「ニコと対戦したい。師匠のスーパーボンとやってもいい」~フェザー級王座に挑むシャドウ・シンハマウィン〜ONE podcast#13より
2月14日のONE FIGHT NIGHT 40にて、ニコ・カリロとONE世界フェザー級ムエタイ暫定王座決定戦を戦う、シャドウ・シンハマウィンだが、この対戦に合わせ、タイ向けONEチャンピオンシップのSNSで、昨年6月に行われたONE podcastでのインタビューが再公開されている。
このインタビューでは、短いながらニコとの対戦についても触れられている。RWS(ラジャダムヌン・ワールドシリーズ)ウェルター級リーグ戦覇者から、ONEに移籍して10試合目にしてようやくタイトルマッチに辿り着いたシャドウ。インタビューでは、その素顔が垣間見える内容となっており、ここで紹介してみたい。
所々は省略したり、意訳した点もあり、完全な翻訳ではない。このpodcast が収録されたのは2025年6月、ONE FRIDAY FIGHTS100でシャドウがハッサン(イラン)をKOで下し、本契約を掴んだ後となっている。

マガジンではノンオー、スリヤンレック、スアブラックなどのインタビュー翻訳も紹介している。
🥊マンチェスターユナイテッドを応援
※細字=インタビュワー、太字=シャドウ

ーー今日はシャドウ・シンハマウィン選手を迎えました。24人目のONEの本契約選手です。シャドウさん、元気ですか。良いシャツ着てますね。
このシャツですか、何のシャツでもないですよ。元気です。田舎(ターク県)に帰っていました。
ーーファンは皆んなシャドウさんのことに興味があります。色々と伺いたいのですが、まずシャドウというリングネームについて、お聞かせください。
ムエタイを始めたばかりの頃の田舎のジムで、先生がシャーと呼ばれており、私のあだ名がドーでした。ですので足してシャドウになりました。最初のリングネームははリドーでしたけど。
ーーリドー時代は強かったですか? リドーとシャドウでは、スタイルは代わりましたか?
あまり強くなかったです。でもガッツはあったかな。シャドウになっても、スタイルは代わっていません。でも色々と上達したと思います。以前は(対戦相手に向かって)歩いていって、蹴りをもらう。
ーーシャドウさんは熱狂的なサッカーファンとしても知られていますが、SNSで、マンチェスターユナイテッドのスタジアムに現れた写真を見ました。応援のタオルを持っていましたね。
楽しかったです。興奮して眠れなかったです。

もしONEで戦ってなかったら、イギリスまで行くのは、難しかったでしょう。以前だったら、田舎からバンコクに行くのだって大変でした。
ONEに出ることで自分のことを知る人も増え、(海外での)ムエタイセミナーもできるようになりました。イギリスは1か月近くいました。
ーーでは英語も喋れるようになりましたか。
いえいえ、英語はあんまりです(笑)
🥊田舎の生活とONEとの契約
ーーONEと本契約もして、人生は変わりましたね。どうですか。
第一に、私のことを知る人がとても増えました。どこへ行っても写真撮影をせがまれ、そして応援の言葉も頂く。子どもたちのアイドルでもありますね。先輩のジムに行くと、子どもたちが喜んでくれます。そして彼らは「シャドウさん、僕のスポンサーになってくれませんか」なんて言ってくる。「シャドウさんのようになりたい」と。私は「まず、毎日ジムに来て、しっかり練習しなさい」と説明する。
ーー大勢の人に知られるようになって、生活はどう代わりましたか。
何か買い物に行っても声を掛けられます。そして、お母さんの商売を手伝うと、商品を買ってくれる人も増えますね。家族は食事もたくさん食べられるようになりました。
昔は、1日働いて250バーツ。トラックの荷台に荷物を詰め込む作業など、私は高校1年(マタヨム・4、中高一貫の4年)の時から働いていました。お母さんはホントに大変で、土日休みなく働いていました。休んだら、子供たちのご飯が買えなくなるからです。私は1週間続けて働くのもきつかった。お母さんは私のアイドルですね。
ーー人生で最も辛かった時というのはその頃にあたりますか。
そうですね。家で馬や牛を飼っていて、水や餌をあげる世話をしていました。家畜は糞もするけど、私たちはすぐ近くで食事をしていた。5年くらいそのような生活でした。
その頃は、ムエタイも始めて、お金になることは何でもしました。ムエタイは先輩が誘ってくれて練習を始めたのです。
ーーデビュー戦から負けが続いたと聞きました。
はい。負け負け負けと続きました。でも敗北を受け入れませんでした。お母さんに「負けてばかりで、いつまで続けるんだ」と言われたから、「次に負けたら辞めます」と宣言した。そしたらKO勝ちでようやく初勝利です。
ーーお母さんにデビュー戦から「いつまでやるんだ」と言ってもらった方が良かったですね(笑)バンコクに出てきたのはいつですか。
17歳の時です。
ーーその後、一回ムエタイを止めていたと。
そう、コロナもあったので田舎に帰りました。家の仕事(農業や物を売る商売)など、なんでもしていました。

