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【展覧会レポ】高知県立美術館「安野先生のふしぎな学校」「落ち葉と空き缶」「コレクション・アラカルト②」

【#296、約4,300文字、写真約30枚】
初めて高知県立美術館に行き「津和野町立安野光雅美術館コレクション 安野先生のふしぎな学校」「石元泰博・コレクション展 落ち葉と空き缶」「コレクション・アラカルト②」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。

※ 各企画展の会期は終了しています。

▶︎ 結論

企画展はピンとこなかったものの、シャガール石元泰博の豊富な作品群、能楽を鑑賞できるホール、趣のある建築など、面白い特徴を備えている美術館だと感じました。当日は、地元のお客さんでにぎやかだったことから、ファンは多そうです。普段からアートに興味がある人なら、旅行で高知を訪れた際「寄ってもよい」と思いました。

おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:①「津和野町立安野光雅美術館コレクション 安野先生のふしぎな学校」、②「石元泰博・コレクション展 落ち葉と空き缶」、③「コレクション・アラカルト②」
場所:高知県立美術館
会期:①2025年07月12日[土] - 2025年09月07日[日]、②2025年04月24日[木] - 2025年10月19日[日]、③2025年07月12日[土] - 2025年09月07日[日]
休館日:年末年始以外は年中無休
開館時間:午前9時~午後5時
住所:高知県高知市高須353-2
アクセス:高知駅からバス(路面電車)で20分〜30分
入場料(一般):1,400円
事前予約:ー
所要時間:全部で約1時間半
撮影:すべて不可
巡回:北九州市立美術館福井市美術館→高知県立美術館→茨城県近代美術館新潟県立近代美術館
URL:①こちら、②こちら、③こちら


▶︎ 訪問のきっかけ

高知県に、私と子ども2人で旅行に行った際、宿泊している高知駅から近い立地を考えて、高知県立美術館へ行くことに決めました。なお、1日目は、香美市立やなせたかし記念館 アンパンマンミュージアムに行きました。

▶︎ アクセス

高知県立美術館と高知駅の間は約4キロ。しかし、直通の路面電車やバスがないため、アクセスが地味に面倒でした。高知駅→(徒歩)→はりまや橋→(路面電車)→県立美術館通りがわかりやすいと思います(計約30分)。

▶︎ 高知県立美術館とは?

高知県立美術館は、1993年に開館。運営方針を、①県民のための美術館、②生涯学習の場としての美術館、③幅広い文化活動の交流の場としての美術館としています。

収蔵作品は42,286点(2024年4月時点)。目立った特徴は、シャガールのコレクション、石元泰博の写真コレクション、舞台芸術と映画の活動です。

中でも、石元泰博の写真プリントは、約35,000点あり、収蔵作品全体の83.2%を占めます。また、シャガールの作品も、油彩画等5点、版画1,202点と多いです(参考)。

外から見ると、蔵か城のような設計は、日本設計、環境建築設計事務所、山本長水ひさみ建築設計事務所によるもの。

中に入ると、美術館というより大きな公民館のような印象でした。館内には、展示室のほか、県民ギャラリー、シアタールーム、創作室、能舞台を有するホールなどが同居しています。

当日は「世にも不思議なトリックワールド」、「高知県能楽鑑賞会能」を実施していたため、親子やご年配でにぎわっていました。地域の人がたくさん来て、コミュニティのようになっている点は良いことだと思いました。

近年、高知県立美術館がニュースになったのは、1996年に名古屋市の画廊から1,800万円で購入したカンペンドンク《少女と白鳥》が贋作だった事件です。発覚後、「再考《少女と白鳥》 贋作を持つ美術館で贋作について考える」という意欲的な展覧会を実施するなど、お茶目な側面は好感がもてます。

フランク・ステラ《ピークォド号、薔薇蕾号に遭う》

▶︎ 「津和野町立安野光雅美術館コレクション 安野先生のふしぎな学校」感想

画家・安野光雅あんの みつまさ(1926‐2020)は、四方を山々に囲まれ城下町の風情がのこる島根県津和野で、さまざまな空想をめぐらせながら少年時代を過ごしました。(略)絵本作品は、国際アンデルセン賞画家賞を受賞するなど国内外で高く評価され、装丁家、デザイナーなど、その活躍は幅広い分野に及びます。本展では(略)多彩なジャンルの作品を学校の授業科目に見立てて紹介します。

公式サイトより

展示室内は一切撮影禁止でした(コレクション展も同様)。

「学校の授業科目」に見立てるのは、森美術館の展覧会「ワールド・クラスルーム」を思い出しました。展示を、国語、算数、理科…とセクション分けするのは、企画側としてはキュレーションしやすいのでしょう。

私は、安野光雅を存じ上げませんでした。1984年、国際アンデルセン賞画家賞を受賞、2012年には文化功労者を受章するなど、絵本や装丁界隈では有名な方のようです(94歳没)。

待合スペースにある安野光雅の絵本

安野光雅は、子どもの頃、島根県で12年間過ごしました。それが、作風の土台になっているそうです。そのため、生まれの地である島根県鹿足郡津和野町には、安野光雅美術館があります。

やなせたかしや藤本壮介も、子どもの頃に近所の山や森で遊び回った経験が作品に活かされています。子ども時代の環境の重要性に改めて気付きました。家の中でYouTubeばかり見ていても、得るものはほぼないでしょう。

