運慶仏をつくる【第19話】岩座の再考
東京国立博物館「空海と真言の名宝」に行ってきた
飛鳥園風の撮影のまえに、もうひとつ手を加えることにした。
仏像の台座となる岩座の塗りなおしだ。
きっかけは、東京国立博物館で2026年の夏に開催された弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」の拝観だ。
真言宗各派の国宝や重要文化財を中心に出展されていて、見どころは各地の秘仏が結集したことなんだが、筆者の目的は、金剛峯寺の深沙大将立像と執金剛神立像だ。いずれも快慶の傑作である。
じつはこの二像、2017年春に奈良国立博物館で開催された特別展「快慶 日本人を魅了した仏のかたち」で拝観しているはずなんだが、まったく覚えていない。
困ったものである。
懲りずに再び拝観する気になったのは、岩座が気になってしかたがなかったからだ。
模型の岩座は、次のように塗ってある。
興福寺中金堂風の岩座は、枯れた丸木らしさをだしたくて、つや消しのサンドなどの明るいブラウン系で塗った。
実際、2025年秋に東京国立博物館で開催された特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」の四天王像の台座は、いかにも枯れた丸太を荒っぽく組み立てた印象だったし、図録にも「明治時代の後補」*1 と書かれていたので、新しい材を組み合わせた雰囲気にしたかったのである。

一方、海住山寺風に塗った像の岩座は、風化前の表現ということで、漆の台をつやありのブラックで塗り、その上の丸木は半つや消しのマホガニーやレッドブラウンなどの暗いブラウン系でまとめて、さほど風化していない状態にした。

ただ、海住山寺風の岩座は、像そのものが極彩色なのだから、岩座も単純なブラウン系ではなく、それなりに彩色されていたんじゃないかとずっと気になっていた。
そんなときに特別展「空海と真言の名宝」が開催されるという情報が各メディアに紹介されはじめ、たまたま見た深沙大将と執金剛神の写真で、岩座に緑色の彩色が残っていることに気がついた。
これは実見しなければと、いそいそと出かけていったところ、ほんとうに見事な緑青と群青が残っていた。
岩座のモチーフは、深沙大将がうねる「波」で、執金剛神がゴツゴツとした「岩」なのだが、波も岩も緑青&群青で彩色していたのなら興福寺中金堂の四天王の「丸木」がグリーンやブルーでもいいじゃないか。
ということで、こんなふうに塗ってみた。

今度こそ、完成だ。
次こそは、ほんとうに次こそは、飛鳥園風の写真を撮ろう。
じつは既に試行錯誤中で、今回はその1枚を予告編として見出し画像に使ってみた。

*1 岩座の芯材が造立時のものであることから、明治時代に補修されているが後補ではないという見解が最近では主流になりつつあるようだ。
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