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インド仏教のおすすめ参考書一覧~思想、歴史、文化、時代背景など様々な視点から見た仏教


インド仏教のおすすめ参考書をご紹介!

この記事では私がおすすめする仏教の参考書をご紹介していきます。

当noteやメインの仏教ブログでは【インド・スリランカ仏跡紀行】【現地写真から見るブッダ(お釈迦様)の生涯】を連載していますが、それらの参考にした解説書をこれより紹介していきます。

私が仏教を学ぶ上で大切にしているのは「宗教は宗教だけにあらず」という視点です。

宗教は単に信仰や教義だけで成り立つのではなく、当時の時代背景や政治経済、文化、歴史、国際情勢など様々な要因が組み合わさり成立しています。ですので私は仏教を学ぶ上でも当時のインドの時代背景やバラモン教、ヒンドゥー教などの他宗教との関連なども重視しています。

というわけで私のチョイスする参考書は仏教書としては一風変わったラインナップになりますがきっと皆さんの新たな発見のお役に立てるのではないかと確信しております。

それぞれのリンク先ではより詳しい本紹介をお話ししていますので興味のある方はぜひそちらもご覧ください。

かなり膨大な量になってしまいましたが、この記事をデータベースとして使って頂けましたら幸いでございます。

では早速始めていきましょう。

インド仏教のおすすめ入門書

佐々木閑『仏教の誕生』

【初学者にもおすすめの仏教入門書!】

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『仏教の誕生』は仏教入門にぜひぜひおすすめしたい参考書です。

仏教に興味があるけど何を読んだらよいですか?と聞かれたら最近はこの本を私はおすすめしています。それほどわかりやすく、読みやすいです。しかも仏教が私達の生活とどのように関わってくるかということも考えていけるので非常に実践的です。単なる知識で終わるのではなく、生きる智慧としての仏教を本書で知ることができます。


中村元『中村元の仏教入門』

【仏教の基本を学べるおすすめ入門書!初学者にもうってつけの名著】

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中村元先生の教えは仏教を思想だけでなく、時代背景や実際にインドを訪れた体験を通して語るところにその特徴があります。初学者でもわかりやすい言葉で興味深い内容をたくさん語ってくれる中村元先生です。仏教の入門書としてまず間違いないでしょう。

「仏教を学ぶ」というと肩肘張って気合いをいれて取りかからなければならないと気負ってしまう方も多いかもしれませんが、まずは中村元先生の講義を聴き、その全体像を掴むのがおすすめです。言葉も柔らかく、すらすら読めるので、すっと仏教の教えが入ってくると思います。


中村元訳『ブッダの真理のことば』

【簡潔で心に響く原始仏教のエッセンスを知るならこの1冊!】

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『真理のことば』というお経の原題は『ダンマパダ』といい、そして漢訳では『法句経』という名前で親しまれています。このお経はブッダの説いた教えに最も近いとされています。つまり、ブッダその人の教えを知るのに最も最適なお経ということが言えるでしょう。しかもありがたいことに、ひとつひとつの言葉が非常にシンプルでわかりやすいのです。二つほど例を挙げてみましょう。

「怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息むことがない」

「戦場において百万人に勝つよりも、唯だ一つの自己に克つ者こそ、じつに最上の勝利者である」

このように、『真理のことば』はひとつひとつの文が簡潔で、非常にわかりやすいです。哲学的なものというより生活実践としての言葉がそのほとんどを占めますのでとてもわかりやすく、すっと心に染み入ってきます。

そうしたわかりやすさ、率直さ、簡潔さがあったからこそこのお経が世界中で親しまれることになったのでしょう。

仏教入門としてこのお経は非常に優れています。お釈迦様が説かれていた教えに触れるにはこのお経が非常におすすめです。


松本照敬『ジャータカ 仏陀の前世の物語』

【大乗仏教に大きな影響を与えた仏教説話のおすすめ入門書】

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本書はブッダ滅後2、300年頃に原型が出来上がったとされるジャータカのおすすめ入門書です。

ジャータカとはブッダの前世の物語のことで、利他の精神や自己犠牲が説かれた素朴な物語です。

その代表的なお話が法隆寺の玉虫厨子にも描かれている「捨身飼虎」です。飢えた母虎を救うために自らの身体を与えたという有名な物語です。こちらももちろん本書に収録されています。

法隆寺、玉虫厨子「捨身飼虎図(須弥座向かって右面)」Wikipediaより

他にも自分の身体を切って鷹に肉を与えて鳩を救ったシビ王物語やバラモンへの供養のために自ら火に飛び込んだウサギの話など有名な物語を本書で読むことができます。特にこのウサギの物語は「月のウサギ」の元となったお話でもあります。

私達にとっても身近な物語がこのジャータカには収められています。

有名な物語以外にも興味深い説話がどんどん出てきますので、ジャータカの雰囲気を感じる上でもこの本はとてもおすすめです。また、こうした仏教説話から大乗仏教の流れが始まってくるという意味でもジャータカを学ぶ意義は大きいと思います。

ぜひおすすめしたい入門書です。


竹村牧男『インド仏教の歴史「覚り」と「空」』

【原始仏教から大乗、唯識までの流れをすっきり学べるおすすめ本】

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この本はインドにおける仏教の歴史を学ぶのにおすすめの入門書です。文庫一冊でコンパクトにわかりやすく解説された本書は非常に貴重です。

「大乗仏教とはそもそも何なのか」
「日本の仏教とはそもそも何なのか。インドと何が違うのか」

これは非常に大きな問題です。本書ではそんな大問題をじっくりと歴史の流れと共に考えていくことができる素晴らしい解説書です。僧侶である私にとっても本書は非常に貴重な一冊となりました。


インドの仏教通史、初期仏教のおすすめ参考書

ここからはさらに深くインド仏教を知るためのおすすめ参考書を紹介していきます。まずはインドの仏教通史と初期仏教のおすすめ参考書をここで紹介します。

中村元『古代インド』

【仏教が生まれたインドの風土や歴史を深く広く知れるおすすめ参考書!】

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この本は入門書編でも紹介した仏教学者中村元先生による古代インドの参考書になります。

中村元先生はインド思想研究の古典とも言うべき『インド思想史』を残しておられますが、本作『古代インド』の素晴らしい点は何と言っても、仏教が生まれてきた古代インドの時代背景や気候風土を知れる点にあります。

この本はまずインドの先史時代から始まり、インダス文明、アーリア人の侵入、バラモン教の発展など、仏教が生まれ、衰退するまでの過程を詳しく知ることができます。なぜ仏教は生まれたのか、どのような人にブッダの教えが響いたのか、どのようにして仏教教団がインドに広がっていき、最後には衰退することになってしまったのか、それらの大きな流れをわかりやすく学ぶことになります。

仏教を思想面だけでなく、歴史や文化、民族、気候風土の側面から見ていくことの大切さをこの本では強く感じさせられることになります。

中村元先生は実際に現地でインドを体感した上でこの本を書いています。本を読むだけではわからない現地の雰囲気、感覚を中村元先生は大切にしておられます。インド人が「インドという特定の環境」の中でどのように生きていたのか、その中にこそ宗教や思想を理解する鍵がある。遠く離れた地で文献だけを見ていてはわからないことがあるということを痛感します。

また、仏教がバラモン教やヒンドゥー教の枠組みの中で生まれ、相互に作用しながら生き続けていたことも実感することになります。

仏教の教えや思想を解説する本はそれこそ無数にありますが、それらの思想が生まれてきた時代背景や気候風土をわかりやすくまとめた本は意外と少ないです。この本は私達日本人にとって意外な発見が山ほどある貴重な作品です。


『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』

【仏教とカースト制の関係や時代背景を学ぶのにおすすめ!】

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この本は仏教教団が生まれた当時のインド社会を知るのにおすすめの作品です。

仏教もゴータマ・ブッダという偉大な人物が突然生まれたわけではなく、古代より続くインド世界の文脈の中で生まれてきたことがよくわかります。

当時の社会事情を見ていくことで思想や理論だけでは見えてこない仏教教団の姿が見えてきます。これは刺激的でした。やはりインドは一筋縄ではいかない存在だなと改めて実感することになりました。

この『新アジア仏教史』シリーズは2010年時の最新の研究が反映されていて、硬派な仏教書の中では比較的新しいものになります。仏教の名著とされるものはかなり古いものも多いので、こうして新しくアップデートされた仏教書はとてもありがたいです。

また、この本にはより深く学びたい人のために参考文献がたくさん掲載されていますのでこれからの勉強にもつながる一冊です。ぜひおすすめしたいシリーズです。


中村元『ゴータマ・ブッダ』

【原典を駆使して「人間ブッダ」を明らかにした伝記】

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この本は仏教学者中村元先生によるブッダの伝記です。この作品の特徴は何と言っても神格化されていないブッダを原始仏教の原典を駆使して探究していく点にあります。

この『ゴータマ・ブッダ〈普及版〉』は『中村元選集〔決定版〕第11、12巻 ゴータマ・ブッダ』を一般読者に読みやすいように改訂した作品になります。とはいえ、その内容は原典を駆使したかなりかっちりしたものになっていますので、仏教入門にこの書を手に取るとかなり面を食らうと思います。ある程度ブッダの生涯を知ってからさらに深く学びたいという方におすすめの作品となっています。

ブッダはどんな人間だったのか、どんな場所でどんなふうに生活していたのか、この伝記では原典から丁寧にその姿を追っていきます。

当ブログのメインコンテンツのひとつ、【現地写真から見るブッダ(お釈迦様)の生涯】もこの本を大いに参考にしています。


中村元『インド思想史』

【インド思想の流れを概観できる名著】

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本書は仏教研究における古典中の古典とも言える名著です。

中村元先生の著書の特徴は、単に思想や哲学理論を語るのではなく、時代背景や実際の現地での生活と絡めて説く点にあります。今作『インド思想史』もまさにそうした中村節を堪能できる名著となっています。

インダス文明から始まりアーリア人の侵入、バラモン教の始まり、仏教の興隆、ヒンドゥー教の定着、そしてイスラーム侵入から現代へという、あまりに盛りだくさんなインド思想史をこの本一冊で概観することができます。


平川彰『インド仏教史』

【仏教学の不滅の古典!仏教の歴史や教義が網羅された名著!】

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この本が出版されたのは1974年ですが、今なお名著中の名著として高く評価されている仏教書です。2011年には新版が出版され、現在においても仏教を深く学びたい方必読の参考書となっています。

一つの著作でここまで教えを網羅し、一流れの仏教史として書き上げられた本書は驚異としか言いようがありません。


奈良康明『仏教史Ⅰ』

【インド仏教の流れを大きな視点から見ていけるおすすめ参考書】

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この本の特徴は、何と言っても「生活レベルの仏教」を知れることと、インドで始まった仏教が時代を経て世界とどのように関わり変化していったかが知れるところにあります。

