これまで歩んできた道 付録②憲法改正問題対策本部事務局長編
こんにちは。
アレテーを求めて~
今日もトコトコ( ・ω・)
弁護士の岡本卓大です
自己紹介として、2023年にアメブロで公開した
これまで歩んできた道
シリーズを再編集したものを投稿します( ・ω・)
簡単に私の略歴も書いておきます。
(略歴)
1976年11月15日 兵庫県三原郡南淡町(現在の南あわじ市)で生まれる。
1995年3月 兵庫県立三原高等学校卒業
1996年4月 白鴎大学法学部入学
2000年3月 白鴎大学法学部卒業
2004年 司法試験(旧司法試験)合格
2005年4月 司法修習(実務修習地・さいたま)
2006年10月 弁護士登録
2006年10月~2007年9月 埼玉総合法律事務所(法テラス・スタッフ弁護士養成)
2007年10月~2011年12月 法テラス川越法律事務所(法テラス・2期生スタッフ弁護士)
2012年1月~2014年6月 埼玉総合法律事務所(経費分担弁護士)2014年7月~2022年12月 あさか総合法律事務所代表弁護士
2022年12月 アレテー法律事務所に名称変更
(弁護士会会務)
2011年度~2012年度 埼玉弁護士会東日本大震災対策本部事務局次長
2014年度~2016年度 埼玉弁護士会子どもの権利委員会委員長
2017年度~2019年度 埼玉弁護士会憲法改正問題対策本部事務局長
2020年度 埼玉弁護士会副会長
(前回のお話)
これまで歩んできた道 付録②憲法改正問題卓作本部事務局長編
『これまで歩んできた道』シリーズの本編は、全10話で終了しました。
ここからは、「付録」として、埼玉弁護士会での会務活動歴について、書いてみたいと思います( ・ω・)
子どもの権利委員会委員長を終え、さあやれやれと思っていたところに、前任の憲法改正問題対策本部事務局長からの、後任引き受けてほしいという依頼。
私が、あさか総合法律事務所を開所したまさにその日に安倍晋三内閣によってなされた集団的自衛権行使を認める閣議決定。
そして、それに基づく、安全保障法制の強行採決。
特に安倍晋三総理(当時)は、憲法改正に異常とすら思える執念を燃やしていた総理大臣でした。
国政選挙の結果も、憲法改正に賛成するであろう政党が衆議院・参議院の両院の3分の2を超える議席を確保していたという危機的な情勢。
このままでは、国民の望んでいない形で十分な情報も与えられないまま憲法改正の発議、国民投票が実施される事態もあり得ると思われる危機意識の下、私は、憲法改正問題対策本部の一般本部員(委員)も執行部もすっ飛ばして、憲法改正問題対策本部の事務局長を引き受けることとなりました。
(憲法改正問題対策本部)
立憲主義、国民主権、基本的人権の擁護、平和主義といった憲法の基本原理尊重の立場に基づき、憲法改正に関する議論においてこれらの憲法の基本原理を市民に広めると共に、これらを堅持し発展させ、憲法の基本原理に反する改憲には反対し、このための具体的な諸活動を企画・実行していきます。
埼玉弁護士会の憲法改正問題対策本部の本部長は、埼玉弁護士会会長です。会長経験者の方が本部長代行となります。
そして、実質的な細かい作業は、事務局長の肩書きがついた弁護士がやります。
つまり、事務局長は、究極の雑務係です( ・ω・)
私は、2017年度から2019年度の3年間、憲法改正問題対策本部の事務局長を務めることとなりました。
ちなみに、各年度の人事は、
2017年度 本部長(山下茂会長)、本部長代行 石河秀夫元会長
