まり、23作品に渡って描かれたインフィニティーサーガについてお話していきたいと思います。


「アイアンマン」 (2008年)

唯一無二の「鉄」感

インフィニティサーガの記念すべき一作目、「アイアンマン」は2008年に公開されました。

配給はParamount Pictures。
それまで20世紀フォックスやユニバーサル・スタジオと共同製作を行なってきたMarvel Studiosが、初めて独立製作した最初の作品となります。

アメリカの巨大軍需企業スターク・インダストリーズの社長、トニー・スタークがアフガニスタンでテロリストの捕虜となるも、敵の目を欺いて造り上げたパワードスーツで脱出。
帰国後、パワードスーツを改良し、正義のヒーロー、アイアンマンとなるが、叔父であり、会社の重役でもあるオバディア・ステインの陰謀により、窮地に陥るという話。

監督は俳優としても活躍しているJon Favreau。
それまで「ザスーラ」など、数本のマイナー作品の監督経験がなかったファヴロー監督ですが、この作品で大抜擢。
一躍、有名映画監督の1人となり、その後、「ジャングルブック」や「ライオン・キング」などを手がけ、スター・ウォーズのスピンオフドラマ「マンダロリアン」では製作総指揮を務めています。
本作では監督の他に、主人公のボディーガード、ハッピー(ハロルド・ホーガン)役としても出演。

主演はRobert Downey Jr.。
喜劇俳優チャップリンの伝記映画「チャーリー」や、私の大好きな「愛が微笑む時(Heart and Souls)」に出演されている俳優さんです。
17年前だから当時、43歳。さすがに若いです。

この作品の見所は、テンポ感のあるストーリーと、唯一無二の「鉄」感

物語はトニーがいきなりテロリストの襲撃を受けるところから始まります。
そして、ちょっと時間を巻き戻して、トニーを取り巻く環境や、彼のキャラクターを見せる。
捕虜生活は割と丁寧に描きつつ、帰国してからは結構、ポンポンポンと話が進んでいきます。

私はどうもメカニカルなものや、メタルの質感といったものに強烈に魅かれる傾向があって、「ターミネーター」シリーズも1作目と4作目が好きなんですが、「アイアンマン」はまさに私のメカフェチ心を満たしてくれる映画なんですよね。

トニーの秘書ペッパー(ヴァージニア・ポッツ)役としてGwyneth Paltrowが出ているのもポイント高いですね。吉岡里帆さん的なチャーミングな女性です。
もし、劇団四季で「アイアンマン」をやることになったら、トニー役は唐沢寿明さん、ペッバー役は吉岡さんにやってもらいたい。

ヴィランのオバディア役はJeff Bridges。
私の大好きな「フィッシャー・キング」(1991年)にも出演されている俳優さんです。

「インクレディブル・ハルク」 (2008年)

MCUには珍しい情緒ある話

配給はユニバーサル・スタジオ。
なんと、前作の「アイアンマン」とは別の配給会社なんですね。

実験中の事故により、心拍数が200を超えると緑色の巨人に変身する能力を身につけた生物学者ブルース・バナーが、軍隊に追われながらも、自分の特殊体質を治療する方法を見つけるため奮闘する話。

監督はLouis Leterrier。
Jason Statham主演の映画「トランスポーター」で有名になった方だそうです。

主演はEdward Norton。
「ファイト・クラブ」などに出演されている俳優さんですね。

見所は、MCUには珍しい「情緒感」。

自分が特殊体質を得たことにより、恋人のベティ(エリザベス・ロス)と別れることになってしまうブルース。
5年間の隠遁生活を経て、久しぶりに都会に戻ってきたブルースはベティに新しい恋人がいることを知って、ショックを受けます。
しかも、その恋人の父親は自分を捕まえようとしているアメリカ陸軍のサディアス・E・ロス将軍。

基本的にウェ~イ感の強いMCU作品の中で、レテリエ監督は悲劇のヒーローをしっとりと情感たっぷりに描いています。

ベティを演じているのはLiv Tyler。
「アルマゲドン」でおなじみの女優さんで、お父上はアメリカの人気ロックバンド、エアロスミスのボーカル、Steven Tylerです。

ロス将軍はアメリカの名優、William Hurtが演じています。
「ドクター」(1991年)に出演されている俳優さんで、2022年に71歳で亡くなりました。
2025年公開の「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」では、亡くなったハート氏の後を継いで、Harrison Fordがロス将軍を演じています。

この「インクレディブル~」で娘ベティと絶縁状態になっていたロスですが、「~ブレイブ・ニュー・ワールド」で久しぶりに再会。
親子の絆を取り戻します。

また、本作でバナーに協力するサミュエル・スターンズという博士が出てくるんですが、そのスターンズが本作の事件で怪人化。
「~ブレイブ・ニュー・ワールド」でヴィランとして帰ってきます。

ラストは自ら志願してスーパーソルジャーとなり、最後はブルースの血液を取り込むことで怪物化するエミル・ブロンスキーがハルクと激突。
ブロンスキーを演じるのは、「レザボア・ドッグス」や「パルプ・フィクション」などにも出演しているTim Roth。
ブロンスキーはその後、「シャン・チー/テン・リングスの伝説」やMCUのドラマシリーズ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」にも登場します。

「アイアンマン2」 (2010年)

ビジュアルは最高

配給はパラマウント・ピクチャーズ。
監督は前作に引き続き、ジョン・ファブローが務めています。

前作で自分がアイアンマンであることを公表したトニー。
ところが彼はアイアンスーツの動力源が発する毒素に体が冒されていることに悩まされています。
そんな彼の前に現われる、自分の父に恨みを持つロシア人・イワン。
病魔と宿敵、立ちはだかる2つの壁にトニーはどう立ち向かうのか。

確かこの映画が初めて映画館で観たMCUでした。
以来、「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」まですべての作品を映画館で観ております。
コロナ禍で「ブラック・ウィドウ」を観に行けず、皆勤賞はそこで途絶えてしまいました。
「アベンジャーズ:エンドゲーム」でインフィニティ・サーガが幕を閉じ、そこでちょっと熱が冷めてしまったというのもあり、そこから何本かは映画館で観ていない作品もあります。

「1」を観てから「2」を観たのか、いきなり「2」から観始めたのか記憶が定かではございませんが、初見、この作品にはあまりいい印象を抱いておりませんでした。

一番、嫌いだったのは、トニーの誕生パーティーで彼が自暴自棄になっているところ、友人であり空軍中佐のローズがやってきて、2体のアイアンマンが激突するシーン。
そのグダグダ感にうんざりしてしまったのを覚えています。

その一方で、なんとも言えぬ強烈な印象を残す作品でした。

冒頭のモナコでのカーレース中のバトルからテンション最高潮。
飛び入りでレースに参加するトニーとMickey Rourkeが演じるヴィラン、イワン・アントノヴィッチ・ヴァンコがコース上で死闘を繰り広げます。
そこにスーツケースを持って駆けつけるペッパーとハッピー。
トニーの手に届けられたスーツケースはあっという間にアイアンスーツに変形します。
「えっ、さすがにソレはムリあるんじゃない?」と思いましたが、この頃のアイアンスーツはまだメタル感があるのでオッケー。
赤とシルバーという配色もたまりません。

イワンはそれほど大物感がないんですが、鳥を愛するチャーミングな一面があったり、独特の魅力がありました。

前作ではTerrence Howardが演じていたジェームズ・ローズ中佐ですが、今作からDon Cheadleにバトンタッチ。
テレンスのローズが良かったので、最初は違和感がありましたが、今となってはチードルに交代してよかったなと思います。

そして、今作の目玉はなんといっても、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフの初お目見え。
最初は格闘技も出来るキリッとした秘書として登場し、ラストバトルでは目を見張るバトルシーンを見せてくれます。
演じるのは「ロスト・イン・トランスレーション」にも出演していたScarlett Johansson。
この夏公開された「ジュラシック・パーク」の最新作では、念願の主役の座を射止めています。
彼女主演のアクション作品「LUCY/ルーシー」(2014年)は「レオン」のLuc Bessonが監督した謎映画でしたが、2019年の「ジョジョ・ラビット」ではバイプレーヤーとして印象的な演技を見せてくれました。

「アイアンマン」ではチラッとしか出ていなかったSamuel L. Jackson演じるニック・フューリー長官も、今回は結構、長めのシーンが用意されています。

そして、今や恒例となっているエンドクレジット後のおまけシーンでは、「アイアンマン」から登場しているS.H.I.E.L.D.(シールド)という地球防衛組織のエージェント、フィル・コールソンがニューメキシコ州でソーのハンマー(ムジョルニア)を調査する姿が描かれ、「マイティー・ソー」に繋がっていきます。

「マイティー・ソー」 (2011年)

監督は名匠ケネス・ブラナー

配給はパラマウント。
監督はシェークスピア原作の映画「ハムレット」などを手がけ、俳優としても活躍しているKenneth Branagh。
Christopher Nolan監督の「TENET」で悪役を演じたことでも有名な方ですね。
個人的には1991年に監督と主演を務めた「愛と死の間で(Dead Again)」が印象に残っています。
クレジットを見て、「えっ、こんな人がヒーロー映画の監督として参加しているんだ」と驚いた記憶があります。

地球から遠く離れたアスガルドの王子として生まれたソーは、父オーディンの怒りを買い、力を奪われて地球に追放されます。
そこで天文物理学者のジェーンと出会い、ヒーローとしての自覚に目覚め、弟ロキの陰謀によって危機に陥る地球を救うという話。

さすがブラナー監督を起用しただけあって、アズガルドを舞台にした前半は壮大な時代劇のような重厚さがありつつ、後半の地球パートはどこかこじんまりした印象というヘンな作品。
そのあたりもまたブラナー監督っぽくて、味わい深いです。

キャストは豪華で、ソーの父、アスガルド王オーディンを演じるのは名優Anthony Hopkins。
ご存知、「羊たちの沈黙」(1991年)で、猟奇殺人鬼レクター博士を演じている方です。

ヒロイン、ジェーン・フォスターは、「レオン」(1994年)の子役として一躍注目を集めたNatalie Portman。「スター・ウォーズ」新三部作(エピソード1から3)でパドメ女王を演じていたことでも有名ですね。

