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〜第99夜〜「こちらを見ていた」

百物語 完結まで
残り──1話。

……ついに、ここまで来ましたねぇ。

九十九夜。

昔から百物語では、
この九十九という数を一番恐れたんですよ……。

なぜかって……?

百話目そのものよりも、
その直前の九十九話目で……

“最後に来るもの”が、
こちら側を見始めるからなんです。

まだ呼ばれてはいない。

まだ入ってもいない。

でも……

すでに、こちらを知っている。

そしてね……

ここまで読み続けたあなたも、
もうただの読者ではないのかもしれません……。

百話目まで、あとひとつ。

最後まで読み終えた時……

あなたは本当に、
今いる場所へ戻れるでしょうか……。

……では、第99夜。

お話ししましょうか……🕯️

〜第99夜〜

「こちらを見ていた」


🕯️ はじめに

視線ってね……

不思議なもので、

見られていると、
なんとなく分かるでしょう……?

後ろからでも、

暗闇の中でも、

誰もいないはずなのに……

ふと、振り返りたくなる。

えぇ……。

でもね……

百物語の九十九話目では、

振り返ってはいけないんです。

なぜなら……

そこにいるものは、

あなたが振り返る前から……

ずっと、こちらを見ているからなんですよ……。


これはね……

古い洋館で百物語を行った、
十人の男女の話なんですが……。

その洋館は、

かつて資産家が住んでいた屋敷でね……

長い間、空き家になっていたそうです。

参加者たちは、

大広間に円を作って座り、

中央に百本の蝋燭を並べました。

部屋の奥には、

大きな姿見が一枚。

黒い布が掛けられていた。

管理人からは、

始める前に、ひとつだけ言われていたそうです。

「九十九話目になっても、
その布だけは取らないでください。」

理由を聞いても、

管理人は答えなかった。

ただ……

「鏡を見てはいけないんじゃない。
鏡の中から、見られてはいけないんです。」

そう言って、

部屋を出て行った。

最初はね……

みんな、冗談だと思っていたんです。

順番に怪談を語り、

一本ずつ、蝋燭を消していく。

九十話を超えた頃には、

笑う人はいなくなっていました。

部屋の空気は冷たく、

誰も動いていないのに……

姿見に掛けられた黒い布だけが、

ゆっくりと揺れている。

そして……

九十九話目。

最後から二本目の蝋燭が消えた瞬間です。

パサッ……

大きな音を立てて、

鏡の布が床へ落ちた。

全員が、

思わず姿見を見てしまった。

鏡の中には、

蝋燭を囲んで座る十人の姿。

暗い部屋。

青ざめた顔。

何もおかしくない。

そう思った、その時……

ひとりの女性が、

小さな声で言ったんです。

「……向きが、違う。」

えぇ……。

鏡の中の全員が、

現実と同じ姿勢ではなかった。

こちら側の人たちは、

中央の蝋燭を見ている。

でも……

鏡の中の人たちは、

全員こちらを見ていた。

顔だけを、

ゆっくり正面へ向けて。

十人全員が……

鏡の外にいる自分たちを、

じっと見つめていたんです。

誰も動けない。

目も逸らせない。

すると……

鏡の中の一人が、

ゆっくりと立ち上がった。

こちら側では、

誰も立っていない。

それなのに、

鏡の中だけで……

ひとりが立っている。

その人物は、

姿見の表面まで近づいてきた。

顔は暗くて見えない。

でも……

その手だけが、

はっきりと見えた。

鏡の向こう側から、

ガラスへ手を当てる。

そしてね……

こちら側の姿見にも、

内側から白い手形が浮かんだそうなんです。

その瞬間、

最後の一本の蝋燭が、

まだ消していないのに……

ふっと消えた。

部屋は真っ暗になった。

そして……

鏡の方から、

誰かが囁いた。

「百話目は、あなたの話です。」

📝 あとがき

鏡っていうのはね……

自分を見るものだと思っているでしょう……?

でも……

鏡の向こう側にも、

こちらを見ている視点があるとしたら……

どちらが本物なのか、

分からなくなりますよねぇ……。

九十九話目というのは……

人間が怪談を語れる、

最後の夜なのかもしれません。

その先は……

こちらが語るのではなく、

こちらが語られる番になるんですよ……。


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この話の核心……

なぜ鏡の中の全員はこちらを見ていたのか。

なぜ最後の蝋燭は勝手に消えたのか。

そして……

「百話目は、あなたの話です」

その言葉が指していた“あなた”とは誰なのか……。

第100夜へつながる、
ここでしか読めない解釈をお話しします……。

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531字
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