2018年度 本部長(島田浩孝会長)、本部長代行 山下茂前会長
2019年度 本部長(吉澤俊一会長)、本部長代行 島田浩孝前会長
うん、この環境で、3年も事務局長やってたら、そりゃ、弁護士会会務にくわしくなるわな(^^;)
たくさんの若手後輩弁護士に囲まれていた、子どもの権利委員会委員長時代と、180度変わって、今度は、会長・副会長の執行部や執行部経験者ばかりがメンバーの対策本部を、なぜか、ヒラ会員のわたくしが、事実上、仕切るようになってしまいました。
さて、最初の年、2017年度。
共謀罪を創設する組織犯罪処罰法の改正が行われようとしていました。
埼玉弁護士会は、衆議院で共謀罪法案が可決されたまさに同日、総会決議を出します。
埼玉弁護士会は、埼玉県内で弁護士登録している全弁護士が加入している強制加入団体です。
弁護士資格を持った国会議員も、もちろん、弁護士会の会員です。
そして、国会議員である弁護士と交流がある弁護士や与党を支持する弁護士も当然います。
そのため、通常は、総会で政権に反対する決議をあげるときは、たいていは、反対や棄権という投票行動をする人がいるのがほとんどです。
しかし、この
いわゆる「共謀罪」を創設する組織犯罪処罰法の改正に反対する総会決議は、なんと一人も反対、棄権も無い全会一致で可決された総会決議でした。
政治的信条や立場に関係無く、弁護士として、反対せざるを得ない。
それが埼玉弁護士会の意思決定でした。
この総会決議を受けて、埼玉弁護士会は、150名以上が参加した大規模な共謀罪反対パレードを浦和で実施します。
当時は、弁護士会がパレードを行って反対運動をするというのは、異例なことでした。
で、普通なら、ここで終わるわけです。
総会決議を出して、パレードまでやった。
あとは弁護士会としてはどうしようもない。
普通は、そうなるはずなのですね。
だが、しかし!
埼玉弁護士会には、共謀罪の成立をなんとしても阻止しなければならないと考える熱き弁護士がいました。
私の尊敬するある女性弁護士が、パレードの後、山下会長含めて食事しているときに、こう主張します。
共謀罪反対の市民集会をして、国会前での座り込みもして、共謀罪は絶対に阻止しないといけない!
みんな、それはすべきとは思うものの、現実問題、そこまでは、できんよなぁ・・・
これが東京の弁護士会だったら、たぶん、会長が「ムリ」と言って終わりだと思うんですよね。
でも、山下会長は・・・
わかった。やろう!
会長、本気っすか!?
誰が準備すんの( ゚Д゚)!?
ここから、埼玉弁護士会の共謀罪反対のばく進が始まります。
言い出しっぺの女性弁護士を中心に、共謀罪反対の大集会の企画を開始します。
そして、パレードから1週間、実質的な準備時間数日で、川越、浦和の二つの共謀罪反対集会が企画されます。
対外的な企画発表がされてから1週間以内の二つの集会、しかも、川越は、一般会員に告知されてから三日後に集会という、とんでもないスケジュールです。
ウェスタ川越で開催される共謀罪反対集会は、我が憲法改正問題対策本部の予算を使い企画します。
浦和パルコで開催される共謀罪反対集会は、刑事司法改革問題対策委員会の予算を使い企画します。
企画の中心メンバーは、埼玉の熱き刑事弁護人集団、刑弁委員会です。
わたくしは、広報を一手に引き受けることになりました。
えっ、三日後の市民集会に200人集める・・・
まじっすか( ゚Д゚)
弁護士に参加を呼びかける電話かけをしつつ、市民向けの集会告知チラシを大急ぎで作ります。でも、印刷したチラシを配る時間なんて、当然ありません。
どうしたか?
