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「仕事が速い雑な人」が出世して、「丁寧な完璧主義者」が損をする理由──それは「正しさ」ではなく「時間軸」の摩擦かもしれない

職場でふと、こんな理不尽さを感じることはないでしょうか。

資料作成を頼まれたとき、あらゆるリスクを想定して、数字の裏付けを取り、レイアウトを整え、完璧な状態で提出するあなた。
一方で、とりあえず形だけ整えて、中身は誤字脱字だらけ、根拠も曖昧なまま「できました!」と提出する同僚。

不思議なことに、評価されるのは後者だったりします。
「仕事が速い」「スピード感がある」と賞賛され、あなたの手元には、その後始末や修正作業が静かに積み上がっていく。

「なぜ、丁寧な仕事をする人が損をして、雑な人が評価されるのか」

心が折れそうになるその瞬間、私たちはつい
「上司に見る目がない」「あの人は要領がいいだけだ」
と、人へと矢印を向けてしまいがちです。

けれど、少し視点を変えてみましょう。
そこにあるのは、誰かの悪意や無能さではなく、組織という生き物が持つ「時間軸」の摩擦という、構造的なバグなのかもしれません。

評価されやすい「速さ」、見えにくい「丁寧さ」

まず、残酷な現実を一つ確認しなければなりません。

「雑だけど速い」仕事は、組織のOS(オペレーティングシステム)にとって、非常に検知しやすい信号を出しています。
「提出された」という事実が物理的に目の前にあり、スピードという数字で計測が可能だからです。

一方で、あなたが費やした「丁寧な仕事」の正体は何でしょうか。

それは、
・未来に起きるかもしれないトラブルを未然に防いだ時間
・読む人が迷わないように整えた配慮

つまり、あなたの仕事の価値は
「何も問題が起きなかった」という「平穏」
として現れます。

多くの組織の評価システムは、この
「起きなかったこと(マイナスの不在)」
を感知するセンサーを持っていません。

派手な火消しは賞賛されますが、ボヤすら起こさせなかった防火活動は、誰の目にも留まらない。
これが、あなたが感じている「損」の入り口です。

しかし、ここまではまだ「認知」の話。
もう少し奥にある「問い」の話をしましょう。

対立しているのは「人」ではなく「問い」

丁寧なあなたが報われない最大の理由は、
「あなたと組織が、異なる『時間軸』の問いを解いている」
ことにあります。

雑だが速い同僚や、それを評価する上司は、いまこの瞬間、以下の問いを解いています。

  • 短期の問い(狩猟)
    「どうすれば、今のチャンスを逃さずに獲物を捕れるか?」

この問いに対しては、「速さ」こそが正義であり、丁寧さは「遅れ」という悪になります。

一方で、あなたは無意識のうちに、別の問いを解いています。

  • 長期の問い(農耕)
    「どうすれば、来年の私たちが困らないか? 負債を残さないか?」

あなたの丁寧さは、未来の組織を守るための行動です。

しかし、組織全体が「短期の問い」に支配されているとき、
あなたの答え(丁寧な仕事)は、「今の質問に答えていないノイズ」として処理されてしまいます。

これが、話が噛み合わない本当の理由です。

あなたが劣っているわけでも、相手が悪意を持っているわけでもない。
ただ、「今日を生きるための生存本能」と「未来を作るための進化圧」が、同じ場所で摩擦を起こしているだけなのです。

対立しているのは「人」ではなく「時間軸」。すれ違いの全体像

正しさの呪縛を解く

では、どうすればいいのでしょうか。

「評価されるために、私も雑に仕事をすべきか?」
というと、それは違います。

もし全員が「短期の問い」だけを解くようになれば、その組織は遠からず、積み上がった「技術的負債」や「信用の毀損」によって崩壊するでしょう。

あなたのその丁寧さは、組織が長期的に生き残るために必要不可欠な防波堤です。

大切なのは、「自分の正しさ」で相手を殴らないことです。
「あいつの仕事は雑だ」「私が正しいのに」と思ってしまうと、あなたは孤独な正義漢になってしまいます。

そうではなく、
「ああ、あの人は今、短期の問いを解いているのだな」
と認識すること。

そして、
「私は、長期の問いを担当しているのだ」
と自覚すること。

自分が、組織というOSの中で「どの時間軸を担当しているか」を理解するだけで、あの焦燥感は少しだけ和らぎます。

評価されない悲しみは、その仕事が無価値だからではなく、
単に「時間軸が接続されていない」から生まれます。

自分を責めるのをやめて、少しだけ「しくみのスキマ」を覗いてみませんか。
そこには、あなたの仕事が「正しく」扱われるためのヒントが隠されています。

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