なお、島根には、島根県立美術館(日没時間で閉館時間が変わる)、足立美術館(日本庭園ランキングで20年以上1位)、島根県芸術文化センター(設計:内藤廣)など、魅力的な美術館が多いです。

安野光雅は、パリの少年に「勉強することは、インポータントではないんだよ。インタレストなんだよ」と言われたことが心に残ったそうです。勉強は強制されることではなく、自分で考え、興味をもって取り組むもの。この考えは、学生時代には理解しづらいものの、私は、ある程度の年齢になると納得できるようになりました。

展示前のスペースに子どもは満足

安野は、36歳で初めての海外へスケッチ旅行に出ます。そこで見た名所の水彩画もたくさん展示されていました。イタリア、エジンバラ、フランス、ニューヨークなど。もちろん、日本のところどころも旅しており、高知県のスケッチもありました。

写真はパッと撮って終わります。しかし、絵を描くとなると、ドシっと腰を下ろして時間をかけるため、思い出に深く残りそうです。機会を見つけて、私もやろうかな。

絵本のほかに、梶井基次郎《檸檬》、井上ひさし《吉里吉里人》など、本の装丁も多く手がけました。

買ったポストカード。
梶井基次郎《檸檬》
子ども用ワークシート

子どもが飽きないため、ワークシート形式の工夫がありました。しかし、完成しても何ももらえません。これでは子どもはがっかりするばかり。他の展覧会でも使い回せる高知県立美術館のシールやポストカードを配布した方が、長い目で見てリピーターの創出につながると思いました。

パッケージの巡回展のため、高知県立美術館はそれくらいの工夫と費用の持ち出しがあっても良かったのではないでしょうか。

全体を通して、静的で、パッとしない展示でした。画一的にパーテーションで区切って、そこに絵を掛けるだけ。メリハリがなく、印象に残りづらいキュレーションだと思いました。私の感想は「ふーん、これが安野光雅か…」のみでした。

▶︎ 「石元泰博・コレクション展 落ち葉と空き缶」感想

ニューヨークのセントラルパークを歩いていた石元は、ふと目に入った、ベンチの上に落ちて雨に濡れた枯れ葉に心を奪われます。これをきっかけに撮影を始めたのが〈落ち葉〉のシリーズです。(略)車窓から捨てられ、自動車に轢かれて押し潰された空き缶へも、同様にカメラを向けるようになりました。(略)晩年の石元は、あらゆるものが刻々と生成と消滅を繰り返す世界の在り方に関心を寄せていました。

公式サイトより

石元泰博(1921-2012)は、サンフランシスコ生まれ。3歳から高校卒業まで高知県土佐市で暮らします。2001年、高知県立美術館が「石元泰博写真展1946-2001」を開催したことから、お互いに仲良くなりました。

2004年、全作品(プリント:34,753、ネガフィルム:100,000、ポジフィルム:50,000など)を高知県立美術館に寄贈することを決めました。2013年には、館内に石元泰博フォトセンターが開設されました。

例えば、東山魁夷は横浜市生まれですが、長野が好きすぎて、長野県立美術館に約1,000点の作品を寄贈。2005年には、東山魁夷館が併設されました。生まれ故郷でない場所でも、作家が作品を寄贈する例は多いです。

石元泰博の作品は、2020年に、オペラシティで鑑賞しました。今回の展示では、地面でぺったんこになった落ち葉と空き缶の写真が並んでいました。展示室は大きくないため、約10分あれば見終わります。部屋の一部には、邸宅のリビングを再現したコーナーもありました。

「石元泰博写真展 伝統と近代」@東京オペラシティ アートギャラリー(2020年10月撮影)

▶︎ 「コレクション・アラカルト②」感想

展示室Aでは、マルク・シャガールの油彩画をはじめとする当館の幅広い収蔵作品を「コレクション・アラカルト」としてご紹介しています。(略)シャガールの初期作《村の祭り》を、当館では約1年半ぶりに公開します。

公式サイトより
シャガール《村の祭り》(画像引用

高知県立美術館の自慢の品、シャガール《村の祭り》が展示されていました。誰がどう見ても「祭り」ではなく「葬式」のような暗い雰囲気が描かれています。戦争中の悲しみが滲み出てると感じました。

▼ シャガールといえば青森県立美術館

そのほか、野見山暁治の殴り描きに近い作品も展示されていました(一体、何が評価されたのか、私には未知数でした…)。

▼ 野見山暁治といえば、アーティゾン美術館や無言館

1階で開催中だった「マテリアル・ミュージアムⅡ くふうようふく一きったり・ぬったり・つないだり」
参加費:500円

▶︎ まとめ

いかがだったでしょうか?展覧会はどれもピンと来なかったものの、それ以外の企画で地元のファンを増やしている点に感心しました。シャガール、石元泰博、能楽ができるホール、特徴的な建築など、面白い強みをもっています。アクセスは良くありませんが、今後も、独自性の高い企画で、高知にアートの裾野を広げていっていただきたいです。

▶︎ 今日の美術館飯

★3.4/デポー 京町店 (高知県/はりまや橋駅) ー トーストモーニング (¥690)
★3.6/西村商店 (高知県/県立美術館通駅) ー 親方の卵焼き定食 (¥1,340)

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