そして私個人としてありがたかったのが、仏教と当時のインド社会の関係性についての記述が充実していた点です。しかもそれがローマ帝国や東南アジアとの交易からも語られるなど、かなりグローバルな観点から仏教の歴史を見ていくことができるのも刺激的でした。

また、ヒンドゥー教との関係性についても詳しく知れるのが本書の特徴です。

特に4世紀初頭に成立したヒンドゥー教王朝、グプタ朝の展開は非常にわかりやすく、それがどのように仏教に影響を与えたのかというのは最高にスリリングで興味深いものがありました。これは面白いです。

仏教と社会の関係性を学ぶのに本書は最高の参考書です。


馬場紀寿『初期仏教 ブッダの思想をたどる』

【最新の研究が反映されたおすすめの初期仏教入門書】

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この本では最新の研究をふまえて、当時のインド社会とブッダの関係を見ていくことができます。後半ではブッダの思想そのものも解説されますので、初期仏教の全体像を掴むためにもおすすめです。

仏教学における最新の研究はどうなっているのか、かつての仏教学とどこが違うのかということも知れる本書はとても刺激的でした。ぜひぜひおすすめしたい作品です。


中村元選集第13巻『仏弟子の生涯』

【最初期のブッダ教団にはどのような人がいたのか。その出自や性格を知るのにおすすめ】

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仏弟子といえば舎利弗や目犍連、摩訶迦葉を筆頭とした十大弟子が有名ですが、この本では彼ら十大弟子だけではなく、教団に所属していたたくさんの修行者たちの姿も知ることができます。

この作品では最初期のブッダ教団がどのような雰囲気だったのかを知ることができます。原始仏教について学ぶ上で非常にありがたい作品でした。


中村元選集第14巻『原始仏教の成立』

【仏教はどのようにして生まれたのか。最初期の教団を取り巻く状況を知るのにおすすめ】

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この本は仏教教団の最初期について解説された作品です。

中村元先生は最初期の仏教教団の様子を当時の時代背景や思想界の様相と絡めてこの本でお話ししていきます。


中村元選集第15,16巻『原始仏教の思想Ⅰ、Ⅱ』

【最初期の仏教を思想面から見ていく参考書】

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上で『ゴータマ・ブッダ』、『仏弟子の生涯』、『原始仏教の成立』など、仏教学者中村元先生が原始仏教成立の時代背景を解説した作品を紹介してきましたが、今作『原始仏教の思想』はいよいよその思想面に突入した解説書になります。

その分量はなんと二冊合わせておよそ1800ページという驚異の大ボリューム。

仏教の入門書としては正直おすすめすることはできませんが、原始仏教についてより深く学ぶには非常におすすめな作品です。

この本は原始仏教における思想を原典に即して見ていくところにその特徴があります。最初期の仏教教団はどのようなことを説いていたのか、そしてどのように思想が発展、体系化されていったのかを原典を読みながら解説していきます。原典の引用がとにかく膨大です。だからこその大ボリュームです。

この作品は日本仏教を考える上でも非常に有益な内容が説かれています。やはり比べてみて初めてわかることもあります。


中村元選集第17巻『原始仏教の生活倫理』

【当時のインド社会と在俗信者の生活、葬儀事情を知れる名著】

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この本は原始仏教教団と共にあった在家の人々と仏教の教えについて説かれた参考書です。原始仏教教団は言うまでもなく出家者の教団です。世俗の生活とは全く離れた修行生活がその本義です。

ですがその教団は出家者だけで成り立つわけではありません。在家信者として生活する一般の人々あってこその出家教団でもあります。この本ではその一般の人々がどのように仏教と共に生きていたかを知ることができます。


中村元選集第18巻『原始仏教の社会思想』

【原始仏教と国家、市場経済の関係性を知るのにおすすめ】

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この本ではまずインド社会を強く規定していたカースト制と原始仏教について「平等」というテーマで論じていきます。仏教はカースト制を批判したことで有名ですが、実際に教団としてどのような対応を取っていたのか、インド社会において仏教教団はどのような立ち位置にあったのかということを詳しく見ていきます。

そしてこの本で特に注目したいのは第三章「経済倫理―西欧資本主義精神との対比において」で説かれる原始教団と資本家との関係性です。

仏教教団の主なパトロンは王侯貴族や資本家でした。原始仏教教団が生まれたのはインドにおいて産業が生まれ、経済活動が非常に活発化した時代でした。商売をする上でカースト制度は不都合です。誰とでも自由に商売してこそ収益を上げることができます。また、財力を蓄えたことでカーストを超えた力を持つ商人もどんどん出てきます。そうした時代背景の下仏教教団は経済活動についてどのように考えていたのか、これは非常に興味深い内容でした。


『新アジア仏教史02インドⅡ 仏教の形成と展開』

【仏教のイメージが覆る?仏教学そのものの歴史を問う参考書】

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前作『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』ではそのタイトル通り仏教が生まれてくるインドの時代背景が語られましたが、今作では実際に仏教が生まれて展開していくその流れを見ていくことになります。

ですが、この本は単に仏教成立の流れを見ていくだけの本ではありません。

なんと、「仏教学」という枠組みそのものすら問うていく作品となっています。

私達が当たり前だと思って享受していた〈仏教学〉が日本の仏教思想や文化とは全く無関係に生まれたものだった。

この本を読めば〈仏教学〉というものがどんな流れで生まれてきたのか、そしてそれがどのように日本にもたらされ、適用されることになったのかがよくわかります。

日本仏教に対する批判で多いのは「原始仏教と比べればなんと日本仏教は堕落しているのか」というものなのですが、こうした批判がなぜ生まれてきたのかも考えることになります。そして同時にこの批判の問題点についても私達読者は気づくことになるでしょう。


『新アジア仏教史03 インドⅢ 仏典からみた仏教世界』

【仏伝や経典に説かれる史実はどこまで史実たりえるのだろうか!】

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私たちはブッダの生涯をこれまで様々なところで見聞きしたことがあると思います。ですが、本書で語られるように実はブッダの歴史的な事実というのはわかっていないことも多々あるのです。

「資料や経典があるとはいえ、それも絶対に正しいものとは言えない」というのは私達も見落としがちな点であるのではないでしょうか。

これは僧侶である私にとっても大問題です。それをこの本では経典や資料を用いて丁寧に見ていくことになります。特に本書前半の仏伝に関する解説は私にとっても非常に刺激的なものとなりました。


アシュヴァゴーシャ(馬鳴)『完訳 ブッダチャリタ』

【『仏所行讃』としても知られる仏伝の大元!ブッダの生涯を叙事詩化!】

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今作『ブッダチャリタ』は1~2世紀頃にインドで活躍した仏教詩人アシュヴァゴーサ(馬鳴めみょう)による仏伝です。漢訳では曇無讖によって『仏所行讃』として翻訳されています。空海や最澄、鎌倉仏教の開祖たちもこの仏伝を読んでブッダの生涯を学んでいたのではないでしょうか。


平川彰『仏陀の生涯 『仏所行讃』を読む』

【漢訳された仏伝をもとに超人間的なブッダの生涯を見ていくおすすめ入門書】

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上の『ブッダチャリタ』を読んだ直後に私は平川先生の著作を通してこの漢訳『仏所行讃』の一部を読むことになりました。

サンスクリット語で書かれた『ブッダチャリタ』と漢訳では当然言葉が違います。もちろん、私が読んだ『ブッダチャリタ』は日本語訳されたものですが、それでも漢訳と比較しながら読むのはとても興味深いものがありました。同じ内容のお話でも言葉が変わればそのニュアンスも変わってきます。そうしたことを感じながら読んでいくのはとても楽しかったです。

平川先生の解説もとてもわかりやすいので実に読みやすい本となっています。


奈良康明『〈文化〉としてのインド仏教史』

【葬式仏教批判に悩む僧侶にぜひおすすめしたい名著!】

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当ブログではこれまで『新アジア仏教史02インドⅡ 仏教の形成と展開』や辛島昇・奈良康明著『生活の世界歴史5 インドの顔』など仏教における葬儀の問題や仏教教団の実生活と一般信徒の関係などが書かれた本をいくつも紹介してきました。

この本を読めば文献に書かれた教義だけが仏教なのではなく、そこに生きる人々と共に歩んできたのが仏教なのだというのがよくわかります。私自身、この本にたくさんの勇気をもらいました。仏教は現代においても必ずや生きる力に繋がるのだということを私は感じています。

僧侶以外の方でも、仏教における儀礼の意味に興味のある方に多くの発見がある作品です。

ぜひぜひおすすめしたい名著です。著者の信念が伝わってくる素晴らしい一冊でした。


佐々木閑『出家とはなにか』

【そもそも僧侶とは何なのか。日本仏教や戒律について考えるためのおすすめ参考書】

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本書『出家とはなにか』はその書名通り、出家とはそもそも何か、僧侶とは何かということを見ていく作品です。

インドやスリランカの初期の仏教の生活実態もこの本では詳しく見ていけるのでとても刺激的です。


櫻部建、上山春平『仏教の思想2 存在の分析〈アビダルマ〉』

【仏教思想の難所がわかりやすく説かれたおすすめ参考書】

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本書は仏教思想における難所のひとつ、アビダルマについて解説された参考書になります。

この本は「仏教の思想シリーズ」の第二巻です。このシリーズは仏教思想入門として長らく愛され続けてきたベストセラーで、私が教えを受けている仏教学の先生もこのシリーズを推薦しています。

このシリーズではまず第一部でテーマとなる思想についての概略や解説が述べられ、その後に座談形式でざっくばらんにその思想について各分野の専門家たちが語りあうという独特なスタイルを取る点にその特徴があります。

第一部の解説の時点ですでにわかりやすく、入門書として優れているのですが、そこからの座談によってさらに突っ込んだ議論や質疑応答がなされるのでより深く学ぶことができます。さすがベストセラーとして今でも売れ続けているだけあります。私もこのシリーズはぜひおすすめしたいです。


中村元選集第23巻『仏教美術に生きる理想』

【仏教学の泰斗によるインド美術の名解説を聞けるおすすめ本!】

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この本は仏教学者中村元先生による仏教美術の解説書になります。

中村元先生といえば仏教思想においても当時の時代背景と絡めたわかりやすい解説で有名ですが、今作のテーマである仏教美術においてもその名解説は健在です。

インド仏教の歴史を仏教美術という側面から見ていけるこの本はとにかく刺激的で面白いです。これは名著中の名著です。


大乗仏教のおすすめ参考書

中村元選集第20巻『原始仏教から大乗仏教へ』

【仏教史の転換点!日本仏教を考える上でも重要な示唆が満載の名著】

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今作では仏教思想の豊かさや当時の時代背景とのつながりを学ぶことができます。

また、大乗仏教が生まれてくる萌芽もこの本では詳しく見ていくことになります。大乗仏教は民衆を無視した既存教団への反発から生まれたという単純な構図で語られがちですが、実際はそう簡単な話ではありません。もちろん、そうした側面もあったかもしれませんが、そこには様々な社会要因も絡んでいたこともこの本では語られます。

