看板はZEN、舌はデリー——コンノート・プレイスで「すき焼き」を頼んだ夜【海外での記憶#16|インド編-01】

白い列柱が円を描くコンノート・プレイス。
一日歩き回って腹は空っぽ。カレーは今日はもういい。
目に入ったのは、看板の「ZEN」。
——禅? 日本?
考えるより先に足が中へ。
店は広い、二階まである。
やば、高級?
いまさら引き返せない。案内されるまま二階へ。
メニューを開く。
高い皿もあるが、手頃も混じる。
「FRIED RICE (チャーハン)」は安心価格。
ただ、それだけでは物足りない。
視線が止まる。
「SUKIYAKI CHICKEN」。
スキヤキ。スキヤキ。スキヤキ。
値段もギリ出せる。——よし、頼む。

まずはチャーハン。
湯気と油の香り、米はぱらり、青いピーマンが軽く噛む。
ピーマンの量は多く感じたけど、素直にうまい。
塩加減もちょうどよい。
米はインディカ米だったと思うけど、相性は良い。
日本人の私でもおいしく食べられた。
日本の中華定食屋さんのチャーハンに近い味。
そして、
ジュッと鳴る鉄皿のすき焼きへ。
卵黄が中央でとろり。
白菜、豆腐までは日本と同じ。
それなのに何かが違う。
メインの肉が、
日本で一般的な牛肉ではなく鶏肉だ。
確かにメニューにはチキンと書いてあるけれど、
口に運ぶと「味の文法」が変わっているのが
はっきりわかる。
「インド風のすき焼き」だ。
インドでは宗教的な理由から牛肉を避ける人が多く、
外食の「すき焼き」は、
主役が鶏やマトンに置き換わっていることが多い。
日本人の私には少し違和感があったけど、
まぁー食べられた。
メモ。
看板は日本、舌触りはデリー。
名前と中身の距離を、少し面白がれた夜。
付録|
CPの「ZEN系=パンアジアン」あるある
コンノート・プレイス(CP)で、「ZEN」など和語の看板を見ても、中身はパンアジアン(中華・日本・タイなどアジア各国ぜんぶのせメニュー)のことが多め。
なかでもインド式中華(=Chindian/チンディアン)が「核」。
ここで言う「ZEN系」はチェーン名ではなく、「パンアジアン(中華・日本・タイ等ミックス)」型を指す通称です。
1) メニューでよく見る名前
【インディアン・チャイニーズ=インド × 中国系の味(南の地方の影響)】
Chili Paneer(チリ・パニール)
インドのカッテージチーズをピリ辛で炒めた定番前菜。
Veg Manchurian(ベジ・マンチュリアン)
野菜団子の甘辛ソース(から揚げ→たれ絡め)。
Hakka Noodles(ハッカ・ヌードル)
細麺の「焼きそば」系。
Schezwan(シェズワン)*表記ゆれあり
赤いチリソース(唐辛子+にんにくの辛旨)。
Hot & Sour / Sweet Corn Soup
辛酸っぱ/コーンのとろみスープ。
【インド × チベット/ネパール(ヒマラヤ圏)】
Momos(モモ)
ヒマラヤ圏の蒸し餃子。
【提供スタイル|Sizzler(シズラー)】
料理のジャンルではなく、
熱々の鉄板で“ジュッ”と出す方式の呼び名。
米国のステーキ(サーロインなど)を鉄板で出す演出から広がったと言われ、インドでは中華/パンアジアン/和風でも使われる。
※「シズラー」は熱々鉄板の“ジュッ”音(sizzle)が語源。
2) 「すき焼き」表記の“現地アレンジ”
主役のお肉:
牛ではなく鶏(チキン)やマトンが使われることがある。
味つけ:
日本の甘辛い割り下とは違い、
中華寄り・パンアジアン寄りの味になることも。
にんにく・青唐辛子・お酢のアクセントが出やすい。
鉄板の「ジュッ」というシズラー音が食欲を引っぱる。
卵黄のせ:
卵を添える「演出」だけは残る場合あり。
→ 名前は同じでも、味は別物になりやすい。
3) 価格と量の目安
観光客の体感は中価格帯に収まりやすい。
屋台より高く、ホテル直営高級店ほどではない。
炒飯・麺・ベジ系は比較的お手頃。
寿司・海鮮・お酒で上振れしやすい。
一皿がシェア前提の量で、人数がいるとコスパ良く収まることも。
4)表記とサービスの小ネタ
メニューには丸いアイコンがあり、緑=ベジ、赤=ノンベジ。
水はボトルを頼むのが普通。
辛さ控えめ(less spicy)は通じる。
※内容は公開メニューや複数レビューをざっと確認した一般的な傾向の要約です。店や時期により例外があります。
*これは2017年の記録です。
海外での記憶
#17|夜の終わりは朝の別名——パハールガンジ・メインバザール|インド編-02【進む→】
#15|見えにくかったものが、見えやすくなった夜——カンボジア宮廷舞踊のアプサラ|カンボジア編-03【戻る→】
#00|目次:エジプト編 /カンボジア編/ラオス編/ミャンマー編/インド編