・・・
各メーリングリストで、市民に届くような形で広げてもらうように、拡散依頼をします。
ツイッター(現在のX)をやっている弁護士には、ツイッターで広めてもらうように依頼します。
弁護士会と交流のある市民団体や弁護士会の市民集会に参加してくれたことのある方たちには、弁護士会から、案内を送ります。
集会の企画自体が企画の真っ最中、情報が更新されたら、またそれを発信します。
情報が更新される度に、担当副会長に確認をお願いしていましたが、担当副会長が途中から、「もう、目がしょぼしょぼして読めない・・・大意変更無ければ、信頼してるから岡本さんの判断で出して・・・」と完全に対外的広報を一任されてしまいまいした。
当時は、朝霞台の終電が無くなってから、タクシーで川越の自宅に戻る日も何度もありましたね・・・
雨宮処凛さんをゲストスピーカーにお招きしてのウェスタ川越の共謀罪反対集会は、なんとたった3日で、200人強の市民に参加してもらうことに成功しました。
そして、週明けの浦和パルコの共謀罪反対集会のチラシを、ちょうど週末にあったオール埼玉総行動の北浦和集会で配布するのですが・・・
いつの間にか、越谷が増えてる(笑)
なんと、川越の共謀罪反対集会をやっている間に、第三の集会、市民会館越谷で、木村草太さんをゲストスピーカーとする第三の共謀罪反対集会が企画されていました。
終わってみれば、たった10日ほどの間で、3つの集会。
しかも、すべて数百人の参加があった共謀罪反対集会を成功させました。
これ、絶対、他の弁護士会には真似できないと思います(笑)
我々は、総会決議出して、パレードやって、市民集会やるだけの自己満足集団ではありません。
3つの集会をやりきり、参議院での強行採決がされるその日まで、国会議事堂を全国から集まった多くの共謀罪に反対する人たちと共に、毎日、囲みます。
それに必死に答えようとする野党議員たちの姿も忘れません。
どこまで報道されたかは、当時は、テレビも見る間が無かったので知りませんけどね( ・ω・)・・・
結局、憲法にも、刑法の罪刑法定主義にも反する、有害無益な共謀罪創設法は、成立してしまいました。
共謀罪法成立後に、熊谷でも、「スノーデンの告発」の映画上映会を行いました。
共謀罪の立件件数は、現在に至るまで0件。
でも、政権批判する者への弾圧に悪用できる治安維持法のような使い方ができる法律です。
共謀罪反対運動のときよりも、安保法制反対運動の国会前はよりすごいものでした。
国民は、もう忘れてしまったんでしょうかね・・・?
それが元で大増税もされそうなのに。
忘れてしまったのだとしたら、とても権力者にはやりやすい国ですね・・・
共謀罪のときのことが長くなりました。
次の2018年度は、埼玉弁護士会は、自衛隊明記案に反対する総会決議を出すことになります。
実は、この総会決議を出そういう話が出たのは、2018年3月だったと思います。
しかし、私が原案を起案するのに、数ヶ月を要しました。
共謀罪の場合は、「憲法に違反する」ということが弁護士会としては言いやすい問題でした。
しかし、「憲法改正」の一政党が出した案について、果たして弁護士会が反対という意見表明をしても良いものなのか・・・まずは、そこに悩みました。
悩んだものの、起案をして、その案を元に、埼玉弁護士会で、なんども会員集会を行います。
川越、越谷、熊谷の各支部の例会にもおじゃまして、各支部所属の会員たちとも、率直に意見交換しました。
その結果
自衛隊を憲法に明記する憲法改正に反対する総会決議
が、圧倒的賛成多数で採択されます。
引用させていただきます。
(埼玉弁護士会ホームページより引用)
自衛隊を憲法に明記する憲法改正に反対する総会決議
第1 決議の趣旨
自衛隊を日本国憲法に規定することを内容とする憲法改正案については反対する。
第2 決議の理由
自衛隊明記案の発表
2018年3月25日,政権与党(自由民主党)は,党大会において,憲法改正についての方向性を示した条文イメージ(たたき台素案)を元に憲法改正の議論を進め「憲法改正原案」を策定し国会へ提出することを目指すことを決定した。