入門書としてはかなり厳しい内容ですがより詳しく仏教を学びたい方にはとてつもなく読み応えのある大作です。

中村元選集第21巻『大乗仏教の思想』

原始仏教と初期大乗について考えるのに刺激的なおすすめ参考書】

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今作では日本仏教にも直接関わってくる大乗仏教の思想やその成立・発展過程を知ることができます。中村元先生の特徴は単に思想だけでなく当時の時代背景と絡めて語る点にあります。この本でも当時の時代背景や当地の気候風土、民族性など幅広い視点から仏教を見ていきます。


中村元、三枝充悳『バウッダ[佛教]』

【阿含経とは何か、大乗経典の成立伝播の過程を学ぶのにおすすめの参考書】

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この本は日本ではあまり馴染みのない阿含経典についてや大乗仏教の成立伝播の過程を学べる参考書となっています。

私も阿含経典とはどのようなものなのか、いつどのようにして日本に入りどのように読まれてきたのかということに興味があったのでこの本は非常にありがたいものがありました。詳しいながらもわかりやすい解説ですので仏教をより深く学びたい方にも読み応え抜群だと思います。


『シリーズ大乗仏教 第一巻 大乗仏教とは何か』

【最新の研究を基に様々な視点から大乗を考察する参考書】

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出版されたのが2011年と、今から十年以上前ではないかと思われるかもしれませんが1900年代の仏教学と比べるとその学説は大いに変化したものがあります。

その変化については上でも紹介した『新アジア仏教史02インドⅡ 仏教の形成と展開』でも紹介されていて本書とも重なる内容も多いのですが、『新アジア仏教史』とは違う執筆陣による論集になりますので、さらに広い視野をこの本で得ることができます。


グレゴリー・ショペン『大乗仏教興起時代 インドの僧院生活』

【定説だった大乗仏塔起源説を覆した衝撃の説!インド仏教の実際の姿とは!】

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この本を読んでいるとどんどん驚くべき事実が目の前に現れてきます。「え!?そうだったの!?」と驚かずにはいられません。ものすごく刺激的でスリリングな講義をこの本では聴くことができます。

これまでの文献学中心の仏教学では見えてこなかった世界がショペンの新たな研究によって明らかになってきました。


グレゴリー・ショペン『インド大乗仏教の虚像と断片』

【インド仏教研究に革命を起こした泰斗による最新の論文集!】

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今作もショペン節全開で刺激的な読書になること間違いなしです。

私の中で特に印象に残っているのが第3章の「ブッダの遺骨と比丘の仕事」と第8章の「クシャーナ期阿弥陀仏像碑文とインド初期大乗の特質」です。

「原始仏教は葬式をしない。遺骨への供養も存在しない。それなのに日本仏教は葬式や先祖供養をする。これは仏教として間違っている」

このような批判が今も根強く残っていますが、実はこの批判そのものがもはや学術的に成立しないことがショペンの説から明らかになります。当時のインド仏教徒にとっても遺骨の存在は大切なものだったということが考古学的な証拠から明らかにされつつあります。これは刺激的な論稿でした。


『シリーズ大乗仏教 第二巻 大乗仏教の誕生』

【大乗仏塔起源説を批判したショペンの説の概略を知れるおすすめ参考書】

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この本の中で私が特にありがたいなと感じたのは下田正弘氏による第二章「経典を創出する—大乗世界の出現」の章の存在です。

この章の中でこれまで当ブログでも紹介したグレゴリー・ショペンの説がわかりやすくまとめられています。現代における仏教学においてとてつもない影響をもたらしたショペンの説の概略を学べるのは非常にありがたいものがありました。


『シリーズ大乗仏教 第三巻 大乗仏教の実践』

【仏道修行の原点や仏塔、仏像、遺骨崇拝の展開を学べる一冊!】

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大乗仏教では摩訶止観や浄土教の観仏三昧などの瞑想法が有名ですが、こうした大乗的な観仏修行も実はその根は原始仏典にあり、伝統教団と全く異なる修行ではありませんでした。

そして仏像崇拝に関しても、ブッダの遺骨である舎利への信仰が大きな影響を与えていたということ。これも見逃せません。原始仏教は墓を造らなかった、死者を祀ることはしなかったと言われることも多いですが、実際の所はブッダの聖遺物や高弟たちの遺骨に対する崇拝がなされていたということがこの本で説かれます。それが仏塔、仏像信仰へ繋がっていったというのは非常に興味深い指摘でした。


『シリーズ大乗仏教 第四巻 智慧/世界/ことば 大乗仏典Ⅰ』

【般若経・華厳経・法華経の成立と展開を学ぶのにおすすめ】

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これまでの三巻では大乗仏教の全体像について言及されましたが、今作ではいよいよ大乗経典そのものについて語られていくことになります。

特に今作では大乗仏教の主要経典たる般若経、華厳経、法華経について詳しく見ていきます。

正直、仏教の入門書としてのレベルをはるかに超えています。仏教の入門書を求めている方にはおすすめできませんが、これらの経典についてもっと深く知りたいという方には非常にありがたい参考書と言えましょう。


『シリーズ大乗仏教 第五巻 仏と浄土—大乗仏典Ⅱ』

【ブッダの神話化はなかった!?中村元の歴史的ブッダ観への批判とは】

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今作では浄土経典について説かれるということで浄土真宗の僧侶である私にとって非常に興味深いものがありました。

特に第二章の新田智通氏による「大乗の仏の淵源」は衝撃的な内容でした。これは仏教を学ぶ全ての人に読んで頂きたい論文です。

新田智通氏の衝撃的な論文が収録された本書は仏教を学ぶ全ての方におすすめしたいとてつもない一冊です。このシリーズの中でも圧倒的に印象に残った作品です。ぜひぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。


『シリーズ大乗仏教 第十巻 大乗仏教のアジア』

【インド仏教も葬式仏教的な遺骨崇拝や納骨、供養を行っていた】

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今作はヒンドゥー教やイスラーム、中国文化とのつながりから大乗仏教を見ていくというユニークな論集となっています。

ヒンドゥー教の儀式であるプージャーと大乗仏教の儀式の関係性などは読んでいて非常に興味深いものがありました。インド仏教が歴史を経るにしたがってヒンドゥー教の要素をどんどん取り入れていったというのはよく聞きますが、具体的な儀式レベルでどうつながっているかを知れるのはとても刺激的でした。


フィリップ・C・アーモンド『英国の仏教発見』

【仏教学はイギリスの机上から生まれた!?大乗仏教批判の根はここから】

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この本を読むと、「原始仏教に帰れ。日本仏教は堕落している」という批判が出てくる理由がよくわかります

。これまでどうしても腑に落ちなかった大乗仏教批判に対して「ほお!なるほど!そういうことだったのか!」という発見がどんどん出てきます。この批判が出てくる背景を追うととてつもない事実が浮かび上がってきます。これは最高に刺激的な一冊です。とてつもない作品です。もうぜひ読んで下さい!きっと皆さんも衝撃を受けると思います!

仏教に関心のある方だけでなく、イギリスや西欧文化に興味のある方にもぜひぜひおすすめしたい名著です。


定方晟『インド性愛文化論』

【仏教経典に説かれた性。仏教をいつもとは違う視点から見れる参考書】

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この本は普段私たちがなかなか触れることのない「仏教と性の関係性」についてストレートに論じた作品です。

仏教と言えば修行や禁欲というイメージがあるかもしれませんが、逆に言えばそれだけ「性の問題」が大きな問題として捉えられていたということになります。

「人間にとって大事な性の問題を避けて、仏教のなにがわかるだろうか」という著者の言葉は非常に重いものがあるなと感じました。これは刺激的な一冊です。


佐々木閑『大乗仏教 ブッダの教えはどこへ向かうのか』

【日本仏教のそもそもを考える上でも重要な一冊!】

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本書に説かれていることは仏教学研究の立場からのもので、特定の宗派を持ち上げるようには書かれていません。そして私たち日本仏教側にとってはこれまでの通説や信じていたこととは異なることが説かれますので、正直耳が痛い面もあります。しかし、そうした事実から目を背けることはできません。そうした研究成果が出ている以上、私達も耳が痛くてもそれを受け入れ、その上で私達がどう仏教を考えていくのか、僧侶として生きていくのかということが試されています。


服部正明、上山春平『仏教の思想4 認識と超越〈唯識〉』

【大乗仏教思想の最高峰を学ぶのにおすすめの解説書!】

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難解な唯識の入門書として本書はまずおすすめしたい一冊です。唯識とは何かという大まかな全体像を掴める素晴らしい参考書です。


瓜生津隆真『龍樹 空と論理と菩薩の道』

【『中論』など難解な龍樹思想に挫折した方にもおすすめの入門書】

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本書は深遠な龍樹思想の入門書たるおすすめの一冊です。浄土真宗関係の方には特におすすめしたい参考書です。

かつて龍樹に挫折した私にとってこの本は本当にありがたい一冊でした。


スリランカ・ネパール仏教のおすすめ参考書~インド仏教との比較のためにも

「仏教を学ぶのにインドの文化や歴史を学ぶならまだしも、さすがにスリランカまでは厳しいよ」と思われる方も多いかもしれませんが、ほんの少しだけお待ちください。実は、このスリランカについて知ることでそれこそインドの仏教の見え方が180度変わるとしたらどうでしょうか。

私はスリランカの仏教を学び、衝撃を受けっぱなしでした。まさかと思うことがどんどん出てきます。私の仏教観を根底から覆したと言ってもよいでしょう。そして同時に「自分にとっての仏教」とは何なのかということを深く考えるきっかけともなりました。自分とは異なる他者の存在を知ることで、より自分たちの信じるものを深く知るきっかけとなったように思います。

これから紹介する本も非常に刺激的なラインナップです。ぜひおすすめしたい作品たちです。


『東南アジア上座部仏教への招待』

【日本と異なる東南アジアの仏教を知るのにおすすめ!】

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この本は東南アジアの国々の仏教の姿を知れるおすすめの参考書です。東南アジアには私達日本の仏教とは全く違う仏教が根付いています。その違いを知ることは「日本仏教」を知ることだけにとどまらず、「日本人とは何か」を考えるきっかけにもなります。

この本では東南アジア各国の仏教の教義を細かく見ていくというよりは、その国の仏教徒の生活や信仰の実践がどのようなものなのかを見ていく形を取ります。

もちろん、本書の第一章で上座部仏教とはそもそも何なのかをわかりやすく解説してくれるので、専門知識のない方にも優しい作りになっています。日本では「大乗仏教」と呼ばれる仏教が伝わり今に続いていますが、東南アジアの仏教は全く違った系統の仏教が信仰されています。両者の違いをわかりやすく解説してくれるこの作品は非常に貴重です。しかも入門者でも親しみやすく読めるような語り口で説かれるので、仏教だけでなく文化そのものを学びたいという方にも非常におすすめです。

上座部仏教とは何か、そしてそこに生きる人々の生活レベルでの仏教を知れるこの本はとても刺激的でした。日本仏教との違いや共通点を考えながら読むのはとても興味深かったです。


