ぼくと彼女はおかえり、ヨコハマ展へ行く

 ぼくと彼女は『おかえり、ヨコハマ』展へ行く。前回の記事(「ぼくはもう学生じゃない」)で横浜美術館の『おかえり、ヨコハマ』展へ行ったことに触れたので、せっかくなので今回はその話を書こうと思う。何が「せっかくなので」なのか分からないが、まあ、ぼくが社会人になってから初めて行った展覧会なのでということで。『おかえり、ヨコハマ』展はぼくらが一般料金を払って入った記念すべき初の展覧会なのだ。

 4月上旬の土曜日。JR桜木町駅の北改札前で待ち合わせ。この日、ぼくは少し緊張していた。というのも、社会人になって由梨(彼女)がキャラ変していたらどうしようと不安だったからだ。ぼくらは大学2年生の時に首都圏の大学の放送サークルの懇親会で知り合った。同い年、同じ学年である。どちらも今年の4月から新社会人になった。ぼくらが社会人になってからお互いに会うのはこの日が初めてだった。

 まあ、LINEでやり取りしている限りでは特に変わりないけどな。ただ、服装が変わっている可能性はある。かばんとか靴とかも。とんでもなく派手なメイクしてきてたらどうしよう。ぼくも軽くメイクしていったほうがいいのだろうか。ちなみにですが、メンズビオレ ONE BB&UVクリームは2025年3月31日をもって製造を終了しました。くそっ。しょうがないので今後は uno フェイスカラークリエイターを使うことにします。

Before/Afterで表情を変えているのは反則だと思う

 集合時間5分前。駅のトイレから出た時に人波にのまれたせいで自分がどこにいるのか分からなくなってしまい、間違えて南改札から出てしまった。ぐるっと回って北改札前へ。由梨はまだ到着していないっぽい。ドキドキ。ソワソワ。待つこと1~2分。おや? 由梨っぽいのがやってきたぞ(ぼくは近眼です)。……見慣れたアウターだな。顔も変わらず、かばんも変わらず。靴も見覚えがあるやつだ。3月までの由梨と変化がなさすぎて逆に怪しい。

 みなとみらいの「動く歩道」(ぼくがいつも「歩く歩道」と言い間違えて由梨からツッコまれるやつ)へ向かう途中、ぼくが由梨の全身をジロジロ見ていると、由梨が「なに? なんかおかしい?」と聞いてきたので、ぼくは「社会人になってキャラ変してるんじゃないかと不安だったけど逆に何も変わってなくてびっくりした」と正直に告げた。そうしたら由梨はめちゃくちゃ笑って、「(ぼくの下の名前)くんこそ何も変わってないじゃん」とツッコんできた。まあたしかに、変化のなさ具合だとぼくの圧勝です。考えてみれば自分だって何も変わってないわけで、就職して数日経ったぐらいで他人が変わると思うほうがおかしいのだ。なお、由梨は「でも肌着は新しいやつだよ」と言ってきたけどそれは知りません。

 ……えっと、覚えていることをこうやってぜんぶ書き連ねていると長文になって、書く側も読む側もすべてのひとが不幸になるので、さっさと横浜美術館へワープします。

 横浜美術館はみなとみらい線みなとみらい駅の近くにある美術館だ。2021年3月からずっと長期休館していたので、ぼくは横浜美術館には行ったことがなかった。ほら、ぼくは由梨と付き合ってから美術館とかに行くようになった人間ですからね。ただ、由梨は子どもの頃によく家族と一緒に横浜美術館に行っていて、去年、横浜美術館が部分的にリニューアルオープンした時にも家族と一緒に行ったらしい。その話を聞いた時、ぼくは「世の中にはそんな仲の良い家族がいるのか」と若干引いた。横浜美術館は今年2月に完全リニューアルオープンし、その記念すべき一発目の展覧会がこの度の『おかえり、ヨコハマ』である。逆に言うと、リニューアル後一発目の展覧会だからこそ、この展覧会のタイトルは『おかえり、ヨコハマ』なのである。

 横浜美術館はまず外観がすごかった。大国の大使館みたいな感じ。いや、行ったことないので知らないですけど。あるいは、フランスの科学博物館みたいな感じ。こちらも行ったことないので知らないですけど。