その中で,憲法9条については1項及び2項をそのまま残した上で,9条の2として「①前条(9条)の規定は,我が国の平和と独立を守り,国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず,そのための実力組織として,法律の定めるところにより,内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。②自衛隊の行動は,法律の定めるところにより,国会の承認その他の統制に服する」という条文を加えて自衛隊を日本国憲法に明記するという案が示された(以下,これを「自衛隊明記案」という)。
しかし,日本国憲法の恒久平和主義・基本的人権尊重主義などの観点からすると,この自衛隊明記案には次に述べるとおりの重大な問題点が数多くあることを指摘しなければならない。恒久平和主義の観点から
恒久平和主義の意義
1928年の「不戦条約」は国際紛争解決のために戦争に訴えることを禁止し,国際連合憲章では「国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない」(同2条3項),「武力による威嚇又は武力の行使を,いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも,また,国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と規定され(同条4項),国際紛争解決のための武力行使・武力による威嚇が禁止された。
日本国憲法の恒久平和主義,なかでも9条2項の戦力不保持規定は,これら不戦条約や国連憲章をさらに推し進めた規範であり,それは,人類滅亡に直結する核兵器の出現を受けた現代における国際紛争解決の指針として極めて先駆的であり,普遍的意義を有する。
そのような理解・確信のもと当会は,2008年5月24日開催の定時総会において,日本国憲法の恒久平和主義堅持等を求める総会決議を採択している。現行安全保障法制下の自衛隊と憲法9条2項
現行安全保障関連法制下での自衛隊
集団的自衛権の行使を一部容認する2014年7月1日付け閣議決定により,従前の集団的自衛権に関する政府解釈は変更され,それを前提として2015年9月19日には新たな安全保障関連法制が制定された。そして,2016年3月29日の同法制施行に伴い,現在の自衛隊には,「重要影響事態」における後方支援活動ないし「存立危機事態」における集団的自衛権行使に関わる任務が新たに付与され得ることとなった。
しかし,このような現行の安全保障関連法制のもとでの自衛隊は,従来の政府見解のもとで9条2項の「戦力」にあたらないとされてきた「自衛のための必要最小限度の実力」という枠組みを超えた組織に変貌したとみなければならない。それは,本邦外において集団的自衛権の名のもと他国軍隊の武力行使と一体化する活動までもが可能となった実力組織なのである。
そのような自衛隊が憲法に規定された場合,その規定と9条2項とは矛盾・衝突を来すこととなる。国民の「自衛隊」に関する意識
他方で,現在の国民の多くが認識ないし理解する自衛隊は,9条1項及び2項のもとで「専守防衛」に徹する必要最小限度の実力組織であり,その具体的な活動は,大規模災害時の救助・復旧支援活動や国連PKO活動における人道支援活動が主なものであろう。
しかし,そのような自衛隊の存在やその活動を認めるために,自衛隊明記案のような「自衛の措置・・・のための実力組織として・・・自衛隊を保持する」という規定をわざわざ設ける必要はない。
むしろ,自衛隊明記案にある「前条(9条)の規定は・・・必要な自衛の措置をとることを妨げず」との規定により,やがては,「自衛」のためであれば「戦力を保持」することも許され,「武力の行使を行える」という憲法解釈をもたらす可能性が高い。
そのような事態は,9条2項の戦力不保持の規範を空洞化させることとなる。憲法9条2項の空文化・死文化
以上のとおり,自衛隊明記案のごとく自衛隊が憲法に規定された場合,「後法は前法を破る」という法の一般原則により,憲法9条2項の戦力不保持規定が事実上空文化・死文化することに繋がる虞が高い。