杉本良男『スリランカで運命論者になる 仏教とカーストが生きる島』

【上座部仏教の葬儀や現地の宗教と生活を知るのにおすすめ!】

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この本はスリランカの宗教と現地の人々の実生活を知れる貴重な作品です。

スリランカの宗教は上座部仏教という、日本に伝わった大乗仏教とは異なる仏教です。上座部仏教そのものについてはここではお話しできませんが、インドで生まれた原始仏教の教えに近い形で信仰されているのが上座部仏教の特徴としてよく挙げられます。

そんな上座部仏教のいわゆる聖地的な存在として見られることも多いスリランカですが、現地では実際にどのようにその仏教が実践されているのか、そして現地の人々はどのように仏教教団と付き合っているのかということがこの本で語られます。

スリランカでも仏教は「生と死」の問題と深く繋がっているということをフィールドワークという視点から見れたこの本はとても興味深かったです。

また、単に宗教的な側面だけでなく、政治経済面からもスリランカの宗教と実生活を知れるのもこの本のありがたい点です。「スリランカ=敬虔な仏教国」とだけ見てしまうと見誤るものが多々あります。実際にはかなり複雑な背景がそこにはあります。そうした社会の複雑さを知れるのも本書の魅力です。

これはいい本と出会いました。スリランカにもっともっと興味が湧いてきました。実際にスリランカを訪れる方にとってもこの本は非常に大きな刺激になると思います。


『新アジア仏教史04 スリランカ・東南アジア 静と動の仏教』

【スリランカの聖地訪問に役立つ情報ありの参考書】

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この本ではかなり幅広く東南アジアの仏教を見ていきます。これだけの地域の仏教を見ていくとなればひとつひとつを深く見ていくということはできませんが、それぞれの国々との関係性を考えながら読んでいくのはとても刺激的です。

特に私にとってはスリランカの仏教の歴史や現地事情を知れたのがありがたかったです。また、スリランカの仏教聖地についても語られていますので、実際にスリランカを訪れる方にとっても便利な一冊となっています。


青木保編著『聖地スリランカ—生きた仏教の儀礼と実践』

【現地での実際の宗教実践を詳しく知れるおすすめ作品】

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今作はスリランカの宗教の実際の儀礼の現場をフィールドワークによって明らかにしていく作品です。

「仏教を理解するには書物や説教だけでは無理というものである」

これは非常に重要な指摘です。宗教、いや人間そのものを考える際にも忘れてはいけない視点であると思います。


リチャード・F・ゴンブリッチ『インド・スリランカ上座仏教史―テーラワーダの社会』

【「ブッダの教えは誰が聴いたのか」社会と仏教のつながりを考えさせられる名著】

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この本はスリランカの仏教の大枠を学ぶのに非常におすすめな作品です。

スリランカといえば本書タイトルにありますように日本の大乗仏教とは異なる「上座部(テーラワーダ)仏教」が根付く国です。そのスリランカにおける仏教の歴史をインドにおける仏教誕生から遡って考えていくのが本書の大きな流れとなります。


澁谷利雄『スリランカ現代誌』

【スリランカの民族紛争と宗教の関係がわかりやすくまとめられたおすすめ作品】

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本書は書名にありますように現代スリランカと紛争について解説された作品になります。これまで当ブログではスリランカの歴史や仏教についての様々な本を紹介してきましたが、1983年から2009年にかけて続いたスリランカの内戦について特化した作品は本書が初めてになります。

スリランカの内戦は大きく見れば人口の多数を占めるシンハラ仏教徒と少数派タミルヒンドゥー教徒の内戦でした。つまり、宗教が内戦の大きな原因のひとつなのでありました。

もちろん宗教だけが主要因というわけではなくそれまでの歴史や政治経済問題が大きく絡んでいるのですが、仏教が内戦に絡むことになってしまったことに私は大きなショックを受けたのでありました。本書はそんなナショナリズムと結びついた仏教についても知ることになります。

スリランカの内戦では仏教がナショナリズムに利用されていくという形が強く出てきます。その過程を本書『スリランカ現代誌』で見ていくことになります。なぜ民族の対立が深まったのか、平和的な教えだったはずの仏教がなぜ過激な方向へと向かっていったのかなどもこの本では知ることができます。

この本はスリランカについての知識がない方でも読めるように書かれていますので、初学者の方にもぜひおすすめしたい作品です。現代スリランカを知るのにとても役立つ作品です。民族紛争や宗教対立について学びたい方にもぜひおすすめしたい名著です。


杉本良男『仏教モダニズムの遺産 アナガーリカ・ダルマパーラとナショナリズム』

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仏教国スリランカにおける仏教とは一体何なのか。

私達が想像する仏教の世界とは全く異なる世界がここにあります。

宗教とは何かを考える上でも本書は非常に興味深い内容が満載の素晴らしい作品です。


ゴンブリッチ、オベーセーカラ『スリランカの仏教』

【スリランカ仏教は新しい?衝撃の名著!】

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スリランカの仏教といえば厳密な戒律を守る上座部仏教というイメージがあるかもしれませんが、実は現代スリランカの仏教自体は最近構築されたものでした。スリランカ仏教は最も原始教団に近い仏教と言われることもありますが、それも実はここ数世紀で作り上げられたイメージだったのです。この本を読めば確実に驚くと思います。スリランカの仏教に対しての印象ががらっと変わると思います。

本書の帯では「発祥の地、インドで滅びた仏教が、なぜスリランカでは生き続けているのか」と書かれていますがまさに本書では現代スリランカ仏教の実態を詳しく見ていくことになります。

スリランカは1815年にイギリスの植民地になって以来、それまでの伝統的な村社会が衰退し、コロンボでは急激な都市化が進んでいきました。さらに英語を使えるエリートたちが積極的にイギリス文化を吸収。特にイギリスのプロテスタント的な宗教観をスリランカ仏教の世界に持ち込むことになりました。これが現代スリランカの仏教に決定的な影響を与えることになります。

また、スリランカ南部のカタラガマという聖地における仏教側の動きも見逃せません。ここは元々ヒンドゥー教の神スカンダ(日本では韋駄天として親しまれている神)の聖地でした。そこにスリランカ仏教徒たちが今大挙して押し寄せているのです。原始仏教に忠実であることを謳うスリランカ上座部の教えからいうとこれは矛盾です。ですがこれは明らかに大きな流れとなっています。この背景にはスリランカの政治や経済の問題も大きく絡んでいたのでありました。

本書では単にスリランカ仏教を思想面から見ていくのではなく、現地でのフィールドワークで得た知見が生かされています。現地で実際に見てきたからこそ見えてくるスリランカ仏教の実態。これは非常に興味深いです。私も大興奮でこの本を一気に読み切ってしまいました。ものすごく面白いです。


馬場紀寿『仏教の正統と異端 パーリ・コスモポリスの成立』

【スリランカ仏教とインドとの関係、歴史を知れる刺激的な一冊!】

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仏教を学んでいると「サンスクリット語原典」、「パーリ語原典」という言葉によく出くわします。サンスクリット語は聖なる言葉であると同時に古代インド思想界における共通言語でもありました。また、パーリ語も同じようにスリランカ仏教における古典言語です。普通はこれら両言語においてはこれくらいの理解で十分なのですが、このサンスクリット語とパーリ語の違いについて、実はとてつもない事実が潜んでいたのでありました。それを本書ではじっくりと見ていくことになります。

そもそもサンスクリット語とパーリ語、どちらが古いのか、その由来は何だったのか。なぜスリランカはサンスクリット語ではなくパーリ語を使用したのか。

ここにインドとスリランカの歴史的な背景が関わってくるのでありました。ここには単に仏教思想の問題だけでなく、国、王権レベルの政治的な問題も絡んでいたのです。

しかも、スリランカといえば「原始仏教に最も近い教えを継承している上座部仏教の国」というイメージがどうしても浮かんでしまいますが、実は上座部仏教と大乗仏教が同居しており、かつては東南アジアにおける大乗仏教の一大拠点ですらあったというのです。これにも政治的な問題が絡んできます。

スリランカの仏教は王権との関係性によって紡がれてきました。単に宗教、思想というレベルだけではくくれない大きな枠組みで仏教は動いてきたのです。もちろん、こうした宗教と歴史の問題はスリランカに限ったことではありません。ですがインドの周縁としてのスリランカが自らのアイデンティティ、正当性を主張するためにはやはり確固たる何かが必要です。それがスリランカにおいてはパーリ語であり、「ブッダの教えを最も忠実に受け継いだ仏教」であったのでした。こうなってくると「ブッダの教えを最も忠実に受け継いだ」というのは客観的な事実ではなく「スリランカがそう主張する」ものであるということも見えてきます。この辺りの事情も詳しく見ていくのが本書です。

正直、ものすごく面白いです。インド、スリランカの仏教を国際政治、内政の視点から見ていくというのはありそうであまりなかったのではないでしょうか。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。


前田惠學編『現代スリランカの上座仏教』

【現代スリランカ仏教を体系的に学べる大著!】

日本仏教が様々な宗派に別れていてそれぞれ教義や作法が全く異なるように、スリランカ仏教と一言で言ってもそこにはさまざまな違いがあります。

本書ではそんな現代スリランカのそれぞれの宗派やその成り立ちなどを体系的にわかりやすく学ぶことができます。頭が混乱していた私にとってこれは実にありがたい作品でした。


鈴木正崇『スリランカの宗教と社会』

【文化人類学の視点から見たスリランカ仏教を学べる大著!】

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本書の特徴ですが何と言ってもこの本が文化人類学者によって書かれたという点にあります。

この本ではスリランカの宗教を仏教の専門家ではない文化人類学者の目で見ていきます。仏教の専門家ではないからこその視点で仏教を見ていけるのは私にとっても非常に興味深いものがありました。

上で紹介した本もそうですが、スリランカ仏教の専門書は分厚い本が多いです。下の写真を見て頂ければそれが伝わると思います。

これらはかなり分厚い作品ではありますが、読んでみるとびっくりするほどすらすら読めてしまいます。特に本書の著者の語り口はとても親しみやすいです。

仏教書としてのスリランカ仏教ではなく、文化人類学の書としてのスリランカ仏教を知れる興味深い名著です。


森祖道『スリランカの大乗仏教』

【上座部仏教で有名なスリランカに大乗が根付いていた!観音菩薩像の変遷も】

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スリランカといえば大乗仏教とは全く異なる上座部仏教のイメージがあるかもしれませんが、実はそのスリランカにもかつて大乗仏教が根付いていたのでありました。

本書ではそんなスリランカの大乗仏教を仏像や碑文、文献から考察していきます。


藪内聡子『古代中世スリランカの王権と佛教』

【宗教は宗教だけにあらず。国の歴史と歩んだスリランカ仏教の変遷を学ぶ】

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スリランカ仏教や文化についての本は数多くあれど、王権という切り口から仏教をこれだけ包括的に述べていく本書は非常に貴重です。

