【企画】切り抜き白鉛筆(2021.7〜2021.12)
本当は彼女だって、自ら死を選ぶことなんてしたくはないのだろう。でなければ、わざわざ僕とこんなやりとりなどせず、すぐにでも身を投げ出しているはず。
望んだわけでもなく、ましてや衝動的な行動でもなく。熟考の末、これしかないと思ってやっているのだ。
理知的に考えた末での、選択。
それを覆せるのは、倫理ではなく論理。
妻が出て行ったため、独り洗濯物を干している。
洗濯かごの分量も少なく、私一人分。物干し竿に取り付けたピンチに、下着や靴下、ハンカチを吊るしていく。ピンチ全体の重心が傾かぬよう、満遍なく配置しなくてはならず、下着を干すにもかようにコツを要するものか、と感心する。
「今更?」
妻がいたなら、そう罵られてしまいそうだ。
いかに家のことを任せきりだったか、窺い知れるというものだろう。今後はこれも私のタスクとなる。逐一、感心してなどいられない。
「やつらにとっては、こちらが空じゃ」
殺してやりたいな、と思う。
あの花形君に抱いてもらった挙句その遺伝子を胎内に宿せるなんて。私もあれだけ若く可愛ければそれが叶ったのだろうか。
どうして私じゃなくて、あの女が。
殺してやりたい。
僅かながら、声が震えている。
こちらの反応に、拒絶の色が滲んでいないか、窺う目つき。
そうか。
私もまた、この人にとっては火星の住人か。
「子供以外にはないの?」
君が問う。
「何が」
「あなたが宇宙人であることで、なにかイレギュラーが起こりうること」
「まぁ、ないかな。多少生態系が違うだけだけで、一般的な生活を送るのに大きな影響はない」
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動画サイトで見かける『切り抜き』なるものを、自作の文章でやってみたものです。
タイトルから作品に飛べるよう、リンクを貼っておりますので、もし気になったものがございましたら、覗いてみていただければ幸いです。
