おかあさんは港であれ #33|幼稚園の先生がくれた言葉
子育てをしていると、
何が正しいのかわからなくなることがある。
ときには方向がわからなくなって、
迷ってしまうこともある。
そんなとき、
自分の進むべき方向を示してくれる、
羅針盤のような言葉。
みなさんには、そんな言葉はありますか?
私にはあります。
それが、
「おかあさんは港であれ」という言葉。
私の長女は、てんかんの持病がある。
知的な遅れや多動もあり、
てんかんの痙攣発作の頻度も多く、
片時も目を離すことができない。
そんな長女の幼稚園探しはとても難航した。
でも、ある幼稚園が加配の先生
(※特別な配慮が必要な子どもに対して、個別に対応するために追加で配置される先生)
を1対1でつけてくれると言ってくれた。
幸い、その幼稚園に入園することができた。
正直、最初は不安しかなかった。
でも、その先生がいつもそばにいてくれたおかげで、長女も私も、安心して過ごすことができた。
ただ、普通の幼稚園だったため、どうしても周りの子との差が気になってしまう。
行事に行けば、他の子たちは先生の話を聞いてみんなで決められたことをしている。
でも長女は、自由に走り回り、
教室を出ていってしまうこともある。
行事のあと、
私はいつもがっくりしてしまった。
しばらく何も手につかないほど、
落ち込んでしまうこともあった。
そんな中でも先生は、
毎日こう言ってくれた。
「おかあさん聞いて〜!
今日はね、長女ちゃんこんなことしてて
本当に面白かったの〜!」
「今日はね、長女ちゃん、
ちゃんと列に並んで順番待てたんだよ!
すごく頑張ってたよー!」
先生はいつも、本当に楽しそうに
今日の出来事や長女ができたことを
笑顔で話してくれた。
その姿を見ているうちに、私はだんだん、
その時間が楽しみになっていった。
私の相談にも乗ってくれて、
「長女ちゃん、多分こんなふうに考えてるんじゃないのかな?」
と、長女のことをとても細かく観察して気づいたことを教えてくれた。
親の私がハッとさせられるような言葉を、
たくさんかけてくれた。
ある日、私は先生にこんなことを言った。
「私は長女のできないところばかり見てしまう。でも、どうしたらいいのかわからない。
私は至らないことばかりだし、
何をしてあげたらいいのかもわからない。」
そんな私に先生が言ってくれた言葉がある。
「長女ちゃんは幼稚園で、
いろんなことができるようになったよね。
毎日、本当によく頑張っていると思う。
だから家では、おかあさんは安心して帰ってこられる場所であればいいのよ。
港のように。」
そんな言葉だったと思う。
ハッとした。
私は、
あれをやってあげなければいけない。
これができるようにしなければいけない。
そんなふうに、
自分も長女も責め続けていた。
できないことばかりに目を向けて、
ずっと焦っていた。
でも長女は、
幼稚園で毎日たくさん頑張っていた。
たくさん学んで、たくさん成長していた。
それは人よりも、ゆっくりかもしれない。
でも本当は、
そこに目を向けてあげるべきだった。
幼稚園でたくさん頑張ってきた娘が、
安心して帰ってこられる場所。
それこそが、私の、
おかあさんのあるべき姿なんだと。
帰る港があるからこそ、
安心して海に出られるのだと。
この言葉は、
今でも私の宝物であり、支えでもある。
道に迷ってしまったとき、
進むべき方向を示してくれる私の羅針盤。
子育ては、迷いながら、悩みながら、
試行錯誤しながら進んでいくもの。
効率とは無縁で、
いつも遠回りしてばかりで、
止まったり進んだりの繰り返し。
それが進んでいるのか、
戻っているのかさえ、
わからなくなることもある。
暗闇の中を
彷徨ってしまうこともあるかもしれない。
でもそんなとき、
自分の心の中にある大切な羅針盤が、
進むべき方向をそっと示してくれたなら。
きっと、正しい場所にたどり着けると、
私は思っている。
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