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【展覧会レポ】森美術館「藤本壮介の建築:原初・未来・森」

【#267、約5,200文字、写真約75枚】
森美術館で開催中の「藤本壮介の建築:原初・未来・」に行きました。その感想・レビューを書きます。

▶︎ まとめ

藤本壮介について、ほぼ何も知らなかった私にとって、とても満足感の高い展覧会でした!それは主に、1)藤本壮介の実例だけでなく、考え方も含めて理解できたこと、2)楽しみながら鑑賞できる、森美術館のフレンドリーな姿勢に感心したためです。きっと今後は、藤本壮介がさらに世界に名前を残す建築家になると実感しました。なお、大阪万博の大屋根リングを事前に体感していると、展覧会を3倍楽しめると思います!

おすすめ度:★★★★☆
会話できる度:★★★★☆
混み具合:★★★☆☆
展覧会名:藤本壮介の建築:原初・未来・森
場所:森美術館
会期:2025.7.2(水)~ 11.9(日)
休館日:会期中無休
開館時間:10:00~22:00
住所:東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー 53階
アクセス:六本木駅から徒歩約10分
入場料(一般):[平日]2,300円(オンライン:2,100円)、[土・日・休日]2,500円(オンライン:2,300円)
事前予約:ベター
所要時間:約2時間
撮影:9割以上可能(動画撮影は1分未満で可能)
巡回:ー
URL:こちら


▶︎ 訪問のきっかけ

訪問のきっかけは、2025大阪・関西万博(以下、大阪万博)にある「大屋根リング」を見て、藤本壮介に興味をもったためです。

▼ 大阪万博・大屋根リングの感想

六本木ヒルズの《ママン》

▼ 前回、森美術館に訪れた展覧会(累計:59,030ビュー)

私はオンラインで事前にチケットを購入しました。当日、入場する際の列が、チケットを当日購入する人と同じでした。これは非効率だったため、列を分けた方がいいと思いました。

▶︎ 「藤本壮介の建築:原初・未来・森」感想

本展は、藤本にとって初の大規模個展です。活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまで8セクション構成で網羅的に紹介し、約30年にわたる歩みや建築的特徴、思想を概観します。展示には、模型や設計図面、竣工写真に加え、インスタレーションや空間を体験できる大型模型、モックアップ(試作モデル)なども含まれ、建築に携わる人だけでなく、だれもが藤本建築のエッセンスを体感できる、現代美術館ならではの展覧会です。

公式サイトより

この展覧会は、藤本壮介の初・大規模個展です。サブタイトルに「原初・未来・森」とありますが、「森」がメインだと思います。

子ども用ガイド

なお、メインビジュアルにリスやフクロウなど、優しいタッチで描かれている動物は、ミスリードだと思いました。

藤本壮介は「建築の本質=森的なもの」としています。この「森的」とは、自然いっぱい、動物いっぱい!ということではありません。ビジュアルだけ見た人は「藤本壮介って自然保護的な性格が強い建築家なのかぁ」と間違えた解釈をする人が多くなると思います。

フロアガイド

この展覧会は8つのセクションで分かれています。なお、私は入場してまずは駆け足で全体を見た後、再度、最初から鑑賞しました。こうすることで、作品鑑賞にメリハリがつけられたことに加え、「あとどれくらいで終わりやな」と時間配分もうまくいきました

▼ 鑑賞方法を参考にした本

1)思考の森

セクション1では「ひかれ かこわれ」「未分化」「たくさんのたくさん」と、3つの系譜に分けて、過去のプロジェクトを外観します。この展示方法は、藤本壮介の建築コンセプトと一致した面白いアイデアでした。こんなに展示物に囲まれた鑑賞体験は初めてでした。

藤本壮介自身が配置も決めている
《青森県立美術館設計競技案》
藤本壮介が脚光を浴びたコンペ作品
実際は、青木淳が設計(2024年4月撮影)
《スパイラル・ハウス》
《窓に住む家/窓のない家》
《東京アパートメント》