アスガルドの女王フリッガを演じているのは、90年代、メジャー級アクション映画のヒロインとして引っ張りだこだったRene Russo。

主人公ソーはこの映画が出世作となり、のちに「メン・イン・ブラック;インターナショナル」(2019年)の主役に抜擢されたり、「マッドマックス:フュリオサ」(2024年)では悪役を演じているChris Hemsworth。

ソーの弟、ロキはこれまた、この作品で有名になったTom Hiddlestonが演じています。

日本人としては、MCU初参戦となる浅野忠信さんも、ソーの仲間の一人として出演していますね。

個人的には、この後のMCUシリーズでもしばしば出演している、ジェーンの助手ダーシー・ルイス(演じているのはKat Dennings)が好きなキャラクターですね。
同じくMCUにちょくちょく出ているセルヴィグという物理学者(演;Stellan Skarsgård)もこの作品で初めて登場します。

そういえば、アベンジャーズの「弓の人」、Jeremy Renner演じるホークアイ(クリント・バートン)もこの作品から参加でしたね。

最後にはフューリー長官がちらっと顔を出し、いよいよシリーズの繋がっている感が出てきます。

「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」 (2011年)

オタク少年たちの夢

超人血清とベータ線によってスーパーソルジャーとなったひ弱な青年、スティーブ・ロジャースがナチスを利用して世界征服を企む悪の組織ヒドラと戦う物語。

舞台は1940年代。
世界は第二次世界大戦の真っ只中。
ひ弱な青年が特殊な力で筋肉ムキムキになって大活躍するスティーブ=キャプテン・アメリカは、今で言うところの「チートキャラ」と言ってもよいでしょう。

つまり、「オタク少年たちの夢」。

ガリガリでモテなかったスティーブは、自己犠牲精神と強い心、そして頭の良さで、とびっきり美人の女性士官ペギー・カーター(演:Hayley Atwell)と仲良くなります。

時系列的には、「アイアンマン」の70年くらい前なので、トニーの父ハワード・スタークが若い姿で登場するなど、クロニクル的な面白さもありました。

悪役シュミットを演じているのは、「マトリックス」のエージェント・スミス役で有名になったHugo Weaving。

他にも「メン・イン・ブラック」のTommy Lee Jonesが陸軍大佐チェスター・フィリップスとして出演しているなど、マーベルの本気を感じるキャスティング。

正直、星条旗モチーフのコスチュームはダサいと感じていましたが、「軍のキャンペーンキャラクターだった」という設定で説得力を出しているのが面白いですね。

のちにウィンターソルジャーというヒーローとして登場するバッキー(ジェームズ・ブキャナン)もこの作品から出ています。
まさか演じているSebastian Stanがのちに「アプレンティス」(2024年)で若き日のトランプ大統領役をやるなんて想像もしていなかったですが。

後々出てくるキャラクターとしては、他にToby Jones演じるヒドラの科学者ゾラも登場します。
シュミットも「アベンジャーズ:インフィニティー・ウォー」に出てきますが、久しぶりすぎて「誰だっけ?」となりました。
演じているのも、ヒューゴじゃなかった気がします。

最初観た時はあまりノれなかった作品ですが、観れば観るほど良くできたストーリーで、MCUの中で個人的にはベスト5に入る好きな映画です。

この映画の最後でスティーブは爆撃機の中で氷漬けとなり、70年の時を経て現代に復活。
いよいよ、ヒーロー大集合映画「アベンジャーズ」へと繋がります。

「アベンジャーズ」 (2012年)

このくらいの人数がちょうどいい

「日本よ、これが映画だ」のキャッチコピーでも話題になったヒーロー大集合映画の第一弾。
アイアンマン、ハルク、ソー、キャプテン・アメリカなど、これまでMCUで主役を張ってきたヒーローたちが一堂に会します。

監督はJoss Whedon。
ハリウッドで様々なメジャータイトルの脚本家として活躍されていた方ですね。

話はソーの弟ロキが地球に侵略してきて、キャプテン・アメリカたちがそれを阻止するというシンプルなもの。

開幕早々、地球防衛組織シールドは壊滅の被害に遭い、ホークアイとセルヴィグ博士が洗脳されて敵側に回り、ヒーローたちがかき集められます。

視覚的にはスペクタクルで楽しいですが、「これが映画だ」と謳われるほどよく出来た作品かと言われると、正直、そんなことはないような気がします。

と言いながら、私は字幕版と3D版、2回映画館に観に行きましたけどね。

良くも悪くも、「ヒーロー大集合」以外にウリのない作品です。

ただ、この映画を機に、マーベルのライバル会社であるDCコミックも、スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンなどを登場させるヒーロー大集合映画に舵を切ります。

日本ではかなり前から仮面ライダーや戦隊ヒーローが大集結する映画が作られていた気がするので、何を今さらという感もありますが、ハリウッド映画だとスター総出演となるのでなかなか迫力がありますね。

ただ、どんどん作品が作られ、登場するヒーローたちも増えていくので、正直、この一作目くらいの人数がちょうど良かったなあとも思います。

「アイアンマン3」 (2013年)

シリーズもの3作目にありがちなB級感

「アベンジャーズ」という「祭り」の後の最初の作品。
というわけで、なんとなくこじんまりした印象となった「アイアンマン」の三作目。
監督は「1」「2」のファブローからShane Blackに変わっています。

「ジュラシックパーク」や「ロボコップ」もそうでしたが、どうも三作目というのはB級感が出てくるものですな。

「アベンジャーズ」の事件で死にそうになったことにより、トラウマを抱えるようになったトニーが、ニューヨークからはるか離れた場所で1人の少年と出会い、立ち直る話。

冒頭、1999年の大晦日、トニーがまだアイアンマンになる前のエピソードから始まり、1作目でテロリストに捕虜となった時、トニーと一緒にアイアンマンのプロトタイプ(マーク1)を造り上げたホー・インセン博士が登場するなど、ファンなら「おおっ」と盛り上がるサプライズもあるんですが、いつの間にか大量のアイアンマンが製造されていたり、遠隔操作型のアイアンマンが登場するなど、ちょっとやりすぎ感が強くて、初見、あまり好きになれませんでした。

敵も、再生能力があったり、散り際に人間爆弾となって周囲を破壊するという、ちょっとありがちな能力がさらにB級感を高めています。

Guy Pearceが演じるヴィランのアルドリッチ・キリアンの小物感も気になりましたね。

テロリスト集団「テン・リングス」のリーダー、マンダリントレヴァー・スラッタリーという元俳優のじじいだったというのは結構、面白かったですが。
演じているのは名優Ben Kingsley。
スピルバーグ監督のアカデミー賞受賞作「シンドラーのリスト」(1993年)にも出演している大俳優になにやらせとるんじゃと思いましたが、普段、あまりやらないようなコミカルな役を楽しそうに演じていましたね。
トレヴァーは後に本物のテン・リングスが出てくる「シャン・チー」にも登場。
テン・リングスは「アイアンマン」の1作目にもチラッと出てきます。

最初の印象は最悪でしたけど、ラスト、10体以上のアイアンマン(自動操縦)が活躍するバトルは見ごたえがありますし、途中の墜落する旅客機からアイアンマンが落下する乗客を救出するシーンも盛り上がるので、今ではそんなに嫌いな作品でもありません。

この作品がイマイチな一番の理由は、トニーがイケイケじゃないというところにある気がしますね。
確かに1エピソードとして、悩みを抱えるトニーが少年との出会いによって回復するというのはアリだと思いますが、二作目でも死の恐怖と戦っている描写があったし、今さら感というか、わざわざフランチャイズ作品1作丸々使ってやることなのかという話。

あと、ハッピーもそんなに活躍せず(若い頃の姿が見れたのは良かった)、ペッパーの扱いが雑なのも気になりました。

前作でアイアンスーツを手に入れたローズ大佐は、星条旗モチーフのペイントを施したスーツを装着し、アイアン・パトリオットとして登場。
前作から予兆はありましたが、今作から完全に「お笑いキャラ」としての道を歩み始めます。

「マイティー・ソー:ダークワールド」 (2013年)

独特のトーンと質感

なんかよくわからないけど、個人的に好きなMCU作品。

かつてソーの祖父が敵から入手したエーテルという特殊な物質のせいで体に異変が起こったジェーンを救うため、ソーが宿敵ダークエルフたちと戦う話。

監督は「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(2015)のAlan Taylor。
「ジェニシス(シリーズ5作目)」は正直、サラ・コナーが可愛い以外に取り得のない映画でしたが、この「ソー2」は独特のトーンと質感がたまらないですね。

1作目ではちょっと困った荒くれ者、「アベンジャーズ」ではお笑い担当としての地位を確立したソーが、今回は正統派ヒーローとして、これまた困ったちゃんのロキと手を組んで活躍します。

アクション映画としての見せ場も多く、アスガルドに侵略してくるダークエルフ軍との合戦シーンやラストのイギリス・グリニッジと別の惑星を行ったり来たりするバトルなど、「観て楽しい」作品になっています。

ただ、テイラー監督、「ジェニシス」もそうでしたが、ノリだけで突破しようとする癖があるようで、地下鉄で移動するソーやなぜか英語で会話が成立するジェーンとアスガルド人(それはまあ本作に限ったことではないですが)など、冷静に考えると「?」なところも結構あります。

いちおう、エーテルがのちにサノスが集めているインフィニティストーンのひとつ、リアリティ・ストーンだったりと、MCUメインとの絡みは多少あるものの、割ととばしちちゃっても問題のない、独立した作品になっています。

ただ、今作でソーの母、フリッガが命を落とし、それが「エンドゲーム」では感動シーンの一つに繋がっていることを考えると、やっぱり必見と言えるかもしれません。

フリッガの葬儀は、今までいろんな映画で観てきた葬式シーンの中でも指折りの美しく情緒的なものとなっています。

「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」 (2014年)

MCUの中で一番好きな作品

インフィニティーサーガ23作品中、いや、現在までに公開されている34作品中、一番好きな作品です。
大げさでもなんでもなく、二桁は確実に観ていると思います。

舞台はワシントン。
シールド長官のフューリーが襲撃され、スティーブ自身もターゲットにされます。
果たして黒幕は誰なのか。
スティーブはナターシャと共に陰謀を暴くため、反撃の戦いに身を投じていきます。