王は仏教を保護し、仏教は王の正統性を保証する。

こうした相互関係がスリランカでは特に強く見られたことを本書では順を追って見ていくことになります。

この本を読んでいるとまさに宗教は宗教にだけにあらずということを考えさせられます。宗教も時代時代においてその時の政治状況と無縁ではいられません。単に思想や教義だけを追っていても見えないものがあります。そうしたことを丁寧に学んでいける本書は非常に貴重です。


中村尚司『スリランカ水利研究序説』

【灌漑農業から見るスリランカ。古代に栄えた高度な治水の歴史とは】

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本書はそのタイトル通り、スリランカの灌漑農業の歴史について学べる作品です。

スリランカはおよそ2000年ほど前から高度な治水技術を持っており、その灌漑農業は国家運営の肝とでも言うべき重要性を持っていました。

「技術ある所に王権あり。王権あるところに宗教あり」ということで、高度な技術とそれを運営する国家は不可分の関係であり、さらにはその権威の正統性を担保する宗教も絡んできます。

これまで私は宗教や政治の観点からスリランカを見てきましたが、この本では灌漑農業という切り口からスリランカを見ていくことになります。いつもとは違った視点からスリランカを見ていける本書はとても刺激的でした。


及川真介訳『蜜の味をもたらすもの 古代インド・スリランカの仏教説話集』

【スリランカの民衆仏教を知るためにおすすめ】

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本書は、今なおスリランカをはじめとした上座部仏教圏で親しまれている仏教説話だそうです。

仏教説話といえばブッダの前世物語であるジャータカが有名ですが本書ではそれとは一味違った物語を目の当たりにすることになります。


中島美千代『釈宗演と明治 ZEN初めて海を渡る』

【スリランカを訪れた日本の禅僧のおすすめ伝記】

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本書の主人公釈宗演は鈴木大拙や西田幾多郎らビッグネームの師匠であり、若き日には福沢諭吉に師事していたという驚異の禅僧です。

釈宗演という巨大な人物の生涯をドラマチックに見ていける本書はとてもおすすめです。明治を代表する禅僧が見たスリランカとはどのようなものだったのか。そして当時の世界における仏教とはどのようなものだったかを知れる刺激的な作品です。

ぜひぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。


伊東照司『スリランカ仏教美術入門』

【写真多数!スリランカ仏教遺跡巡りに役立つガイドブック!】

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この本はスリランカの仏教遺跡の入門書としておすすめの作品です。

本書ではアヌラーダプラ、ポロンナルワ、キャンディなど主要な仏跡や、その他特徴的な仏教遺跡を見ていくことになります。

本書はとにかく写真が多数掲載されており、現地の状況をイメージしやすいです。さらに解説も初学者にもわかりやすく書かれており、入門書として非常にありがたい作品です。


楠元香代子『スリランカ巨大仏の不思議』

【彫刻家から見たスリランカ仏像の魅力とは!新たな視点で学べるおすすめガイド!】

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本書の著者は仏教の専門家ではなく彫刻家です。

彫刻を彫る側の人がスリランカの仏教美術を見たらどのようなことを思うのかというのは私にとってもものすごく刺激的でした。

私たちは仏像そのものの美しさやその歴史には目を向けることができますが、それがひとつの岩からどのように彫り出されたのかというところまではなかなか思いが至りません。仏像も最初からそこにあったわけではなく、最初はただの岩や木であったわけです。そこから彫刻家の手によって私たちが目にする完成品が出来上がってきます。完成品ばかりを目にする私たちには見えない世界をきっと彫刻家の方々は見ているのでしょう。実際に彫る人の目から見た仏像とはどのような存在なのかということを知れる本書はとても新鮮でした。


田中公明/吉崎一美『ネパール仏教』

【日本と同じ妻帯する仏教が根付く国!その教えと歴史を知るのにおすすめ】

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この本はものすごく貴重な逸品です。

私たち日本人にとってネパールといえばヒマラヤ山脈というイメージが強くありますが、この国の宗教は何なのかというとほとんどわからないというのが実際のところではないでしょうか。私自身もつい最近までこの国についてほとんど何も知りませんでした。

ですが、この国の宗教事情は知れば知るほど面白い・・・!

まずこの国がヒンドゥー教が主でありながらも今なお仏教が息づいているという点。しかもこの国の仏教の中には私達日本の仏教と同じく妻帯している仏教もあるというのです。これは興味深いです。


インド思想のおすすめ入門書6選

森本達雄『ヒンドゥー教―インドの聖と俗』

【インド入門におすすめ!宗教とは何かを考えさせられる名著!】

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プージャー(礼拝)Wikipediaより

インド、ヒンドゥー教といえば上の写真のような礼拝の儀式を連想してしまう私でしたが、この本ではこうしたヒンドゥー教の成り立ちや思想だけでなく、一般信者の日常レベルでの信仰についても知ることができます。

謎の国インド。同じアジアでありながら異世界のようにすら思えてしまうインドについてこの本では楽しく学ぶことができます。著者の語りもとてもわかりやすく、複雑怪奇なインド世界の面白さを発見できます。「なぜインドはこんなにも独特なのか」ということを時代背景と共に知ることができますのでこれは興味深いです。

私たちからすると複雑怪奇な魔境にも見えてしまうインド。そのバックグラウンドには独特な宗教的事情があります。これは非常に興味深かったです。

他にもこの本ではインドの興味深い宗教事情をたくさん知ることができます。そしてそれらはインドの宗教にとどまらず、「そもそも宗教とは何なのか」ということまで考えさせられることになります。


山下博司『古代インドの思想』

【インドの気候・風土からその思想や文化の成り立ちを知れるおすすめ参考書】

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この本ではインドの思想がその独特な気候や風土から大きな影響を受けていることを知ることができます。インドではなぜ無限の宇宙的な哲学が生まれたのか、なぜインド人は多神教的な宗教を信仰するのか、そうしたことを自然や風土という切り口から見ていけるこの作品は非常に刺激的です。

この本では他にもモンスーン気候や乾季、雨季、森などインド思想を考える上で非常に興味深いことが語られます。

これは面白いです。インドだけでなく、あらゆる宗教、思想、文化を考える上でもとても重要な示唆を与えてくれる一冊です。ぜひおすすめしたい作品です。


保坂俊司『インド宗教興亡史』

【仏教、ヒンドゥー教、イスラム教だけでなくシク教、ジャイナ教などとの相互関係も知れる参考書!】

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この本はインドの宗教を学ぶ上で非常にありがたい参考書です。

と言いますのも、この本ではインドに多数ある宗教をそれぞれ別個に見ていくのではなく、その相互関係に着目して語っていく点にその特徴があるからです。

インド古代のバラモン教と仏教、ジャイナ教の関係。そこから時を経てヒンドゥー教とイスラム教が力を増す背景とは何だったのか。なぜ仏教は衰退したのか、そしてその姉妹宗教と言われるジャイナ教はなぜ今も生き残ることができたのか。これらを時代背景や宗教間の相互関係から見ていけるこの本は非常に貴重です。宗教は宗教だけにあらず。歴史や文化、政治経済すべてが関わります。この本ではそんな歴史のダイナミズムを感じることができる非常に刺激的な作品です。


マーティン・J・ドハティ『インド神話物語百科』

【ヒンドゥー教の大枠や時代背景を知れるおすすめ解説書!】

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ドハティは単に物語の内容を語るだけでなく、その時代背景や文化の奥深さまで語ってくれます。

「どのような宗教であれ、その宗教を理解するには、その背景となる社会や文化、その文化が形成された歴史を知ることが不可欠である(P13)」とドハティが述べるように、ヒンドゥー教が成立していく時代背景も知れる非常にありがたい構成となっています。

人間には世界の真理を知り尽くすことができない。神話そのものも答えを与えてくれない。だが、「そこには自己認識が存在する」。

この解説に私はぐっと来ました。これまで私は「親鸞とドストエフスキー」をテーマに4年ほど学んできましたが、キリスト教的な世界観では「絶対的な真理などない」という発想はほとんど出てきません。絶対者・創造主である神の存在は自明のものとしてそこに存在しています。しかしインドではそうではなかった。こうした西洋東洋の違いを感じられるのも興味深い点です。

そしてこの本を読んでいると、ヒンドゥー教の死生観や来世観についても知ることになります。当時の時代背景と絡めながらそれらのことを考えていくと、仏教というものがまさに「インドの文脈」から生まれてきたのだということを強く感じることになりました。

仏教の思想やそこで使われる用語、概念がまさにヒンドゥー教の世界から生まれてきたのだということを改めて実感したのです。仏教から遡りインドの歴史や文化を知ることで見えてくるものがある。それを確信した読書になりました。これは面白いです。仏教に対する新たな視点をくれる素晴らしい作品です。


上村勝彦『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』

【日本文化や大乗仏教とのつながりも知れる名著!】

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この作品はインドの大叙事詩『マハーバーラタ』の中で書かれるインド最高峰の思想書『バガヴァッド・ギーター』の解説書になります。

この『マハーバーラタ』は『ラーマーヤナ』と並んでインドを代表する二大叙事詩のひとつで、この大叙事詩は現代インドでも親しまれてます

マハーバーラタ?バガヴァッド・ギーター?ラーマーヤナ?

このような固有名詞を聞いてもポカンかもしれませんが、実は現代日本人にとってもこれらは身近な存在でもあります。

皆さんは『RRR』というインド映画を知っていますでしょうか。数年前に日本でも大ヒットした映画です。実はこの映画こそ『マハーバーラタ』と『バガヴァット・ギーター』、『ラーマーヤナ』を下敷きにした作品でもあったのです。

この映画の主人公のひとり、ビームは『マハーバーラタ』に出てくる英雄ビーマから来ています。さらに言えば、もうひとりの主人公ラーマも『ラーマーヤナ』の主人公ラーマから来ています。つまり『RRR』はインド二大叙事詩の合体というインド人の精神表現の極みたる豪華な作品なのです。これには私も胸が熱くなりました!


この「ナートゥ」のダンスシーンは世界中を席巻しました。まさにTHE・インド!インドの大爆発です!最高に熱い映像となっていますのでぜひご覧ください!