横浜美術館の外観(上部のみ)

 中に入りましょう。とりあえず混んではいないみたい。1階にチケット売場があって、2階が階段の踊り場みたいになっていて、3階に展示室がある。「議事堂」というか「裁判所」というか、建物自体にそんな威厳があって、これまで行ったことがあるどの美術館とも違う雰囲気だった。ちょうどいい広さの部屋がいくつも並ぶ使い勝手のよさと、建物全体のスケールのデカさが同居していて、ぼくとしては好きな雰囲気かな。

踊り場から天井を激写
3階の廊下も激写

 『おかえり、ヨコハマ』展は横浜美術館の収蔵作品(+よそから借りてきた作品)を展示する展覧会だ。いわば「寄せ集めの展覧会」である。縄文時代から現在まで時代ごとに章を区切って、合計8つの章で成り立つ。ぼくはいつも由梨に連れられて美術館に行っているだけなので、「好きな美術展」も「好きな美術ジャンル」もないのだが、強いて言うならこういう「寄せ集めの展覧会」は好きだ。なんかお得感があるじゃないですか。一人の作家をフィーチャーした展覧会だと当たり外れが大きいけど、寄せ集めの展覧会だと試し食い感覚で気楽に作品を鑑賞できるからね。

 もっとも、「1 みなとが、ひらく前」の最初に展示されていた《人面付土器》を「作品」と呼んでいいのかは分からないけど。横浜市鶴見区で発掘された弥生時代の土器らしい。この他にも古墳時代の埴輪だとか、乳幼児のお墓と思われる土器だとかが展示されていて、そうか、当たり前だけど横浜って太古の昔から存在している土地なんだなと感じた。

《人面付土器》(鶴見区上台遺跡) と《盾持人形埴輪》(戸塚区上矢部町富士山古墳)

 同じフロアの「2 みなとを、ひらけ」へ。とはいえ、横浜といえば「弥生時代の土器」とか「古墳時代の埴輪」よりも「黒船来航」のイメージだと思う(?)。というわけで、ペーター・ベルンハルト・ヴィルヘルム・ハイネの《ペルリ提督横浜上陸の図》が展示されていたのには興奮した。3月に由梨と孝彦くん(由梨の弟)と一緒に行った『実録 桜田門外の変』展で紹介されていたやつじゃん! 臨場感があってかっこいい絵だなあと感じていたやつである。……あ、ぼくと彼女と彼女の弟が3人で『実録 桜田門外の変』展へ行った件については少し前に書いたので、お暇でしたらお読みください。

 まさか《ペルリ提督横浜上陸の図》の実物をここで見れるとは思っていなかったので、ぼくは由梨に向かって小さく拍手してしまった。由梨はぼくに「落ち着いて」と冷たく言ったあと、「犬が遊んでる」と言って2匹の犬が走り回っている部分を指さした。この絵を見て真っ先に評価すべきポイントはそこじゃないと思うがなあ。……いや、そこなのか。そこでもいいのか。たしかに戯れる犬たちはかわいいもんな。時代は変わっても犬は変わらず。どの時代でも走って遊ぶし、その様子がかわいい。ついでに言うと、人間も時代が変わっても変わらない。黒船が来航した時、当時の人々はドキドキしたりソワソワしたりしただろうな。今も昔も人間の感情は変わらない。絶対きっとそうであるはずだ。

ペーター・ベルンハルト・ヴィルヘルム・ハイネ(伝)《ペルリ提督横浜上陸の図》

 隣の部屋へ移り、「3 ひらけ、みなと」へ。まずはフェリーチェ・ベアトというひとが描いた絵が展示されてある。そのうちの一つは「生麦事件」の現場を描いた絵で、パッと見、本物の写真に色を付けたやつみたいだ。その隣には金村修というひとが撮った現代(1996年)の生麦3丁目の写真が展示されてあって、この2枚を並べての展示は面白いなと思った。同じ場所の光景とは思えない。かつて歴史的事件があった地にビルや店舗が建てられて、その地の歴史までもが地下に埋もれてしまった感がある。

