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【理学療法士・大学院進学】"影"の部分を共有しておく

🔸はじめに:大学院進学は、美談だけではない

 理学療法士の大学院進学は、しばしば「成長の物語」として語られます。専門性が高まり、視野が広がり、キャリアが開ける―確かに、その側面はあります。

 一方で、実際に通ってみると、あまり語られない“影”の部分が存在するのも事実です。これは、大学院進学を否定したい話ではありません。これから進路を考える人が、少し立ち止まって判断できる材料を残したい、という記録です。

 私はこれまでのキャリアの中で、2回の大学院生活を経験しました。また、以前書いた「専門学校卒でも理学療法士が大学院進学できる方法」という記事が、長い期間にわたって多くの方に読まれてきました。最近、その記事をリライトしたところ、再び想像以上の反響がありました。

↓↓  かなりの人に読んでもらっています!(実は、私の数多くの記事の中で最高の閲覧数)

 この反応を見て、理学療法士の中に「大学院進学」に対する潜在的な関心や不安が、今も強く存在しているのだと改めて感じました。勢いよく進むこと自体は悪くありません。ただ、進む前に一度、立ち止まって考えておくべき点も確かにあります。

 そのため本記事では、これまであまり語られてこなかった大学院進学の“ヤバい”部分についても、経験談としてあえて記しておきたいと思います。

✒️筆者紹介
理学療法士/修士(リハビリテーション学・公衆衛生学)
 

 回復期リハビリ病院では病棟主任・教育主任を歴任。脳卒中後の機能回復と栄養管理の臨床・研究に携わる。 リハビリテーション医学の科学的根拠を追求すべく、大学院にてリハビリテーション学の修士号を取得。さらに、臨床研究・疫学・統計解析の実力を体系的に習得するため、公衆衛生学修士(MPH)を取得し、医療データの分析にも軸足を置く。 

 現在は、 医療リアルワールドデータ活用人材プロジェクト 東京大学履修コースで、医療の現場から得られる大規模データを用いた実証研究に取り組む。 臨床と疫学をつなぐ視点から、介入効果の可視化と医療政策への応用を目指している。

 臨床現場を離れ、医療研究開発センターのプロジェクトマネージャーとして新たな挑戦を始める。


🔸①:想定以上に時間を奪われるという現実

 仕事をしながらの大学院生活は、常に何かに追われていました。仕事、課題、研究、発表準備。休日も講義や課題に消えていき、気持ちの余裕は正直ほとんどありませんでした。

 当時、家族、とくに子どもと過ごす時間を削っていた自覚はありました。「これは将来のため」「自分の成長のため」と信じて、目の前の時間を選択してきたのだと思います。

 しかし今振り返ると、その時間に一緒に遊んでいてもよかったのではないか、という後悔も残っています。子どもは成長し、もう以前のようには遊んでくれません。時間は取り戻せないという事実だけが、静かに残ります。

 さらに言えば、忙しさと心の余裕のなさは、家族との関係にも影響しました。

 1回目の大学院生だった頃、在学中に結婚したのですが、妻が何か話しかけてきたときに「今集中したいから、あとにしてほしい」と突き放してしまったことがあります。その一言が引き金になり、「だったら、なんで結婚したのか」と大喧嘩になりました。

 今思えば、学業そのものよりも、「余裕を失った自分」が問題だったのだと思います。大学院は知識やスキルを与えてくれましたが、同時に、身近な人との関係を犠牲にしかねない環境でもありました。


🔸②:想像以上に大きかった金銭的負担

 もう一つの現実は、お金です。学費や関連費用を含めると、自己投資として使った金額はおよそ200万円(2回で350万くらい?)でした。

 この金額があれば、家族全員でさまざまな経験ができたと思います。旅行、習い事、学びの機会。そうした350万円分の選択肢は、すべて消えたことになります。(海外旅行とか、行っても良かったなぁーー。)

 もちろん、今さら取り戻すことはできません。だからこそ、これから大学院進学を考える人には、「自己成長」だけでなく、費用対効果や周囲への影響も含めて、冷静に判断してほしいと思います。

350万もあったら、家族で楽しい思い出たくさん作れていたよね

🔸③:研究者として“走り続けられるか”は、入ってみないとわからない

 大学院に入学すれば、研究ができるようになる―そう思われがちですが、実際には入学前の段階で「自分が継続的に研究を続けられるかどうか」を正確に見極めることは、ほぼ不可能だと感じています。

 講義や指導を受けながら研究の形は整っていきますが、それを自力で回し続けられるか、テーマを深め続けられるかは、入学してから初めて突きつけられる課題です。想像していたよりも手が動かない、考えがまとまらない、時間を捻出できないといった理由で、思った以上に研究が進まず、そのままフェードアウトしてしまう人も少なくないと思います。

 当たり前ですが入学したからといって、必ずしも修了できるわけではありません。研究が生活や仕事と両立できず、途中で止まってしまうケースも現実として存在します。

 私自身、大学院を修了したあと、研究を再開するまでにかなりの時間が空きました。修士課程で扱ったテーマを、そのまま発展させて継続することはできず、結果的に研究キャリアはいったん中断する形になりました。