監督はAnthony RussoとJoe Russo。
アメリカだと時々、兄弟で監督されている方をお見かけしますが、一体どんなふうにお仕事をなさっているんでしょうね。
監督なんて「最終決定者」なので、2人いると混乱しそうですが。
長年一緒に生きていて、暗黙のうちにそのあたりの了解が取れているのかもしれません。

この作品はなんと言っても「質感」ですね。

あるいは「空気感」と言ってもよいかもしれません。
つまるところ、映画とは空気感なんだということを思い知らされます。

質感、空気感というところで私の好きな映画の一つに、「ヒート」(1995年)という映画がございます。
ルッソ兄弟もこの映画が大好きだそうで、なるほどと思いました。

ストーリーは、90年代、00年代によく見かけた、「政府の陰謀で追い詰められた男の孤独な戦いを描くアクション映画」に近いものがあります。
ただ、スティーブは孤独ではありません。
ブラック・ウィドウことナターシャとペアを組み、そこに後に三代目キャプテン・アメリカとなるサムが加わります。

冒頭のシージャックされた船から人質を救出するシーンでの「質量」を感じさせるバトル。
キャップのトレードマークである盾の塗装も「潜入仕様」で暗めに塗られているところからシビれます。

三代目キャプテン・アメリカことサム・ウィルソン(演: Anthony Mackie)は本作が初登場。
実はヒドラの手先だったS.H.I.E.L.D.特別チームのリーダー、ブロック・ラムロウ(演:Frank Grillo)もたぶん本作初登場ですね。彼は「キャプ・アメ3」で帰ってきます。(ヴィランのクロスボーンズとなって)

再登場組はニック・フューリーの頼れる部下、マリア・ヒル(演:Cobie Smulders)、「キャプ・アメ1」からはゾラ博士。
「マイティ・ソー」や「アベンジャーズ」にもチョロチョロ出ていたS.H.I.E.L.D.のエージェント、ジャスパー・シットウエル(演:Maximiliano Hernández)は今回、酷い目に遭います。

昔からの映画ファンが驚いたのが、S.H.I.E.L.D.のアレクサンダー・ピアース理事として登場するRobert Redfordではないでしょうか。
リベラル俳優の一人として自身も映画監督をしているレッドフォード。
こういう映画に出るイメージないですが、違和感なく溶け込んでいるのは流石ですね。

今回、スティーブとチームを組むナターシャの活躍も見どころの一つ。
敵の目をくらませるためスティーブにキスをするシーンは最高です。

ニックにも見せ場が用意されていましたね。
敵からの攻撃でボロボロになった車で、搭載されたAIに機能低下を告げられるニック。
「じゃあ、なにが大丈夫なんだ」と聞くと、AIが「エアコンは正常に動きます」と答えるシーンが面白い。

また、スティーブの家に勝手に入り込み、盗聴を恐れて符号で会話するニックがスパイものっぽくて良かったですね。

他にも高速道路上のバトル、からの「ヒート」ばりの銃撃戦など、見どころを上げていったらキリがない本作。

ラストの「ミッション:インポッシブル」ばりのナターシャの変装なども素晴らしかった。
好きなシーンが多すぎて、逆にラストのヘリキャリアのところがそんなに盛り上がらないんですよね。
あと、タイトルにも出ているウィンター・ソルジャーがそんなに印象に残らない。
スティーブと年老いたカーターが再会するシーンのほうが自分的にはぐっときました。

単発映画としても楽しめますが、「アイアンマン2」の審問会でスタークに立ちはだかったスターン上院議員が顔を出したり、シリーズ内の一作としても重要な作品になっています。

そうそう。
この後、「シビル・ウォー」やドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」にも登場するエージェント13ことシャロン・カーター(演:Emily VanCamp)もこの作品が初登場ですね。
「キャプ・アメ1」のペギー・カーターの姪にあたります。

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」 (2014年)

「スーパーマン」のジェームズ・ガン監督作品

2025年版「スーパーマン」の監督として注目を集めるJames Gunnが監督を務める、ダメな大人集団が銀河の平和を賭けて戦うスペース・オペラ。

最初、この作品には全然、惹かれませんでした。

なんかこういう「よく知らん設定のSF」ってどうも苦手なんですよね。
「スター・ウォーズ」が好きすぎて、「スター・ウォーズ」以外のSFが全部区別がつかなくて、全部まがい物に見えてしまう病。

しかも、主人公のピーター・クイル(演:Chris Pratt)はともかく、アライグマと木と怪力男と緑の肌の女性? なんだよ、そのB級感。

でも、実際に観てみると、「B級感」は当たっていましたが、「気持ちいい話」でした。
「愛すべき話」と言ってもいいかもしれません。

ガン監督ズルいよね。
「スーパーマン」でもそうだけど、「みんなが知ってるあの名曲」みたいなのを上手く使って、「な? こういうの、好きやろ?」と観客の心にぶっ刺してくる。

そして、これはシリーズを統括しているKevin Feigeの戦略なのか、突然、ここで本筋とあまり関係なさそうな「GOG」をぶち込んでくることで、一回、シリーズの味をリセットしてきたのが上手いと思いました。

とはいえ、緑の女ことガモーラ(演:Zoë Saldaña)はインフィニティサーガのラスボス、サノスの娘だし、今作のヴィラン、ロナンはサノスの協力者だからガッツリ本筋に絡んだ話なんですけどね。

ノリのよさは大事。
「スーパーマン」ではちょっとガン監督の作風にマッチしていない感じがしてあまりノれなかったんですが、この作品は好きですね。

あと、子供の頃には観ていたアニメ「宇宙船サジタリウス」っぽいから気に入ったのもあるかもしれません。

その後、怪力男ことドラッグスを演じているDave Bautistaは数々のアクション映画で活躍する人気スターに成長。

顔こそ出してませんが、木人間ことグルートを「ワイルド・スピード」のVin Diesel、アライグマことロケットを「ハング・オーバー」のBradley Cooperがそれぞれ声をあてていて、なにげに豪華です。
(日本では、遠藤憲一さんと加藤浩次さんが演じられています)

「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」 (2015年)

あんこがぎっしり詰まったたい焼きのような映画

大集合映画第二弾。

監督は一作目と同じ、ジョス・ウェドンが務めています。

公開時、もちろん映画館で観ていますが、なぜかあまり好きになれませんでした。
一作目に比べるとなんか散漫な感じがしたからですかね。

でも、何回も観直しているうちに、結構いいな、と思えるようになりました。

アタマからオシリまで見せ場しかない映画。

冒頭の雪積もる森の中いきなりの全員集合バトルに始まり、パーティーシーンでちょっとほっこりさせたかと思うと、ウルトロン襲来で一気に高まる緊張感。
その後も廃船内の激闘や南アフリカの都市ヨハネスブルグでのハルクvsハルクバスターの大激突。
さらにソウルでの陸と空での息つく暇のないアクションシーンがあり、空に持ち上げられる街での最終決戦と、あんこがぎっしり詰まったたい焼きのような映画でした。

アクションだけじゃなく、ストーリーの情報量もすごい。
バナー&ナターシャの「いつの間にカップル」のロマンス。
ワンダ&ピエトロきょうだいの復讐劇。
哲学おじさんロボット、ウルトロンの屈折。
スターク社長の暴走と対立する学級委員スティーブの確執。
なんかフラッと帰って来るニック・フューリー。
「えっ、お前、そんなイクメンだったの?」と驚かされるホークアイことクリント・バートン。
なんか1人でそっと姿を消したと思ったら、おいしいところを全部持っていくソー。
もはや完全にお笑い担当のウォーマシンことローズ大佐。
(軍人なのに副業してるの?)
たなぼたで人体ボディを手に入れちゃうスタークのAI、ジャーヴィス君(ヴィジョン)。

そこに、「ブラック・パンサー」で再登場するユリシーズ・クロウ(演:Andy Serkis)やら変なおじさんセルヴィグ博士も絡んできて、もうお腹いっぱいです。

そりゃ、ポッツが出てくる隙もありませんわな。
ジェーン・フォスターも欠席。
2人はスタークとソーの恋人自慢に名前だけ出てきます。

最初イマイチと感じたのは、この情報量のせいだったのかもしれません。

スタークにパーティーに誘われた女医が、「ソーも来るの?」と聞いたり、パーティーの余興でムジョルニア持ち上げチャレンジが開催されたり、コミカル要素も前作より強め。
一番好きなのは、スタークがハルクを激突させる直前に建設中のビルを「買い取る」と指示するシーンですね。

AIによる人類への反逆など、時代を先取りした話でもありました。

「アントマン」 (2015年)

MUC初心者にお勧めしたい作品ナンバー・ワン

公開同時、「GOG」以上にモチベーションが上がらなかったのがこの作品です。
だって「蟻男」ですよ。ふざけているにも程がある。
でも、実際に観てみたら結構面白かったですね。
MUC初心者にお勧めしたい作品ナンバー・ワンです。

監督はPeyton Reed。
デビュー作は「テニス靴をはいたコンピューター」。その後も「新ラブバッグ/バービー絶体絶命!」「ハニーVS.ダーリン 2年目の駆け引き」など、いかにもB級感溢れる作品ばかり撮られているようですが、なんと、私の大好きな「イエスマン“YES”は人生のパスワード」を撮っている方ではないですか! 
そりゃ、面白いわけだ。

「イエスマン」は2008年に公開されたJim Carrey主演のコメディ映画。
仕事でもプライベートでも「NO」と言ってあらゆることを断り続けた銀行員が、セラピーに参加して何事にも「YES」と答えるようになったら人生が変わっていくという話。

この「アントマン」でも、人生どん底男、スコット・ラング(演:Paul Rudd)が心を入れ替えて、人生が変わるというストーリーになっています。

物語は時代を遡り、1989年の場面から始まります。

場所はまだ建設中のS.H.I.E.L.D.本部。
ワシントンD.C.にある、「~ウィンターソルジャー」にも出てきたあの建物ですね。
トニーの父親、ハワード・スターク、スティーブのいとしい人、ペギー・カーターたちが会議室で話しこんでいると、1人の男が入ってきます。

