【理学療法士】迎春|40代で異業種転職、はじめて迎えるお正月
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

年始になると、決まって「去年の今ごろ、自分は何をしていたか」を振り返りますが、今年ほどその差に驚いた年はありません。
昨年の今頃は、転職のての字もなかったですし、理学療法士以外の仕事をすることになるとは思っていなかったので、1年間でどえらい変わってしまいました。
昨年の10月に、理学療法士から異業種転職をしたのです。
私は、「理学療法士しかできない」と思っていました。気づけば自然に刷り込まれていた前提のようなものだったと思います。
現場で患者さんと向き合い、後輩を指導し、部下を持ち、責任ある立場で仕事を重ねていく。
経験を積めば積むほど、任される範囲は広がり、判断の重みも増していきました。
その一方で、「リハビリセンターの役割をきちんと果たすこと」そのものが目標になり、いつの間にか、自分の未来を考える視野は、今立っている場所の延長線上だけに収まっていたのかもしれません。40歳を過ぎたタイミングで、自分のキャリアの先が、自分の上司と照らし合わせて、見えてしまったんですよね。
選んでそうしたというより、忙しさや責任の中で、他の可能性を考える余白を自分から閉じていたように感じます。
「ここで求められている自分」と「ここで発揮してきた経験」が、そのまま自分の職業人生の全てだと、無意識のうちに決めてしまっていたのだと思います。気づけば、リハビリテーションセンター長のポストが目前になっていました。
転機になったのは、公衆衛生大学院での学びでした。
公衆衛生、疫学、研究デザイン、制度。
最初は「臨床に少し役立てばいい」くらいの軽い気持ちだったものが、次第に臨床とは別の価値の出し方があることに気づき始めました。
今振り返ると、35歳を過ぎた頃から、無意識のうちに「キャリアを変えても生き残れる動き方」をしていたのだと思います。
すぐに転職するわけでもなく、今の仕事を否定するわけでもない。ただ、学び直し(リスキリング)を通じて、選択肢を増やすという行動を続けていました。
その積み重ねがあったからこそ、40代での異業種転職という選択肢が、現実的なものとして見えてきたのだと思います。
現在は、医師主導治験を支援する部署に所属し、毎日PCと向き合う仕事をしています。

医師主導治験とは、製薬企業が中心となる治験とは異なり、医師が主体となって、まだ世の中で正式に使えない未承認の薬や医療機器を、科学的・倫理的に評価する臨床研究のことです。
「この治療は、本当に患者さんの役に立つのか」
「安全性は担保できるのか」
そうした問いに、国が定めたルールに沿って答えを積み重ね、将来的な承認や保険適用につなげていくためのプロセスが医師主導治験です。
私はその中で、計画書や手続き、関係部署との調整などを通じて、研究が正しく進むよう裏側から支える役割を担っています。
ビルの窓際のデスクで、計画書を読み、関係者と調整を重ねる日々。
身体を動かす時間は激減し、目は確実に悪くなり、食べていないつもりでも体重は増える。
身体的には、正直「あまり健康的とは言えない働き方」です。
それでも、公衆衛生大学院で学んだ知識が、今の仕事ではダイレクトに活きています。
これまで「外から眺めていた世界」に、当事者として関われている感覚は、臨床とはまた違ったやりがいがあります。ひとつの人生の中で、これほど性質の異なる二つの仕事に向き合える機会は、そう多くはないので、この経験を自分なりの強みに変えていきたいと考えています。
最近では、次世代医療機器開発に関わる部署の方々と一緒に仕事をする機会も増えてきました。
考えてみれば、本来リハビリテーションとは、病気や障害によって生じた不利益に対して、工学的な工夫や道具を開発し、それを適切に使いこなせるよう練習を重ねることで、生活や活動を取り戻していく営みでもあります。
医療機器開発に関わる今の仕事は、リハビリテーションが長年現場で担ってきたこのプロセスを、別の角度からなぞっているようにも感じています。臨床を知っている立場と、研究や制度を学んできた立場、その両方を持つ人間として、少しでも現場と未来の医療をつなぐ橋渡しになれたらと思っています。

これって、どうやって造ったんでしょうね?
先人の偉大さを感じます。
もう一つ、大きく変わったのは、自分の立場です。
これまでは指示を出す側にいることが多かったのに、今は何をするにも確認が必要な「新人」です。
40代で新人に戻るのは決して楽ではありませんが、新人に戻る経験も、振り返れば悪くない人生経験なのかもしれません。
このブログでは、これまでの道のりで学んだことや重要だと感じた視点を、自分の言葉で整理しながら発信していきます。
公衆衛生や疫学を専門とする立場から、仕事や現場で役立つ考え方も共有できればと思っています。
本年もよろしくお願い致します。
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✒️筆者紹介
理学療法士/修士(リハビリテーション学・公衆衛生学)
回復期リハビリ病院では病棟主任・教育主任を歴任。脳卒中後の機能回復と栄養管理の臨床・研究に携わる。
リハビリテーション医学の科学的根拠を追求すべく、大学院にてリハビリテーション学の修士号を取得。さらに、臨床研究・疫学・統計解析の実力を体系的に習得するため、公衆衛生学修士(MPH)を取得し、医療データの分析にも軸足を置く。
現在は、 医療リアルワールドデータ活用人材プロジェクト 東京大学履修コースで、医療の現場から得られる大規模データを用いた実証研究に取り組む。
臨床と疫学をつなぐ視点から、介入効果の可視化と医療政策への応用を目指している。臨床現場を離れ、医療研究開発センターのプロジェクトマネージャーとして新たな挑戦を始める。
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