藤本壮介建築の模型を見ていると、遊びとしか思えない、一風変わった設計が多くて驚きました。アニメやゲームの世界にありそうなメルヘンやファンタジーな見た目でした。藤本壮介も隈研吾と同じ東大出身ですが、スノッブな印象は皆無でした。

▼ 隈研吾のスノッブさが垣間見える本

このような建築は、機能面をどこまで犠牲にして成り立っているのか、気になりました。

《ベトン・ハラ・ウォーターフロント・センター》@セルビアの首都・ベオグラード
《カタルーニャの家》
エスカルゴ料理のお皿みたい。まさかスペインだから?!
《直島パヴィリオン》
この夏、実際に訪れました(2025年8月撮影)
《ラルブル・ブラン(白い樹)》
《UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店》
当初案では、長〜い滑り台もあった

この店舗が藤本壮介によるものだと初めて知りました。プレスリリースにも記載がなかったです。ここは私も訪問したことのある、ステキな場所です。

行くまでがちょっと大変(2022年4月撮影、場所
《太宰府天満宮 仮殿》
《前橋プロジェクト》
2030年頃完成予定らしい

これらの展示を見て「藤本壮介って、心の優しい人やなぁ」と思いました。また、個性がしっかり立っていて信頼感があるため、クライアントも仕事を依頼しやすいと感じました。

《未来の森》@中国・広州
《トイレット・イン・ネイチャー》
《十和田市地域交流センター「とわふる」》
藤本壮介の設計だったとは(2024年4月撮影)

なお、いきなりの大ボリュームだったため、この空間に人がものすごく溜まります(その後は比較的スイスイ)。運営の観点から、導入部分で展示のヤマ場はつくり過ぎない方がいいと思いました。

2)軌跡の森ー年表

セクション2では、藤本壮介の年表と、インタビュー動画が展示されていました。年表には、藤本壮介が影響を受けた建築の欄もありました。そこには、比較的、安藤忠雄の建築が多かった気がします。

インタビュー動画

藤本壮介は、1971年、北海道生まれ。高校時代(北海道旭川東高校)までは、家の近くにあった森で遊びまわっており、それが身体的感覚に染み付いているそうです。インタビュー動画では、以下の言葉が印象に残りました。

・自然とは、北海道で育った森
・建築の本質とは、森的なもの
・境界をなんとかできないか?
・建物だけでなく、都市、道、自然との関係を考える
・複雑を単純化するのではなく、受け止める建築を目指す

最近、私も旭川にいました(2025年8月撮影)

安藤忠雄から「子どもは、子どもせなあかん」と聞いたことがあります。展示や動画を通して、藤本壮介の考え方は「子供の頃に遊んでいた森の風景」が芯の部分にあると実感しました。

翻って私の子どもは、今の環境から何を培っているかな、と思いました。

3)あわいの図書室

セクション3では、藤本壮介の考えを頼りに、幅允孝はば・よしたかが選んだ本が40冊並びます。この空間自体も、イスがあっちやこっちを向いているなど、「森」のような空間デザインになっていました。

最近、私は手塚治虫の本を読んで、『火の鳥』全巻を買いました。

4)ゆらめきの森

セクション4では、過去に藤本壮介が手がけた作品の模型に、動く人物がマッピングされていました。ただ模型を見るだけでなく、そこでの人の営みを想像できる工夫が施されていました。

5)開かれた円環

セクション5では「大屋根リング」の1/5スケールの展示や、それに関する説明、インタビュー動画で構成されていました。

私は、この展覧会に来るために、大阪万博に行ったようなものです。このセクションで「大屋根リング」について理解が深まったことで、藤本壮介により共感がもてました

1/5スケールの「大屋根リング」
実際の「大屋根リング」(2025年8月撮影)

大阪万博の大繁盛は、藤本壮介による功績が大きいと思います。藤本壮介は、2020年に大阪万博の会場デザインプロデューサーに就任。それはコンペではなく、一方的に打診され、悩んだ結果、受諾したそうです。