さて、話は少し反れてしまいましたが、著者はこの本の中で次のように述べています。

「日本人はいわば「隠れヒンドゥー教徒」であるといっても過言ではありません。そのことを示すことが、本書の目的の一つでもあります。」

衝撃的な言葉ですよね。

ですがこの本を読んでいると、この言葉があまりにリアルなものとして感じられてきます。日本の文化や大乗仏教とのつながりが非常にわかりやすく説かれます。

この本自体は『バガヴァッド・ギーター』という古代インドの思想の解説書ということでなかなか手が伸びにくい作品であるかもしれません。ですがそこは少し見方を切り替えてこの本を仏教書として見てみてはいかがでしょうか。

この本は古代インドやインド思想を知らなくても読めるような作りになっています。また同時に、仏教の入門書としても十分通用するほどわかりやすい作品になっています。これはものすごい名著です。

日本仏教を知る上でも新たな視点を得られる非常におすすめな作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。


渡瀬信之『マヌ法典 ヒンドゥー教世界の原型』

【古代インドから続くインド人の世界観、生活規範を学ぶのにおすすめ】

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この本はインド・ヒンドゥー教世界の世界観、生活規範の礎となった『マヌ法典』の参考書です。

この作品は『マヌ法典』の概要をわかりやすく解説してくれる素晴らしい作品です。

インドにおける宗教は生活そのものと一体化したものとなっています。ただ精神的に信仰するのではなく、生活実践そのものとして存在しています。こうしたインドの宗教間、世界観の中で仏教も生まれています。

また、この作品の中でも説かれているのですがこの『マヌ法典』も、仏教やジャイナ教、様々な出家修行者の存在に大きな影響を受けています。いや、より正確に言うならば、互いに影響を与え合いながら思想や制度が生み出されてきました。

私達日本人がインドの仏教を学ぼうとすると、どうしても仏教の側のみからインド世界を見てしまいがちです。ですがインドにおいて仏教はどちらかといえばアウトサイダー側の存在でした。その主流はやはりヒンドゥー教世界になります。

しかも仏教は在俗信者の日常生活にはあまり介入しないという方針を取りました。つまり、仏教徒の日常生活や通過儀礼は相変わらずヒンドゥー教世界の枠組みの中にあったとされています。

そんなインド仏教徒とも共存してきたヒンドゥー教世界の生活規範や世界観を知れる本書は非常に貴重です。インド仏教について考える上でもとても大きな意味がある作品だと私は思います。


さらにインド哲学、インド思想を学ぶのにおすすめの参考書

川村悠人『ことばと呪力 ヴェーダ神話を解く』

【意外と身近な「ことば」の力とは?私達の日常とも繋がる発見が満載!】

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この本は古代インドの神話を題材に「ことば」の持つ力について考えていく作品になります。古代インドの『ヴェーダ』と言われると何やら難しそうな気がして一歩引いてしまうかもしれませんがご安心ください。インドについて何も知らない方でも気軽に楽しく読めるよう著者は心を砕いておられます。

ことばはその人自身を表します。もちろん、「言葉、言葉、言葉」と言われるように、時には言葉そのものも信用できない時もあります。ですが普段何気なく使っていることばはやはりその人を表すものです。その人の内から現れ出るものがことばだと思います。

ことばというものを改めて考えてみるきっかけとしてこの本は非常に素晴らしいものがあると思います。そして普段接することのない古代インドの歴史や文化も楽しく学べるありがたい作品です。


辛島昇・奈良康明『生活の世界歴史5 インドの顔』

【インド人の本音と建て前。生活レベルの精神性を幅広く知れるおすすめ本!】

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この本ではインドの生活レベルの文化や精神性について学ぶことができます。著者が述べるように実際の生活には「本音と建て前」があります。これを無視してどちらかだけを取り上げてしまうと全く別のものが出来上がってしまうというのはたしかに「なるほど」と頷けるものでありました。

本書ではこうした宗教面だけでなく、カーストや芸術、カレーをはじめとした食事、政治、言語、都市と農村、性愛などなどとにかく多岐にわたって「インドの生活」が説かれます。仏教が生まれ、そしてヒンドゥー教世界に吸収されていったその流れを考える上でもこの本は非常に興味深い作品でした。これはぜひぜひおすすめしたい作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。


服部正明『古代インドの神秘思想 初期ウパニシャッドの世界』

【ショーペンハウアーとインド思想のつながりも知れる名著】

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この本は古代インド思想の奥義とも言えるウパニシャッド哲学について説かれた作品です。

そしてこの記事のタイトルにも書きましたように、この本の序盤では古代インド思想とショーペンハウアーのつながりについても説かれます。

ショーペンハウアー(1788-1860)Wikipediaより

これまで当ブログでもショーペンハウアーについて見てきましたが、彼と古代インドのつながりやそれがヨーロッパ社会に与えた影響も詳しく知れたのはとても興味深かったです。


立川武蔵『ヒンドゥー教巡礼』

【インドの聖地を巡り、ディープな宗教的世界を感じられる作品】

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この本はヒンドゥー教の聖地を著者と一緒に旅をしている気分になれる作品です。

この本ではインドだけでなくネパールやバリなどの地も紹介されます。ヒンドゥー教といえばインドのイメージがありますが、実はその周辺国にもヒンドゥー教は信仰されていたのでありました。特にネパールの首都カトマンズでの章は私にとっても目が開かれるような思いになりました。これまでの伝統的な社会の中に急激に現代資本が入るとどうなってしまうのか、著者はそのことについて自身の目で見た世界を私たちの前に開いてくれます。

古くから生き続けている宗教の姿、人々の生活。この本では抽象的な哲学概念ではなく、生身の人間の暮らしそのものを見ることができます。現地の人々と宗教はどのような関係なのか。日本に生きる私達と何が違うのか。そうしたことを考えさせられます。


辻直四郎『インド文明の曙―ヴェーダとウパニシャッド―』

【バラモン教の聖典の概要を学ぶのにおすすめの参考書】

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「本書はヴェーダの概要を、専門家以外の人に紹介するのを目的とする。従ってこれはヴェーダの研究書ではなく、常識としてのヴェーダの入門書である。」

「ヴェーダとウパニシャッド」といいますと何かとてつもなく難しそうなイメージが湧いてきますがこの本自体はここで述べられますように専門家以外の人にもわかるように書かれた入門書になります。

古代インドの宗教において何が信仰されていたのか、どのように信仰されていたのかということを知ることができるのがこの本です。

特にインド最古の文献である『リグ・ヴェーダ』には現在のヒンドゥー教の源流になったバラモン教の神々がたくさん登場します。ヒンドゥー教になる前のインド宗教との違いを感じる上でもこの本は非常にありがたい作品でした。


辻直四郎訳『リグ・ヴェーダ讃歌』

【インド宗教の源流!神々への讃嘆と祭式の雰囲気を掴むために】

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この本は古代インドの根本聖典『リグ・ヴェーダ』の主要な箇所を抜粋した作品になります。

上ではこの聖典のおすすめの参考書、辻直四郎著『インド文明の曙―ヴェーダとウパニシャッド―』をご紹介しましたが、いよいよその本丸の登場です。

『リグ・ヴェーダ讃歌』というタイトル通り、この聖典ではとにかく神々への讃嘆が繰り返されます。

そして上の解説にありましたように、その神々のバリエーションがとにかく豊富です。また、そこに神々のランク付け、秩序があいまいというのが非常に興味深いです。まさに多神教的な世界がそこに繰り広げられます。

その中でも特に興味深かったのが後のヒンドゥー教で主神となるヴィシュヌとシヴァがこの『リグ・ヴェーダ讃歌』では影が薄いという点です。シヴァ神においてはその前身のルドラという名前で登場しますが、古代インドの時点ではそこまで人気のある神ではなかったというのは非常に興味深かったです。

左がヴィシュヌ、右がシヴァ

このヴェーダで影の薄かったヴィシュヌとシヴァがやがてインドの宗教で絶大な人気を得るようになっていく。この変化がインド宗教を知る上で非常に重要なポイントとなりそうです。


沖田瑞穂『マハーバーラタ入門 インド神話入門』

【インド文化の源流たる大叙事詩の全体像を掴むのにおすすめの解説書】

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この本はインドの大叙事詩『マハーバーラタ』の概要を知れるおすすめの入門書です。

あまりに長大なこの叙事詩の全体像を掴むのに本書は非常に役に立ちました。初学者でも安心してその流れを学んでいけるおすすめの入門書です。インドに興味のある方にぜひおすすめしたい作品です。


『インド神話物語 マハーバーラタ』

【インド人の愛する大叙事詩!インドの精神性を知るのにおすすめ!】

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『マハーバーラタ』はインドを代表する二大叙事詩のひとつです(もうひとつは『ラーマーヤナ』)。

この大叙事詩は現代インドでも親しまれていて、ここに出てくる英雄や神をモチーフに多くの映画も作られています。上でも紹介しましたが。最近爆発的なヒットを叩き出したインド映画『RRR』もまさにその一つです。

物語そのものとしても『マハーバーラタ』は非常に面白いです。この物語自体が王位継承争いから発しているということで非常に多彩な人間ドラマが展開されます。そこに呪いや前世からの因縁が絡んだりと、さらにドラマチックで読み応え抜群の物語となっています。

さらに、『バガヴァッド・ギーター』をはじめ、戦争という悲惨な地獄や苦しみ多き人生の中でいかに生きるか、何を求めて生きるべきかを問うてくるのがこの神話です。ドラマチックな神話物語の中に「いかに生きるべきか」という深い思索が込められています。こうした深い思索、「いかに生きるべきか」の知恵があるからこそインドにおいてここまで根付いたのではないでしょうか。

ギリシャ神話『イリアス』もそうでしたが、そもそも物語として抜群に面白い!現代でも多くの人に親しまれているのにはやはり理由があります。インド思想の源流を知る上でも非常に興味深い作品でした。


『バガヴァッド・ギーター』

【現代にも生き続けるヒンドゥー教の奥義!大乗仏教とのつながりも!】

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『バガヴァッド・ギーター』はインドの大叙事詩『マハーバーラタ』の中で説かれた、インド思想の奥義と言ってもよい対話篇です。

この作品は『マハーバーラタ』の主人公の一人、アルジュナとその御者クリシュナ(実はヴィシュヌ神の化身)との対話によって成り立っています。

その対話はもちろん『マハーバーラタ』の物語の筋を背景に始められます。『バガヴァッド・ギーター』単独で読んでもわからないことはないのですが、やはりより深く味わうためには『マハーバーラタ』の大筋を知っておくことが必須であると思います。

『バガヴァッド・ギーター』は文庫本で140ページほどとかなりコンパクトです。そして上村勝彦さんの訳も非常に読みやすく、巻末には50頁以上も解説が付されていますのでこれはありがたいです。

上で紹介した『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』と沖田瑞穂著『マハーバーラタ入門 インド神話入門』、そして『マハーバーラタ』そのものと合わせて読めばさらに理解は深まります。

仏教を学ぶ上でもこれは大きな意味がありました。いや、仏教だけに収まらず、宗教、人間そのものにも目を開かせてくれる珠玉の聖典でした。


『インド神話物語 ラーマーヤナ』

【囚われの妻シータを救いに奮闘するラーマと愛すべき猿神ハヌマーンの冒険神話】

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『マハーバーラタ』と並んでインド二大叙事詩と称えられる『ラーマーヤナ』は主人公ラーマが羅刹王ラークシャに囚われた妻シータを救いに行く冒険物語となっています。

『マハーバーラタ』、『ラーマーヤナ』と二つ続けてインド二大叙事詩を読んできましたがこれは素晴らしい体験となりました。インドの奥深さ、面白さに私はすっかり撃ち抜かれてしまいました。ぜひぜひおすすめしたい作品です。


