成瀬由紀雄の「参考図書あれこれ」:『日本語はいかにつくられたか?』『日本語は進化する』(1)
「〇〇とはなにか」という問いほど答えにくいものはありません。
あまりに本質的すぎるからです。
本質は頭で理解するべきものではありません。
心で感得するものです。
たとえば、俳人に「俳句っていったい何ですか」ときいてごらんなさい。
おそらく「まあ、一句、つくってごらんなさい」などと軽くあしらわれることでしょう。
「音楽とはなにか」「料理とはなにか」「絵画とはなにか」
――そんな質問をする人には、思わず「考えるな、感じるんだ!」と叫びたくなります。
ただ、音楽にしても料理にしても絵画にしても、人間の営みの本質を考察する際、そこにはなにか共通の方法というべきものがあるようにも思われます。
たとえば、「歴史」「理論」「実践」の3分野に分けて考えてみるという方法もそのひとつではないでしょうか。
西洋音楽の習得を目指す場合を考えてみましょう。
まず西洋音楽の「歴史」を学ぶことが求められます。
古典の習得というやつですね。
さらに音楽「理論」を学びます。
これは「楽典」と呼ばれる分野です。
そして楽器演奏、指揮、作曲などそれぞれの分野にあわせた「実践」テクニックの習得を行います。
この3分野をしっかりとマスターしてこそ、学習者は一人前の音楽家へと育っていくのです。
とすれば、翻訳学習者もまた、翻訳の「歴史」「理論」「実践」の3分野をしっかりとマスターすることによって、ようやく一人前の翻訳者へと育っていくことができるのではないでしょうか。
そして、その長い学習の過程のなかで「翻訳とはなにか」という根源的な問いに対する答えも、それぞれのかたちでより深まっていくものと思われます。
というわけで、まずは翻訳の歴史についてご紹介することから始めましょう。
ただ、ここで特に気をつけていただきたいのは、翻訳史のなかで我々が最初に考察すべきは「世界史」ではなく、あくまで「日本史」だということです。
なぜなら、西欧と日本では翻訳が社会に果たしてきた役割が決定的に違うからです。
(つづきは↓)
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