しかし,不戦条約から国連憲章に至る戦争違法化という国際社会の共通認識のもと,それをさらに進めて戦力の不保持まで規定した憲法9条2項こそが日本国憲法の恒久平和主義の核心条項である。
そうすると,自衛隊の憲法明記による9条2項の空文化・死文化は,日本国憲法の真髄ともいうべき基本原理である恒久平和主義を根底から覆すものである。
日本国憲法は,国民主権,基本的人権の尊重,恒久平和主義などの基本原理にもとづき成立したものであるから,これらの基本原理に反する改正はその限界を超える。
したがって,自衛隊明記案は日本国憲法の恒久平和主義と抵触し改正限界を超えるものとして許されないといわねばならない。
立憲主義の観点から
日本国憲法と立憲主義
日本国憲法は,基本的人権の保障を図るため権力を分立させ(41条,65条,76条),最高法規たる憲法に反する一切の法律や行政行為等を無効とする(98条,81条)。さらには,内閣総理大臣その他の国務大臣をはじめ権力分担者たる公務員に憲法尊重擁護義務を課している(99条)。
このように,日本国憲法は個人の権利・自由を確保するための権 力制限を本質とする立憲主義の憲法である。安全保障関連法制を追認することになる憲法改正
しかし,憲法上認める余地の無いものとして従来の政府解釈ですら否定していた集団的自衛権の行使を一部容認する2014年7月1日閣議決定とそれを受けて制定された安全保障関連法制は,憲法に基づく統治を要請する立憲主義に真っ向から違背するものである。
現行安全保障法制下の自衛隊を憲法に明記する改正というのは,立憲主義違反の状態を先行させ,それをあたかも追認するかのような事態を招来させることになりかねないものである。
このような意味で自衛隊明記案は,立憲主義をあまりに軽んじるものといわねばならない。国家権力を縛る憲法を権力担当者自らが変えようとする問題点
現在,主権者である国民の間で憲法改正が必要という活発な国民的議論が起こっているわけではない。ましてや,自衛隊明記案の必要性を基礎づける具体的な立法事実について,これまでに十分な説明がなされたとは到底いえない状態にある。
後述のとおり,自衛隊明記案は,自衛隊を国会・内閣・裁判所と並び立つ憲法上の機関としようとするもので,国家権力を拡大させることを指向するものといえる。
このように,具体的な立法事実も曖昧なまま,国家権力の制限を本質とする憲法規定を当の権力担当者がその権限拡大の方向で変えようとすること自体が立憲主義の精神に悖るものといえる。自衛隊を憲法に規定することの危険性
日本国憲法に明記されている国家機関は,国会(41条),衆議院及び参議院(42条),内閣(66条),最高裁判所(76条1項),会計検査院(90条)のみである。それ以外の国家機関については,憲法により授権された下位規範である法律により規定されている。
現在は法律上の組織である自衛隊を憲法に明記するということは,現実の実力組織である自衛隊を国会や内閣,最高裁判所などと同様に,憲法上の機関に位置づけるということを意味する。
実力組織である自衛隊を憲法上の機関とするのであれば,その基本的な権限,実力行使の限界や統制についても憲法上明確にされなければならないはずである。しかし自衛隊明記案は,自衛隊に対する統制は「国会の承認その他の統制」とするのみで自衛隊の基本的な権限すらも規定されず,その権限は憲法ではなく法律の規定に委ねられている。特に,自衛隊明記案では「必要な自衛の措置」は憲法9条に妨げられないとされているため,自衛隊は「必要な自衛の措置」であれば憲法9条の制約を受けることなく様々に装備を拡充し,あるいは他国と共同した諸活動の展開も可能となると解釈し得る。
しかも,自衛隊の「最高の指揮監督者」は「内閣の首長たる内閣総理大臣」とされていることから,内閣総理大臣は,行政府である内閣の長であるとともに,憲法上の機関となる自衛隊の「最高の指揮監督者」であるということになる。これでは,内閣総理大臣は内閣と自衛隊という憲法上並び立つ二つの機関の長を兼ねることになり,内閣総理大臣の憲法上の権限が強大化し過ぎることにもなる。
