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夜空を見上げ、〈繕い師〉に思いを馳せる。(#創作大賞感想)

感想を書くときに気をつけていることがある。

安易に「おもしろい」と書かないこと。

書いてしまえば、それ以外のものがまるでおもしろくないと聞こえてしまうからだ。


【もりあげ広場】と称して創作大賞応募作品を募り、70を超える数の作品を読んでは感想を書いてきた。

アルロンの書いた感想文をひとつひとつ探してみればわかるが(だれもそんなことしないだろうが)、創作大賞2026の感想文で僕が「おもしろい(おもしろかった)」と明記したのは、ヤスシさんの『妻に煽られ、女子大生に刺され、美容部員に救われる』(エッセイ部門)だけだった。


「だけだった」と過去形にしたのは、これからある作品の感想を「おもしろかった」と書くからだ。


yoyoさんの『夜空の繕い師』(ファンタジー小説部門)は、おもしろかった。

ハイファンタジーって、まず世界観の設定が難しい。現実に存在しないもの、現代日本人に馴染みのないもの。それらをどう扱い、説明するのか。

本作では、ふたつの国家が登場する。ざっくり区別すると、陽と陰。それぞれには異なる歴史や文化が息づいており、しかし根本ではつながっている。
このような世界観の設定に、本作は成功していると感じた。

「夜空」という実体のないモチーフを「布」に見立てる着想から、舞やわらべ唄といった歴史を感じさせる文化の風が吹き抜け、それが〈繕い師〉という存在をナチュラルに肯定している。ファンタジーならではの特殊能力が、ド派手な魔法なんかではなく、現実味を帯びた職人技としてこの世界に必要な要素になっている。


このハイファンタジーというジャンルは、得てして固有名詞が覚えにくく、それゆえに離脱してしまうことも少なくない。
しかし、本作においては杞憂に終わった。人名や地名が矢継ぎ早に登場することはない。世界のルールが難解な言葉の羅列で示されることもない。ひとつひとつがしっかりと読み手に根づくように過不足なく説明がなされている印象を受けた。

人物設定も無駄がない。主人公のカリナをはじめ、エルグ、セファ、ユハン、ルオ、シルマ、そして〈繕い師〉。それぞれがたしかな個性と人格を持っており、さらに前述のていねいな説明により、実在する人間さながらに印象づけられる。これはすごいことだ。


また、作品紹介にもあるようにセクシャルマイノリティに関する記述も出てくるが、それは“多様性を認める”という本作の核となるテーマであると感じた。だれがだれを、どのような形で愛するか。そこには絶対的な正義などなく、人それぞれの愛の形が存在する。現代社会に通ずる考え方が、本作に流れている。


そして、ストーリーが魅力だ。
〈夜と石の国〉ノウランの秘密。
〈繕い師〉の過去。
それぞれの人物の選択と役割。
すべてがそれこそ糸のように紡がれ、ひとつの美しい布として成立している。これらの糸に同じものはなく、意味のないものはない。だから決して少なくない文字数でも、夢中になって読み進めてしまったのだろう。


本作は前述の【もりあげ広場】に応募いただいたもの。通常ならほかの作品と同様に100~150字程度に収めなければいけないはずだった。

それでもこうして単体で感想を書いたのは、素晴らしい読書体験をさせてくれたことへの感謝をせずにはいられないからである。

yoyoさん、素敵な作品をありがとうございました。

読み終えたら、ぜひあとがきも。

(おしまい)

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