フェリーチェ・ベアト《東海道の風景、リチャードソン氏殺害の現場》
金村修《Keihin Machine Soul》

 明治時代の花瓶だとか陶磁器も展示されてあって、これが意外と装飾がユニークで面白かったな。カエルの絵が描いてあったり、小さな鳥のオブジェみたいなのが貼り付けられてたりするの。明治時代なんて別にそんなに昔でもないけど(縄文時代や古墳時代と比べたらね)、でも、こういう遊び心があるモノ、現代人もワクワクするようなモノを昔のひとも作っていたんだと知ると、「やっぱり時代が変わっても人間は変わらないんだなあ」と感じてうれしくなる。昔のひとを身近に感じられるっていうか。

宮川香山(初代)《高浮彫牡丹ニ眠猫覚醒大香炉》

 まあ、渡辺幽香というひとが描いた《幼児図》という絵画を見て、由梨が「かわいらしいね」と言っていたのはさっぱり意味が分かりませんでしたけども。ぼくはこの絵から不気味さしか感じないよ。それを口に出して言ったら神経疑われるやつかもと思って言わないでおいたけど、改めてこの写真を見てみても「不気味だ!」としか感じない。うーん……やっぱりぼくがおかしいんですかね? ……まあ、感性はひとそれぞれ違う。これまた時代が変わっても変わらない人間のリアルだ。

渡辺幽香《幼児図》

 「4 こわれた、みなと」へ。一言で言うと関東大震災のコーナーだ。関東大震災というと東京の出来事という感じがしていたけど、当たり前だけど横浜でも甚大な被害があったらしい。圧巻だったのは、中島清之というひとが描いた《関東大震災絵巻》という横長の絵。題名通り、焼け野原となった横浜の街並みが鳥瞰で描かれている。この絵の中に描かれた地域に、いま、由梨の一家は住んでいるんだよなあ。今後またこれと同じような大地震が起きたら……と思うとぼくはゾッとした。

中島清之《関東大震災画巻》
中島清之《関東大震災画巻》

 隣の部屋へ移動、「5 また、こわれたみなと」のコーナーへ向かいます。なぜ「また、こわれた」なのかというと太平洋戦争があったからだ。色んな作品が展示されてあったけど、ぼくが目を引かれたのは松本竣介というひとの《Y市の橋》という絵画である。全部で3枚ある。Y市(横浜市)のある橋を描いているもので、1枚目は1942年、2枚目は1943年、そして3枚目は1946年の「Y市の橋」を描いている。

松本竣介《Y市の橋》

 ぼくが意外に思ったのは、1枚目(1942年)と2枚目(1943年)、つまり戦時中の《Y市の橋》が穏やかに見えることだ。逆に3枚目(1946年)の《Y市の橋》のほうが戦後なのに荒んで見える。ぼくが由梨に「1枚目と2枚目、戦時中の景色にしては暗くないな」と言うと、由梨は「暗い部分はわざと描かなかったんじゃないかな。現実がひどいから逆に」と言ってきた。由梨のその考察が当たっているかは別として、それを聞いてぼくはハッとした。自分にはない視点からの考察だったからだ。たしかにこれは記録写真じゃなくて絵画だもんな。つまり創作物だ。画家がこの絵の題名を「横浜市の橋」でなく「Y市の橋」とぼかしたのは、もしかしたらこのシリーズがフィクションだということを言いたかったからかもしれない(と、あとで由梨に言ったら「鋭いかも!」と褒めてもらいました)。

 さて、続いて「6 あぶない、みなと」のコーナー。1945年8月15日に戦争は終わったけど、だからってすぐに平和が訪れたわけではない。横浜にも占領軍がやってきて、むしろ子どもたちや女性たちは過酷な運命にさらされたらしい。映画を通じて「港の倉庫」「犯罪組織」といった横浜のイメージが現れてきたのもこの頃なのだそうだ。

