商工会の経営指導員⑬ 次なる脅威——暗躍する謎の存在【#創作大賞2025#お仕事小説部門】
その様子を、遠くから見つめる影があった。
三浦誠司。
彼は、マルシェの様子をじっと見ていた。
そして、黒煙が上がる倉庫を見ながらポケットからスマホを取り出し、ある男に電話をかけた。
「……おい。今回の件、お前は何か知ってるか?」
「……は? 何も知らねぇ? ふざけんな。こんなことやるのは、お前らしかいねぇだろうが……。」
三浦の声が低く、震えた。
スマホの向こうからは、低く冷静な声で教科書通りの回答が返ってきた。
「俺らがやるなら、もっと目立たねぇやり方にするわ。火ぃつけるなんて正気かよ?」
『..............。』
三浦は電話を切った。
そして、しばらくその場に立ち尽くした。
風に煽られる煙の匂いが、鼻を突く。
三浦の表情が険しくなる。
彼の目は、嵐に逆らって揺れる大樹のようだった——しかしその根の奥では、踏みにじられた野の花のように、か細い恐怖が息をひそめていた。
その夜。
悠斗が商店街の片付けをしていると、秋山が駆け寄ってきた。
「森田くん! 大変!!」
「どうしたんですか!?」
秋山が差し出したスマホの画面には、ある記事が載っていた。
『桜川マルシェで放火騒ぎ——商店街の危険性を指摘する声も』
『商工会が支援しない理由はこれだった!? 市が危険視するイベント』
「これは……!?」
「さっき投稿された記事。どう考えても、私たちを潰すためのネガティブキャンペーンだよ……!」
悠斗の背中に、冷たい汗が流れた。
「……誰がこんなことを?」
その時だった。
ピンッ!
悠斗のスマホに、差出人不明のメールが届いた。
「……?」
悠斗がメールを開くと、そこには衝撃の内容が記されていた。
『放火はまだ始まりにすぎない。お前たちは間違ったことをしている。すぐに商店街を畳め。でなければ、次はもっと大きな事件が起こるだろう。』
悠斗の顔が、凍りついた。
「これは……脅迫!?」
「……誰がこんなことを!?」
秋山も顔をこわばらせながら、画面を覗き込んだ。
「こんなの……完全に脅迫じゃない!」
「放火の犯人が、まだ何かしようとしているってこと……?」
悠斗は、背筋が寒くなるのを感じた。
「商店街を畳め、か……」
悠斗の頭の中で、様々な可能性が駆け巡る。
「でもいったい、誰が……?」
(もし、これが三浦さんの仕業だったら?)
悠斗は、その考えをすぐに振り払った。
「違う……三浦さんは、俺たちを妨害してはいたけど、こんな犯罪まがいのことをする人じゃない。」
「……じゃあ、誰が?」
その時——
「三浦さんなら、何か知ってるかもしれない。」
秋山が、はっとしたように言った。
「だって、あの人はずっと森田くんを潰そうとしてた。でも、放火の時は妙におかしかったでしょ?」
「……確かに。」
悠斗は、三浦の表情を思い出した。
「三浦さんも、まるで何かに気づいたような顔をしていた……。」
「よし、三浦さんに会おう。」
「この商店街を狙っているのが誰なのか、必ず突き止める。」
