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【小説】めんこい座敷わらし咲く #26 『「死にたい」と言った日、僕の机は撤去された』

僕はプロジェクトから放り出されてすっかり落ち込んだ。
まったく何もやる気が起こらなかったよ。

僕から仕事を奪った直属の課長ではなく、その上の部長と技術本部長(専務)に言って、精神的にきつくて、仕事できない。開発の仕事はもう無理だと言ったら、「まあ、ゆっくりやれや」ということになった。

僕は海外の特許の文献や、海外の業界紙などで注目の記事などを翻訳した。僕が翻訳したものなんか誰も読まなかったけどね。

特許には関連特許があリ、Ref.No.が列記してある。それを遡って行くと、僕の開発していた分野とはずいぶん離れて、古い時代の意外なものにたどり着くことがあった。

例えば、人類初の有人動力飛行をやったライト兄弟の飛行機だ。

飛行する際の機体をコントロールする技術が主張されていた。なんらかで、僕のやっていた技術とライト兄弟の技術は家系図の20等親みたいに繋がっていた。

そういう仕事とは関係のない珍しい実験手法や、評価の方法を文献で発見して、小躍りして、僕は翻訳を楽しんだ。

1年ほどそうやってぶらぶらした。
周りの目にはなんと移っていったんだろうね?

部長にそろそろ研究開発に復帰してほしいと言われた。僕にやってほしいことがあるらしい。

簡単な開発仕事をくれたけど、僕は全然興味がなかった。おまけに、以前のようなパワーが出ない。もどかしかった。

正月休みが9連休と長かったので、その間いろいろ余計なことを考えてしまって、うつが悪化した。その時与えられていた仕事の課題のこと、これから先どうやって生きていくのか?自己肯定感のかけらもなかった。

自信がなくて、貧乏ではないのに貧困妄想まで湧いてきた。もう死ぬことばかり考えていた。人に迷惑をかけないで死ねる方法はないかな?

親族が遺体を回収する手間や、賠償金を払わずに済む方法がないかに焦点を絞って探した。

正月明けは、何とか会社に這って行って、部長に「死にたい」気持ちがあるので、会社を休職させてほしいと言った。

部長がこれは大ごとだと専務(技術本部長)を呼んで個室で話し合いをした。

専務はいろいろ状況を聞いた。
でも、僕の「死にたい」の言葉を聞いて血相を変えた。

「死にたい」という言葉を会社でするものではない。
言うと、上層部を刺激することになる。

実際に、かつて会社でビルの4階から飛び降りて、自殺を計って、大騒ぎになったことがあるらしい。

今にして思えば、あの時「死にたい」と言わずにメンタルの不調だと言っておけば、1年でも2年でも休職しておれば、まだ研究開発職場にとどまっていたかもしれない。とにかく休養が必要だったんだ。

でも咲くと出会うことなかったけどね。

専務は、即座に人事部の課長と労務部のこの種の問題の担当者を電話で呼びつけた。僕は彼らにも同じことを話した。

その時の人事課長の言いぐさと態度はいま思い出しても腹が立つ。

「へえ~!」めずらしいものを見たという目で薄ら笑いを浮かべて僕を見ていた。

専務も専務で、今まで「ゆっくりしたらええ」と言っていたのに、その人事課長に「すまんな、嫌なもの見せてしもてすまんな。気分悪いな。ごめんな。」と言った。

僕はその場で休職3か月が決まり、休職後には新しい、頭を使わない簡単な職場を用意しておくということになった。

その日のうちに僕の目の前で、荷物がまとめられ、机が撤去された。

その日は産業医が来る日ではなかったので、産業医不在で話がすすめられることになった。

そのことに対し、後日、産業医は産業医抜きで話がすすめられたことにかんかんに腹を立てていたらしい。

僕のことを思って怒っているのではなく、自分のメンツが潰されたから怒っていた。

僕は、精神病院に入院した。


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