【🎨展覧会レポ】東京都写真美術館「作家の現在 これまでとこれから」「プリピクテ Storm/嵐」
【#300、約5,000文字、写真約70枚】
東京都写真美術館(以下、写美)で「作家の現在 これまでとこれから」「プリピクテ Storm/嵐」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。
▶︎ 結論
ともに作品のクオリティは高いものの、若干の課題があると感じました。「作家の現在」は、展覧会の意図を伝える姿勢が不足、「プリピクテ Storm/嵐」(入場無料!)は、質の高い展示方法・作品だったものの、集客方法に改善が必要だと思いました。何にせよ、ともに1月25日まで開催しているため、2026年展覧会始めにいかがでしょうか?
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:①「作家の現在 これまでとこれから」、②「プリピクテ Storm/嵐」
場所:東京都写真美術館
会期:①2025.10.15(水)—2026.1.25(日)、②2025.12.12(金)—2026.1.25(日)
休館日:毎週月曜日
開館時間: 10時00分~18時00分
住所:東京都目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内
アクセス:恵比寿駅から徒歩約5分
入場料(一般):①700円、②無料
事前予約:ー
所要時間:それぞれ約30分
撮影:すべて可能
巡回:①ー、②Victoria and Albert Museum(英国)→Ishara Art Foundation(ドバイ)→写美(東京)→Luma Westbau(スイス)
URL:①こちら、②こちら
▶︎ 訪問のきっかけ

写美で「遠い窓へ 日本の新進作家 vol. 22」を見たため、その続きで鑑賞しました。
当初は「作家の現在 これまでとこれから」だけを見るつもりでした。しかし、受付でスタッフの方が「これは無料で見られますよ」と教えていただいたため「プリピクテ Storm/嵐」も見ることにしました。

▶︎ 「作家の現在 これまでとこれから」感想

「作家の現在」と題した本展では、国内外で活躍が目覚ましい作家の現在の活動を、これまで当館に収蔵された作品等と合わせて紹介します。進行形の作家活動に触れる機会を通し、作品理解を深めるとともに、これからの表現の可能性を探ります。
5名の作家の作品が、部屋ごとに並んでいました。同日に鑑賞した「遠い窓へ 日本の新進作家 vol. 22」とほぼ同じ構成でした。
展示室の受付で「館内には記載が何もないので、よければコチラをどうぞ」と、ハンドアウトを渡してくれました。その中には、作家たちの「略歴」「解説」の文章がありました。しかし、写美としてのメッセージはゼロ。図録の販売もありませんでした。
そして、会場に入ってびっくり。本当に文字がない。あるのは作家名と、作品の連番のみ。チャレンジングというか潔いというか(いっそのこと、展覧会名も「無題」にしてはどうでしょう?)。
なお、この展覧会の1つ目、2つ目の部屋のみ1点撮りは禁止(複数枚が映る撮影はOK)。近年、写美でよく使うスタイルです。作家は「1枚撮りが禁止なら、まぁ…ええか…」となるのでしょうか。
▼ 1枚撮りNGの展覧会@写美
✔️ 石内都

展覧会は、石内都からスタート。

2025年は被爆80年の年でした。そのため、夏に原爆投下の関連イベントや展覧会が各地で開催されていました。それに伴い、石内都の作品は引っ張りだこだったのを覚えています。


小さい!
▼ 写美で開催された被爆80年企画展
✔️ 志賀理江子

色、モチーフなど含め、どこか禍々しい。展覧会の全体を通して、怖い写真が多いため、写美による何らかのメッセージがあると気づき始めました。





✔️ 金村修

「これまでとこれから」、過去から未来を語る上で、戦争、紛争は避けて通れません。写美のメッセージが徐々に色濃くなっていくと感じました。





✔️ 藤岡亜弥

広島の原爆ドーム近くで撮られたスナップが複数展示されていました。一見すると、原爆とは関係なさそうな「平和的」な写真も混ざっています。


ダイレクトな表現ではなく、婉曲的なメッセージを放つ写真たち。これらの写真は良い意味での違和感をもちます。それにより「平和とは何か?」と、自然と考える余白が生まれました。


無言の作品たちから受けるメッセージ。
平和の中にある戦争、戦争の中にある平和。
作品全体は、良いメッセージ性だと思いました。なお、平和そうな写真を展示して、後から種明かしをするなど、 ヴァンディー・ラッタナの《爆弾の池》のような見せ方も面白そうだと感じました。



意味深だ
✔️ 川田喜久治

最後の展示室も、戦争の写真が混ざったり、どこか怖い印象を受ける作品構成でした。






◾️ 1人で静かに。
全体を通して、無言の作品群が訴えてくる様子は「無言館」と似た印象を受けました。展覧会を「楽しむ」という側面では、デートや親子鑑賞向きではありません。1人で見て、静かに内省する内容だと感じました。
中でも、メインビジュアルに使われている藤岡亜弥の作品群が好みでした。作品の親しみやすさと意味の深さは、現代アートにも通じると思いました。
なお、YouTubeに本展覧会の作家5名のインタビューが、3分〜4分の見やすい長さで編集、公開されています。展覧会を鑑賞した後、これらの動画を見ると、新しい発見や理解があるかと思います(作品の鑑賞前に見るのはオススメしません🙅♂️)。
作家のインタビューを見ることで、原爆、東北の震災・復興、挑戦、日常などの背景を理解できました。しかし結局、動画の中でも「この展覧会は何を意図したのか?」明確な方向性やストーリーが示されていませんでした。
会場内に文字情報がないのは良いと思います。しかし、ハンドアウトに学芸員のコメントを載せるなど、写美側の何らかの意図や考えは示した方がいいのではないでしょうか。特にタイトルにある「これから」が何を意味しているのか、私にはが不明でした。
現状では、チャンレンジングな一方、「作品を置いただけ」と見られかねない開催側の伝える姿勢が圧倒的に不足していると感じました。
▶︎ 「プリピクテ Storm/嵐」感想

