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ビジネス放置プレイ〜M&Aされた1週間で感じた本音──放置という名の洗礼〜

M&Aが終わった。
それは、契約書という分厚い紙の束に判を押す、
たった一瞬の出来事だった。
だが、俺の“社長人生”には、静かに幕が下りた。

誰かが祝ってくれるわけでもない。
テープカットもなければ、記者会見もない。
代わりにあるのは、地味なSlack通知と、鳴らない電話。


社長から一介の社員へ。

さあグループへの仲間入り。
俺が初日に感じたこと。

権限は消え、責任だけは妙に残った。

いわば、“魂だけ残してスーツを脱がされた感じ”。

もちろん不安はある。
これから何が起きるのか。
俺はこの会社で、何を任されるのか。
いや、そもそも任されるのか。(←ここ重要)


買い手のトップにはことあるごとに
こちらの事情も話し、現場の課題も伝えた。
市場が荒れ狂っており、俺ではもはや勝ち方がわからない。

だからこそせめて
「今後、こうしたい」と希望も共有した。


あの日はたしかに、うなずいてくれていた。
ただ、そのうなずきが「了解」なのか「はいはい」なのか、
あのときの俺には、まだ見抜けなかった。


そして迎えた、M&A後の初日。

俺の目の前に現れたのは──
壮大なる放置プレイだった。

M&Aが締結したからといって、劇的な何かが起こるとは思っていなかった。
オフィスが急にピカピカになるわけでもないし
受付にグループ本社のロゴが貼られるわけでもない。
俺たちの机もそのままだし、観葉植物の元気のなさも、相変わらずだ。

出向者? いや、誰も来ない。
“本社からの使者”みたいな人が現れて、「今日から我々が統合を推進します」なんて展開はなかった。
正直、それはそれでホッとした部分もあった。

ただ、コミュニケーションは増えるだろうと思っていたんだよな。
Slackが賑やかになって、メールも飛び交って、
「ようこそ!グループへ!」みたいなテンプレ挨拶のひとつやふたつ、
あるんじゃないかと。

…まあ、それさえもなかったんだけど。


誰も来ない。
誰にも呼ばれない。
Slackは沈黙し、メールは乾いている。

「初日はご挨拶から始めましょう」的な儀式もなし。
歓迎もなし。
まあ、それはいいとして。

指示もなし。
“誰が俺を迎えに来るんですか問題”が、全会一致で放置。


もちろん、連絡先は把握していた。
買い手の代表、事務担当、秘書の番号もある。
一応メールもしてみた。
返事は来た。
「〇〇は現在外出中です」 by 秘書。

いや、わかる。忙しいのは。
でも…秘書に“未来の事業像”を相談するわけにはいかないじゃないか。


社員たちにも、俺はこう伝えていた。
「このM&Aで守れるものがある。
そして、自分たちだけでは到達できなかった場所に行けるようになる」と。

その“希望”が、“不安”に形を変えるまで、そんなに時間は掛からなかった


“おめでとう”ではなく、“お疲れさま”でもなく。
ただ静かに、誰からも干渉されず、初日は終わった。

俺は椅子に座ったまま、こうつぶやいた。

「あ、これ…もしかして…PMIってやつか?」


ここで豆知識:PMIとは?

PMI。Post Merger Integration。
日本語で言えば、「買収後統合作業」。

・文化を擦り合わせ、
・ルールを統一し、
・業務やシステムを整理して、
・組織を一つにしていくプロセス。

M&Aって、“契約して終わり”じゃないんです。
むしろ、そこからが本番。
そう、PMIとはつまり──

**「合体したあと、ようやく気まずさを取り除いていく儀式」**である。


でも俺に起きてる現実は、PMIとは程遠い。
統合なんてされてない。
むしろ、合体した瞬間に「ごめん、今日ちょっとバタバタしてて!」って逃げられた感覚。


今、俺がやっているのは、PMIじゃない。
P(ぽつんと)M(無視されるの)I(いつまで?)の方。

でも、これが現実。
現場には現場のスピードがあるし、買い手には買い手の事情がある。

とはいえ、“状況説明ゼロで放置”は、
どれだけグループ資本があっても、普通にしんどい。

というわけで、
PMIは「絆」じゃない。プロセスだ。
放置と自由は違う。
説明なき沈黙は、不安を呼ぶだけだ。

いろいろと自分なりに動いた結果、グループ内の他企業と接点を持つことができた。
これが思いのほか、骨が折れる作業だった。
「グループ内連携?それって自然と進むものじゃないの?」
…うん、そう思っていた時期が、俺にもあった。

実際は、他社との壁、思っていたよりも分厚い。

Slackのチャンネルでさえも繋がっていないところからのスタート。

結論的に言えばこの状況は打破しており
俺はグループ内で大活躍している(自分で言うな)

正直、我ながらよくやったと思う。
ここまで手を伸ばせた自分の積極性と、モチベーションだけは、
誰か表彰してくれ…と心の中で思っている。


そんな中で、偶然にも、俺と同時期にグループインした企業とつながる機会があった。
初めての挨拶もそこそこに、開口一番、

「ところで、そちらも…放置されてません?」と訊いたところ、

返ってきたのは、“深く、ゆっくりとしたうなずき”だった。

あ、これは──同じ目に遭ってるな、と。

放置プレイを比べるのは難しいが
話を聞く限りは俺よりも放置がすごい。

ここで初めて感じた。
なるほど、M&Aとは買収後のコミュニケーションまで
想像以上に細かく打ち合わせないと痛い目を見る。
という1つの考えと…

なるほど、こういう企業文化だから俺たちを買ってくれたのかという
適切な言葉ではないが安心もあった。

伸びしろが多分にあるということであり、変えるべき点は明確だ。

そして買収された企業としては、あまり細かいことを言われない方が
どちらかと言えばストレスは少ない。


さらに遡れば、半年前にグループ入りした企業の元代表取締役とも連絡が取れたのだが、
「いや、うちもずっと放置されてて」と、ため息混じりに言われた瞬間、
俺の背筋に、うっすらと冷たいものが走った。

これは──ただの一時的な混乱じゃない。
構造的な無関心という名の、共通体験だ。

…うん、ちょっと嫌な予感がしてきた。

でも、これについて語るのは、また別の話だ。


俺は今、“元社長”という名の、浮遊するアイデンティティを抱えながら、
新しい組織に“勝手に出社”している。

次のステップ?
いや、それが知りたいのは、俺だ。

それが俺のM&A後のリアルな1週間だった。
じゃあどうしてこの状況を改善させたかって?

これもまた別の話で。

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