「うちの母をよろしくお願いします」って言われても、まずあなたもよろしくして。
「うちの母をよろしくお願いします」
一瞬、親想いの娘さんだな、と感じるフレーズ。
でも、ときどき思う。
「ご家族の行動が伴ってないんですが…」
よろしくって、いったいどんな意味で
言ってるの?って。
しっかり者のおばあちゃんと、距離をとる娘夫婦
80歳代前半のおばあちゃん。
認知症はなく、身の回りのことはほとんど
自分でできている。
「歯医者に行きたい」
「目がかすむから眼科に行きたい」など
体の不調を自分の言葉で伝えられる人。
キーパーソンは娘さん。
忙しさを理由に、なかなか受診に同行
しようとしない。
「職員さんで連れて行けないんですか?」と
聞かれたことも何度もあった。
娘さんには仕事も家庭もある。
簡単に時間を作れないでしょう。
でも…私たち職員は感じとっていた。
それだけではない母親との距離があること。
面会のたびにご主人も一緒。
ご主人のその雰囲気もどこか冷たく、
張りつめた空気が流れてる。
そして、ときには部屋から娘さんとおばあちゃんが
大きな声で言い合う声も、廊下に漏れてくる。
きっと、そこには何かしらの背景がある。
そう感じながらも、そこには踏み込みません。
「介護職」としてできることと、
「家族の関係」はまったく別のものだから。
※施設によっては職員が受診に連れて行く場合もありますが、
この施設では、ご家族での対応をお願いしていました。
「私の育て方が悪かったのかしら…」
ある日、おばあちゃんが静かに口にした。
「私の育て方が悪かったんですかね…」
思わず、私は本心を言った。
「娘さんはもう十分に大人ですから」
80歳代の母が、50歳代の娘を憂う。
そんな事を母親に言わせてしまう
娘さんの対応。
胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
母親って、子どもがいくつになっても、
どこかで自分のせいと思ってしまうみたい。
介護の現場でよく見る「親と子のすれ違い」。
どちらが悪いわけでもない。
でも、時間だけがすれ違いを深めていく。
私たちにできるのは、そっと横にいることくらい
「よろしくお願いします」
帰り際に娘さんが言う。
娘さんからのそれは、
全てを丸投げしようとする言葉に
聞こえてしまう。
私たち職員にできるのは、おばあちゃんを
支えることと、寄り添うこと。
結局、家族のことは家族にしかできない。
私たちは生活を支えることはできても、
心のすき間までは埋められない。
いつもフラットに
でも、それでも。
家族じゃない誰かが気にかけてくれてるって、
それだけで人は少し元気になれる気がする。
私もそんなときは、素直に嬉しい。
だから私は、今日も「なんでもない顔」で、
いつも通り声をかける。
「おはようございます、今日も顔色いいですね〜」
「朝ごはんのメニュー、なんでした?」
今日も現場は、変わらずバタバタしてます。
それでも、おじいちゃんやおばあちゃんの朝が
穏やかに始まるなら、それでいい。
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