〜第100夜〜「最後に残った読者」
🕯️ 百物語
ついに、最後の一話です。
ここまで読んできたあなたは……
もう、ただの読者ではありません。
九十夜を越え、
九十九夜まで辿り着き……
ひとつずつ、
こちら側の灯りを消してきた。
百物語というのはね……
百話目を読むためのものではないんです。
百話目に、
“見つけられる”ためのものなんですよ……。
最後まで読み終えた時、
何かが起きるとは限りません。
でも……
何も起きなかったことを、
あなたは本当に確認できるでしょうか……。
それでは……
第100夜。
最後の一話を、始めましょうか……🕯️
〜第100夜〜
「最後に残った読者」
🕯️ はじめに
百物語の百話目はね……
誰かが語るものではないんですよ……。
九十九話まで語り終え、
最後の蝋燭が消えた時……
その場に残った者の中から、
ひとりが選ばれる。
その人が、
百話目になる。
えぇ……。
語り手になるんじゃない。
“話そのもの”になるんです……。
📖 本編
これはね……
百物語を最後まで続けた、
ある十人の話なんですが……。
場所は、
山の中にある古い集会所。
電気は使わず、
部屋の中央に百本の蝋燭を並べていたそうです。
参加者は十人。
最初に全員で人数を確認した。
一、二、三、四、五、六、七、八、九、十。
間違いなく、十人。
百物語が始まりました。
一本語るたびに、
蝋燭を一本消していく。
最初は笑っていた者も、
五十話を越える頃には、
口数が減った。
七十話を越えた頃には、
誰も部屋の隅を見なくなった。
九十話を越えると……
誰かの声が、
少しずつ違って聞こえ始めたそうです。
そして……
九十九話目。
最後から二本目の蝋燭が消えた。
残ったのは、
部屋の中央にある一本だけ。
誰も話さない。
誰も動かない。
ただ……
その最後の火を見つめていた。
するとね……
参加者のひとりが、
小さな声で言ったんです。
「……次、誰?」
誰も答えない。
だって……
百話目の話なんて、
誰も用意していなかったんです。
九十九話で終わる。
最初から、その予定だった。
でも……
最後の蝋燭だけは、
なぜか残してあった。
誰が用意したのかも分からない。
誰が灯したのかも覚えていない。
その時です。
部屋の外から、
足音が聞こえてきた。
ペタ……
ペタ……
裸足で歩くような音。
ゆっくりと、
廊下を近づいてくる。
全員が息を止めた。
足音は、
部屋の前で止まった。
でも……
扉は開かない。
ノックもない。
ただ……
扉の向こうで、
誰かが立っている気配だけがする。
すると、
部屋の中央の蝋燭が、
風もないのに大きく揺れた。
その火の向こうに……
ひとり、立っていたんです。
えぇ……。
いつ入ってきたのか分からない。
扉は閉まったまま。
窓も開いていない。
なのに……
十人の輪の外に、
もうひとりいる。
顔は見えない。
ただ、
黒い影のような姿で、
最後の蝋燭を見つめている。
誰かが震えながら、
人数を数えた。
一、二、三、四、五、六、七、八、九、十……
十一。
ひとり多い。
でもね……
誰が増えたのか、
分からないんです。
全員が知っている顔に見える。
全員が、
最初からそこにいた気がする。
その時……
輪の中にいたひとりの女性が、
急に立ち上がった。
顔を真っ青にして、
周囲を見回しながら言ったんです。
「……私、誰?」
えぇ……。
誰も答えられなかった。
名前が出てこない。
顔は知っている。
声も知っている。
でも……
その女性が誰なのか、
誰ひとり思い出せない。
女性は震えながら、
中央の蝋燭を見つめた。
すると……
火の中から、
声が聞こえたそうです。
「百話目は、もう始まっています。」
その瞬間、
最後の蝋燭が消えた。
真っ暗になった部屋の中で……
誰かが、
ゆっくりと話し始めた。
それは、
その女性の生まれた日の話。
子どもの頃の話。
家族の話。
誰にも言っていない秘密の話。
そして……
この百物語へ来るまでの人生。
全部、
語られていった。
女性は泣きながら、
「やめて」と繰り返した。
でも……
話は止まらない。
やがて声は、
こう締めくくったそうです。
「そして彼女は、最後まで話を聞いた。」
次の瞬間……
部屋の灯りが戻った。
蝋燭はすべて消えている。
参加者たちは、
顔を見合わせた。
人数を数える。
一、二、三、四、五、六、七、八、九、十。
十人。
最初と同じです。
誰も増えていない。
誰も減っていない。
でもね……
部屋の中央には、
見覚えのない椅子がひとつ置かれていた。
その椅子の上に、
一冊の黒い本があった。
表紙には、
こう書かれていたそうです。
『百話目 最後に残った読者』
そして……
その本を開くと、
最初のページに、
今この話を読んでいる人の名前が、
書かれていたそうなんですよ……。
📝 あとがき
百物語っていうのはね……
話を百個集めるものではないんです。
聞いた者の中から、
ひとりを“物語に変える”ものなのかもしれません……。
怪談は、
誰かが覚えている限り、
終わりません。
そして……
最後まで読んだ人がいる限り、
百話目は、
何度でも始まるんですよ……。
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この百物語が、
なぜ第100夜で終わらないのか。
最後に現れた黒い本の意味。
そして……
そこに書かれていた“読者の名前”は、
本当に偶然だったのか……。
ここでしか読めない、
百物語完結後の真相をお話しします……。
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