男の名前はハンク・ピム
演じているのは、なんとMichael Douglas。
「危険な情事」「ウォール街」「氷の微笑」など数多くの映画に出演しているハリウッドの大物俳優です。

そんな有名どころを呼ぶなんて、マーベルのイケイケぶりがうかがえます。
というか、ディズニーパワーですかね。

マーベルスタジオは2015年にウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズの子会社になっているからです。
(配給は「アベンジャーズ」の1作目からディズニーがやっていました)

私が映画を一番観ていた90年代、いろんな作品にマイケルが出ていたので、この配役は嬉しかったですね。
松田優作さん、高倉健さんが出演している「ブラック・レイン」(監督は「エイリアン」のRidley Scott)は私の大好きな映画の一つです。

炎天下、渋滞に巻き込まれたせいで頭がおかしくなっちゃう男を描いた「フォーリング・ダウン」なんて怪作もありました。

あと、「セブン」のDavid Fincherが監督した「ゲーム」とか。

日本で言ったら、松平健さんが「仮面ライダー」に出た時のようなインパクトです。

でも、マイケル・ダグラス、人や物体のサイズを大きくしたり、小さくしたりするピム粒子を作った天才博士をノリノリで演じていましたね。

その天才博士であり、初代アントマンでもあるハンクの後を継ぎ、二代目アントマンとなるのがスコット・ラング。
演じているのは、Paul Ruddという俳優さんで、「40歳の童貞男」や「40男のバージンロード」など、B級映画でご活躍されている方のようです。

このスコットがかなりイイ!
どこにでもいるようなダメな中年男だけど、優しくてユーモアがあり、いい感じで力が抜けている。

逮捕歴もあるけど極悪人ではなく、頭も良くて、娘を愛するよきお父さん。
でもって運動神経抜群(そのあたりは、冒頭の刑務所のシーンやハンクの家に盗みに入るところでしっかり描かれています)。

スコットの友人、ルイスを演じているMichael Peñaがまたイイんですよ。
早口で「友達から聞いたんだけど…」と登場人物になりきって吹き替えするシーンは「アントマン」シリーズのお約束となっていて、それが楽しみで観に行くといっても過言ではないです。

アリを使って「ミッション:インポッシブル」のような潜入工作任務を実行したり、人間サイズと蟻んこサイズを行ったり来たりのバトルなど、映画としての楽しさが詰まっている本作。
そういうエンターテイメント重視の一方で、きちんと「親と子」というテーマを描いているのもいいですね。

「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」 (2016年)

なんともいえないモヤモヤ感

キャプアメとしては3作目。
「ウィンター・ソルジャー」と同じルッソ兄弟が監督を務めています。

「シビル・ウォー」という同名のコミックがありますが、ヒーロー同士が二派に分かれて戦ったり、そのきっかけがスーパーヒーローを対象にした法案であること以外は、ほとんどオリジナルのストーリーとなっているようです。

冒頭、キャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ファルコン、ワンダが、「ウィンター・ソルジャー」に出てきた悪役ラムロウ率いる部隊と激しい戦闘を繰り広げます。
その結果、一般市民にも犠牲者が出て、スーパーヒーローたちに制約を設けるソコヴィア協定が作られ、スティーブたちは協定に調印するように求められます。 

「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」(2016年)でもありましたが、この「ヒーローが戦闘で一般人に被害を出す話」というのが私はどうも苦手です。
だって、「それを言っちゃあおしめえよ」みたいなところがあるじゃないですか。
それを言い出したら、「じゃあゴジラは?」とか「ウルトラマンは?」みたいなことになる。
ヒーローものというのは、「そういう細けえこと」を無視して爽快感だけを楽しみたいんです。
そういうことを言い出すと、どんどん話が暗くなる。

実際、「バットマンvs~」も「シビル・ウォー」もメチャメチャ暗いですからね。
ヒーロー全員が眉間に皺を寄せて「うーん」って顔をしている。

さらにモヤモヤするのが、「バッキー、トニーの両親殺しちゃった問題」です。
別に今まで敵だった奴が味方になるシチュエーションっていうのはいいんですよ。
そういうのが燃える時もある。

ただね、そこに身内の死が絡んでくると、ちょっと話が違ってきます。
昔、「ワイルド・スピード」で私が好きだったハンというキャラクターを殺した男が、その後の作品でしれっと仲間になって、ファミリーとして恒例のバーベキュー大会に参加しているのを観た時は、「おい、待てよ」と思いましたね。
その後、ハンは死んでいなかったことになったので「まあ、いいか」という気分になりましたが、こういう、ファンのキャラクター愛を無視した展開というのは腹が立つものです。

さらに空港での、大ヒーローバトル。
ビジュアル的にはとても面白いシーンなんですが、「世界を救おうっていうヒーローがなにやってるんだ、こいつら」という気分になります。
おまけに、その「内輪もめ」でウォーマシンことローズ大佐が重傷を負います。(味方のヴィジョンの流れ弾というのは、うまい作劇だと思いました)

というわけで、すごく期待していた分、モヤモヤしたこの作品ですが、Tom Holland演じるスパイダーマン(ピーター・パーカー)は本作が初お披露目となります。
クモに噛まれて、ヘンな力が使えるようになっちゃたよーといういつものヤツをすっ飛ばして、すでにスパイダーマン(といってもお手製コスチューム)になっているという珍しい登場の仕方。
いきなり、トニーが家に来ていて仰天するシーンは可愛いです。

初登場と言えば、2020年に40歳の若さで亡くなったChadwick Boseman演じるブラックパンサー(ティ・チャラ王子)もそうですね。

ヴィランは、「アベンジャーズ2」でラストの舞台となったソコヴィア出身のヘルムート・ジモ(演じているのはDaniel Brühl)。
かつてウィンターソルジャーを洗脳していた技術を手に入れ、スティーブとトニーの間を引き裂こうという狡猾なんだか回りくどいんだかよくわからない方法でアベンジャーズを振り回すお騒がせマンです。

「ワッハッハッ、オレ様が世界を征服してやる」というお決まりの悪役ではなく、ちょっとヒネっているのは面白いですが、アベンジャーズに家族を殺された私怨というのがイマイチ心に響いてきません。
それは多分、家族の死を明かすのを最後に持ってきているせいだと思うんですよね。
いつも電話で生きていた時の家族からの留守電を繰り返し聞いていて、それが最後、「あっ、この人もソコヴィアで家族を失った犠牲者の1人なんだ」というサプライズをやりたいがために、アベンジャーズをぶっ壊したい動機がぼやけてしまっているんです。
あと、こういう「悪人も辛かったんだよ話」というのは、よっぽど上手く作らないとモヤモヤしか残りませんね。

とはいえ、ルッソ兄弟ですからアクションシーンは見ごたえがあります。
冒頭のラゴスでのシーンからキャプテンとバッキーの共闘シーン、ブラックパンサーの追撃、対テロ共同対策本部での大立ち回りなど、重量感のあるバトルはさすがです。

そして、ラストはキャプテン&バッキーvsアイアンマン。
誰もが見たかった最強対決は、戦いの理由はともかく、スピード感と重量感が最高です。

あと、アベンジャーズの「分断」という、インフィニティサーガにおける大きな転換期になるので、新ヒーローの登場や合流含め、お話的には超重要回と言えるのではないでしょうか。

俳優が変わってしまったので、ちょっと実感は薄れますが、この話を踏まえ、「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」を観ると、ロス長官とキャプテンの関係がよくわかり、味わい深さが増すと思います。

「ドクター・ストレンジ」 (2016年)

魔法の持つ「ワクワク感」

ここでまた1人、新たなヒーローが加わります。
それがBenedict Cumberbatch演じるドクター・ストレンジことスティーヴン・ストレンジです。

監督はScott Derrickson。
「ヘルレイザー」シリーズの5作目や、Keanu Reeves主演の「地球が制止する日(The Day the Earth Stood Still)」(2008年リメイク版)などの監督をされた方だそうです。

私はこの作品を、字幕英語版と4DXの日本語吹き替え版で2回映画館に行きました。
4DXというのは、画面に合わせて座席が動いたり、顔に風を吹き付けられたりするアトラクションのような仕掛けがついたもので、前からずっと興味があり、字幕映画版を観て「これは4DXに合っているかも」と思って観に行きました。

結論から言うと、初見の映画にはまったく向いてません。
作品によるんでしょうが、少なくとも「ドクスト」はアトラクションの味付けが濃くて、物語に集中できませんでした。
あと、振動が誰目線なのか定まっていないため、主人公が殴られても、悪役が殴られても振動するのでモヤモヤします。

何でモヤモヤしたか考えてみると、ゲームのコントローラ振動に慣れているからかもしれません。
20年位前からコンピュータゲームのコントローラに振動が仕込まれるようになって、ゲームの場合はプレイヤーキャラクターに振動の主観が設定されていないんですね。
振動のつけ方はセンスだと思うので、これも作品によるのかもしれません。

お話のほうはというと、高慢な外科医が不慮の事故で両手の感覚を失い、なんとか再起を願った末、ネパールで魔法と出会うという話。

このストレンジという男は結構、容赦なく嫌な奴に描かれているのが面白かったですね。
ただ、そこに「医者」という信念がある。
確かに自己顕示欲も強いのですが、根っこに「人の命を救いたい」という想いがあり、それがギリギリ観客の感情移入を繋ぎとめる話になっていました。

ネパールで出会う魔法の師匠エンシェント・ワンを演じているのは、Tilda Swinton。
ポン・ジュノ監督の「スノー・ピアサー」(2013年)で強烈な首相を演じていた方です。

対する悪役カエシリウスを演じているのはMads Mikkelsen。
「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」で、前2作でJohnny Deppが演じたゲラート・グリンデンバルドを引き継いだり、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」でヒロインの父を演じたりと、悪役から善人まで幅広くこなす俳優さんです。
「メタルギア・ソリッド」を作った小島秀夫氏が立ち上げたコジマプロダクションの第1作目「デス・ストランディング」でも謎めいた役を演じられていました。

家族を失った末、エンシェント・ワンにその能力を見出され魔法使いになったものの、闇落ちして禁断の書を強奪すると、それを使って暗黒次元を支配するドルマムゥを召還してしまうカエシリウス。
ラスボスはドルマムゥなので、ちょっと小物感があり、マッツの無駄遣い感は否めません。

