【NENEさん vs BMSG④】オワリまで全曲聞いてみたら、NENEさんの優しさを感じた話。
「やっぱりああいうことがあるとHIPHOPの印象悪くなるよね。」
最近、BEEFの話題になったとき、友人からこう言われた。
まあ、そりゃあHIPHOPをまったく知らずに本気Distrackを聞いてしまったら、驚くのは当然だろう。HANAさんのファンであれば、なおさら戸惑いを感じたに違いない。BEEFというものが、常に賛否両論を呼ぶのは理解している。
自分なりにHIPHOPについていろいろ考えて、俺はこの文化が大好きだけど、すべてのラッパーの一挙手一投足を無条件に全肯定すればいいってもんでもないということも、よくわかってきた。
最近は、BEEFの話題も落ち着いてきて、それぞれのラッパーが次の段階に歩みを進めている。NENEさんはDJ CHARI & DJ TATSUKI名義の新曲「I’m The One」に客演として参加し、武道館公演のトップバッターを務めた。SKY-HIさんはプロデューサーとして新たなボーイズバンド「STARGLOW」をデビューさせ、ラッパーとしては全国ツアー&武道館2days公演の開催を発表している。ちゃんみなさんはHANAの新曲を立て続けにリリースし、2組とも紅白歌合戦へ初選出された。
ただ、俺はやっぱりあのBEEFが炎上の種として消化されようとしている現実が悔しい。ネットを見ていると、今回の件をきっかけにHIPHOPカルチャーの奥深さに魅力を気づいた人も散見される。でも、HIPHOPに興味のない俺の友達の中には、HIPHOPを嫌いになってしまった人も少なくない。
X上では、表層的で過激な意見が拡散されやすい仕組みになっている。そういう人がいること自体を否定するつもりはない。しかし、それがあたかもHIPHOPヘッズ全体の総意であるかのように受け取られてしまうのは、すごく嫌だな、と思う。俺は本気でHIPHOPを真っすぐに愛しているから、炎上のネタがあれば何でもいい人とは一緒にはされたくない。
俺にできることは何だろう、と毎日考えている。
答えの一つとして、まずはアーティストの表現と真摯に向き合うことから始めてみようと思った。NENEさんの楽曲を、SOPHIEE(ゆるふわギャング)時代から全曲聴き直し、彼女が音楽を通して何を伝えようとしているのか、改めて考えてみた。
今回は、彼女のリリックやインタビューをもとに、自分なりの解釈を共有したい。
私は今も昔も最高のラッパー
誰かを蹴落として自分をあげるスタイル? 何言ってんの?
そんな単純な話じゃねーよ
聞けよ全曲
彼女がパクリを死ぬほど嫌う理由とは
──どうありたいかというマインドが、今のNENEさんを形成していますか。
「人と同じなのは嫌。人とは違う存在になりたいし、他の人とかぶりたくないという気持ちは昔からあります。それがブレずに今につながっているんだと思います」
NENEさんは2曲のディストラックの中でBMSG・ちゃんみなさんを名指し、”パクリ”への問題提起を繰り返している。
パクリパクリ あいつもパクリ
どいつもこいつも うちらのパクリ
何人のクリエイターがお前らに横取りされた アイデアとリファレンス あの子もあの子も泣き寝入り 沢山の被害者 あるな?心当たり
本シリーズでも繰り返し強調していることだが、実際に”パクリ”が行われていたのかどうかは第三者が判断することはできない。だから、その真偽についてあーだこーだ言っても、何の根拠もないし生産性もない。
ただ、NENEさん側の立場にたって考えた時、自分が最初に”激アツ”であることをEPをとおしてこだわって伝えてきたという自負があることは、間違いないだろう。もし、HANAのファンがこのEPを耳にしたときに、「Burning Flowerっぽいな」と思われたら、たまったもんじゃねえ!!って思うのは無理もない。
しかし、ここで強調するべきは、何もNENEさんはBEEFありきでオリジナリティをアピールしているわけではないということだ。彼女はキャリアを通して一貫して自分の個性を磨き続けてきた。
理解なんて最初から求めてない
自分を表現するの恐れない
そんなやつはこの場所にまずいない
新しいスタジオ 作るオリジナルを
あの子は私のコピー
どう頑張ってもなれやしない
普通じゃないことに 悩んでた
だから音を鳴らしたんだスピーカー
(略)
Uhhh
同じ服でも違く見えるね
Uhhh
ただ違う ただそれだけ
冒頭で触れたように、改めて”ゆるふわギャング”(NENEさん、Ryugo Ishidaさん、Automaticさんのヒップホップユニット)とNENEさんの曲を全部聞いてみた。昔の曲を聴いているのに、どのアルバムも新鮮に聞ける。自分は音楽素人なのでサウンドの細かいことを言語化して説明することはできないのだが、似通った音楽を聞いたことがないのは確かだ。
なぜ、彼女はここまでオリジナリティにこだわるのだろうか。
音源を聞き終え彼女のインタビューを読み漁っていると、その答えとなる発言を見つけた。
やっぱりSNSが身近にある子達が多いじゃないですか。
その中だと自分が好きなものを正直に好きって言えなかったりとか、みんなが好きっていうから、自分も好きなのかもしれないって思ったりとか、そういうのはむちゃくちゃあるんじゃないかな、自分もあったし。
でもそれは違うし、ダサいなと思って。
NENEさんに限らず、HIPHOPに時々出てくるパンチ力の強いワードにびっくりしてしまうことはあると思う。でも、その背景を知っていくと、当たり障りのない耳障りのいいことしか言わない人より、ずっと深い優しさを感じるのではないだろうか。
BEEFは誹謗中傷の肯定ではない。
ビジネスがなんだ全員死ね
BMSGサイドのファンの意見を見ていると、このラインが誹謗中傷にあたるのではないか、という指摘が見られた。確かにここだけ切り取るとそう受け取ってしまう気持ちは理解できる。しかし、実はこのラインはRyugoさんのリリックのサンプリングだ。
気づいてない、携帯しかみてない
投げてやるよ、ポテトフライ
みんなが知らない、キス塩っぱい
でか気づいてない、塩っぽい事すら
作られているのさ、金のため
ビジネスがなんだ全員死ね
ここに気づいたかどうかで、あのリリックの解釈は大きく変わると思う。
彼らは、人々が目の前の利益ばかりに目をとられていることを嘆いているのではないだろうか。そんな浅はかでつまらない事に気をとられるより、日々の人間的な営みから生まれる美しさに目を向けよう、ということではないだろうか。
作り手がどんなに緻密に音楽と向き合っていたとしても、僕たち受け手が雑に受け取ってしまったら世の中は変わらない。だから、僕は音楽を深く解釈したいし、そのうえで自分の生活にどうやって落とし込んでいくかが大事なのだと思う。
音楽は自由だから、「数と知名度で聞く」こと自体を否定はしない。
でも、彼女がいうように、「もっと入り込んで」聞く方が、ずっと楽しいと思う。
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