2025年2月の記録 関空発石垣島フライト
関西空港から南の果てへ――石垣島行きNH1747便搭乗記
朝、りんくうタウンからワシントンホテル関西空港の送迎バスに乗り込む。ホテルから関西空港まではおよそ10分。車窓に広がるのは、関空連絡橋へと伸びる一直線の道路と、冬の海の鈍い光だ。

空港に着くと、まず感じたのは人の流れの変化だった。乗客の多くは大陸系の旅行者と思しき人々で、日本人の姿は思いのほか少ない。インバウンド回復の波は、ここ関西国際空港にも確実に戻っている。
長い動線、そして共用ラウンジ
国内線出発フロアへ向かう。関西国際空港は海上空港ゆえに横に長い構造を持ち、保安検査場を抜けてから搭乗口までの動線も長い。歩く距離は決して短くない。特に南側の搭乗口を利用する便では、時間に余裕を持つのが鉄則だ。


関西空港の国内線ラウンジは航空会社ごとの専用ではなく、共用ラウンジ形式。カードラウンジに近い設えで、アルコールは有料、ソフトドリンクと簡単なスナックが提供される。出発前、滑走路を行き交う機体を眺めながら、静かに時間を潰す。
本日の目的地は石垣島
今日の行き先は沖縄県・八重山諸島の玄関口、石垣島。
関西空港からは一日一往復という貴重な直行便が設定されている。
搭乗するのは、ANAのNH1747便。使用機材はエアバスA320型機。座席数はおよそ146〜166席仕様が一般的で、単通路のナローボディ機だ。
この便は午前発。関空を離陸後、紀伊半島を越え、太平洋上を南西へ。飛行時間は約3時間。東京―那覇に匹敵するフライトタイムで、本州から沖縄の離島へ向かう距離を改めて実感する。
国際線切り込み発券とアップグレード事情
今回の航空券は国際線切り込みの国内線区間。
この種の発券では、プレミアムクラスへの当日アップグレードは制約が多く、当日の確保はほぼ不可能。国内線の長時間フライトにもかかわらず、小型機のプレミアムクラスは座席数が8席前後と限られるため、繁忙期や観光路線では争奪戦となるのも無理はない。もちろん満席でアップグレードは叶わず。
今回確保したのは機体中央付近の非常口座席。
A320の非常口座席は、通常席よりわずかにシートピッチが広い。数センチの差に過ぎないが、3時間という飛行時間では体感差は小さくない。膝前の空間に余裕があるだけで、窮屈さはかなり軽減される。


さらに幸運だったのは、隣席が空いていたこと。
3席並びの中央ブロックであれば、中央が空くかどうかで快適性は大きく変わる。この日はその“余白”を独占できた。
非常口座席ゆえに、手荷物は離着陸時に足元へ置けない、リクライニング制限がある場合があるなどの注意点はある。だが、足を組み替えられる空間と、横の空席がもたらす心理的な余裕は、それらを十分に上回る価値があった。いつも確保するA320の前方座席は搭乗・降機がスムーズで、実用面では十分。だが3時間のフライトとなると、やはりシートピッチの差は体感的に大きい。
南へ、さらに南へ
関空を離陸してしばらくすると、窓の下には雲海。やがて紀伊半島の海岸線が遠ざかり、視界は一面の青へと変わる。那覇を経由せず、直行で八重山へ向かうこのルートは、心理的にも“本土から切り離されていく”感覚が強い。
沖縄本島でさえ遠いと感じるのに、そこからさらに南西へ。
石垣島は台湾に近い、日本最南端クラスのリゾートアイランドだ。
約3時間後、機体はゆっくりと高度を下げ、エメラルドグリーンの海とサンゴ礁が視界に広がる。
長い移動時間も、この瞬間の景色で報われる。


関西の冬空から、南国の光へ。
空港の長い動線も、普通席の3時間も、すべてはこのコントラストを味わうための助走だったのかもしれない。
蒼に包まれる着陸、そして北へ――石垣島ドライブ序章
機体が降下を始めると、窓の外に広がるのは息を呑むようなブルー。
サンゴ礁に縁取られた浅瀬はエメラルド色に輝き、その先に濃紺の外洋が広がる。天候は快晴。冬の本州では見られない“蒼”が、視界いっぱいに映える。
着陸したのは南ぬ島石垣空港。2013年開港の新空港で、正式名称は“新石垣空港”。滑走路は2,000mあり、ANAのA320クラスが余裕を持って発着でき、羽田からの直行便はB76やB78が投入されている。
レンタカー天国・石垣島
到着ロビーを抜け、外へ出ると南国特有の湿度を帯びた空気が肌を包む。空港前には各レンタカー会社の送迎車がずらりと並び、観光地・石垣島の“車社会”を実感させる。
今回手配したのは、バジェットレンタカー。ANAトラベル経由でのパッケージ予約だ。車種はSUV指定。それにもかかわらず、3日間で1万円を切る料金という破格ぶり。

どうやら沖縄の運営会社が同型SUVを大量導入したらしく、島内を走れば同じ車種が何台も視界に入る。いわば“量産型観光SUV”だが、走行距離は短く車内は清潔で装備も十分。島内移動には申し分ない。
石垣島は鉄道がなく、路線バスも本数が限られるため、観光の自由度はレンタカー次第。空港から市街地までは約30分、島の北端までは1時間強。SUVであれば、起伏のある海岸沿いの道も安心だ。
レンタカーを受け取り、まずハンドルを北へ切る。
目指すは島の最北端――だが、その前に立ち寄ったのが玉取崎展望台だ。
空港から北へ車で約20分。国道390号を走ると、やがて小高い丘へと続く道が現れる。駐車場に車を停め、遊歩道を数分歩くと、視界が一気に開けた。
眼下に広がるのは伊原間湾と平久保半島のくびれ。
サンゴ礁が織りなすグラデーションは、上空から見たブルーとはまた違う立体感を持つ。浅瀬は淡いターコイズ、沖へ進むにつれて群青へと変わる。その境界線が、まるで絵筆で塗り分けたかのように鮮明だ。



展望台には東屋もあり、風が心地よい。
飛行機を降りた直後の高揚感が、ここでゆっくりと島時間へと変わっていく。
北端の岬へ――平久保崎
次に向かう目的地は平久保崎灯台。石垣島最北端の岬に立つ白亜の灯台だ。
市街地を抜け、サトウキビ畑の間を縫うように走る。
やがて道は緩やかなアップダウンを繰り返し、視界の先に青い海が広がる。



平久保崎に立つと、東シナ海と太平洋が交わる水平線が弧を描く。
風は強いが、その分、空と海のコントラストは鮮烈だ。灯台の白と海の蒼、そして草地の緑。石垣島の色彩が一枚の絵のように重なる。
展望台から始まる島時間
島へ来たら、まず高い場所へ――。
展望台から見下ろす海岸線は、飛行機の窓から見たブルーとはまた違う表情を見せる。上空からの“俯瞰の蒼”が、地上では“包み込む蒼”に変わる。
ホテルの送迎バスで感じた旅客層の変化から始まり、3時間の南行きフライトを経て石垣島へ。
大げさに構えず、まずは北部の展望地を巡る。関西の冬空から南国の青へ――静かな移動の積み重ねが、そのまま旅の実感になった。