 大学院は「研究者になるための入口」ではありますが、「研究を続けられる保証」ではありません。この点は、進学前にあらかじめ知っておいてもよい現実だと思います。



🔸④:「大学院卒」という肩書の希少性は、時代とともに変わっている

 私が最初に大学院へ入学したのは、2010年より前のことでした。当時は、理学療法士そのものの人数が現在より少なく、さらに大学院修了者となると、かなり限られた存在でした。そのため、「大学院卒」という肩書には、一定の希少性があったと思います。

 しかし現在は状況が大きく変わっています。理学療法士養成校や大学自体が増え、大学院の数も拡大しました。加えて、大学教員にとっては「何人の大学院生を指導したか」が実績の一部として評価される側面があります。大学側も、学生を一定数確保しなければ経営が成り立たないという現実を抱えています。

 こうした背景から、大学院への入学障壁は、一部において以前より緩和されてきているように感じます。その結果、「大学院を修了していること」そのものの価値は、相対的に低下してきているのではないか、というのが率直な印象です。

 もちろん、大学院で何を学び、何を積み上げたかが本質であることは変わりません。ただ、「大学院卒=自動的に高い評価が得られる」という時代では、すでになくなっていると考えた方が現実的でしょう。



🔸⑤大学院を出ても、病院内での評価は劇的には変わらない

 現実的な話をすると、大学院を修了しても、一般病院での評価や給与が大きく変わることはほとんどありませんでした。

 たしかに、数人の先輩を抜いて早めに役職がつきました。ただし、年上の先輩をまとめる立場になることは、精神的にかなりきつい場面もありました。当時は役職手当もなく、金銭的なインセンティブはゼロでした。

 院外の仕事も増えましたが、年齢が上の方々との関わりが多く、常に気を遣う必要がありました。それでも、病院の代表として外に出る経験は、結果的に自分のスキルを大きく押し上げてくれたと思います。


🔷それでも「学んだこと」が人生を救った側面

 当時、まさか自分が理学療法士を辞めるとは、微塵も考えていませんでした。もし転職の選択肢が理学療法士一本しかなかったら、人生は詰んでいたと思います。

 大学院での経験があったからこそ、履歴書に書ける中身が生まれ、書類選考では確実に通過できました。この点は、間違いなく大学院の恩恵でした。



🔷いまは「大学院だけ」が学びの場ではない

 当時、社会人が本気で学び直す場は、ほぼ大学院一択でした。しかし現在は状況が大きく変わっています。

 オンラインスクール、コミュニティ、プロジェクトベースの学習。実際に顔を合わせなくても、オンライン上で知識を共有し、研究チームとして論文を完成させることも可能になりました。

 大学院進学は、数ある選択肢の一つにすぎません。時間・お金・家族との関係をどう配分するかを含め、複数ルートを比較した上で決めてほしいと思います。


🔷理学療法士の守備範囲は、もう狭くない

 理学療法士はリハビリテーション分野に進むのが当たり前、という感覚は、少しずつ変わりつつあります。

 心理、教育、情報、データ、マネジメント。どの分野であっても、理学療法士としての視点は必ず活きます。サブスペシャリティを持つことは、キャリアの保険であり、同時に強力な武器になります。

↓↓  今は、こんな所で頑張っています!

 大切なのは、「リハビリに限らず、今自分が興味を持ったことを学び直し、新たな自分を作り直す」という選択肢が、現実的に存在しているという事実です。一方で、その学びには時間もお金もかかります。ここまで述べてきたように、費用対効果や生活への影響、継続できるかどうかという問題も、必ずセットで考えなければなりません。

 だからこそ、「何を学ぶか」だけでなく、「どの手段で学ぶか」「どこまで投資するか」を含めて設計することが、これからの理学療法士のキャリアには重要になってきていると感じています。



🔷おわりに:選択肢を増やした上で、選ぶ

 大学院進学は、決して間違いではありません。ただし、それが唯一の正解でもありません。

 これから学びを深めたいと考えている理学療法士には、大学院・オンラインスクール・コミュニティなど、複数の選択肢を並べた上で、自分にとって最適なルートを選んでほしいと思います。

この記事が、その判断材料の一つになれば幸いです。


では、私はどう学び直しているか

 こうした経験を経て、私自身は「大学院に再び進む」という選択は取りませんでした。時間やお金、生活への影響、そして研究を継続できるかどうかという不確実性を踏まえると、当時の自分には別の学び方の方が合っていると感じたからです。

 現在は、オンラインスクールやコミュニティを活用しながら学びを続けています。たとえば、今所属している mJOHNSNOW のように、場所に縛られず、仕事や家庭と両立しながら、統計・疫学・研究デザインを体系的に学べる環境も整ってきました。

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 大学院のように「入学すれば一本道」という形ではなく、自分のペースで関わり方を調整できる点は、今の自分にとって非常に大きな意味があります。教育格差を無くしたいというCEOの強い意志を感じ、地方で教育に対するアクセスが悪くとも講義を受けたり、1000人以上の医学研究に興味がある仲間と繋がることができます。

 大学院に進むかどうかを考える前に、こうした環境があることを知った上で比較検討する。その上で大学院を選ぶのであれば、それはより納得感のある選択になると思っています。


↓↓mJOHNSNOW関連


↓↓  私がキャリアの選択として大切にしている書籍


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