長谷川明『インド神話入門』

【ビジュアルで学べるヒンドゥー教の神々!入門書にもおすすめ!】

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この本ではインドの神々をたくさんの図像とともに学ぶことができます。神々の特徴と見分け方を実際にその姿を見ながら学べるのは非常にわかりやすくてありがたいです。

異国人である私たちにはなかなか一見するだけでは区別がつきにくいインドの神々ではありますが、見分け方にはちゃんとポイントがあります。その神ごとに特有の姿であったり持ち物などが必ずあります。見分け方がわかればよりインドの神々への親近感が湧いてきます。

これまで本の文章を中心にインドを学んできましたが、こうして実際に神々の姿をじっくり見ていくというのはとても新鮮で楽しかったです。最初は不気味で本を開くことすらできなかった私でしたが今やこの本は私の愛読書です。ことあるごとに本書を手に取り、「あぁ、これがシヴァの特徴だったな」とそれぞれの神々の特徴を復習しています。これは便利な一冊です。


中村元選集第30巻『ヒンドゥー教と叙事詩』

【仏教や日本とのつながりも知れる名著!インド思想の奥深さを体感】

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なぜインドではヒンドゥー教が栄え、仏教は衰退していってしまったのか。そのことをこの本では見ていくことができます。そこには単に思想面だけではなく、もっと大きな社会的要因が絡んでくるのでありました。

また、この本では書名にありますようにインド二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』についても詳しく見ていくことができます。仏教学者中村元先生ならではの視点で説かれるインド神話の講義を聴けるのは非常に興味深いものがありました。


V・デヘージア『岩波 世界の美術 インド美術』

【オールカラーの素晴らしい写真が満載!おすすめインド美術ガイドブック】

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この本はインダス文明から現代インドまでの美術史を一冊で概観できる驚くべき作品です。この本の特徴は写真が豊富ですべてオールカラーで掲載されている点にあります。また、時代ごとに並んでいるのでインドの美術がどのような流れで変遷していったのかを知れるのもありがたいです。

私は特に仏教美術に関心があったのですが、初期の仏像や仏教彫刻を綺麗な写真で見れたのはとてもありがたかったです。解説もわかりやすく、これはぜひおすすめしたい作品だとすぐに感じました。


立川武蔵、大村次郷『アジャンタとエローラ』

【インドの誇る世界遺産のおすすめガイドブック!】

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この本はインドの世界遺産アジャンタとエローラのおすすめのガイドブックになります。

両遺跡は西インドの大都市ムンバイからも近く、インド旅行のハイライトのひとつとして多くの観光客がここを訪れています。

両遺跡にある彫刻や絵の解説はものすごく興味深かったです。ジャータカという仏教説話の解説は特にぐっと来るものがありました。単に遺跡や芸術の解説をするのではなく、そこから時代背景や思想のもっと奥深くまで語ってくれるのでぐいぐい引き込まれてしまいます。


『マヌ法典』

【インド・ヒンドゥー教社会の礎。世界創造から人間の理法まで壮大な規模で説かれた聖典】

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『マヌ法典』は紀元前2世紀から紀元2世紀に編纂されたとされるインドの聖典です。この聖典は今日のインド社会にも大きな影響を与え続けています。

『マヌ法典』は単なる法律書のようなものではありません。『マヌ法典』を読み始めてまず驚くのは、いきなりこの聖典が天地創造の話から始まるということです。ブラフマンという創造主を中心にした壮大な宇宙論、世界観がまず語られ、そこから人はいかに生きるべきか、何を規範とし生活の掟としていくのかが語られていきます。

また、上の『マヌ法典 ヒンドゥー教世界の原型』でも説かれていたのですが、単に生活規範やシステムを羅列していくのではなく、そこにブラフマンという創造主による宗教的権威付けがなされているところにポイントがあります。

『マヌ法典』は仏教やジャイナ教、無数の出家修行者への反論という側面を持った聖典です。仏教が厭世的で欲望を滅する形を理想としたのに対してヒンドゥー教の聖典は現世肯定で願望成就も否定しません。こうしたところにも後にインドで仏教が滅亡し、ヒンドゥー教が繁栄を極める理由があったのかもしれません。


カウティリヤ『実利論』

【古代インドのマキャヴェリズム!『君主論』に比すべき徹底的な帝王学とは!】

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今作の著者(とされている)カウティリヤは実は私達仏教徒にも大きな関わりがある人物です。と言いますのもカウティリヤは紀元前317年に建国されたマウリヤ王朝の祖チャンドラグプタの名宰相として知られた人物で、この王朝の最も有名な人物がこの少し後の時代に登場するアショーカ王です。

ヴァイシャリーのアショーカ王柱。紀元前250年頃に建立された。向かいにはストゥーパがある。Wikipediaより

アショーカ王はインド全土に仏教を広めたことで有名な王ですが、その王朝はこのカウティリヤの政治力があったからこそインド全土に広がる勢力を持つことができたとも言えるでしょう。

というわけで私達仏教徒にとっても実は繋がりがあるのがカウティリヤなのでありました。

さて、マキャヴェリの『君主論』ではかなりえげつない権謀術数が説かれますが、この『実利論』もかなりのどぎつさです。

本書解説でも「本書の作者は、自国の治安を守り、国力を増強して、他者の領土を獲得するために、君主の採用すべきありとあらゆる権謀術数を説く。なかんずく、本書の随所で展開される諜報活動の実例は、最も注目すべきものの一つであろう。インドの古典において諜報活動は非常に重視され、後代の文学作品においても、スパイを適切に活用できぬ王は非難されている。」と述べられるように、スパイの活用法については特に念入りに説かれます。

この本を読んでいると王族で生まれることが全く羨ましくありません。どんなに贅沢ができたとしても私は謹んでその権利をお返ししたいと思います。ブッダももしかしたらそういう気持ちだったのかもしれません。

『実利論』よりも数百年前ではありますがブッダ在世時にもインド全土は戦国時代であり、弱肉強食の様相を呈しておりました。さらに言えば、ブッダは釈迦族の王子であり、本来は『実利論』で説かれるような権謀術数を用いて国を統治しなければなりませんでした。結果的にブッダはその道を捨て出家者となってしまいましたが、釈迦族はその後大国コーサラ国に滅ぼされることになります。ブッダは生まれた国の消滅を目の当たりにしたのでありました。

また、釈迦族を滅ぼしたコーサラ国ですらその後すぐにマガダ国に滅ぼされてしまいます。ちなみにこの時のマガダ国の王はアジャセという有名な人物です。きっと皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。

ブッダはこうした弱肉強食、権謀術数の実態を肌身で感じた上で仏教を説いていました。そう考えると、ブッダの平和的な教えがいかに当時の常識から距離があるかを思い知らされます。

「ブッダの説く平和は単なる理想ではないか。現実の前にはそんなものは無力だ。国を治めるというのは綺麗事ではいかないのだ。」

私の中でそんな苦しい思いが何度もよぎりましたが、それでもなお信念を持って教えを説き最後まで生きたのがブッダなのだとしたらやはりそれは偉大なことだと私は思います。

当時の厳しいインド情勢を知る上でも本書は非常に役立つ作品です。


『カーマ・スートラ』

【古代インドの性愛の法典。カジュラーホー寺院やタントリズム、密教に深い関係も】

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私が『カーマ・スートラ』を読もうと思ったのはインドのカジュラーホーがきっかけでした。ここにはヒンドゥー教の寺院でありながら性的な彫刻がこれでもかと残されています。

ですが単に「性的ないかがわしいもの」と侮るなかれ、宗教における性の問題は非常に重要なものを秘めていたのでありました。しかもこれは単にヒンドゥー教の中の話ではなく、仏教もヒンドゥー教の思想を吸収し、タントリズムや密教へと繋がっていくため、こうした性にまつわる思想や実践が現れてくることになります。

『カーマ・スートラ』は単なる好色文献というわけではありません。どぎつい性的表現ばかりと誤解されていますが、それもあくまで男女間の生活の一部分です。男女の出会い、そして共に歩む人生、その全体を含んでの『カーマ・スートラ』です。この法典を読んで男女間における生活規範がびっしり説かれていることに私も驚きました。

上で紹介した『マヌ法典』もまさに生活のあらゆる場面における生活規範を説いていました。そう考えると、ヒンドゥー教世界は日常生活すべてにおいてかなり厳密に規範、やるべきこと、信じるべきことが定められていたのだということになります。もちろん、本音と建て前があるように、そのすべてが厳密に守られていたわけではないでしょう。ですが、生活のまさに隅々までヒンドゥー教の教えが染みついていたのではないでしょうか。


渡辺研二『ジャイナ教 非所有・非暴力・非殺生―その教義と実生活』

【仏教との比較も興味深いおすすめ解説書!】

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ジャイナ教は仏教と姉妹宗教と言われるほど共通点の多い宗教です。

この本ではジャイナ教の基本的な教義や成立の背景などをわかりやすく知ることができます。

時代背景と一緒にジャイナ教とは何かを知れるこの本はとてもおすすめです。

ジャイナ教の入門書としてとても読みやすく、仏教の参考書としてもありがたい作品でした。


小尾淳『近現代南インドのバラモンと賛歌』

【タミル人とバクティ信仰。南インドの文化を学ぶのにおすすめ】

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今作『近現代南インドのバラモンと賛歌』は南インドの文化を知るのにおすすめです。インド文化や宗教、歴史についてはデリーなどの北インドやガンジス川流域を中心に語られることが多いです。そんな中南インドのドラヴィダ族、タミル人に着目して文化や社会を論じた本はなかなかに貴重です。

そして本書は宗教賛歌という切り口で南インドの独特な文化を見ていくことになります。

インドの宗教や文化について数多くの本はあれど、南インドの音楽に特化して書かれた本は貴重です。私もこの視点からインド文化を考えたのは初めてのことでとても新鮮な気持ちでこの本を読むことができました。


間永次郎『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』

【ガンディーの人柄や思想の核を知るのにおすすめの参考書!】

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マハトマ・ガンディーといえば誰もが知るインド独立に大きな役割を果たした偉人中の偉人です。

本作『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』はそんなガンディーの思想や人柄、そして社会に与えた影響についてわかりやすく見ていけるおすすめの参考書になります。

ガンディーの有名な「非暴力」は私達もよく知る言葉です。しかしこの「非暴力」がはたしてどういうものなのかというのが実はあまり知られていない、いや誤解すらされている。そんな問題提起が本書ではなされていきます。

特にガンジーの宗教観、そして家庭問題について説かれる第5章、6章は衝撃的です。私も「え?そうだったの!?」と驚いてしまいました。

ただ、この本は単なるゴシップのようなものではありません。ガンディーの思想や人柄を様々な資料によって明らかにしていきます。


吉村正和『心霊の文化史 スピリチュアルな英国時代』

【スリランカ仏教に影響を与えた神智学協会についても知れる一冊!】

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心霊主義と一口に言っても、降霊会、骨相学、神智学など、その裾野は広い。当初は死者との交信から始まった心霊主義だが、やがて科学者や思想家たちの賛同を得ながら、時代の精神へと変容を遂げ、やがて社会改革運動にまで発展していく。本書では心霊主義の軌跡を追いながら、真のスピリチュアルとは何かを検証する。