常盤とよ子《路上》

 真っ暗になっている小部屋では、クリス・チョン・チャン・フイというひとが作った《HEAVENHELL》という短編映画が上映されていた。直訳すると「天国地獄」。2009年に作られたやつらしい。ぼくも由梨も学生時代は放送研究会に所属していたので(違う大学のだけど)、こういう短編映画を観るのは慣れていたりする。「昭和の港町の繁華街」をイメージしたような世界の中をカメラがゆっくり動いていって、そこにいるひとたち(なぜか若者ばかり)がじっとりカメラをにらみ続ける。《HEAVENHELL》はただそれだけの映画なんだけど、ここで描かれている不気味な世界はまさに「天国地獄」と呼ぶにふさわしい世界だなと感じた。ちなみに、《HEAVENHELL》には最後に軽くオチみたいなのがついています。

クリス・チョン・チャン・フイ《HEAVENHELL》

 さあ、「7 美術館が、ひらく」へ。横浜美術館は1989年に開館したそうで、ここではその頃に収蔵された横浜美術館のコレクションの名品が紹介されている。縄文時代の紹介から始まったこの『おかえり、ヨコハマ』展、一気に現代感が出てきましたよ!

 ぼくが思わず「あっ!」と声を上げてしまったのは、横尾忠則の絵が展示されていたからだ。ぼくは横尾忠則が好きだ。一昨年の秋、由梨と一緒に東京都現代美術館の『デイヴィッド・ホックニー展』へ行った時、そこで同時開催されていたコレクション展(おまけで見れるやつ)でたまたま横尾忠則の絵が展示されていた。それを見た瞬間、ぼくは横尾忠則の絵のファンになってしまった。まあ、そこら辺の話はまた後日書こうと思うけど、そういうわけなのでぼくは『おかえり、ヨコハマ』展で横尾忠則の絵に遭遇してびっくりしたし、うれしくなったのだ。

 ま、こんなこと言っちゃなんだけど、横尾忠則の作品とはいえ《Y字路》シリーズにはぼくはそこまで惹かれないんですけどね。でも、改めてこの写真を見ると、やっぱり横尾忠則はいいなって思います。《黒いY字路 11》の右側にコートがハンガーで吊らされているの、不気味ではあるんだけど、でも無邪気なユーモアを感じたりしません?

横尾忠則《黒いY字路 11》

 遭遇してびっくりといえば、マン・レイの写真が展示されていたのにもびっくりした。しかも写真撮影OKでびっくりした。3月に由梨と行った東京富士美術館の『愛しのマン・レイ』展は撮影NGだったからな。その前に行った東京都写真美術館の『TOPコレクション 見ることの重奏』でもマン・レイの写真だけは撮影NGだったし、ぼくはてっきりマン・レイの写真は全世界的に撮影禁止なのかと思っていた。ところが横浜美術館は太っ腹。マン・レイの写真を惜しみなく撮影させてくれる。まあ、女性の裸の写真なので人前で撮るのは気恥ずかしいんだけど……

マン・レイ《メレット・オッペンハイム》ほか

 あとはセザンヌの絵とかダリの絵とかピカソの絵も展示されてましたよ。『おかえり、ヨコハマ』展は混雑している展覧会ではなかったけど、ピカソの絵の前のところではさすがにみなさん足を止めていた。もちろんぼくらも足を止めた。由梨は何度か見たことがあるそうだが、ぼくがピカソの絵の実物を見たのはこれが人生初のはずだ。生ピカソやば。特に《女の肖像(マリ=テレーズ・ワルテル)》がぼくはすごく好き。赤、紫、緑、黄色、オレンジ、ピンク、白……と色遣いがカラフルなのが好き。「ピカソが描いた」と知らされなくてもぼくは「いい絵だ」と感じたに違いない(本当か?)。

パブロ・ピカソ《ひじかけ椅子で眠る女》
パブロ・ピカソ《女の肖像(マリ=テレーズ・ワルテル)》

 由梨が「好き」と言っていたのはハンス(ジャン)・アルプというひとが作った《成長》というブロンズ像で、由梨は子どもの頃から横浜美術館で何度もこれを見てきたらしい。まあ、由梨が好きそうなやつだよな。ぼくは由梨に「感動の再会だね!」と言ってあげたし、自分も興味があるふりして写真を撮ったが、ぶっちゃけ、ぼくはまだこの作品の魅力に気付けていない。

