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【掌編】違法の冷蔵庫


「課長。うちの妻です」

休日の街中、偶然出会った花形君から紹介されたのは、若く可愛らしい女性だった。高校生と言っても通用しそうな童顔だが、その下、大きく膨らんだお腹が彼女が人妻であることを主張している。

「あら。もしかして、プレママさん?」
訊ねると、「ご報告が遅れまして」と花形君は整った顔を恥じらいで歪めた。

おめでとうだの予定日はいつだのとやりとりを交わし、二人と私は別れる。幸せな夫婦の後ろ姿が、人混みに消えていく。

殺してやりたいな、と思う。

あの花形君に抱いてもらった挙句その遺伝子を胎内に宿せるなんて。私もあれだけ若く可愛ければそれが叶ったのだろうか。

どうして私じゃなくて、あの女が。
殺してやりたい。

はっと我にかえり、私はその不謹慎で不道徳な感情を、心の中の一番冷たい場所に仕舞い込む。黒い息吹が花開き実を結ぶ前に、温度を奪って封じ込める。

「おめでとう」

ひやりとした冷気を胸内に感じながら、私は人混みに向かって呟いた。


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この記事は、こちらの企画に参加しています。


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