19世紀後半のイギリスを席巻した心霊主義。現在では懐疑的な目で見られるこの現象が、科学者や思想家たちの賛同を得ながら、ダイナミックな精神運動として存在していた時代を多面的に読み解く。

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心霊主義といいますとオカルトチックで怪しいイメージもありましたが、実は産業革命や世界的な合理主義の流れから生まれてきたという興味深い背景をがありました。

そしてこの本がインド思想において重要なのは、インドの神秘的な教えが当時の西欧人の好みにドンピシャだったことを明らかにしている点です。しかもそうした西欧人に自身の宗教を積極的に売り込んだ東洋人という構図もあったことが明かされます。

私達がイメージする「神秘的なインド」の根っこがここにあったのです。

ここではこれ以上はお話しできませんが、リンク先でより詳しくお話ししていますので興味のある方はぜひご参照頂けたらと思います。


インドの歴史とカースト制度についてのおすすめ参考書

ここからは直接的にはインド思想の本ではありませんが、インドの歴史やカースト制度などインド思想とも直結する問題についての参考書をいくつか紹介します。

山崎元一『古代インドの文明と社会〈世界の歴史3〉』

【インドの思想・宗教が生まれてくる時代背景を学ぶのにおすすめ!】

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この本は古代インドの歴史や文化を詳しく知ることができるおすすめの解説書です。

「詳しく知ることできる」というと、難しくて読みにくい本というイメージが湧いてくるかもしれませんがこの本は全く違います。ものすごく読みやすく、わかりやすいです。

そして私がこの本を手にったのは仏教が生まれてくる時代背景を知りたかったからでした。なぜ仏教が人々に受け入れられたのかを知るには、思想面だけではなくそれが受け入れられた土壌も知らねばなりません。当時の人々がどんな社会に生き、どんな生活をしていたのか、それを私は知りたかったのです。

この本はそんな私の疑問に答えてくれた素晴らしい作品でした。


藤井毅『歴史の中のカースト 近代インドの〈自画像〉』

【カーストはイギリスの植民地政策によって固定化された?】

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この作品ではインドにおけるカースト制度がイギリスによる植民地政策によってより複雑化、固定化されたことを知ることができます。

私がこの本を手に取ったのは当ブログでも紹介した池亀彩著『インド残酷物語 世界一たくましい民』がきっかけでした。

この本では現在でも続くカースト差別の悲惨な実態を知ることになりました。そしてこの本の中で紹介されていたのが本書『世界歴史選書 歴史の中のカースト 近代インドの〈自画像〉』だったのです。

インドにおけるカースト差別は古代インドからありました。しかし現代のカースト差別は必ずしも古代インドからそのまま続いてきたものではありません。

そこにはインド独自の複雑な文化や民族性もさることながら、イギリスにおける植民地支配の影響があったのです。

インドにおけるカースト制はとにかく複雑です。

たしかに古代インドにもカースト制はありました。そしてそのカースト制度を批判していたのが仏教やジャイナ教だったというのはこれまで当ブログでも見てきた通りです。

ですが、そのインド土着のカースト制を一変させ、より強固なものに変えてしまったのがイギリス植民地政策だったのでした。そしてさらに難しいことに、イギリス植民地統治を生き抜くために自分たちのカーストを利用したという、インド人側からの働きかけもあったことをこの本では知ることになります。

イギリスをはじめとした西欧諸国と現地のインド人、その双方向の作用があって現在のカーストに繋がっていることを詳しく見ていけるこの本はとても貴重です。

著者はインドのカースト制度は単純化されて語られがちであるということを本書で指摘していました。この本ではなぜそうした単純化したカースト制が語られてしまうのかを歴史的な背景から解き明かしてくれます。

インドの複雑さを学ぶ上でもこの本は非常にありがたい作品となっています。ぜひおすすめしたい一冊です。


W・ダルリンプル『略奪の帝国 東インド会社の興亡』

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この本では巨像インドがイギリスの東インド会社に支配されていく流れを詳しく見ていく作品です。

はじめに言わせて言わせて頂きますが、この本はあまりに衝撃的です。読んでいて恐怖すら感じました。圧倒的な繁栄を誇っていたムガル帝国がなぜこうもあっさりとイギリスの貿易会社に屈することになってしまったのか。この本で語られることは現代日本に生きる私たちにも全く無関係ではありません。この本はまさに私達現代人への警告の書とも言えるでしょう。

私はこの本を読んで心底恐くなりました。繁栄を誇っていた国もあっという間に崩れ落ちるのです。日本もかつては繁栄していたかもしれませんが今や完全に右肩下がりの状況です。そして今の混乱。

現代の警告書としてこの本は非常に大きな意味があると思います。

もちろん、インドの歴史やイギリス史に興味のある方にもとてもおすすめです。私もこれまで学んできたこととこの本が繋がり、非常に刺激的でした。まさかアメリカの独立戦争やあのナポレオンまでこの出来事と繋がってくるのかと仰天しました。

世界は繋がっているんだということも知れる名著です。これはぜひおすすめしたい一冊です。


森本達雄『インド独立史』

【イギリス植民地支配の歴史とガンディーの戦いを知れる名著!】

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この本はあまりに重いです・・・。この本で説かれるインド苦難の歴史は想像を絶します。

インドのイギリス植民地からの独立といえばマハトマ・ガンディー(1869-1948)を思い浮かべることでしょう。

インド独立のリーダー、ガンディー。私達はガンディーの非暴力や非協力、塩の行進など有名な抵抗運動を単語レベルでは知っています。そして彼の活躍によりインドは最終的にイギリスから独立を勝ち取ったということも私たちは知ってはいます。

ですがその背景で何が起こっていたのか。この本では想像を絶するほど複雑な事態があったことを目の当たりにすることになります。


池亀彩『インド残酷物語 世界一たくましい民』

【カースト制度の根深い闇。大国インドの現在を学ぶのにおすすめの一冊!】

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私はこの本に強い衝撃を受けました。僧侶としてショックを受けずにはいられない問題がこの本で説かれていたのです。詳しくはこの記事の後半で改めてお話ししていますが、私にとってこの本はインドという存在を考える上で大きな問題を提起してくれることになりました。

この本は現代インドにおけるカースト制について語られる作品です。上の本紹介にありますように、この本は著者の現地での調査に基づいた貴重な記録です。机の上で文献を読むだけでは知りえない、リアルな生活がそこにはあります。


鈴木真弥『現代インドのカーストと不可触民』

【デリーの清掃カーストから見る差別の実態とは】

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本書ではデリーにおける清掃カーストの悲惨な状況を見ていくことになります。

また、この本ではガンジーによる改革の内容や問題点についても考えていくことになります。ガンジーが理想としたインド社会はどのようなものだったのか。ガンジーがカースト制、不可触民についてどのように考えていたのかがよくわかります。ガンジーといえばインド独立に大きな指導力を発揮した聖人のようなイメージが根強いですが、そのガンジーがカーストをどのように考えていたのかというのは非常に重要なポイントだと思います。

データやフィールドワークを中心にした貴重なインド情報を知れるのが本書です。カースト差別を知る上で非常にありがたい作品でした。次で紹介する佐藤大介著『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』と合わせてぜひおすすめしたい作品です。


佐藤大介『13億人のトイレ』

【インドにはトイレがない!?清掃カーストの過酷な仕事やガンジス川の汚染についても学べる1冊!】

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この本も衝撃的でした。上で紹介した鈴木真弥著『現代インドのカーストと不可触民』ではデリーの清掃カーストに特化して語られましたが、今作『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』ではより具体的にその悲惨な実態を知ることになります。

『現代インドのカーストと不可触民』ではデータやフィールドワーク、歴史的経緯の解説が中心で全体像を掴むのに最適な参考書となっているのに対し、今作ではそのとにかく強烈な実例が次から次へと語られます。ですのでこの二作をセットで読むことで相乗効果間違いなしです。

この本は新書ながらものすごく濃厚で情報量の多い作品です。現代インドの実態を知る上で最高におすすめの本のひとつです。「トイレ」というなかなかない切り口から現代インドを語るこの本はとても刺激的です。読みやすさも抜群ですいすい読んでいけます。驚くような内容がどんどん出てくる作品なのであっという間に引き込まれてしまうことでしょう。


ジェイムズ・クラブツリー『ビリオネア・インド』

【インド版オリガルヒの存在!腐敗、縁故主義のインド超格差社会を学べる一冊!】

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2023年に中国の人口を追い越し、経済成長著しい大国インド。モディ首相率いるインドはこれからどこへ向かうのか。今や世界に巨大な影響を与える存在となった現代インドについて知るのにこの本はうってつけです。

『ビリオネア・インド 大富豪が支配する社会の光と影』という書名にあるように、この本ではインドにおける超富裕層をメインテーマに据えてインドを見ていきます。

この本を読んでまず驚くのはインドの大富豪のあまりの富豪っぷりです。世界の富豪ランキングの上位に食い込むような超富裕層がインドで次々と生まれています。

こちらはこの本の冒頭で登場する大富豪ムケーシュ・アンバニの自宅アンティリアです。本書の表紙にもなっていますが、この建物は世界で最も高級な個人宅とも言われています。もしかすると「これくらいのビルなら世界にたくさんあるのでは?」と思うかもしれません。ですが違うのです。このビルの一部が彼の家というのではなく、このビルそのものが個人宅なのです。そう考えるとアンバニの驚くべき富豪ぶりが見えてきますよね。

今インドではこうした超富裕層がどんどん出てきています。彼らは圧倒的な富を手にしていますが、その一方で圧倒的な格差の問題がインドを揺るがしています。

インドでは元々格差が大きいことは知られていましたがここに来てその格差がさらに極端なものになっています。これが現代インドの悩みの種となっています。

ではそんな超富裕層はどのようにして生まれてきたのか、それを見ていけるのが本書になります。そして本紹介にありましたように、その主な理由が政財界との癒着、縁故主義、汚職、賄賂などの不正という、目を背けたくなるような現実でありました。

この本で語られるインドの腐敗は凄まじいです。「これからの世界はインドが牽引する」とメディアなど様々な場所で語られていますがそんな単純にことが進むだろうかと疑問になるほどです。インドの発展がどうなるかというのは全くわかりません。一寸先は闇とはまさにこのこと。このカオスな国の行く末がどうなるか全く想像がつきません。


おわりに

私のメインブログ「僧侶上田隆弘の仏教ブログ」の仏教記事の連載で参考にした本をひたすらリストアップしていった結果、このような膨大な記事になってしまいました。

この記事を読まれる皆さんも大変だと思いますが、気軽にデータベース的に利用して頂けましたら幸いでございます。

以上、「インド仏教のおすすめ参考書一覧~思想、歴史、文化、時代背景など様々な視点から見た仏教」でした。


『インド・スリランカ旅行記』記事一覧はこちらのまとめ記事にて


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