ハンス(ジャン)・アルプ《成長》

 いよいよ、最後の「8 いよいよ、みなとがひらく」へ。このコーナーの展示作品は子どもたちのためにチョイスしたものらしいけど、見る側としてはそこはあんまり関係なかったかな。ルネ・マグリットの絵とかジョアン・ミロの絵とかが展示されてあった(由梨によるとどれも有名な作品らしい)。ぼくが「いいな」と思ったのはマリア・ファーラというひとが描いた《ルームサービス》という3枚の連作で、やっぱりぼくはカラフルな絵が好きだということなんだろうか。ぼくが「あのプリン美味そう!」と言ったら、由梨から「プリンじゃなくてパンケーキじゃない?」とツッコまれた。

マリア・ファーラ《ルームサービス》

 あとは映像作品もいくつか上映されていて、ぼくは《呼吸は自由 12,756.3:日本、希望と再生,1,789km》という作品が気になった。ジュン・グエン=ハツシバというひとが、2011年の東日本大震災でまだ瓦礫もたくさん残っている被災地の中を走るというランニング映像だ。正直言って、最初は不謹慎だと思った。被災地を自分のアートのために利用していると思えたからだ。でも冷静に考えてみると、これはこの時にしか撮れない光景を記録した歴史的映像だし、黙々と走る姿にはメッセージ性がある。そもそも芸術には常に不謹慎さが帯びるもので、不謹慎で何が悪いという考え方もある。あと、このジュン・グエン=ハツシバというひとは悪気があって走っている感じじゃないし、爽やかな好青年タイプでぼく好みである(注:ぼくは彼女がいるけどゲイです)。

ジュン・グエン=ハツシバ《呼吸は自由 12,756.3:日本、希望と再生,1,789km》

 一方(?)、由梨はこのモニターの隣にあった奈良美智の作品に興奮していた。やっぱり由梨は昔、子どもの頃にここ横浜美術館でこの作品を見たことがあるらしい。ぼくは奈良美智というひとの存在すらこの日まで知らなかったので、「えっ、もしかしてチコちゃんのキャラデザってこのひと?」と言ったら、あとで由梨から説教されました。奈良美智は『チコちゃんに叱られる!』とは関係ないみたいです。

奈良美智《春少女》

 『おかえり、ヨコハマ』展はここでフェードアウトし、展示は隣の部屋のコレクション展に続く。淺井裕介というひとが描いたでっかい絵とか、吉澤美香というひとが描いたペイントみたいな絵とか、国立国際美術館の『ノー・バウンダリーズ』展でも見た森村泰昌の絵とかが展示されてあった。その中でぼくは気になる絵画に出会ったんだけど、その話はまた改めて。

淺井裕介《八百万の森へ》

 ぼくと彼女は『おかえり、ヨコハマ』展へ行く。由梨にとって思い出の場所、ぼくにとっては初めての場所、横浜美術館のリニューアルオープン記念展はとてもすばらしい展覧会だった。やっぱり「寄せ集めの展覧会」っていいよな。いや、すばらしい作品の寄せ集めだったからすばらしい展覧会になったのか。まあ、なんにせよ、『おかえり、ヨコハマ』展は縄文時代の土器から黒船来航の図、ピカソの絵から東日本大震災の被災地のランニング映像まで、色んな作品を一つひとつ楽しめる展覧会だった。いっぱい見たけど疲れなかったのはずっと楽しかった証拠かな。

 由梨によると、横浜美術館はリニューアルして設備的に変わった部分もあるけど、全体の「居ずまい」は昔と変わらないらしい。きっと人間もそうなのだろう。時代が変わったり環境が変わったりして変わっていく部分もあるけど、根本的な部分はきっと変わらないのだ。良くも悪くもね。

 そんな中、根本的な変化を避けられないものがある。それは……社会人になってからの美術館の観覧料! 今回行った『おかえり、ヨコハマ』展の一般観覧料は1人1,800円もしたのだ。まあ、学生料金でも1,500円だからもともとお高めなんだけどさ。ただ、一般料金になってから初めて行った展覧会が『おかえり、ヨコハマ』展だったのはよかったかも。1,800円を払うだけの価値があると思える美術展だったからね。こういう美術展ばっかりなら一般料金でも怖くない。社会人のデートだってへっちゃらだ。

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