人工授精と鍼灸|始める時期・頻度・注意点
人工授精(AIH)と鍼灸を併用する際の始める時期・頻度・注意点を、東洋医学の考え方を交えて解説します。
結論
人工授精(AIH)に取り組む方が鍼灸を併用する場合、当院では体外受精の方と同様に、3ヶ月〜6ヶ月ほど週1回程度の通院を目安にご案内することが多いです。人工授精から体外受精へのステップアップを見据えて、体質改善を早めに進めていく方針を取ることもあります。
本記事では、始める時期・頻度の考え方と、注意点を東洋医学の視点も交えてご紹介します。
このページが対象とする人
人工授精に取り組んでおり、鍼灸を併用してよいか迷っている方
人工授精段階での鍼灸の通院頻度・時期を知りたい方
人工授精から体外受精へのステップアップを見据えている方
(上記は検索傾向からの推測であり、断定するものではありません)
なお、本記事は特定の症状や疾患の診断・治療を目的としたものではありません。ご自身の状態に関する判断は、必ず医療機関にご相談ください。
用語の説明
人工授精(AIH):採取した精子を子宮に注入する方法。タイミング法よりも一歩進んだ治療として選択されることが多い方法です
医療機関で一般的に行われる検査・治療
人工授精のスケジュール・方法は、医療機関の医師が個々の状態に応じて決定するものです(要確認:詳細は受診先の医師にご確認ください)。一定回数(一般的には数回程度とされますが医療機関により異なります)を経ても結果が出ない場合、体外受精へのステップアップが検討されることがあります。
東洋医学的な考え方・理論
東洋医学は、何千年にもわたる臨床観察の蓄積から生まれた、独自の体系を持つ医学です。西洋医学とは異なるパラダイム(体系)ですが、劣るものではありません。日本でも、984年に丹波康頼(鍼博士)が編纂した『医心方』に鍼灸の章が含まれ、江戸時代には鍼科が幕府の公式な医療分野として位置づけられていました。「不妊」という概念も現代になって生まれたものではなく、江戸時代の鍼灸伝書『療治之大概集』の「婦人門」には、「子宮が長い間冷えてしまって不妊となっているものは、中極・三陰交・子宮(穴)が良い」という記載が残っており、当時すでに体系立った経穴治療が確立されていたことが分かります(要確認:症状別の治療方針をまとめた文献であり、個々の患者の診療記録ではありません)。詳しくは「不妊鍼灸とは|できること・できないことを正直に解説」でもご紹介しています。
東洋医学では、体を巡る「気血(きけつ)」の巡りや、生殖の力の源である「腎精(じんせい)」を大切にしてきました。人工授精に取り組む中での緊張やストレスは、気血の巡りを滞らせる要因の一つと考えられており、この巡りを整えていくことが、不妊鍼灸の基本的な考え方です。
(上記は東洋医学における伝統的な理論・考え方であり、現代医学的に検証された生理学的機序ではありません。)
鍼灸で行うこと
不妊鍼灸は、東洋医学の考え方に基づき、体調を整えることを目的とした施術です。人工授精のスケジュールそのものを変えたり、成功率を保証したりする施術ではありません。
研究で分かっていること
体外受精と併用した鍼灸の効果については、系統的レビューで結果が分かれており、研究間で一致した結論が出ていない状況です。詳しくは「不妊鍼灸に効果はある?研究で分かっていることと限界」をご参照ください。人工授精に特化して鍼灸の効果を検証した質の高い研究は、体外受精と比較して少なく、現時点で確立したエビデンスは確認できていません。
まだ分かっていないこと
人工授精段階における鍼灸併用の効果を、厳密に検証した研究は限られています
人工授精からのステップアップのタイミングと、鍼灸の関わり方の関係についても、質の高い研究は確認できていません
これらを踏まえ、本記事では「鍼灸によって人工授精の成功率が上がる」といった断定的な表現は使用しません。
当院での対応
当院では、人工授精段階の方にも、体外受精段階の方と同様に、3ヶ月〜6ヶ月ほど週1回程度の通院を目安にご案内することが多いです。