ーームエタイと他の仕事では、どちらがしんどいですか。ムエタイをしているほうが楽では?
どちらも辛いですよ。種類が違うので比べることはできません。何もしないのが一番楽です。家で仕事するのは母も一緒ですし、少し楽かもしれませんね。ONEに参戦する前ですが、このまま田舎で仕事するか、海外でトレーナーの仕事をしようかとも思いました。
🥊ONEデビュー戦とお母さんの応援
ONEに挑戦したのは、まずはお金です。ファイトマネーも良いし、ボーナスもある。次には名声です。ONEは見ている人が多く、出ている選手も知名度が高まります。
ONEの初戦、相手は外国人選手で、グローブも小さいです。ONEの前にもルンピニースタジアムで試合したことはあるのですが、、ONEでは全然雰囲気が違って驚きました。ONE仕様になっていて、(入場の際は)どこを歩けばいいか分からない。スタジアムの観客も多くて、緊張しました。
初戦はダウンも奪われて判定負けでした。色々と今までのムエタイと違っていて戸惑いました。いきなりの黒星はショックでしたが、また次と気持ちを切り替えて練習しました。初戦のグローブは家に飾っていません。捨てました。ONE2戦目からは連勝を続けています。

ーー前戦、ONE FRIDAY FIGHTS 100でようやく本契約となりましたね。どう思いましたか。
ボーナスだけでも嬉しいんです。それだけでも十分なのですよ。さらに本契約選手となり、とても嬉しいです。
ーーその前はなかなかボーナスが出なかった。なかなかKO勝ちできませんでしたね。
KOは、狙うとなかなかできないものなのです。倒そうという意識がフットワークを狂わせるし、できません。モハメド・シアサラニ戦では、ダウンを奪うも、相手は立ってきました。「何で起きてくるんだよ」と思いましたが、いい経験になりました。前戦はしっかり練習もしていましたが、対戦相手との相性も良かったと思います。
ーーある選手は、家族が会場に来るのを拒みます。お母さんが怖がったらいけないと。でも、シャドウさんのお母さんは毎回リングサイドでシャドウさんを応援されていますね。

元々お母さんは私がムエタイをやるのには反対でした。私は「リングの上ではお金が得られる。でも、リングの下だと(観戦で)お金がかかる」と言って、納得させました。そして、私はずっとリングでお金を得てきています。
試合中、しんどい時にも母の顔が目に入ると、負けてはいけないと思わされます。失神KOでもされない限りは最後まであきらめません。自分自身が効いた試合もあったけど、なんとか勝ってこれました。
ーーリングに上がる前にお母さんと何か話しますか。
冗談を言うくらいです。前回もお客さんがいっぱい入ってたので、どこどこの市場みたいだねと。
🥊ニコ、そしてスーパーボンについて
ーーこれまでの人生色々乗り越えて、ONEの契約も得て、現在の位置にいると思います。ONEは選手の人生にどう影響を与えますか。
まず、私のジムの選手なんですけど、他のムエタイ興行に出ていた頃はファイトマネーが1万バーツ、多くて2万バーツでした。それがONEに出て8万バーツ、10万バーツになった。
田舎の選手で、5000バーツ、6000バーツでリングに上がってた子がONEで10万バーツを得た例もある。ONEはファイターに本当にとても大きなチャンスです。グローブが小さかったりで、普通のムエタイとちょっと違うところもあるけど、ボーナスなど得れば、それで自立するお金になる。
ーー今、シャドウさんはONEフェザー級ムエタイでランキング3位ですね。
でも3位からその先は遠いです。メインイベントも戦ってみたいですがまだ遠い。私はまだ(ONEで)チャンピオンになったことがありません。
※シャドウは過去にラジャ王者、RWSのトーナメント優勝はある
ーー先日の興行では、4位のニコと仲良く写真を撮っていましたね。もし、ニコと対戦したらどうですか。
リングの下では友達でも、リング上では商売です。ファイトでお金をもらいますから、それだけです。リングでは自分の役割を果たすだけです。
ーーランキングの上にバンパラとスーパーボン、まだ2人いますね。
バンパラは背が高い。上手いですね。身体も強くやりにくいです。
ーーもう1人はスーパーボンですね。かつてシンハマーウィンジムでは、シャドウさんの先輩だったのではないですか。いや、師匠というべき存在でもあったのでは。
※スーパーボンは、現在は独立し、スーパーボントレーニングセンターを経営
ファイトマネーが良ければ、師匠とでも戦います。ジムでは一緒に練習もしてきました。スーパーボンさんからは技術的なものではなく、ファイターとしての心得を教えてもらいました。スーパーボンさんは性格もよく、考え方もすばらしい。私は他のジムにいた頃から、スーパーボンさんのことは好きで、ファンでした。

