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【展覧会レポ】滋賀県立美術館「三橋節子と滋賀の風景」「小倉遊亀コーナー」「いろんなかたち」

【#268、約5,600文字、写真約45枚】
初めて滋賀県立美術館に行き、常設展「三橋節子と滋賀の風景」「小倉遊亀コーナー」「いろんなかたち」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。

▶︎ 結論

滋賀県立美術館は「しーんと静かにする必要はなく、おしゃべりしながら過ごしていただけます」と、HPやパンフレットで明言していたため、アートに馴染みがない人も気軽に楽しめる、ステキな美術館だと思いました。なお、今後は、魅力的な常設展(企画展)など、地元の方に支持される取り組みを地道に続けることに加え、長期的には抜本的な変革も必要だと感じました。

おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★★☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:「三橋節子と滋賀の風景」「小倉遊亀コーナー」「いろんなかたち」
場所:滋賀県立美術館
会期:小倉遊亀は、2025年3月25日(火)〜2026年5月10日(日)。ほかは、2025年6月19日(木)〜9月7日(日)
休館日:月曜日
開館時間:9:30~17:00
住所:滋賀県大津市瀬田南大萱町1740−1
アクセス:バス停「県立図書館・美術館前」から徒歩約5分
入場料(一般):570円。毎週日曜日は無料
事前予約:不要
所要時間:約1時間(館内散策含め)
撮影:「小倉遊亀コーナー」のみ可能
巡回:ー
URL:こちらこちらこちら


▶︎ 訪問のきっかけ

午前中に訪れた「ラ コリーナ近江八幡」

当日、家族で滋賀県にある「ラ コリーナ近江八幡」に訪れました。その後、京都駅に行く間に「どこか行ったことのない美術館に行きたい」と考えました。その主な候補は3つ。

  • 滋賀県立美術館

  • 佐川美術館

  • MIHO MUSEUM

結局、アクセスの利便性を考えて、滋賀県立美術館に行きました。また、過去に入江玄さんのnote投稿で「滋賀県立美術館は子どもに優しい」と知ったことも理由の1つです。

▶︎ アクセス

瀬田駅にて

滋賀県立美術館へは、瀬田駅からバスに乗り(約10分)、バス停「県立図書館・美術館前」から徒歩約5分。瀬田駅は京都駅から乗り換えなしで到着する好立地です。「滋賀」県立美術館ですが、京都駅からササッと行けるのは、あまり知られていないかも。

私は当日、米原駅→(電車で約25分)→「ラ コリーナ近江八幡」のある近江八幡駅→(電車で約25分)→滋賀県立美術館のある瀬田駅→(電車で17分)→京都駅の順で移動しました。

瀬田駅のバス停には、滋賀県立美術館のノボリが出ていて安心
瀬田駅から滋賀県立美術館行きのバス時刻表

滋賀県立美術館の周りには、滋賀県立図書館、遊具が豊富な「わんぱく原っぱ」、カフェなどがあるため、1日のんびり過ごせそうです。

美術館周辺の地図。
バス停からは2通りの道順がある
滋賀県立美術館から瀬田駅行きのバス時刻表
夕照ゆうしょうの庭
コイにエサをやれる
私はルート②で行きましたが失敗。
ものすごいガタガタ道なため、キャリーケースを運ぶのは超大変
いざ、入館

▶︎ 滋賀県立美術館とは?

1984年に滋賀県立近代⚫︎⚫︎美術館として開館。2019年度から2年をかけて、建物の老朽化対策を施した後、2021年に再開館しました。

この間、再建のプロポーザルを行い、SANAAが選定されました。しかし、経費面で折り合いがつかず(予算:47億円)、そのままの建物を使用することになった経緯があります。

▼ SANAAの建築による金沢21世紀美術館の感想

チケット

再開館後、名称から「近代」を外し、滋賀県立美術館となりました。当時の館長は、目指すべき美術館の姿を「リビングルームのような美術館」としました。そのコンセプトが、現在の子どもに優しい対応につながっています(後述)。

収蔵点数は2,729件(2025年3月現在)と比較的小規模。日本画家の小倉遊亀(上村松園に次いで女性画家2人目の文化勲章を受賞)や、染織家の志村ふくみ(人間国宝)のコレクションは国内随一とのこと(ともに滋賀県生まれ)。収集方針はコチラの5つ

▼ 上村松園の展覧会@松伯美術館

いざ、展覧会へ

▶︎ 常設展 感想

企画展の入り口

当日、開催していた企画展「ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展〈童堂賛歌〉」は、すでに大分県立美術館で満喫したため、今回はパス。