そのドルマムゥさえ、最後にチラッと出てきて、「なんじゃそりゃー」という戦いの末にあっけなく撤退してしまうので、カタルシスはあまりないんですが、序盤の傲慢なスティーヴンが悲惨な目に遭って(原因は余所見運転なのであまり同情できませんが)、そこから自分探しの遍歴に入り、マニ車を回しちゃったりしながらやっとカーマ・タージにたどり着くも、ワンに向かって「インチキだ」と怒りだし、人知を超えたものを見せられてすっかり毒気を抜かれたかと思いきや、一度魔法を会得し始めると本は盗むは禁断の魔法に手を出すわでやりたい放題。なんやかんやでニューヨークのサンクタム(聖域)に放り出されるも、カエシリウスと仲間たちの襲撃を受け、浮遊マントの力で反撃するという、MCUの初期の頃のようなわかりやすくまとまった話なので、「アントマン」と並んでMCU初心者にピッタリな作品と言えます。

でも、一番の見所は観て楽しい魔法の描写です。
冒頭のミラーディメンションの戦いをはじめ、アストラル体と物体を行ったり来たりのバトルとか浮遊マントの活躍とか最後の「時間巻き戻し」に至るまで、魔法の持つ「ワクワク感」に満ち溢れています。

インフィニティサーガの一作品としては、ストレンジの参加という意義が一番大きいですが、サーガの核となるインフィニティストーンのひとつ、「タイムストーン(緑)」もここで登場します。
また、この時点でインフィニティサーガ後の大きなトピックとなるマルチバースについても言及されていましたね。

キャラクターでは、今後の作品に関わる2人の人物が初登場でした。
魔術師集団「マスターズ・オブ・ミスティック・アーツ」に所属するカール・モルドウォンです。

モルドはスティーヴンが魔法を学ぶきっかけになる「先輩キャラ」として登場するも、ワンに失望し、スティーヴンとは別の道を歩みます。
クレジット後のおまけ映像で、かつてワンが治癒させた男から魔力を奪い、思わせぶりな闇堕ちを見せたものの、しばらく音沙汰なくてどうなったんだろう?と思っていたら「ドクスト2」でスティーヴンと対決します。
別宇宙でのできごとなので公式戦とは言い難く、また中盤の中バトルの1つに過ぎないのでちょっと肩透かしでしたね。

笑わない図書室の管理人として登場したウォンのほうは、スティーヴンと出会ってビヨンセを知り、ラストで笑いに目覚めた後は愛されキャラとして「シャン・チー」などにゲスト出演しています。

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」 (2017年)

軽快な音楽とスタイリッシュな映像

原題はGuardians of the Galaxy Vol. 2。
「2」とつくことで前作を観ていないお客さんが敬遠すると思って、日本では「~:リミックス」となっています。

元の「vol2」は主人公クイルの母が主人公に聴かせたい曲を集めたカセットテープのタイトルにちなんで付けられていますが、日本語タイトルも音楽に絡めたタイトルになっています。

ただ、日本のうるさ方からは「リミックスは違うだろう」と批判を受けてましたね。

ナンバリングタイトルなのに数字をつけない傾向っていつからでしょうね。
正直、数字つけたら興行収入ってそんなに変わるものなんでしょうか。
逆にわかりづらくてたまりません。

それどころか最近は、「ウィキッド」のように二部作って決まっているのにわざとナンバリングしないタイトルもあって腹が立ちますね。

コンピューターゲームの「バイオハザード」なんかはちょっとオシャレで、シリーズ7作目のサブタイトルの「RESIDENT EVIL」の「V」と「I」と「L」の一部を繋げてローマ数字の「7(Vll)」に見えるようにしていました。
(「ウォッチドッグス」の3作目でも似たようなことをやってましたね)

ちなみに英語版はシリーズタイトルが「RESIDENT EVIL」なので、サブタイトルが「バイオハザード」となっています。

まあ、「REMIX」が批判を受けるのもわかります。
だって、リミックスってある曲を編集して別の曲にすることなんで、これじゃあ前作の再編集版になっちゃいますからね。
日本語タイトルって難しい。

さて、前作で凶悪なクリー人ロナンから惑星ザンダーを救ったピーター、ガモーラ、ロケット、ドラッグス、グルートの5人ですが、今回はピーターの父であり、異星人のエゴの野望から宇宙を救います。

今作もJames Gunn監督が軽快な音楽とスタイリッシュな映像でノリノリなスペースオペラを描いています。

今作のテーマはズバリ、「生みの親より育ての親」。

あっ、これって2025年の「スーパーマン」と同じですね。
どうも、ガン監督は親子関係というものに何かこだわりがあるのかもしれません。

生みの親エゴを演じているのはKurt Russell。
「バックドラフト」(1991年)などに出演されている名優さんですね。
昔の姿を見ていたので、冒頭、若い頃を再現した特殊メイクで「おーっ」と思いました。

このエゴが本体は惑星そのものだったというスケールのデカさに初見、驚いたのを覚えています。
主人公クイルは、突然の父との出会いに驚きつつ、「やっと血の繋がった家族に出会えた」という嬉しさから目が曇り、仲間の忠告に耳を貸さないというプロットが素敵です。

そして、育ての親は前作にも登場していたヨンドゥ・ウドンタ
このヨンドゥが今回、かなりフィーチャーされてます。

ガーディアンズの仲間となるエゴの従者、マンティスも今回が初登場。
演じているPom Klementieffって、「ミッション:インポッシブル」シリーズでパリスを演じている方だったんですね。

また、Sylvester Stallone演じるスカター・オゴルドも登場。
大物がこんな端役(とはいえ、重要キャラですが)を演じているなんて、と驚きました。

他にも、監督の弟Sean Gunn演じるクラグリンソヴリンの女王(3作目の重要キャラでもあります)アイーシャなど、重要キャラが目白押し。
もちろん、ガモーラの妹、ネビュラも前作以上に絡んできます。

本当に濃いし、面白いし、さらに感動もあって、インフィニティサーガの中では私の中では上位に好きな作品ですね。
ガーディアン三部作の中でも一番好きです。

カメラがベビーグルートを中心に捉えたオープニングもいいですね。

「スパイダーマン:ホームカミング」 (2017年)

オタク少年たちの青春友情ドラマ

監督はJon Watts。

立ち位置のややこしい作品です。

ソニー/コロンビアピクチャーズは2002年、Sam Raimi監督の「スパイダーマン」を製作。2004年、2007年に続編も作られました。

その5年後、今度はMarc Webb監督(実写版「白雪姫」の監督)で「アメイジング・スパイダーマン」を製作。
主役もライミ版のTobey Maguire(「華麗なるギャツビー」)から、Andrew Garfieldに変わり、別次元での話になっています。
まあ、いわゆる「リブート」というヤツですな。
(残念ながら「アメイジング~」は2部作で打ち切りになってしまいました)

そして、3人目のスパイダーマンが「シビル・ウォー」でMCUデビューを飾ったTom Holland演じるピーター・パーカーです。

何でややこしいかというと、スパイダーマンの権利はソニー/コロンビアピクチャーズが持っているため、ホランド演じるスパイダーマンはMCUのキャラクターであるにもかかわらず、ソニー/コロンビアピクチャーズのものだったりするわけです。
日本人なら、半沢直樹がTBSドラマ「半沢直樹」と日本テレビの「花咲舞が黙ってない」で別の俳優が演じていると言えばわかりやすいかもしれませんね。(スパイダーマンとは事情がちょっと違いますが)

正直、もやっとする作品です。
権利的なところもそうなんですが、やっぱりンソニー/コロビアピクチャーズのマーベル映画だなあって感じがするんですよね。
ソニー/コロンビアは「ヴェノム」など他にもスパイダーマン絡みのマーベル映画を撮っているんですが、どうもマーベルスタジオの作品とはちょっとノリが違うんですよ。

最初、映画館で観た時は、トニー・スタークに必死にアピールしようとするピーターの痛々しい姿に「なんだかなあ」と思いました。

でも、今回、改めて観ると、学校内のメインストリームからはみ出しちゃってるオタク少年たちの青春友情ドラマとして結構、面白いんですよね。
結局のところ、どんなイケメン俳優を大量投入しようと、イケてる映画監督にメガホンを預けようと、アメコミ映画というのは基本オタクドリームであることに気づかされます。

トニー・スタークの出し方が微妙だというのは今回も感じました。
なんかゲスト出演感がすごい。
「はいはい、出しときますよ、いちおう」みたいなね。

ただ、サーガを通して観た時、本人もちらっと話しているんですが、トニー自身もまた父親との関係について悩みを抱えているんですよね。
それを考えると、トニーとピーターの微妙な関係も「なるほど」と頷けます。

ヴィランのバルチャーを演じているのが、かつて「バットマン」(1989年、Tim Burton版)でバットマンを演じていたMichael Keatonというのも面白いですね。
キートンは「バードマン あるいは(未知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)でも、自身のキャリアにちなんだ映画に出演されています。

「マイティ・ソー バトルロイヤル」 (2017年)

ジャンクな映画

これも私の好きな作品です。

「ソー」の3作目。監督はTaika Waititi。
ふざけたオッサンです。

冒頭からふざけまくっています。
でも、ふざけ方がかっこいいので最初から最後まで前のめりで観れてしまう。
これはもう「センス」ですよね。

「新世紀エヴァンゲリオン」というふざけたアニメがあるんですが、庵野秀明監督のセンスによって「かっこよく見える」のと似ているかもしれません。

オーディンの死によって戻ってくる死の女神ヘラ
惑星サカールに飛ばされたソーはヘラの脅威から救うため、故郷に戻ろうとする話。

物語というのは建築物に似ている気がします。
この話は敷地面積は狭いですが、「アスガルドの話」「グランドマスターの話」「ソーの家族の話」「ハルクの話」というふうに多重構造になっているため、見ごたえがあるんですよね。

あともう、圧倒的にセンスがいい。
これは好みによりますが、「俺に任せろ」と言って宇宙船から飛び降りたバナーがハルクに変身できず、べしゃっと地面に落ちるところとか最高です。
しかも、それがその後のアスガルド人を救うシーンへのフリになっているという。