人工授精から体外受精へのステップアップを見据えている方も少なくないため、その場合は体質を整えることを優先的に行っていく方針です(詳細は「渋谷の不妊鍼灸|体外受精・人工授精・自然妊娠の段階別サポート」をご参照ください)。

匿名症例・院内データ
当院では2019年〜2025年の7年間に、374名・延べ425症例の妊娠に至った記録を院内で集計しています。このうち人工授精併用は7.3%でした(詳細は「東京で不妊鍼灸を探している方へ|後悔しない鍼灸院の選び方」の記事でご紹介しています)。
(このデータを読む上での重要な前提:本データは「妊娠に至った症例」のみを集計したものであり、妊娠に至らなかった方の人数は含まれていません。そのため、妊娠率や施術効果を示すものではありません。)
通院の目安
人工授精段階では、3ヶ月〜6ヶ月ほど週1回程度の通院を目安にご案内しています。実際のプランは初診時のカウンセリングをもとに個別にご提案いたします。
費用
はり・きゅうの施術は、原則として健康保険の対象外であり、全額自己負担となります。当院の費用は以下の通りです(税込)。
項目 費用 初診料 5,500円 鍼灸・手技療法・整体(1回) 8,000円
初回合計 13,500円 2回目以降 8,000円
費用の詳細は「不妊鍼灸の料金はいくら?費用・回数・医療費控除を解説」をご参照ください。
リスクと注意点
鍼灸施術には、一般的に以下のようなリスクが伴う可能性があります。
痛み:刺鍼部位に一時的な痛みを感じることがあります
内出血:刺鍼部位に内出血(あざ)が生じることがあります
倦怠感:施術後に一時的なだるさを感じる方がいます
人工授精後は、妊娠の可能性がある身体の状態でもあるため、鍼灸院と主治医の双方に現在の状態を共有し、相談しながら進めることが重要です。
医療機関への受診を優先すべきケース
人工授精の回数・今後の方針(体外受精へのステップアップ等)についての判断は、必ず医療機関の医師にご相談ください。鍼灸は医療機関での検査・診断・治療の代わりになるものではありません。
よくある質問
Q1. 人工授精の際、鍼灸はいつから始めればよいですか?
明確な基準はありませんが、当院では体外受精の方と同様、3ヶ月〜6ヶ月ほど前から週1回程度の通院をおすすめしています。
Q2. 人工授精から体外受精へのステップアップを考えていますが、鍼灸の内容は変わりますか?
体へのアプローチ自体を大きく変えることはありませんが、ステップアップを見据えている場合は、体質改善を優先的に進めていく方針を取ることが多いです。
Q3. 人工授精と鍼灸を併用すると、成功率は上がりますか?
人工授精に特化して鍼灸の効果を検証した質の高い研究は少なく、成功率が上がるという医学的なエビデンスはありません。
Q4. 人工授精後、鍼灸を受けても安全ですか?
人工授精後は妊娠の可能性がある身体の状態のため、鍼灸院と主治医の双方に状態を共有しながら進めることが重要です。
Q5. 東洋医学では人工授精の時期をどう捉えていますか?
東洋医学には人工授精という現代医学的な概念そのものはありませんが、気血の巡りを整え、緊張やストレスに向き合う体を支えるという考え方に基づき、施術を行っています。
まとめ
人工授精に取り組む方の鍼灸併用について、当院では体外受精の方と同様、3ヶ月〜6ヶ月ほど週1回程度の通院をおすすめしています。人工授精の成功率を鍼灸が保証するものではありませんが、気血の巡りを整え、緊張やストレスに向き合う体を支えるという、長い歴史を持つ東洋医学の考え方に基づき、施術を行っています。人工授精の回数や今後の方針については、必ず医療機関の医師にご相談ください。
参考文献
全国健康保険協会「はり・きゅう、あん摩・マッサージのかかり方」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3080/r140/
『療治之大概集』(江戸時代の鍼灸伝書、鍼灸医学典籍大系所収。要確認・一次資料での確認を推奨)
執筆者/監修者/更新日
執筆:福本晋平
監修:福本晋平(ふくもと治療院 院長・はり師/きゅう師)
更新日:(公開時の日付を記載してください)