同時に3つ開催の常設展のみ鑑賞しました。どの空間も比較的小さいため、鑑賞に長い時間はかからないです。写真撮影は「小倉遊亀コーナー」のみ可能でした。

✔️ 「没後50年 三橋節子と滋賀の風景」感想

本年は、節子の没後50年にあたります。この節目の年に、当館で収蔵している三橋節子作品4件すべてと三橋節子美術館(大津市)所蔵のスケッチ帳4冊、そして節子が暮らし創作活動をおこなった滋賀の風景をテーマとした野口謙蔵、茨木杉風、杉田静山などの作品をあわせて紹介するコレクション展を開催いたします。

公式サイトより

常設展では、収集方針②「滋賀県ゆかりの美術・工芸等」をメインとした作品が展示。「滋賀にはこういう人がいたんだぁ、うん、なるほど」という感想以上でも以下でもありませんでした。

没後50年といった展覧会をよく見ます。『美術館商売』(安村敏信、2004年)に書いているように、学芸員の方たちは、このような展覧会を企画するために、あらゆる人の年表(生誕⚫︎年や没後⚫︎年など)と、にらめっこしているそうです。

✔️ 「小倉遊亀ゆきコーナー」感想

家族や子供たち、果物や野菜、花や器などを描くことを得意とした滋賀県大津市出身の日本画家、小倉遊亀(1895-2000)をご紹介するコーナーです。1984年、当館の前身である滋賀県立近代美術館が開館しました。その際、画家本人から自作20件の寄贈を受けたことをきっかけに、当館の小倉遊亀作品の収集はスタートしました。

公式サイトより
《葡萄》

開館時に寄贈された作品は、コレクションの核になるため、恒常的に展示されることが多いです。「小倉遊亀コーナー⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎」というからには、滋賀県立美術館の「会いに行けるアイドル」的な存在なのでしょう。

描かれているフルーツを見ながら、子どもと「ぶどう!もも!」などと少し盛り上がりました。中央の大きな作品は、メロンを運びながら、女性も男性もブスッとしています。ケンカの仲直りにメロンを差し入れしたけれど、お互いまだ素直になれない、といった様子なのでしょうか。

《花菖蒲》

✔️ 「いろんなかたち」感想

なぜ、このかたちになっているのか、作家にはどのような意図があるのか、重さはどれくらいで、硬さはどうなのか、かたちから想像してみてください。きっと新しい発見があると思います。

公式サイトより

こちらの展示室が最もとっつきやすかったです(撮影不可)。

ジェッド、イサム・ノグチ、フランク・ステラ、マティス、ピカソ、李禹煥リ・ウーファンなど、親しみのあるアーティストの作品が並びます。収集方針③「戦後アメリカと日本の現代美術」に関連しています。

中には、さわれる作品もありました。また、展覧会のタイトルや作品のキャプションを含め、説明は平仮名を多用していたため、子どもを意識していると思います。

マティス《オセアニア 海》(画像引用

私は特に、マティス《オセアニア 海》が気に入りました。色づかいが落ち着いているため、現代のスタイリッシュな部屋にもマッチしそうです。デザインが緩くて癒されました。マティス自身もそのようなユラユラした気持ちでつくったのかしら。

李禹煥《点より》(画像引用

李禹煥の代表作《点より》も展示されていました。岩絵具で描かれていると初めて知りました。子ども曰く「新幹線の窓みたい」とのこと(確かに…🤔)。ちょうど、8月に李禹煥美術館(香川県・直島)で、この作品のバージョン違いを見ました。

李禹煥美術館(2025年8月撮影)

常設展だけでは、若干ボリューム不足な印象がありました。所蔵作品の少なさと、展示室の小ささから仕方ないのかもしれません。なお、過去に訪問した岩手県立美術館は、常設展だけでもボリューミーだったため、大満足だった記憶があります。

北山善夫《私は私なの…。》

子どもに最も印象に残った作品を聞いたら、北山善夫《私は私なの…。》とのことでした。理由は「すべり台みたいだから」。確かに、作品の実物を見ると、チューブスライダー(筒状のすべり台)に似ています。子どもの発想は豊かで、常に新しい発見があります😀

イケムラレイコ《うさぎ観音》
次回の企画展

▶︎ いつでも、おしゃべりしながら観覧できる!

