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備忘録的「夜空の繕い師」の裏話。

文学フリマ東京42お疲れさまでした!(まだ余韻の中にいる)
新刊『夜空の繕い師』も想定以上の方に読んでいただき、感想もいただけて、頑張ってよかったな…ありがとうございます…!の気持ちで毎日過ごしております!
本当にありがとうございます!!

以前、あとがき先行公開記事を出しましたが、そこで書ききれなかった話とか色々あったなーと思い、備忘録として残しておきます。
↓↓あとがき先行公開記事はこちら↓↓

※ここから先は、ネタバレを多分に含みます※

↓↓webで読みたいぜ!という方はこちら↓↓


◆そもそも「夜空の繕い師」を思いついたのは

男性二名と女性一名の三人組がやけに好きです。
でもいつも男性が主人公になってしまった気がして、女性主人公書きたいな、と思っていました。
どんなおはなしにしよう、どんな場面があるのかな、と妄想を膨らませたところ、姫が夫である王にコイバナを提案する、という場面が浮かんできました。

こんな感じです↓(漫画用なのでセリフだらけ)

ーーーーーーーーーーーー
「王、貴方は……あの方を愛しているのですね」
「…愛が、わからぬ。
手元に置いて慈しむが愛か。自由に放ち指一本たりとも触れぬことが愛か。八つ裂きにしてはらわたを啜りたくなる衝動も愛か……。
私はあやつを視界に入れる度、己が胸の内を無遠慮な手にかき回される思いがする。
あやつが笑う姿を眺めていたい。だが、その笑顔を向ける相手は私だけにしてほしい。そんな己の欲に気づく度、息ができなくなる。
あやつが憎い。あやつがいなければ……」
「その世界を望みますか」
「………。望む、と言えたらこの震えも止まるだろうな」

ああ、この人は。
どうしようもなく恋をしているのだ。
すべてを奪う力を持ってなお、臆病にならざるを得ない恋を。

「王……恋バナをしましょう」
「……⁉」
「お香を変えますね! お茶を頼みます! 深夜ですのでおやつは軽くしましょう! ほら
座って座って!」

(ボーゼンとする王)
ーーーーーーーーーーーー

ここから、王には自分でも制御できないくらい執着する相手がいる、姫はその想いを受け止め、聞くことができる人物だ、とわかりました。

その相手って誰? と思ったとき、ふっ、と頭に「夜空の繕い師」という言葉が降ってきました。
聞いたこともない言葉でした。
でも、王はきっとその〈繕い師〉に心を向けている。
「夜空」は比喩? いや、多分これ、夜空自体を繕っている。夜空の意味が暗喩だとしても、この世界には物理的に繕える夜空があって、それを繕う仕事がある。
じゃあ、夜空は布だ。布と糸と針がモチーフの物語になる。
「繕い」は修繕のことだから、夜空が傷んでいる? なぜ?

……と、いった具合に、想像を膨らませていきました。
初期案と比べて、エルグはだいぶ柔らかな執着になりましたね……。

◆「繕い」と「舞」

だから、全然縫物、繕い物に縁がなく、得意でもなく、ただ言葉が降ってきてしまった状態で〈繕い師〉という存在を書くことになってしまった。アホか?
本来は、繕うことをちょっとは勉強してから挑むべきなんでしょうが、不器用すぎて早々に断念。
そもそも、夜空を繕うってどういうこっちゃねん! と悩み、「手元に夜空そのものの布があってそれを繕う?」とか「空を飛んで直接繕う?」とかアイデアは出しました。
でも、絵にした時一番「これだ!」感があったのは、地上から空に向かって手を伸ばしている姿。
じゃあ、糸だけ物理的に繋がっていて、それを大きく引っ張ったり返したりすることで、繕っている、ということにしよう! と決めました。

