【企画】切り抜き白鉛筆(2022.6〜2022.12)
敵わない。
でも敵う必要はない。
この人は、味方だ。
前途洋々とした未来に向かい、船を漕ぎ出していた頃とは違う。荒波の危険を知り、飢えの恐怖を学び。その都度、航路を選び、積荷を増やしてきた。もはや引き返すことも、投げ捨てることも出来はしない。
錨を下ろしたのだ、この地に。
答えない。答えないことが、答えになってしまう。
「これ、無料で配っているんですか」
訊ねると、売り子はにこやかな笑みで「はい」と頷いた。
「何のために?」
「宣伝です」
「いや、でもこれ……」机上に置かれた紙を一枚取り上げ、まじまじと見つめる。「白紙、ですよね」
「白紙です」
当然、とでも言うように売り子は頷く。
自分が女であること。
その価値を利用している自覚はあった。
しかし、こんなものは女として生まれた以上、自然と身につく嗜みだった。
可愛げ、か弱さ、母性、色香。取り立てて器量良しでなくとも、この身体が曲線を抱く以上、否が応でもそれらは纏わりつく。ならば領分を侵さぬ程度に利用するのは、半ば無自覚に会得する習性、生きる術だ。
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動画サイトで見かける『切り抜き』なるものを、自作の文章でやってみたものです。
第一弾はこちら
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タイトルから作品に飛べるよう、リンクを貼っておりますので、もし気になったものがございましたら、覗いてみていただければ幸いです。