🥊タワンチャイ、シッティチャイについて
ーーそして、チャンピオンにはタワンチャイもいます。シャドウさんが本契約するとなって、フェザー級でタワンチャイとやることになる、とみんな思うでしょう。タワンチャイと自身と比べてどうですか。
タワンチャイのレベルに達しているか、それは、やってみないと分かりません。これはムエタイ、私の仕事です。お金を得れるのであれば、誰とでもやります。お金を出すから負けてくれ、というのはできません。5ラウンドのムエタイの時に持ちかけられたことがあります。でも嘘はつけても、自分自身に嘘はつけません。
ONEでは、みんながKOを狙う、違うスタイルのムエタイです。フットワークが良くなくても気持ちで戦えます。衣装がなくても戦えます。
※衣装について~Fairtexからトランクスが支給されるということかは不明
ーーシャドウさんは、ムエタイは上手いけどスピードがないと言われていますが、そのあたりは改善していきますか。
いやいや、そんなに遅くないですよ。相手の出方や力量をよく見ているのですよ。外国人選手も強いです。
ーー外国人の選手のパンチは強いですか。
痛いですね。
ーー(すでに対戦した)シッティチャイさんはどうでしたか。
シッティチャイさんとの試合は難しかったです。彼はとても上手ですから。あの試合、私は練習で脚を痛めていました。なので左を蹴って、すぐに掴む作戦。シッティチャイさんの攻撃も激しかったです。

ONEに来て、練習で気を付けているのは、まずはスピード、そしてパンチが最も重要です。ムエタイには全て必要なんですけど。ヒジも狙うけど、避けられてしまうことが多いです。
ーー今後の目標は?
チャンピオンになりたくない選手はいません。上位のニコ、バンパラ、スーパーボンの中では、まずはニコと戦いたいですね。それから一人づつやれれば。ニコは上手で、パンチも強いです。
🥊お母さんをサポート、自身の引退後は
お母さんは毎回、私の試合を観に来ます。勝っても負けても親子の関係は代わりません。有名な選手になっても、無名でも、親子は親子です。
ーーお母さんはまだ仕事を続けますか。
はい、本当は仕事してほしくないんですけど、彼女は勤勉です。飼っている牛も、いい値段で売れれば、売りたいのですけどね。もうピックアップトラックも買ったので、(物を売る)仕事に支障はありません。そうですね。お母さんはご飯をつくるのが美味しいから、ご飯を作って売ってほしい。(農業をせず)売るだけのほうがいい。
ーー引退したら、シャドウさんも商売をされますか。
母と一緒に何かを売る商売ができればいいと思っています。私自身はムエタイのトレーナーもできます。田舎に戻ってジムを開くのもいい。お金があれば、ゲストハウスでもやって人を泊めるのも興味がある。
ーーそういえば、実家が火事になったとか。
親類の家族も一緒に住んでいましたが、その人たちが火事を起こしてしまったのです。私が有名になる前でも、彼らを助けていて、彼らには、時々1‐2万バーツを援助していました。

🥊子供たちへ、ファンへ、スーパーボンへメッセージ
ーー子供たち、若い選手に改めてコメントをお願いします。
私は「まず、毎日ジムに来て、しっかり練習しなさい。私のようになれなくとも、他の人が一生懸命練習するあなたを見たら、あなたのようになりたいと思うだろう」と伝えたいです。しっかり役割を果たしてください。誰もが全てをできるわけではありません。はじめても成功するか分かりません。でも、始めなければ、機会は訪れません。
ーー今日はありがとうございました。今後は師匠(スーパーボン)と戦うことがあるかもしれません、またそうなった時には話を伺いたいです。ここで、スーパーボンさんに向けてコメントをお願いします。
スーパーボンさんから教わったことはよく覚えています。それを活かして頑張りたいと思います。

ーー次の試合について、ファンに向けてお願いします。
また応援してください。次の試合も頑張って勝利します。
🥊最後に
このインタビュー後のシャドウの戦績は、無効試合、KO勝ち、判定負けと1勝1敗1NCのシャドウ。バンパラにKO勝ちを収めたのは大きな勝利だが、タワンチャイの代役として出場のリウ・メンヤン戦では判定負けを喫してしまう。これはバンパラ戦から20日ほどの試合間隔で、慣れていないキックボクシングルールでの試合であったことから、仕方がない面もある。
その後、リウはタワンチャイを下して、一気に注目された。タワンチャイの長期離脱により、暫定王座が設けられるONE世界フェザー級ムエタイ王座だが、シャドウの勝利を期待したい。
※写真はONE Podcast、ONEの過去試合映像(Youtube)、 ONE championship website 、RWS website から
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