そうなると、立ち姿のイメージはオーケストラの指揮者だな……指揮……いや、この世界にオーケストラはないな?(気づき)
今回ずっとこれ!!! 「逆鱗に触れ……いや、龍いないわ。逆鱗がない」「これは英語表現すぎるから、もっと手触りのする言葉に変えて……」ってやってた!
イメージを伝えるために言葉を駆使するのは当たり前ですが、書かないことで世界を表現することも必要だと思うので、頭を抱える場面が多かったです。(それでも読みやすさと視認性のためにカタカナ語は排除していませんけどね、ステップとか)
ということで、指揮者というワードは使えず。

なら、もっと全身運動させてもいいか……ということで、繕い舞という表現になりました。〈繕い師〉は小柄な男性なので、糸を引くのも猫が跳ねるように全身を使うんじゃないかな、という感じですね。
カリナは歌と舞が得意で、手元作業が苦手、という印象があったので、じゃあカリナがするのは機織りで、舞うのは織舞か。と、繕い舞と織舞のセットはすんなり成立しました。

そもそも、古代劇とかを紐解くと、神事としての舞が人類の共通項レベルで登場する。
舞は神に届く言葉の原型。
私の作品で舞や歌が出てくると、神(畏怖の対象)と紐づくことが多いです。舞への信頼が強すぎる。
繕うために、織るために、舞を捧げることそのものが、夜空の奥に在る闇の神、光の神への神事であったという形にできたのは綺麗だなと自画自賛しています。

まあ、結局ふつうの繕いの場面も出てきたので、付け焼刃ですが本を読んだりちょっと布を触ったりしました。ぐぬぬ。

◆自己犠牲の物語

大好物です。
でも、自己犠牲というか、誰かが責任を背負って前向きに笑って死んでしまうことで、世界が救われるのはやっぱり違うと思うんですよ。
そうだろう、オールマイトォ!!!!(ヒロアカのオタク)
「夜空の繕い師」は、タイトル通り〈繕い師〉をめぐる物語。
彼は世界から不要とされるし、そのくせ世界を守るために身を削る。たったひとりで、誰にも知られず。
「不要」は夜空が選ぶものですが、本当に不要なのか、となると基準が難しい。なので、その基準は「魂がほどけてしまうほど、自分を否定する者」としました。
ほどけた魂は夜空を繕う糸となり、ほどけばほどくほどに安寧の闇に引き寄せられる。
このあたりは、かなり暗喩的になっているので、解釈は読んだ方に任せようと思っていますが、私はこういうことは現実によくあることだと考えています。
自己犠牲と自己否定は、同じタンスの近い引き出しに入ってて、そのベン図の共通部分に「自己肯定」があったりするともう!!!
聞こえるか、オールマイトォォォ!!!(二回目)
なので、笑顔を残して滅びてほしい欲求もありつつ、そのルートは通らずに、生きてもらうことにしました。
その結果、〈繕い師〉という言葉が差す人物がたったひとりにならなくなったという物語になっていれば幸いです。

◆「オド」という名前

英語だと odd=奇妙なもの、半端もの、余りもの という意味になりますが、
モンゴル語では од=星
同音ながら、意味合いが変わる名前。
オドは、願いを込めて呼ばれた時だけ「星」ですが、それ以外は「奇妙なもの」のつもりでした。
なので、カリナ(とユハン)の「師匠」呼びは、輝かしいものでも不要なものでもない、オドを人間として扱う呼び方だったんじゃないかな、と思いながら書いてました。

ちなみに、アヤノラの人物の名前は「ア・イ」、ノウランの人物の名前は「ウ・エ・オ」の音を中心に考えました。

◆プレイリストとか。

こちら、執筆中によく聞いていた曲のリストです。よろしければ。

クライマックスを書いてる時に「ニーナ」が流れてきて、机に突っ伏した。


ここまで読んでいただいた方がいたら、凄い。
ありがとうございます!
何か思い出したら追記するかもしれません。

それでは!

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