Prix Pictetは、写真と持続可能性に関する世界有数の賞です。2008年にピクテ・グループによって創設され、写真の力を通じてサステナビリティという重要な問題に人々の関心を集めることを目的としています。(略)プリピクテ Stormでは(略)現代における最も喫緊の課題、とりわけ加速する気候危機が環境と社会に与える影響について深く取り組んでいます。

✔️ ピクテとは?
「ピクテ」は、スイス・ジュネーブのプライベートバンクに起源をもつ世界最大級の資産運用会社です。日本で積立型投資信託の元祖であるさわかみ投信の創業者・澤上篤人は、ピクテ・ジャパンの代表を務めていました。
運用方針は、顧客の利益を優先した長期分散投資。その理念は、Prix Pictetが掲げる「地球規模の持続可能性」と違和感なく連動しています。
✔️ ハイクオリティなのに入場無料!

この展覧会のHPを見ると、主催、共催、後援、助成、協賛、特別協力、協力など、何も記載がありません。あるのは「お問合わせ」だけ。費用はすべてピクテの持ち出しなのでしょう。しかも、入場無料!

入り口で配布されるハンドアウトも、コンテンツ、デザインともにしっかりしているため、コストも相応にかかっていると思いました。

この展覧会は、イギリス→ドバイ→日本(写美)→スイスを巡回します。展覧会を4つ開催するくらいの費用は、年間の運用益から考えると、痛くないのでしょうか。

✔️ センスある展示✖️社会的メッセージ

第11回目のテーマは「Storm/嵐」と言いつつ、展示された作品のモチーフは、水害、旱魃、自然破壊、雷雨、ハリケーン、地球温暖化、異常気象、海面上昇、生物多様性、感染症、政治紛争、国家戦争、犯罪、原発…と、多岐にわたっていました。





展示方法に美的センスや、完成度の高さを感じました。壁に写真をかけただけの世界報道写真展などと違い、社会なメッセージを含みつつ「魅せる」工夫がふんだんに取り入れられていることが特徴でした。

✔️ 印象に残った作品
中でも私の印象に残ったのは、2名の作家でした。
1)レティシア・ヴァンソン

ウクライナの黒海沿岸にある都市で撮られた写真には、戦争の中でも、美しく生きる人たちの姿が写されていました。それらからは、ポジティブな強さを感じた反面、資本主義的な皮肉やアンチテーゼも感じました。

2)ボードワン・ムワンダ

写真に映る鮮やかな様子は、2020年にコンゴで撮られたもの。コロナウイルスでロックダウン中、洪水が起きた時の生活風景です。まるで何かのプローモーション用のセットで撮られたような美しい色彩。その中で、感染症と水害のダブルパンチに見舞われる人たち。

一見すると美しいですが、困難な状況で暮らす難しさも内包しているため、複雑な気持ちになりました。
✔️ もっと宣伝すべし!

本展覧会は、宣伝が不足していると感じました。写美のエントランスにあるポスターを見ても「これは何のポスターなの?」と思うほど、シンプルなデザイン。入り口でスタッフの方から声をかけられないと、展覧会の存在にすら気づきませんでした。


ダサくてもいいから、デカデカと「無料!地下1階で開催中!」というPOPを作り、エントランスのポスターに貼ることで、誰にでも展覧会の存在がわかる仕様にした方がいいと思います。



クオリティがとても高い作品、展示方法、ハンドアウトが準備されているものの、入場者が少ないのでは意味がありません。Prix Pictetが掲げている「地球規模の持続可能性」は限られた人にしか伝わらず、そこから新しいアクションを起こす人はさらに少ないでしょう。


せっかく費用を持ち出しで開催するのであれば、費用対効果を最大化して打ち出し、可能な限り入場してもらう必要があると感じました。




▶︎ 公立美術館のお手本的存在=写美

今回の写美で、アクセシビリティの向上をわかりやすく感じました。東京都では「オールウェルカムTOKYO」というキャンペーンを実施しています。公立の美術館であれば、それを推進するのは最優先でしょう。



「オール・ウェルカム・デー」は良い取り組みだと思います。ただし、実際にそれは知られているのか?参加者はどのくらいいるのか?本来は、毎日が「オール・ウェルカム・デー」であるべきではないか?とも感じました。

また、今回の訪問で、特にうれしかった取り組みが、「東京都写真美術館オリジナルしおり」です。私は年間で120〜150冊読むため、常にしおりが不足しがち。チラシを切って、しおりを自作することも多いです。

安価に対応できるため、すべての美術館も恒常的に「オリジナルしおり」を配布するサービスを行なっていただけると、来館者の満足度は上がり、口コミの拡散や、リピーターの創出に寄与すると感じました。

しおりに限らず、私は「ニュース別冊<ニァイズ>」を毎回楽しみにしています。また、撮影可能な展覧会、メディア主催に頼らない自主企画展、アクセシビリティの取り組みなど、写美は、公立美術館の中で模範となるべき姿勢や取り組みを実現しつつあると思います。
▶︎ まとめ
いかがだったでしょうか?「作家の現在 これまでとこれから」「プリピクテ Storm/嵐」ともに作品は良かったと感じました。その一方で、メッセージを伝える姿勢や、集客方法に課題があると感じました。ともに1月25日まで開催されているため、2026年最初の展覧会としていかがでしょうか?
▶︎ 今日の美術館飯



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