そもそも,天皇に統帥権・軍編成権があった明治憲法と異なり,日本国憲法には行政の範囲を超えて外国の主権領域での実力を行使する「軍事」に関する権限を政府に認める規定がない。
このような日本国憲法の体系のもとで,自衛隊という実力組織を政治部門・司法府と並び立つ新たな憲法上の機関にするとともに内閣総理大臣の権限強大化に繋がるという自衛隊明記案は,権力制限を本質とする立憲主義の観点から見て極めて危険なものである。以上のとおり,自衛隊明記案は立憲主義の観点からも極めて問題があるといわねばならない。
基本的人権尊重主義の観点から
基本的人権尊重主義について
大日本帝国憲法下で繰り返された戦争の惨禍に対する痛切な反省のもと日本国憲法は,憲法前文において,全世界の国民が恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存する権利を有することを確認している。
そのうえで日本国憲法は,すべての個人が「個人として尊重される」(第13条前段)ことを核心原理(個人の尊厳)とし,そのために基本的人権を侵すことのできない永久の権利として(11条,97条),基本的人権尊重主義をその基本原理のひとつとした。基本的人権,国民生活に与える影響について
同時に日本国憲法は,人権保障の限界を「公共の福祉」条項により規定しているが(12条,13条,22条,29条),自衛隊が憲法上の組織となった場合,その任務・活動は基本的に憲法に根拠を持つ国家機関の行為ということになるので,自衛隊の任務・活動に必要なことは「公共の福祉」に適うとして,国民の基本的人権を制限することを正当化する根拠として扱われる懸念がある。
例えば,自衛隊の活動を阻害するとして知る権利を含む表現の自由が制限され,居住移転の自由や職業選択の自由,財産権等の様々な基本的人権を制約する根拠として扱われる懸念がある。
また,自衛のために必要として現在以上に莫大な国家予算が自衛隊に割り当てられることへの歯止めが無くなり,その財源確保のために社会保障費等が削減され,増税がなされるなど国民生活にも大きな影響を与える事態が生じることも懸念される。自衛隊明記案は,基本的人権尊重主義という観点から見ても大きな問題を孕んでいるのである。
憲法改正手続法の根本的な欠陥について
日本国憲法の改正手続に関する法律(憲法改正手続法)は,2007年5月の成立時においても参議院で18項目にわたる附帯決議がなされ,2014年6月の一部改正の際にも参議院憲法審査会で20項目もの附帯決議がなされるなど多くの問題点が指摘されてきた。
日本弁護士連合会も,その「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」(2009年11月18日)において,①投票方式及び発議方式について,②公務員・教育者に対する運動規制について,③組織的多数人買収・利害誘導罪の設置について,④国民に対する情報提供について,⑤発議後国民投票までの期間について,⑥最低投票率と「過半数」について,⑦国民投票無効訴訟について,⑧国会法の改正部分について,という8項目を憲法改正手続法の改正すべき問題点として挙げている。
また,国民投票の14日前までのテレビ・ラジオ等における国民投票運動としての有料意見広告放送に何らの規制が加えられていないことや最低投票率の定めがなされていないことについては,同法成立時の参議院での附帯決議でも法施行までに検討を加えることが求められていたが,現在に至るまで,これらの問題点の検討は全くなされてきていない。
これらの憲法改正手続法が包蔵する根本的な欠陥の放置は,主権者である国民が主権者として憲法改正の是非について判断するための前提を奪うに等しい。加えて,近時,自衛隊の南スーダンでの活動やイラク戦争当時の活動に関する日報について政府は,一旦は廃棄ないし不存在と国会で答弁したものの,その後,いずれの日報も防衛省内に保管されていることが判明したとして訂正するに至った。