「おしゃべりしながら過ごしていただけます」

私が思う、滋賀県立美術館の最大の特徴は「当館では、しーんと静かにする必要はなく、おしゃべりしながら過ごしていただけます」と明言している点です。滋賀県立美術館のコンセプトは「子どもも大人も来たくなる未来をひらくミュージアム」。コンセプトの1単語目に「子ども」があることからも、その意思を強く感じます。

私が直近2、3年に約200の美術館へ行ったなかで、このようにポジションを明確にしているのは、滋賀県立美術館が初めてでした。看視員が観覧者にお声がけする基準がはっきりすることに加え、外部にそれを開示していることで、観覧者も安心できます。

美術館は「しかめっ面して勉強する場」ではなく「心を豊かにするワクワクする場」だと、私は考えています。そのため、展示室内でのおしゃべりは、滋賀県立美術館と同様に、私も肯定派のポジションです。

群馬県立現代美術館(2024年11月撮影)

近年、美術館で「おしゃべりアワー」的な取り組みをよく目にます。このような取り組みに対して、私は否定的です。大抵は、時間が限定的であるため、忙しい親子が特定の時間にわざわざ訪れることは困難だからです。

また、根本的には、このようなイベントは「美術館では厳かに作品を見るべき」という考え方を助長してしまいますし、「うるさい子どもは、決まった時間にしか来るな」というメッセージにも読めます。

本来、美術館は、あらゆる人に開かれた場所であるべきです。このような取り組みは、鑑賞者の中で分断を生みます。また、子ども連れの居場所をますます狭め、子どもにとって美術館は楽しい場所ではなくなり、大人になって美術館に行く人が減る結果になると思います。

美術館側が、鑑賞者にどのような態度で作品に接して欲しいのかは、その背景も含め、HPで開示すべきだと私は考えています(館長の挨拶がベスト)。

対話鑑賞はじめました!

滋賀県立美術館は、毎週土曜日・日曜日に「対話鑑賞」を実施している点も、素晴らしいと思いました。実施するのはボランティアの方なので、滋賀県立美術館がどこまで話す内容をコントロールしているのかわかりませんが、アートを通じて対話を行うことで、多様な考えの理解につながる良い取り組みだと思います。

▼ 「対話鑑賞」について理解が深まる本

2階には「キッズスペース」もあります。絵本やちょっとしたおもちゃがあるため、作品鑑賞に飽きた子どもにはうれしいサービスです。

無料で託児サービスを実施している美術館は極めて珍しい

▶︎ 屋外彫刻

滋賀県立美術館は、屋外彫刻も特徴の1つです。8つの彫刻は、すべて無料で鑑賞できます。

スタッフの方に言えば、外に出られる
井上裕加里《こうさするこうえん》
年に1回、実際に遊べるらしい
ケネス・スネルソン《ニードル・タワー》
速水史朗《BIWAKO'84》
草がボーボーすぎませんか
草が生えすぎて読めない
ドナルド・ジャッド《無題》
アレクサンダー・コールダー《フラミンゴ》
コールダーの屋外作品@ストックホルム近代美術館(2025年5月撮影)

▶︎ 今後の課題

滋賀県立美術館は「滋賀県立美術館協議会委員」を設置しています。その委員(14名)の中には、横浜美術館・館長の蔵屋美香なども含まれています。直近では、2025年2月に開催され、議事録が公開されています。

委員が、1人数分しか話す時間がないことに「喋らす気がない」「すごく気分が悪い」と発言しています。確かに、横浜美術館からやってきている館長もいらっしゃることを考えると、非常に失礼ですし、わざわざ協議会を実施する目的が果たせていません。

協議会の設置は任意です。その上で、運営しているのだから、美術館側は、委員らの意見を聞く義務があると、私も感じました。

私が訪れた日は「ギャラリー」を使って、学生による常設展をモチーフにした絵が展示されていました。この取り組みはまさに、議事録の提案にあった施策でした。できることからしっかり実施しているようです。

約40年前にできた美術館なので、ハード面を抜本的に変えるハードルは高いです(バス停や駐車場から美術館の入り口が遠い、向きが悪いなど)。目的意識がないと来ない場所にあるため、魅力的な常設展(企画展)を行うことや、地道で積極的なPR活動を行うしかないと思いました。

私から、すぐに実施できる範囲の提案は、以下です。
・議事録は「委員」ではなく、個人名も付すべき
・キッズスペースに看視員は不要(監視カメラで十分)。
・「彫刻の路」は足元が悪すぎるため、その旨を案内板に追記。
・「彫刻の庭」は草が生えすぎなので、手入れすべき

また、観覧者を呼ぶ工夫は、以下です。
・常設展の撮影の許可取りを進める。
フォトスポットの追加。
・屋外作品のスタンプラリーを実施、ポストカードを配る。

▶︎ まとめ

買ったポストカード。野口謙蔵《蓮と少女》

いかがだったでしょうか?今回は常設展しか訪れていないものの、子どもに対する丁寧なコンセプトが珍しい美術館だったため、貴重な例として訪問できて良かったです。さまざまな課題は認識され、取り組みを実施しているものの、協議会で議論されている通り、長い目で見ると、根本的な対応が必須だと感じました。

▶︎ 今日の美術館飯

★3.1/草津パーキングエリア(上り線)フードコート (滋賀県/瀬田駅) ー からあげ定食 (6個入) (¥980)

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