見出し画像

【小説】めんこい座敷わらし咲く #25 『父と咲くのマッチングアプリをめぐる攻防』

咲くです。
うちのお父さんは気が若くて、若い女性が大好きです。
先日、担任の女の先生と父と私で懇談がありましたが、案の定ついてきました。懇談や学校行事は母ではなく、父が時間を作って必ずやってきます。
 
担任の先生は綾瀬はるか似のすんごい美人で、お父さんはもうデレデレなのです。
 
担任の先生の前で、デレデレなのはまだマシで、学校に行く前に駅前のロータリーでバスを待つのだけど、ほんとに恥ずかしいので困ります。
 
朝のバスロータリーには、バスを待つ女子校生が何百人といます。
「咲く!見てごらん。実に壮観な眺めだなあ!女子高生たちの生足は世界一美しい。長いのもあれば、短いのもある。太いのもあれば、細いのもある。朝日に輝いて、林立している若々しい木立だ。まるで、青春のモニュメントだあ!」
馬鹿じゃない?何、感動してるのよ。そんな大きな声で!私が恥ずかしいじゃん。
 
うちには家族共用の大画面のデスクトップPCがあって、何やらお父さんが嬉しそうにカチャカチャ入力していました。
 
画面には4人の女性が移っていました。
私は目がいいので、相手が4人のうちの1人、ジュリちゃんだとわかりました。
きれいで、肉感的な人です。
私はそれとなく、背後からお父さんを見張りました。
お父さんは全く気づきません。
 
ジュリちゃんは遊び慣れた感じの人です。
黒のミニスカ、ノースリーブを着ています。
私は、マッチングアプリのことを知らなかったけど、ひと目でマッチングアプリだとわかりました。「いただきりりちゃん」とかニュースでやってたじゃん。
 
お父さんは、ジュリちゃんがいたく気に入ったようで、ジュリちゃんのメールの文体がサリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』のホールデン君を彷彿させるから、一度読んだらいいとか、アマゾンからの画像を貼って紹介していました。
ジュリちゃんは「はあ、ありがとうございます」と礼を言いました。
 
お父さんは、マッチングアプリのことを全然理解してなくて、若い女の子とチャットができるサイトくらいに思っていました。

そのうち、ジュリちゃんが相手してくれなくなりました。
お父さんは悲しんでいました。
 
動きがありました。
ジュリちゃんの方から会ってほしいと言ってきました。

お父さんは狂喜乱舞しました。
 
「ランチならサポート2」
とジュリちゃんは言います。
 
お父さんは、サポート2の意味がわからなかったので、ジュリちゃんに直接聞くのは恥ずかしいので、生まれてはじめてヤフー知恵袋に質問しました。

30分も経たないうちに回答が10も集まりました。

そのうち5人はそんな事も知らないで、一体貴様はそのトシまでどうやって生きてきたのかね。とお父さんを馬鹿にしました。

3人がお姉さんに渡すお礼のことだと教えてくれました。2は2万円のことだとはじめて知りました。

そのうちの1人があと2払ったら、ホテル代はお父さん持ちで、楽しめますよ、それは交渉次第だというようなことを書いてきました。

お父さんはそれに「はい、頑張ります」と答え、この言動がのちのち命取りになりました。

お父さんはよっぽど慌てていたのかハンドルネームも本名で登録していました。

お父さんは、ある土曜の昼下がりに、ジュリちゃんと焼肉屋で合うことになりました。
 
私は、お父さんのパスワードとか全て記憶したのです。

私は、これは大変なことになったと思い、お母さんに報告しました。
 
お母さんは激怒し、お父さんを叱りつけ、お父さんの手持ちのお金を全部取り上げ、向こう6か月の小遣いを凍結してしまったのです。
 
お父さんは、後で私を呼びつけ、私にビンタしました。

お父さんが私に手を上げるのは、はじめてです。よほど悔しかったのでしょう。

私も相手が攻撃してきたら、反射的に攻撃するタイプなので、お父さんの手と相打ちくらいに、私の手がお父さんの顔をパシッとヒットしました。
 
「咲く、こんなのはスナックに行って、お姉ちゃんと酒飲んでカラオケ歌うのと何も変わらへんねんで。こんなことで、あり金、全部奪われたら、男として何の楽しみもあらへんやないか。」

「でも、お父さん、ニュースでいただきりりちゃんが話題じゃないの?お父さんはお馬鹿だから、騙されるんじゃないかと思って心配したのよ。」

「お前。お年玉とか、郵便貯金に預金してるやろ?有り金、全部おろして来い!」

「お父さん。通帳は見つかったけど、印鑑がないの。」

「なんや!お前たったの11万円、そんなはした金しか持ってへんのか?まあええわ。とにかく全部おろしてこい。印鑑なんか、そんなもん、郵便局で相談してこいや!」
 
私は急いで、郵便局に行きました。でも印鑑の登録に2週間かかると言われました。

父は万事休すというような顔をしていました。
 
印鑑はお母さんが持っていたのです。
 
私の貯金もほとんどは私のためにお母さんが作った投資信託に回していたそう。
 
お父さんは、ジュリちゃんに会えなくなった事情を話しました。
そしたら、ジュリちゃんは、5千円にまけてくれました。
ただしお茶だけだって。
 
でも、お父さんはその5千円すらなかったのです。
私はお父さんがとても憐れに思えて、貸してあげました。
 
お父さんはそのお金でジュリちゃんと会ったのかと思いましたが、マオちゃんというどこかの大学の大学院で日本文学の博士課程で勉強している子に会いました。

お父さん自身は高学歴だけど、下品で、お馬鹿で、女性はまず顔を見て、次におっぱいをみて、次に脚を見て、学歴を見ます。知的な感じの女性に弱いのです。基本的に女子アナが大好きです。

15分おまけしてもらって、45分喋ったらしい。
その女性は源氏物語を研究してるらしいけど、お父さんのほうが詳しくて、その女性は同時代の清少納言や、和泉式部のこともあまり知らなくて、さらに現代文学は何も語れなかったようで、退屈だったんだって。


あらすじ

第1話

前作

次回作




マガジン


いいなと思ったら応援しよう!