【展覧会レポ】東京都写真美術館「遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」
【#298、約3,300文字、写真約25枚】
東京都写真美術館(以下、写美)で開催中の展覧会「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol. 22」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。
▶︎ 結論
写美が毎年開催している、将来性のある作家を発掘・紹介する展覧会。毎回、展示方法にも凝っています。知らない作家がほとんどのため、いつも新しい発見があります。今回も展示構成にメリハリが利いていたため、飽きずにワクワクしながら鑑賞できました。中でも、私は1人目の寺田健人が好みでした!
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol. 22
場所:東京都写真美術館
会期:2025.9.30(火)—2026.1.7(水)
休館日:毎週月曜日
開館時間:10時00分~18時00分
住所:東京都目黒区三田1丁目13−3
アクセス:恵比寿駅から徒歩約5分
入場料(一般):700円
事前予約:ー
所要時間:約40分
撮影:すべて可能
巡回:ー
URL:こちら
▶︎ 「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」感想

✔️ 全体像
将来性のある作家を発掘するとともに、新たな創造活動を紹介することを目的として、2002年より継続的に「日本の新進作家」展を開催しています。第22回となる本展では、人と時代の流れ、場所、風習といった物事との結びつきから生まれる小さな物語に焦点をあてた5名の新進作家の作品を紹介します。(略)窓から垣間見える暮らしを想像するように、作品もまた、私たちの知らない風景や物語へと思いをめぐらせるきっかけを与えてくれます。
単に「日本の新進作家 vol.22」では何の面白味もありません。そこに「遠い窓へ」という副題があることで、良い意味で違和感が生じます。タイトルに「日本の新進作家 vol.⚫︎」は必ず入れる必要があるため、今回のように副題は5文字前後だと頭に残りやすいです。
写美は、候補に残っている副題が100個くらいあって、それをああでもない、こうでもないと議論しているのでしょう。候補の中から学芸員たちが「これだ!」と決めても、上長が「これがええわ」と言ったら、みんな「じゃぁ、それで」という場面もあるのかな、と無駄な妄想をしていました。
今回の展覧会で取り上げられているアーティストの中で、強いて言えば、甫木元空(3人目)は「遠い窓へ」感が強かったかな…。
▼ 過去に鑑賞した「日本の新進作家」

注意書きに気づいていない人が多かった

1)寺田健人

最初の部屋は、作品名の通りの「エアー家族写真」がメイン。ギャグかな?と思うくらいクスッとできます。こういう芸風は好きです(笑。ある意味、森村泰昌的な面白さがありました。
▼ 森村泰昌の展覧会


実際、寺田健人に「妻と娘」はいるのでしょうか?いるのなら、この表現ができて当たり前。いないのであれば、一生懸命想像を膨らましながら、1人で撮影しているシーンを思い浮かべると、尚更、面白みが増してきます。


室内には、写真以外も展示がありました。「想像上の娘」が使うアイテムはどれもリアル。脱ぎっぱなしで裏返しの靴下、アイスのおもちゃなど。まさに「想像上」ではない、我が家のリアルがありました。壁の一部には、クレヨンの落書きも施す徹底ぶり。



作家は、これらを通して、「当たり前のように語られる<ふつうの家族>への小さな反抗であり、同時にひそやかな同調」を表現しているそうです。また、実際に妻や娘はいないとのことでした。

2)スクリプカリウ落合安奈

この展覧会のメインビジュアル

次の部屋は寺田健人とは一転、暗い、壁に映された写真、大きな音。

部屋には、5台の映写機が設置されていました。1台は字幕のみ、他の4台は写真が写ったり映らなかったりします。室内には、映写機が出す「カシャ、カシャ、カシャ」というリズミカルで大きな音が響きます。

この音が心地良かったです。アンニュイな写真に加え、音によりノスタルジックな印象が高まりました。
この作家は、ルーマニアと日本がルーツ。この展示で映されている風景は、母国のルーマニアだそうです。その狭間で「人間の営みが生き物として様々な形で引き継がれていくこと、そしてそこに苦しみや危険が伴ったとしても本能レベルで繋げていきたいと思うのはなぜなのか」と向き合った結果だそうです。
3)甫木元空

次の部屋は、オーソドックスでベーシックすぎるレイアウト。この作家は、映画監督、音楽家(ヴォーカルとギター)、小説家です。


すべての作品が2枚組の写真でした。2枚組み合わさっているだけで、2コマ漫画のように、勝手にストーリーが生まれます。人間の脳は面白い。


写っているのは、都心に住んでいると忘れそうな、田舎の生活風景。『君の名は。』で三葉が住んでいる糸守町のような印象でした。ずっと暮らすのは難しいけれど「必要な部分、心の拠り所だなぁ」と感じました。
この作品群は、余命宣告をされた母親が住む高知に作家が移住し、残された4年間を撮影したものだそうです。人は死に、季節は移ろい、いつも通り過ぎ去っていく。その軌跡を「自分ごと」に感じる展示でした。
4)岡ともみ

部屋の中には、デザインの違う12の掛け時計。本来は振り子が入っている枠内に、映像が組み込まれています。また、時計の文字盤は左右が反転しているなど、手が込んだ仕様でした。

部屋を出た所に、12の時計の作品名や説明がありました。すべてにストーリーがあるようでした。「不思議な部屋やなぁ」という印象のみで、心に特別なものは刺さらず。
これらの作品群は、作家自身の祖父の葬儀をきっかけに、日本各地で消えゆく葬送の習俗を表現することで、形骸化しつつある葬送の形や、死との向き合い方を表現しているそうです。
5)呉夏枝

最後の部屋は、作品が1種類だけ。壁や布には、オーストラリアの地図が転写されているそうです。ある程度の説明がないと、飲み込めませんでした。
「日本の新進作家」なので、作家名を見て不思議に思いましたが、呉夏枝は在日韓国人三世だそうです。その出自を背景にして、作品制作を続けているとのこと。
布には、オーストラリアの生活風景やプランテーション、マングローブなどの写真。壁には1798年にイギリスで出版されたオーストラリアの地図。それらには、もともと住んでいた人や後から開拓に来た人、地球温暖化の外部環境の変化も映し出します。
✔️ メリハリの利いた展示方法がgood👍
この手の「新人作家を応援!」的な展覧会は、全体感がまとまらないことが多いです。一方で、「遠い窓へ」では、5名とも個性や展示方法が違うことで、メリハリが利いていたため、ワクワク感を維持しながら鑑賞できました。また、1つの展覧会としても完成度を感じました(さすが写美👏)。
なかでも、私は寺田健人が気に入りました。誰が印象に残ったかは、鑑賞者の性格が出そうです。写美への出展が彼らのバイオグラフィに残り、ますますのご発展を祈念します🙏
なお、作品の「展示方法」だけでなく、観覧者の「見方」にも工夫があると、さらに良いと思いました。例えば、観覧者が寝るとか、靴を脱ぐとか、作品に触れるとか。「日本の新進作家」は、作家、写美の実験場としての機能をもっと尖らせても面白い、と感じました。
▼ 観覧者の見方にも工夫を感じたコレクション展
▶︎ まとめ

いかがだったでしょうか?毎年、写美で開催している展覧会。例年通り、それぞれの作家の個性が際立つ内容でした。知らない作家ばかりなので、観覧者はいつ行っても、新しい発見や面白さが見つかるかもしれません。


▶︎ 今日の美術館飯

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