"何が嫌か"は分かるのに"何が欲しいか"が分からない人へ
「今の仕事、なにが不満かはいっぱい出てくるんです。給料が低い、残業が多い、異動した部署の上司とイマイチ合わない。でも、じゃあどんな仕事がしたいのかと聞かれると、全然答えられなくて…分からなくなってしまいました」
30代前半のAさんは、カウンセリングでこうお話しされました。希望条件を聞かれて出てくるのは「残業が少ないところ」「人間関係が良いところ」といった、嫌なことがない条件ばかりです。
「どんな仕事でどんな成長したい?」「何を実現したい?」という問いには、言葉に詰まってしまう。
不満はあるのに、自分が求めるものが見えない。
この状態で転職活動を始めても、結局どの会社も決め手に欠けて見えます。そして気付いたら「なんとなくマシ」な選択を重ねながら、最近巷でよく言われているキャリア迷子になっていくのです。
「回避」と「追求」はまったく違う
キャリアカウンセリングで、20代後半から30代前半の相談者によく見られるのが、この「回避型」に偏った思考です。
何が嫌かは明確。
でも何が欲しいかは分からない。
似ているようで、この二つは本質的に違います。嫌なものを避ける選択は消去法。欲しいものを選ぶ選択は、積極的な意思。
とてもストレートな表現になってしまいますが、前者で選んだ仕事はマシな環境。後者で選んだ仕事は自分が選んだ人生になります。
では、なぜ多くの人が、不満は言えても、ニーズが言えないのでしょうか。
「欲しいもの」が分からない3つの理由
①「わがまま」だと思ってきた
日本では、学校でも職場でも、「与えられた環境で頑張ること」が美徳とされてきました。
「自分は何がしたいのか」を問われるより、「いまある場所でどう努力するのか」と求められる。その結果、不満に気付く感覚は育つけど、自分の欲求を言語化する筋力は育たないまま大人になってしまうのです。
欲しいということに、どこか罪悪感があるから、それがブレーキになります。
②「正解」を探してしまう
学校では、常に”正解”がありました。だからキャリアにも正解があると思いがちです。
「自分が何をしたいか」ではなく、「何をすべきか」「何が正しいか」を探してしまう。でも、「なにがしたいか」という問いには正解はありません。正解を探し続ける限り、答えは永遠に見つかりません。結果として「分からない」という停滞が続いてしまうのです。
③単純に、まだ試していない
そして何より、自分が何を求めているのか分からないのは、単純に「まだ試していない」からかもしれません。
食べたことのない料理が好きかどうか分からないように、経験していない働き方の良し悪しは想像だけでは判断できません。
分からないのは能力がないからではなく、まだ材料が足りないだけなのかもしれません。
「分からない」から始める4つのステップ
①不満を翻訳する
「残業が多い」
→本当はどんな時間を大切にしたい?
「上司と合わない」
→どんな関係性なら心地がいい?
不満の裏側には必ずニーズがあります。愚痴で終わらせず、「本当は何が欲しいのか?」と問い直すことで、ニーズの輪郭が見えてきます。
②価値観の棚卸しをする
紙とペンを用意して、こんな問いに向き合ってみてください。
これまでの人生で、充実していた瞬間は?
褒められて嬉しかったのはどんな時ですか?
つい時間を忘れて没頭したことは何ですか?
「何をしたいか」より先に、「何を大切にしてきたか」を思い出すと、輪郭が見え始めます。
③小さな実験を重ねる
いきなり転職しなくてもいいのです。副業、社内異動、ボランティア、勉強会への参加など。
小さな実験は、リスクを抑えながらで判断材料を増やせます。
「マーケティングに興味があるかも」と思ったら、まずはSNS運用を手伝ってみる。「人材育成に関心がある」なら、後輩のメンター役を引き受けてみる。
実際にやってみて初めて、「思ったより楽しい」「やっぱり違う」という体感が得られます。
④「分からない」を受け入れる
そして何より大切なのは、「今は分からない」という状態を許容することです。焦って答えを出そうとすると、安易に「年収」「安定」といった分かりやすい軸に飛びつきがちです。
でも、自己理解は、一度では完成しません。経験して振り返ってまた試す。その経験学習のプロセスそのものが、キャリアを形づくります。
回避から追求へ
完璧な職場はありません。不満がゼロの環境も恐らく存在しないでしょう。でも「何を追求するか」が見えていれば、多少の不満は許容できます。目指すものがあるから、困難も通過点になる。
「何が欲しいか分からない」のは、恥ずかしいことではありません。それは、これから見つけていくものです。あなたが避けたいものの裏に、本当はどんな願いが隠れていますか?
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