このような事態は,国民の関心事で当然に開示されるべき自衛隊の様々な活動実態に関する情報の多くが隠蔽されている可能性のあることを示す。そうであれば,主権者である国民は,自衛隊の活動実態に関する十分な資料もないまま,上記のような問題点の多い憲法改正手続法のもと自衛隊明記案に関する判断を求められるということになり,一層極めて問題である。以上のように,主権者である国民が判断する前提を欠く現状の憲法改正手続法の根本的な改正や自衛隊の活動実態に関する情報が厳正に保管・開示されるという制度が確立されない限り,憲法改正発議のため衆参両院に自衛隊明記案を上程すること自体が国民主権の観点からして許されないといわねばならない。
よって,基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命とする当会は,立憲主義と日本国憲法の基本原理が徹底・堅持されるべきことを求める立場から,決議の趣旨のとおりの意見を述べる次第である。
以上,決議する。
2018(平成30)年10月2日
埼玉弁護士会臨時総会
(引用終わり)
決議自体は、内閣総理大臣や国会議員ら権力者にあてたものです。
一般の方への広報用に、以下のリーフレットも作りました。
https://www.saiben.or.jp/proclamation/entry_img/leaflet_01.pdf
https://www.saiben.or.jp/proclamation/entry_img/leaflet_02.pdf
この自衛隊明記の憲法改正に反対する総会決議を出した後は、浦和、川越、越谷、熊谷の各地で平和パレードを行いました。
パレードは、コロナによる一時中止もありましたが、今年も行っています。
あと、駅頭での街宣活動もよくやりましたね。
私は、埼玉弁護士会初の日弁連のマスコットキャラクター『ジャフバ』の着ぐるみを着た弁護士です( ・ω・)

もっと暑いかと思っていましたが、最近の着ぐるみは、エアーが入ってて意外と快適でした。
もっとも、車で駅前のうなこ像まで運ばれている間は、暑くて死にそうでしたが(^^;)
浦和で弁護士会としての駅頭宣伝活動をしていたとき、マイクを持って話す私に、こうヤジを飛ばしてきたオジさんがいました。
弁護士会は、政治的に公平にやれ!
私は、マイクを持ったまま、冷静にこう話を続けました。
私たちがお話ししているのは、党派的な政治的意見ではありません。
法の専門家である弁護士の集団である弁護士会として、弁護士会の意見を市民のみなさんに知っていただくために、こうしてお話ししています。
それを聞いて、どのように考えるかは、この国の主権者である一人一人の方の自由です。
あなたの意見も私は否定しません。
しかし、埼玉弁護士会は、法の専門家である弁護士として、みなさんに訴えます。
自衛隊明記をするという憲法改正は、私たちの総会決議で述べたとおり、危険なものであると。
そのオジさんは、何の反論もせずに、そのまま立ち去りました。
日本国憲法の平和主義がなぜ大切なのか。
それは、日本国憲法前文を読んでいただければ、明らかだと思います。
・【宇宙一わかりやすい僕らの憲法のお話( ・ω・)】4 憲法前文って、なぁに?
~「人間の尊厳」って何? あなたがあなたらしく生きるために、憲法が約束しているたった一つの答え〜
そして、それをどう考えるかは、主権者である一人一人の方の自由です。
振り返ってみると、共謀罪反対運動と、自衛隊明記案に反対する総会決議、それに続くパレードや駅頭宣伝活動等で、忙しかった3年間でしたね。
平行して、弁護士会の憲法と人権を考える市民のつどいの企画、運営もしていました。
2020年3月に若い弁護士たちの発案で、企画した埼玉弁護士会初の大宮ソニック前、鐘塚公園での、憲法フェスティバルが、新型コロナウイルスの感染増加で開催できなかったことだけは、心残りですね。
そして、2020年度・・・
私は、埼玉弁護士会の副会長になります。
そして、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言という誰もそれまで経験していなかった事態が起こります。
続きは、次回の『副会長~そして、コロナ緊急事態宣言』にて。
読んでくださり、ありがとうございました。
(次回に続く・・・)
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