エンドクレジットも最高。
影絵のようなアニメーションにビビッドな色使いとサイケな音楽。

ジャンクな映画ですよね。
みんながみんなコレをやられるとさすがに辛いですが、23作品のうち、一個や二個こういうパンチの効いた味付けのある料理が入っているといいアクセントになりますね。

サカールの独裁者グランドマスターを演じているのはJeff Goldblum。
「ジュラシックパーク」(1993年)でパンクだけど真面目な博士を演じていたからそういう人だと思ってましたが、なかなかファンキーな役柄も多いですね。
最近だと、「ウィキッド ふたりの魔女」という映画で、グランドマスターにも通じるオズの魔法使いを演じられていました。
このグランドマスター、「ソー2」に出てきたコレクターというキャラのお兄さんらしいですね。
コレクターを演じているのは、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」にも出演しているBenicio del Toro。
ゴールドブラムとデル・トロ。2人のクセつよ俳優の兄弟設定というのはなかなか強烈ですね。でも、ワカる~。

Tessa Thompson(「メン・イン・ブラック:インターナショナル」などに出演)演じるヴァルキリーがいいですね。
サカールで酒びたりの生活を送る元アスガルドの女戦士で、本名はブリュンヒルデ
「ヴァルキリー」は彼女が所属していた戦士団に属するメンバーの総称なので、自衛隊出身の人が仲間から「おい、自衛官」と呼ばれるようなものですね。
自分自身は「スクラッパー142」と名乗っているっぽいですが。
彼女はこの後、地球に移民したアスガルド人たちのリーダーになります。

「ブラックパンサー」 (2018年)

痛快なエンターテイメント作品

「シビル・ウォー」でデビューを飾ったブラックパンサーの単独作です。

監督はRyan Coogler。
最近では「罪人たち」というホラー映画を撮って話題になった方です。

ウィーンで父、ティ・チャカ国王を失ったアフリカ・ワカンダ王国の王子ティ・チャラが父に恨みを持つ従兄のエリックの襲撃を受け、王座を追われるという話。

アカデミー賞史上初めて作品賞のノミネートを受けたスーパーヒーロー映画として話題になりましたが、堅苦しい物語というわけではなく、完全に痛快なエンターテイメント作品になっています。

中盤、王位継承の儀式が行なわれ、ワカンダの各部族が儀式の場所に集まるシーンがあって「ディズニー映画みたい」と思いましたが、ディズニー映画でした(笑)。

「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」 (2018年)

前編だけど満足感がある作品

いよいよ、アベンジャーズ完結編の前編まで来ました。
監督は「シビル・ウォー」のルッソ兄弟。

この「インフィニティ・ウォー」と続く「エンドゲーム」のヒットによって、ハリウッド映画界の「前編・後編戦略」が加速したように思われます。

まあ、日本ではすでに「三月のライオン」や「進撃の巨人」実写版で前編、後編構成は珍しくなくなってましたけどね。

「アベンジャーズ」の場合、すでに前編、後編構成は発表されていたので、「インフィニティ・ウォー」は観る前から心構えは出来ていました。
ただ、「中途半端なところで終わってしまったら一本の映画としてカタルシスがえられないのではないか」という不安もありました。

物語は「マイティ・ソー バトルロイヤル」の直後から始まります。
ソーとロキを乗せたアスガルドの難民船は、インフィニティ・ストーンを捜し求めるサノスという巨人の戦艦に制圧されてしまいます。

サノスはこれまでの作品にもチラ見せされてましたが、本格的に出てくるのはこの作品が初めてだったのではないかと思われます。
演じているのはJosh Brolin。
少年時代に「グーニーズ」という冒険映画に出演されていた方です。

このサノス、宇宙を貧困から救うために人口を半分にしちゃえばいいじゃんという傍迷惑なお節介野郎なんですが、とにかく強い。

ヒーローものというのは敵が強ければ強いほど面白くなるものだと思いますが、あまりに強すぎると今度はヒーローたちがしょぼくなってしまいます。

「インフィニティ・ウォー」はアイアンマン、キャプテン・アメリカなど、これまで冠番組で主役張ってきたヒーローたちが数多く出てくるんですが、そのバランスの取り方が実に上手いです。

この冒頭シーンでは、すでにソーたちはサノスに制圧されていて(このあたりの省略も上手い)、「あー、こりゃダメだな」と思ったところにハルク登場。
「あれ?ハルク、勝っちゃうんじゃね?」と思わせておきながら、サノスが反撃に出てあっという間にハルクをノしてしまいます。

そして、いつもなら知略でなんとかしていたロキまでもが倒れ、冒頭数分で早くも観客に絶望感を抱かせます。

この後もサノスの手下たちがヒーローの前に次々現われ、アベンジャーズをどんどん窮地に追い込んでいくわけですが、ヒーローたちも一方的にやられるわけではなく、冒頭のハルクのように適当にポイントを取らせた上で最終的にサノス陣営が勝利するという流れになっています。

ヒーローたちの合流のさせ方も上手くて、冒頭のアスガルド難民船襲撃からハルクだけがヘイムダルによって地球に脱出し、そこからエピソードを数珠繋ぎにして一気に見せてくれます。
まるでルッソ兄弟が交差点に立つ警察官のように、「君はあっち」「あんたはこっち」というふうに交通整理して20人くらいいるヒーローたちがいくつかのパーティーに分かれます。

まず、冒頭、船を爆破され、漂流していたソーがガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと合流。
そこから、ソー、ロケット、グルートのパーティーと、クイル、ガモーラ、ドラックス、マンティスの2チームに分裂。

一方、地球に飛ばされたハルクは、ドクター・ストレンジとウォンのいるニューヨークのサンクタムに落下。
ハルクから事情を聞いたストレンジは、公園でペッパーとデートしていたスタークを召集します(ペッパーの出番は今回はここまで。残念)。
そこにサノスの手下、エボニー・マウ(力仕事担当)、カル・オブシディアン(頭脳担当)と戦い、その後、スパイダーマンも合流。
バナーも参戦しようとしますが、冒頭のサノスに敗北したことが尾を引いているのか、ハルクに変身できず、このシーンではただのおじさんになってしまいます。
ちょっと強引で意図的過ぎますが、ハルクを封じたことによってパワーバランスを調整し、かつ物語もスリム化しているのには唸らされます。
このニューヨークチームも、捕われたストレンジを救出に向かうスターク、スパイダーマンと、地上に残されたバナー、ウォンの2チームに分かれますが、ウォンはここで「やることがあるから」と離脱。
バナーが残されたスタークの携帯電話(正確には「シビル・ウォー」のラストでキャプアメから送られてきたガラケー)をかけ、次の物語に襷を繋げます。

本来ならアベンジャーズの指揮官、ニック・フューリーが出てきて仕切るところですが、「シビル・ウォー」騒動で姿を隠しているという設定が効いていて、最後まで出てこないというのもよくできてますね。

キャプテンはナターシャ、サムと行動を共にしており、スコットランドで密会していたヴィジョンとワンダを、サノスの手下(プロキシマ・ミッドナイトコーヴァス・グレイヴ)の襲撃から救います。
その後、キャプテン組はローズ大佐、ハルクと合流。
ヴィジョンからマインド・ストーンを分離させるため、ワカンダに向かいます。そこでブラックパンサーとバッキーが加わり、ここが一番の大所帯になります。

物語終盤では宇宙に飛び出したアイアンマン組(スターク、ストレンジ、スパイダーマン)とスターロード組(クイル、ドラッグス、マンティス。ガモーラは途中でサノスに連れ去られて離脱)がサノスの故郷、惑星タイタンで合流します。
ソー、ロケット、グルートはワカンダでキャプテン組と合流。
物語の中心は、地球と宇宙に集約されます。

それにしても、よくこんな大勢のヒーローたちをさばいたものです。
きっとホワイトボードに書きながらああだこうだと議論して決めたんでしょうね。
ちょっと「スーパーロボット大戦」というビデオゲームのシナリオに近いものを感じます。

俳優さんたちもワクワクしながら台本を読んだんじゃないかと思います。
「えーっ、オレ、こっちのチームなのかよー」とか言いながら。

ちなみに原作のアメコミだと割と適当にくっついたり離れたりしているそうですね。
それどころかキャプテンアメリカやアイアンマンといったヒーローもバージョンによって何人も存在するみたいです(時には人種や性別も変わったりするらしいです)。
そしてそういうカオスをまとめる便利な道具として出てきたのが「マルチバース」という概念で、MCUもインフィニティサーガが終わった後、その概念を取り入れて物語を構築しようとしました。

ただ、マルチバースというのは劇薬で、お客さんの感情移入が無視されてしまうようなところがあると思います。
しかも、作品によっては同じ役者さんが演じたり、別の役者さんが演じたりして、完全に商売都合なんですよね。

やっぱりゲーム「龍が如く」の桐生一馬はこの世に1人で、その彼がバルブ全盛期にヤクザデビューして、そこからいろいろ人生を積み重ねて今に至っているからアツいのであって、それがマルチバースということで2人も3人もいたら興醒めじゃないですか(「見参」とか「維新」はオッケー。「オブ・ジ・エンド」はまあ……どうなんでしょうね(笑))。

だから、「デッドプール・ウルヴァリン」は、ウェズリー・スナイプスの登場は嬉しかったですが、あのウルヴァリンは私らが好きなあのウルヴァリンじゃないのでちょっと微妙でした。

さて、話を戻しましょう。
これだけたくさんのヒーローが登場する複雑な話がうまくまとまっているもう一つの理由として、インフィニティー・ストーンの存在があります。
インフィニティー・ストーンは宇宙が誕生した時に生まれた青、黄色、赤、紫、緑、橙の7色の石だそうです。(ファンタジーでありながらもSF要素があるこの設定を考えた人は天才!)
それぞれ、「スペース」「マインド」「リアリティ」「パワー」「タイム」「ソウル」を司っていて、そのすべてを装着して指を鳴らすと全宇宙の半分の生命を消すという、なんとも物騒なガントレット(金属製の手袋)をサノスは持っています。

