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女風の「初めて」を私に預けてくれた人。あの日、私の手も震えていた【処女で女風】

LINEに、こう書いてありました。

「経験がほとんどないんですが、大丈夫ですか」

この一文を送るまでに、どれくらいの時間がかかったんだろうと思いました。

打っては消して、消しては打って。送信ボタンを押す前に何回スマホを裏返しにしたんだろう、と。

私は「大丈夫ですよ」と返しました。

返したあとに、自分の手が少しだけ震えていることに気づいた。

その人が来るまでの数日間

LINEのやりとりは、ゆっくり進みました。

相手のメッセージが来るまでに半日空くこともあった。それでいいと思っていたし、返信を急かすつもりもなかった。

文面は丁寧で、少し硬くて、考えてから書いているのが伝わってきました。

「ホテルコースとデートコースの違いがよくわからなくて」
「触られたことがほとんどないので、自分がどう反応するか不安です」
「お風呂のタイミングとか、何もわからないです」

ひとつひとつに答えていくうちに、この人がどれだけ調べて、どれだけ考えて、それでもわからなくて聞いてくれているのかがわかってきた。

「嫌だったらやめてください」が本当に通じる場所だという記事を送りました。途中でやめていいこと、全部しなくていいこと。それを事前に知っておいてほしかった。

既読がついて、しばらくして「読みました。少し安心しました」と返ってきた。

予約が確定したのは、最初のLINEから10日後のことです。

当日の朝、私が考えていたこと

準備はいつもより念入りにしました。

爪は前日に切ったけど、当日の朝にもう一度やすりをかけた。手のささくれが気になって、ハンドクリームを二度塗りした。

「初めて」を預かるということの重みを、私はあの朝、改めて考えていました。

この人にとって、私が「男の人に触れられる最初の記憶」になるかもしれない。

その記憶が怖いものになったら、次はない。次だけじゃない。もしかしたらこの先ずっと、「やっぱり怖かった」という記憶がこの人に残る。

大げさだと思うかもしれません。でも、私はそう考えていた。

会ったとき、その人は笑っていなかった

待ち合わせ場所に現れたその人は、笑顔ではありませんでした。

緊張しているのが遠目でもわかった。歩き方がぎこちなくて、目が合うまでに少し時間がかかった。

こちらに気づいて、軽く会釈をしてくれた。声は出ていなかったと思います。

「はじめまして。青です。」

私がそう言ったとき、相手は小さく頷いただけだった。

こういうとき、無理に笑顔を引き出そうとしないのが私のやり方です。

初めてのお客様を迎えた日のことを書いた記事にも書きましたが、最初の15分で盛り上げようとするのは、私が最も苦手で、かつ最もやってはいけないと思っていること。

特に、経験がほとんどない方の場合、沈黙は「拒絶」ではなくて「様子見」なんです。

この人は今、私がどういう人間なのかを観察している。言葉より空気で判断しようとしている。

だから私は、普通に歩きました。少しだけ速度を落として、半歩前を歩く。相手が追いつける速さで。

カフェに入って、飲み物を頼んで。向かい合って座ったとき、私は自分の手をテーブルの上に出していました。

意識してそうしている。手を隠さないほうが、相手が安心すると経験的に知っているから。

5分くらい経ったころ、その人が初めて自分から話してくれた。

「すみません。緊張しすぎて何も話せなくて」

「私も緊張してます」と返しました。

嘘じゃなかった。手のひらは、あの朝からずっと湿ったままだった。

速度を半分にした日

詳しいことは書けません。書くべきでもない。

ただ、ひとつだけ。

あの日の私は、いつもの半分の速度で動いていました。

ひとつの動作のあとに、必ず止まる。相手の表情を見る。呼吸を見る。力の入り方を見る。

大丈夫かどうかを言葉で確認することもあるし、言葉にしないほうがいいと判断することもある。

「大丈夫ですか」と聞かれるたびに「はい」と答えなきゃいけないプレッシャーが、逆に相手を追い詰めることがあるから。

そのかわり、手を止めて、黙って、少しだけ間を置く。

相手が自分で呼吸を整える時間を作る。

それをずっと繰り返していました。

うまくいったかと聞かれたら、わからない。

途中で何度も「これで合っているのか」と思った。正解がない。マニュアルもない。

この人の体は、この人にしかわからない。私にできるのは、一つひとつ確かめることだけ。

私の手が震えていたのは、緊張だけじゃなかったと思います。

「間違えたくない」という気持ちが、指先に出ていた。

帰り際にその人が見せたもの

帰り支度をしているとき、その人は静かでした。

来たときとあまり変わらないように見えて、でも何かが違った。

歩き方。来たときは肩が少し上がっていたのが、帰りは下がっていた。それだけのことなんですが、私にはそれで十分でした。

改札の手前で、その人が振り返った。

「ありがとうございました。」

それだけ。でも、来たときには出なかった声が、帰りには出ていた。

笑顔だったかと聞かれると、満面の笑みではなかったと思う。口元が少しだけゆるんでいたような、困ったような、安心したような。

うまく言えないんですが、あの表情を見て「ああ、怖い記憶にはならなかったかもしれない」と思えた。

確信はない。でもそう思えた。

それだけで、あの日の私にとっては十分だった。

その後の話を、数字で

「初めて」を預けてくれた方が、その後どうなったか。

私が担当した中で、経験がほぼない状態で来てくれた方のリピート率は、約7割です。

7割。

この数字を高いと感じるか低いと感じるかは人によると思います。

私は高いと思っています。

なぜなら、初回に来ること自体がとんでもなくハードルの高い人たちだから。

LINEを送るまでに何週間も悩んで、予約を入れてから当日まで何度もキャンセルしようと思って、それでも来てくれた人たち。

その人たちの7割が、また来てくれる。

2回目のほうが表情がやわらかい、というのは共通しています。1回目のときにはなかった冗談が出たり、自分から「前回はここが緊張しました」と言ってくれたり。

3回目になると、もう普通に雑談ができるようになっている人が多い。

この「普通に雑談ができる」ということの意味の大きさを、私はこの仕事を始めてから知りました。

30代・40代で経験が少ないことは恥ずかしいことじゃない、という記事を書いたことがあります。あの記事は、お客様側の気持ちの話でした。

この記事は、その裏側です。

預かる側の私も怖かった。震えていた。間違えないようにと祈るような気持ちで触れていた。

その正直なところを書いておきたかった。

「預かる」ということ

私は「教える」立場じゃない。

女風は学校じゃないし、私は先生じゃない。

でも、「初めて」を「預かる」ことはある。

預かるというのは、返すということです。

あなたの体はあなたのもので、あなたの感覚はあなたのもの。私はそれを一時的に預かって、あなたの手に戻す。

戻すときに、少しだけ温かくなっていたら。

それが理想ですが、理想通りにいかないことも正直あります。

あの日、手が震えていた私に、それでも体を預けてくれた人がいた。

その事実を、私は忘れたくないと思っています。

もし、帰り道に何かが込み上げてきたとしたら、それについて書いた記事もあります。泣いた人、ぼうっとした人、何も感じなかった人。どれも普通のことです。

あなたが今、経験の少なさを気にして、ここまで読んでくれているのなら。

私の手は、また震えるかもしれません。

でも、震えたまま、ちゃんと触れます。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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