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120分の中で最も「繋がった」と感じる瞬間を、言葉にしてみる

120分の施術の中で、「あ、今この人と繋がった」と感じる瞬間が、ごくまれに来ます。

それは会話が弾んだときでも、うまくリードできたときでもなくて、もっと静かで、もっと短い。

言葉にするのが難しいけれど、書いてみます。

施術の間、私はずっとお客様の呼吸を見ています。

見ている、というと監視みたいですが、そうじゃなくて。肩の動きとか、お腹の膨らみ方とか、吐く息の長さとか、そういうものが自然と目に入ってくる。職業病のようなものです。

最初は浅いんです、ほとんどの方が。

肩が上がっていて、吸う息は短くて、吐くのも短い。緊張している人の呼吸は全部「短い」になります。

それが、どこかのタイミングで変わる。

施術が始まって30分から40分くらい経った頃、ふっと肩が下がる瞬間がある。吐く息が長くなる。

そのとき、私自身の呼吸も変わっていることに気づくんです。

意識してやっているんじゃない。勝手に、相手の呼吸に合っていく。

あの「呼吸が揃った」と感じる瞬間が、120分の中で最も繋がりを感じる場面のひとつです。

言葉を交わしていない。目も合っていない。ただ、呼吸のリズムが同じになっている。

それだけのことなのに、部屋の空気がふわっと柔らかくなる感覚がある。

お客様がそれに気づいているかはわかりません。たぶん気づいていない方のほうが多い。でも、こちらにはわかる。「あ、今この人の体のスイッチが切り替わった」というのが。

力が抜ける瞬間は、音がしない

もうひとつ、繋がりを感じる場面があります。

お客様の体から力が抜ける瞬間です。

腕だったり、肩だったり、背中だったり、それまで固かった部分が、ふっとゆるむ。触れている私の手にかかる圧が変わるので、体感としてわかります。

力が入っていた人が脱力するとき、本当に音がしない。

部屋の中で何も変わっていないのに、空気の密度が変わったような感覚になる。うまく言えないですが。

2年半の中で、もっとも印象に残っている「力が抜けた瞬間」の話をします。

その方は40代で、初回でした。施術中ずっと、両手を軽く握っていた。

拳を作るほどじゃないけれど、指先に力が入っている状態がずっと続いていた。

私はそれに気づいていたけれど、指摘しませんでした。「力を抜いてください」と言っても、力って意識して抜けるものじゃないから。

代わりに、触れる圧をほんの少しだけ弱くした。手のひら全体ではなく、指先だけで触れるような、ほとんど触れていないくらいの圧に変えた。

5分くらいそうしていたら、その方の右手の指が、すうっと開いた。

音はなかった。ただ指が開いただけ。

でも、あのとき私の胸のあたりに来た感覚は、2年半の中でもかなり上位に入ると思います。

信頼、とは違うかもしれない。許可、に近いかもしれない。

「もう握ってなくていい」と、その人の体が自分で判断した瞬間。

それを見届けられたことが、たぶん私がこの仕事を続けている理由のひとつです。

無言なのに通じ合う、という不思議

私のお客様の中には、施術中ほとんど喋らない方が結構います。

内気な人が得意な理由は前に書きましたが、あの記事で触れた「無言でも成立する時間」には、もう少し先がある。

無言が「成立している」のと、無言の中で「通じ合っている」のは、違います。

成立している、というのは、沈黙が気まずくない状態。これは割と早い段階で作れる。

通じ合っている、というのは、それより先の話。

安っぽくなりそうだけれど、たとえばこういうことです。

施術中、私がある場所に触れようとする直前に、お客様の体が微かにそちらへ傾く。

私は何も言っていない。「次はここに触れますよ」なんて言っていない。

でも、相手の体が動く。

偶然のときもあります。でもそうじゃないときもあって、120分の後半になるほどその精度が上がっていく。

触れてほしい場所がわかる、というよりは、「今この人が求めている圧と位置」が感覚として伝わってくる。

逆に、「ここは触れないでほしい」も伝わります。体が微かに引くから。

その言葉のないやりとりが噛み合っている時間が、120分の中で最も深い部分だと思う。

これを「技術」と呼んでいいのか

本業のほうで16年やっている中で、「技術」という言葉との付き合い方にはいつも迷ってきました。

技術というのは再現性があるもので、言語化できて、教えられるもの。

でも今書いてきたこと。呼吸が揃う。力が抜ける。無言で通じ合う。

これらが技術なのかどうか、私にはまだわからない。

再現しようとしてできる日もあれば、できない日もある。

「今日はお客様との繋がりが深かった」と感じた日に何が違ったのかを振り返っても、明確な変数が見つからないことのほうが多いです。

私の体調なのか。相手の体調なのか。部屋の温度なのか。そのどれでもないのか。

ただ、ひとつだけ確かなことがあります。

あの瞬間が来たとき、「今この人と繋がっている」と感じるのは、私の側にも起きているということ。

施術する側が一方的に「提供」しているんじゃなくて、あの時間は、お互いに作っている。

あなたが力を抜いてくれたから、私の手が柔らかくなれた。あなたの呼吸が深くなったから、私の呼吸も深くなった。

繋がりは、一方通行じゃない。

120分のコースを予約して、料金を払えば、時間は確保される。でもあの通じ合いが起きるかどうかは、予約では決まらない。

お互いの呼吸と、力の加減と、無言の信頼が重なったときにだけ来る。

来ないこともあります。来なかった日は、正直に悔しい。

だから、もしあなたが体験後に「あの時間は何だったんだろう」と考えているなら、知っておいてほしいことがあります。

あの時間の中に、あなたが作った部分がちゃんとある。

施術のあと、「ありがとう」じゃなくて「ごめんね」と言った方の話を前に書きました。

あの方も、あの方なりの繋がり方をしていた。「ごめんね」という言葉が出たこと自体が、あの方の心が開いた瞬間だったと、私は思っています。

この仕事を2年半やってきて、「女風は心のサプリメントになれるのか」という問いに対する私なりの答えも、別の記事で書きました。

あの記事を書けたのは、ここに書いたような瞬間の積み重ねがあったからです。

120分が終わって、あなたが帰ったあとの部屋に、私はしばらくいます。

窓を開けて、空気を入れ替えて、さっきまでの温度が薄れていくのを感じながら、あの繋がっていた瞬間を思い出している。

あなたの指が開いた瞬間。呼吸が深くなった瞬間。何も言わなくても、次に触れる場所がわかった瞬間。

あれは、私にとっても、かけがえのない時間です。


ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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