まあ、若干、お話のために用意されたご都合主義なアイテムのにおいもしなくもないですが、ただ、この設定により、観客は複雑な物語の中で迷子にならずに済むわけです。

つまり、ドラゴンボール理論ですな。

どんな話でも、この要素だけ入れておけばまあまあ面白く感じさせることが出来る仕掛けというものがございます。

それが「塗り絵」と「すごろく」です。

「塗り絵」というのは、「収集」・・・つまり、コンプリート欲をかきたてる仕掛けですね。
「魔法の剣をX本集めろ」とか「仲間をX人集めろ」というように、最初に数をドーンと指定して、それを目的に物語を転がしていくやり方です。
鳥山明先生の「ドラゴンボール」では、初期に「ドラゴンボールを7つ集めると願いが叶う」という設定がありました。
手塚治虫先生の「どろろ」もそうですね。
最近では野田さとる先生の「ゴールデンカムイ」でもこの「塗り絵」が使われておりました。

もう一つの「すごろく」は「進捗」と言い換えてもよいかもしれません。
「西遊記」という中国の物語がございます。
三蔵法師というお坊さんが3人の家来を連れて、ありがたいお経を手に入れるため、天竺(インド)に向かうという話ですね。
最初に目的地を指定して、そこに向かうことで物語を転がしていくことを私は「すごろく」と呼んでおります。
江戸時代の滑稽本「東海道中膝栗毛」も江戸から京に向かう「すごろく」でした。
「ロード・オブ・ザ・リング」の名前で映画化されたイギリスの文学者J. R. R. Tolkienの「指輪物語」も力の指輪を滅びの山に捨てに行くという「すごろく」になっておりました。
Dustin Hoffman、Tom Cruise主演の「レインマン」など、多くのロードムービーは「すごろく」を使って観ている者の興味を繋ぎとめています。
「すごろく」は物理的な移動だけでなく、例えばドラマにもなった「トリリオン・ゲーム」のように「100億ドル稼ぐ」というようなタイプもございます。
「社長の座を目指す」「100万部出版される小説を書く」など、目標に向かうすごろくを使った物語もたくさんございます。

ですから、これから小説などをお書きになりたい方は、「塗り絵」か「すごろく」をお使いになるとよろしいのではないかと思います。
どんなにヘタクソでも、この2つを使えば読者はいちおう最後まで付き合っていただけるのではないでしょうか。

この「塗り絵」と「すごろく」というのは、読者や観客にとっても大変ありがたいものでございます。
なぜなら、目的地と現在地がわからない物語というのは大変不安にさせられるものだからです。
「10本の魔剣を集めろ」と最初に提示されれば、「魔剣が10本集まったら物語が終わるんだな」と安心して読み始められますし、5本集まったところまで来たら「物語も後半分くらいだな」と見当がつきます。
たとえ、話が脱線しても、なにを読まされてるんだという気持ちになりにくいかもしれません。

「インフィニティ・ウォー」もたくさんのキャラが出てきて、物語も複雑ですが、観客は「サノスにインフィニティ・ストーンをコンプリートされちゃいけないんだ」という目的を見失わずに観ることができます。
そして、次々とサノスがストーンを手に入れて行くことで緊張感も高まるわけですな。

とはいえ、6個というのはなかなか多く、もしかしたら初見の人が一回で理解するのは難しいかもしれません。

なんかボードゲームにしたら面白そうな内容だなと思ったら、すでに「Thanos Rising」というゲームが出ているそうですね。
映画のようにヒーローたちになってサノスがインフィニティ・ストーンをコンプリートするのを阻止するゲームだそうです。
残念ながらフィギュアはサノスのものしか入っていないようですね。
しかも、日本語版は出ていないそうです。

物語終盤の見せ場は、惑星タイタンで繰り広げられるアイアンマンチームvsサノスの戦いと、ワカンダで繰り広げられるサノスの部下が率いる大量の宇宙人軍団vsキャプテンチームの戦い。

どちらもヒーローチームは一回、ピンチを迎えるのですが、そこから大逆転。
「あれ? このままヒーローたちが勝っちゃうのかな? 完結編は二部構成なんだけど大丈夫?」と心配していたら、サノスがめっちゃ強くて再び形勢逆転。
サノスはインフィニティ・ストーンを集め、ガントレットで指を鳴らすと、全宇宙の生命の半分が死滅します。(人間の消滅しか描かれていませんが、動物たちも消えてるんですかね?)

しかも、消え方がえぐい。
体の端から砂みたいにサラサラ~っと崩れていくんです。
これ、絶対怖いでしょ。消えるほうもそれを見ているほうも。

しかも、当然、体の方が先に砂化してしまうと身体機能が停止するんで、ある瞬間からフッと生命感が顔から消えるんです。
その描写はちょっとしたホラー映画でしたね。
特にスパイダーマンのトム・ホランドがすごい。ぜひご注目ください。

「アントマン&ワスプ」 (2018年)

これぞ、映画

あんなシリアスな終わり方をしたインフィニティウォーの後、こんなコメディぶち込んでくるなんてこのコース料理のシェフはなかなかイカれてますな。

あのポジティブパパ、スコット・ラングが戻ってきました。

物語は「IW」より少し前、「シビルウォー」でキャプテン側についたスコットは政府の監視下に置かれ、自宅を出ることができません。

娘と遊ぶのも家の中。手造りアトラクションで遊ぶ姿が微笑ましいです。
でも、ちょっと家の敷地から足が出ただけですぐにFBIが飛んでくる始末。

そんな彼ですが、妻を取り戻したいピム博士に拉致され、量子トンネルを作るために必要な装置を手に入れる手伝いをさせられます。

正直、ピム博士の言ってることは1ミリも理解できません。なんで海の上で原子レベルまで小さくなってしまった妻が遠く離れた場所から会いに行けるんでしょう。

まあ、それはそれ。
ちなみにピム博士の妻ジャネットを演じているのがMichelle Pfeiffer。
またしても90年代レジェンドの登場です。
しかも、還暦を超えてもなおお美しい。

さて、装置を手に入れようとしたスコットたちですが、そこに邪魔者が現れます。
「サンダーボルツ」にも登場したゴーストことエイヴァです。

これがめっちゃかっこいい。
本当に視覚的に楽しませてくれますね、「アントマン」シリーズは。
厨房でアリサイズになったピムの娘、ホープが厨房で戦うシーンもワクワクします。
これぞ、映画。

「マトリックス」シリーズでモーフィアスを演じているLaurence Fishburneも出演。
いい奴かと思いきや悪い奴で、かといってラスボスでもないという中途半端な立ち位置。

本作にはラスボスっぽいラスボスがいないんですよね。
そこがまたMCUテンプレートに嵌らない、自由な楽しさの元なのかもしれません。
登場人物たちが物語的な「役割」に捉われず、ちゃんと1人の人間として生きているんですね。

もちろん、今作にもスコットの親友ルイスが登場し、例の「芸」を見せてくれます。
日本語吹き替えはお笑いコンビ、ブラックマヨネーズの小杉竜一さんが担当され、こちらも機会があればぜひ聞いていただきたいですね。

最後は自ら量子トンネルに入り、妻ジャネットを連れ戻すピム博士。
ジャネットはエイヴァを痛みから解放します。
(そしてエイヴァはこの後、CIA長官ヴァレンティーナに雇われ、闇の工作員として働き、「サンダーボルツ」へと繋がります)

一方、スコットはやっと2年間の監視生活から解き放たれます。
(FBIがチョロすぎる気がしますが、ジミー・ウー捜査官はなかなか愛すべき人物で、ドラマ「ワンダ・ビジョン」にも登場します)
さっそくピム博士やホープ、ジャネットと共に、ルイスのバンに搭載された小型量子トンネルを使って実験を行ないますが、実験中、例のサノスの指バッチンによりピムたち3人が消滅。
スコットは量子トンネルに閉じ込められ、「さあ、どうなる?」というところで終劇。

全体的にツッコミどころは多い(小型研究所はかなりブンブン振り回されちゃっているけど、中に入っている人や物はぐちゃぐちゃにならないのか、とか)作品ですが、それをノリと見た目の面白さで突破する勢いがあります。

「キャプテン・マーベル」 (2019年)

全体的に懐かしいノリ

インフィニティサーガもいよいよ残すところあと3作品となりました。

今作もサノスの指バッチン後ではなく、過去の話、それも25年ほど前に遡ります。

地球から遠く離れた惑星ハラで生活するヴァースという女性ソルジャーは、任務中、囚われの身となります。
なんとか脱出したヴァースがたどり着いた先は地球。
そこで若き日のニック・フューリーと出会い、強力なエネルギーを手に入れようとする元上司のヨンと戦うという話。

劇場公開時、「うわー、ポケベル使っているなんて、ずいぶん前の話なんだなー」と思って観てましたが、1995年ってことは私が大学生くらいの頃?と気づいて、自分がジジイになったことを改めて思い知らされました。

しかし、この映画が恐ろしいのはそれだけではありません。
なんとサミュエル・L・ジャクソンが全編若い頃の姿で出ているのです。

マイケル・ダグラスも「アントマン」で若い頃の姿を見せていますが、昔はこういうのを特殊メイクでしか表現できず、最近ではCGでできるようになったとは言え、膨大な時間とお金がかかると聞いたことがあります。
サミュエルの若造りに一体どれだけお金と手間がかかっているのかと考えるとほんとにゾワゾワしますね。

監督はAnna BodenとRyan Fleck。

MCU初の女性ヒーロー単独主役作品となる本作は、舞台だけじゃなく、テイストも90年代ふう。
全体的に懐かしいノリに満ち溢れています。

ニックが上司との何気ない会話でニセモノと見破るシーンなんてまさに90s。

キャプテン・マーベルことヴァース(=キャロル・ダンヴァース)を演じているのは、Brie Larson。
きれいなんだけど、どこかチャーミングで、まさにこの役を演じるために生まれてきたような人だと思いました。
若い頃の鈴木京香さんを思い出しましたね。

その上司であり、宿敵となるヨンを演じているのがJude Law。
本当ならヒーローの誰かを演じていてもおかしくないイケメンビッグネームをこんな役に使うなんて贅沢ですね。

その2人の対決も「えっ、コレで終わり?」というようなあっけない結末となっています。

他に見所としては、すでに「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」で登場しているロナンが出てくることでしょうかね。

キャロルの親友マリア・ランボーの娘モニカはその後、ドラマ「ワンダビジョン」にも登場し、そこで能力をつけてマーベルズでキャロルと合流。

最初は敵として現れるも最後は友人関係となるスクラル人タロスは「スパイダーマン:ファーフロムホーム」、そしてドラマ「シークレットイノベーション」にも登場します。

「アベンジャーズ/エンド・ゲーム」 (2019年)

アベンジャーズというバンドのベスト盤

インフィニティーサーガは次の「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」までの23作品ということになっていますが、「ファー・フロム・ホーム」はエピローグ的なものなので、実質、この作品が最終章、クライマックスということになります。

上映時間はなんと181分。3時間半!
私は公開初日に六本木のTOHOシネマズのレイトショーで観ました。
確か12時くらいからのスタートだったと思います。
開始があまりにも遅い時間だったので、その前に「キングダム」の1作目を観てしまいました。
結構、「キングダム」が良かったので、「もう帰っちゃっおうかな」と思ったほどです。

監督は「インフィニティ・ウォー」に引き続き、ルッソ兄弟。
かなりのプレッシャーだったと思いますね。

物語は指バッチン(デシメーション)の直前、ホーク・アイことクリント・バートンが自宅の庭で家族団らんのひと時を過ごしているシーンから始まります。
パッと目を離した隙に自分以外の全員が消えてしまうバートン。
そりゃ、闇落ちしても仕方ないよねという気持ちになります。
ただ冷静に考えてみると(「アントマン2」もそうですが)、ニューヨークにサノスの手下が現われて大暴れしているわけですよ。
いくら現場を離れたとはいえ、誰かに連絡くらいするんじゃないかと思うんですよね。
あるいはテレビもネットも見ないのか。
まあ、でも、このシーンがデシメーションの説明とバートンの置かれている状況を同時に説明しているのは上手いですね。
のちにアベンジャーズが消失した人々を元に戻すのに成功した時も、家族からバートンに電話がかかってきて、状況の説明に使われています。
つまり、バートン家を、消失した人々の代表として、その状況と感情を表現しているのです。
本作では、消失した人々を取り戻すのが物語の中心となっているにも関わらず、実は回復が成功した瞬間の表現は結構、あっさりしているんですよね。
それは、流れ的にサノスvsアベンジャーズの戦いに集中させたいというのもあるでしょうし、予算の関係で描けなかったのかもしれません。
あるいはそのあたりをちゃんと描くといろいろリアリティの問題も出てくるからわざと端折った可能性もあります。
(いちおう、次の「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」で復活の瞬間をチラッと見せています)

そして場面は一気に飛んで宇宙へ。
ネビュラ以外、全滅してしまったアイアンマンチームは帰りの燃料も乏しく宇宙を彷徨っていました。
2人でテーブルゲームに興じるトニーとネビュラ。
なんだかとても癒される場面です。

ネビュラは今回、結構重要キャラになっているんですが、サノスに厳しく育てられ、肉体のほとんどをサイボーグ化されてしまったという悲劇設定や、最初の頃のガモーラ絶対殺すマンから一転、しだいに人の心を取り戻していくというギャップからかなりおいしいキャラになりましたね。

そして、マスクに内蔵された録画機能を使って、ペッパーへのビデオメッセージを残すトニー。
このビデオメッセージもラストの残された娘に向けたメッセージと対になっているのが上手いです。

コクピットで死んだように眠るトニー。
彼を見つめるネビュラの眼差しがいいですね。
そこに現れるキャロル。
キャロルのおかげでトニーたちは無事、地球に帰還します。(キャロル、便利すぎます(笑))

生き残った者たちの再会。
トニーは疲れもあるんでしょうけど、カリカリしていて、スティーブに辛く当たります。
そこまで言う?みたいな感じですが、2人のアイスブレイクも今作のテーマの一つなので仕方ないですね。

そして、疲れて眠ってしまったトニーを置いて、一行はサノスが隠遁生活を送る惑星へ。
しかし、インフィニティーストーンはすでにサノスによって破壊され、それを聞いたソーが衝動的にサノスの首を刎ねて因縁の戦いはあっけない決着を迎えます。

そして、5年の歳月が流れ、量子の世界から帰還したアントマンことスコット・ラングによって、タイムトラベルを使ってインフィニティーストーン回収大作戦が始まるのです。

私はこの映画を観て、驚きましたね。
というのも、その前年、私は横浜の関内ホールで、「サマータイムマシン・ワンスモア」という劇団ヨーロッパ企画の舞台を観ていたんですが、プロットが結構、かぶっているんですよ。

「サーマータイムマイン・ワンスモア」は、瑛太さん、上野樹里さんの主演で2005年に公開された本広克行監督(「踊る大捜査線」シリーズ)の原作となった「サマータイムマシン・ブルース」というお芝居の続編で、15年ぶりに母校を訪れた前作の主人公たちが、今度は後輩たちも巻き込んで3台のタイムマシンに分乗して過去に遡る話なのです。

私は映画を観ながら、だんだんロバート・ダウニーJr.の顔が中川晴樹さんに見えてきて仕方ありませんでした。
そうなるともう、キャプテン・アメリカは石田さん、ハルクは酒井さん、ソーは諏訪さん、ロケットは土佐さんにしか見えません。
もちろん、アントマン(永野さん)の土下座つきで。
ラストは角田さん演じるサノスが現われて、「ストーンを渡さないと大変なことになりますよ」と言って漠然と脅すんでしょうね。
「それ、おかしいでしょ!」とキレるトニーと、「いやいやいやいや」と言いながら半笑いするキャプテンがじゃれあう姿を想像するだけで、顔がニヤけてしまいます。

しかも、なんとラストはちゃんと「サマータイムマシン」名物、「自力で帰る」をやっていて、この脚本、本当は上田さんが書いたんじゃないかと思っちゃいましたね。

その一方で、結構、泣けたりするんですよね。
私が一番好きなシーンは、ソーが過去に戻って生前の母と対面するシーン。
そして、トニーと父親が出会うシーンですね。

もうこの作品はアベンジャーズというバンドのベスト盤と言ってもいいんじゃないかという内容になっています。
過去に戻るというギミックを最大限利用して、今までの名場面を再現していたり、過去に出てきた人たちが再登場しているわけです。

エンシェント・ワンの登場は嬉しかったですね。
しかも、ハルクと絡ませることで、科学vsスピリチュアルみたいな構図になるのも好き。

さらにただ再現するだけじゃなく、「実はその裏側で・・・」みたいな「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」的な楽しさもありました。
劇中でも言及されているところを見ると、結構、意識していると思います。
さっき話題に出した「サマータイムマシーン・ブルース」も「バック・トゥ・ザ・フューチャー」リスペクトの作品なので、似ているのは「親」が一緒だからということかもしれません。

音楽アーティストのベスト盤がそうであるように、すべての過去作が網羅できているわけではありませんが、サーガの最終章としては申し分のない出来。
そして、自分的にはMCUはここで終わらせるべきだったのではないかと思っています。

ラストシーンは人生をやり直したキャプテンとカーターのダンスシーン。
最先端技術で、超巨大フランチャイズ作品のサーガがまるで60年代のハリウッド映画のような締めくくり方をしたのは感慨深いものがありましたね。
そして、最後にジャズを流しておけばと映画ってなんとなく「いい作品だなあ」と思わせる効果があるというのもわかりました(笑)。

「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」 (2019年)

ボーナストラック

「エンドゲーム」がベストアルバムだとすれば、この作品はボーナストラックみたいなものですね。

トム・ホランド版としては2作目になる「スパイダーマン」。
監督は前作と同じジョン・ワッツ。

今回は学校のヨーロッパ研修旅行が舞台。
もちろん、ピーターはヴィランやニックたちに邪魔されて旅行を楽しむ余裕もありません。

ヒロインのMJとの恋バナも絡んだりして、いい感じの青春映画になっています。
エンドクレジットのポップな感じも好きです。

ただ、もう一つのテーマとして、トニー・スタークの不在というか、父的な存在の喪失があり、そのせいでなんとももやっとした話になっています。

あと、一番のモヤモヤポイントは、劇中のニックとマリア・ヒルが「キャプテン・マーベル」に出てきたスクラル人扮するニセモノだったというオチ。
よく見れば2人の言動は最初からちょっといつものノリと違っていて、違和感があるのですが、映画館で観た時は「そのオチはないだろう」と憤慨したのを覚えています。

こういう変装能力ってほんと気をつけて使わないとダメですね。
便利だし、うまくやればいい話になるんですが、使い方によっては台無しになってしまいます。

まあ、それを知った上で観れば、ハッピーが活躍したり、MJとの甘酸っぱい恋はアオハル度高しで悪くないんですけどね。
ピーターたちといっしょにヨーロッパ旅行をしているような気分も味わえますし。

ラストは今回のヴィラン、ミステリオ(演じているのは「ドニー・ダーコ」などに出演しているJake Gyllenhaal。いつの間にか日本では「ギレンホール」から「ジレンホール」読みが主流になっていたようです)によって、ピーターがスパイダーマンだということがバレ、さあ、どうなるという引き。

なんかソニーピクチャーズが「スパイダーマンはうちの子ですから」感を出しすぎなのがすごく気になるんですよね。
一方でマーベルも「いやいや、うちの子ですよ」感を押し付けていて、その結果がこのモヤモヤ感なのかと。

というわけで、以上、MCUインフィニティーサーガ全23作品の感想をダラダラと書き連ねてまいりました。

1本の独立した映画が束になって1つの大きな話を作るというのは面白い試みだったと思いますが、みんながみんなこれをやりだして、「またか」という気分になってきたのと、だんだん「1つの大きな話」に比重がかけられ、「1本の独立した映画」がおろそかになってきているのはいただけませんね。

あと、インフィニティーサーガは本数は多いけど、映画だけで完結していたというのがよかったです。
続く、マルチバースサーガ編もやろうかと思っていますが、ドラマシリーズが混じってきているのでちょっとめんどくさい。

 でも、時間があれば2026年の「アベンジャーズ」最新作に向けてまとめておきたいとは思っています。

それでは、また。

MCU関連については、↓でも書いておりますので、もしよろしかったらどうぞ。


















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