2020年当時、世の中はコロナでロックダウンしており、その先の社会が見えない状況でした。また、米国ではトランプが大統領になって以降、国内外で「分断」がテーマとなっていました。

藤本壮介は「建築とは、人が集まる場所をつくること」と考えていました。だからこそ、1つの地域に、世界の約8割の国の人々が、リアルに、6カ月も集まる大阪万博に対して、特別な価値を感じたそうです。

そこで、どんな人でも、現場で見ても、ポスターだけ見ても、一瞬でわかる強いメッセージをもつ「大屋根リング」の構想に至ったそうです。

丹下健三による「大屋根」(画像引用

さらに、大阪万博(1970年)で丹下健三がつくった「大屋根」の円を拡大して、「大屋根リング」になったという裏テーマもありました。太陽の塔のテーマは「いのち」だったため、今回の大阪万博と親和性もありました。

大屋根リングのコンセプトは「多様でありながら一つ」。ここまでの展示で、森や境界についての藤本壮介の考えを知ることで、大屋根リングの意味と深みの理解が進みました。1/5スケールの展示もいいですが、是非、本物の大屋根リングを体感してほしいです!

インタビュー動画を見て、藤本壮介は話すのも上手いし、意識的にわかりやすい言葉選びをしていると感じました。藤本壮介、めっちゃいい人です。

6)ぬいぐるみたちの森のざわめき

セクション6では、代表建築のぬいぐるみが会話しています(日英の字幕付き)。ここまでの展示のおさらいをしたり、より噛み砕いた表現で理解を深めることができます。

ちゃんと字幕も投影

このような展示は初めてでした。今回の展覧会は、特に観覧者フレンドリーな印象を受けました。

子どもも親しみをもって聞ける
藤本壮介のスケッチも展示

7)たくさんの ひとつの 森

セクション7では、藤本壮介の最新プロジェクト《仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設》(2031年竣工予定)の1/5スケールの展示と、その資料、インタビュー動画が設置されています。

2024年、青木淳や西沢立衛を委員長や委員とする、音楽をメインした多目的ホールと、震災のメモリアルホールのコンペがありました。

藤本壮介は、震災で被災者それぞれに思いがあること、音楽もソロやフィルハーモニーなど、形態はさまざまであることから、それらは本質的に同じであることに気づきました。その考えから、新しい融合、建築的チャレンジをしたかったことからコンペに参加。受注候補者に選定されました。

「バラバラだけど何かを共有する、寄り添う、そういう場所を作りたい」

インタビュー動画より

以下の動画(25:50以降)に、藤本壮介のプレゼンと質疑応答があります。この設計も「森」という概念が自然に落とし込まれていると感じました。

8)未来の森 原初の森ー共鳴都市 2025

最後は、藤本壮介(と宮田裕章ひろあき)の考える建築の未来について。展覧会の企画上、若干取ってつけた感がありました。

AIが本格的に生活に溶け込んでいる現在。今から数十年後、実際にこのような世界が実現すると思うと、少しワクワクしました。

◾️ 森美術館は優秀だ!

思考の森や、ぬいぐるみたちの森のざわめきも含め、藤本壮介の考えを時系列で並べるだけではなく、来館者に伝わりやすい鑑賞体験を提供している森美術館(その裏にいるコンサルティング)は素晴らしいと思いました。

  • 藤本壮介の考えが具現化されたキュレーション

  • 鑑賞者にフレンドリーで、伝える意識の感じられる工夫

  • どこを切り取っても映えるPR効果の高い展示物

館内に3本あったインタビュー動画は、すべて程よい長さだったため、快適に視聴できました。それらも含め、私の鑑賞時間は約2時間でした。

写真撮影は9割以上可能でした。特殊な点として、動画撮影が1分未満なら可能だった点です。SNSを意識した取り組みだと思いますが、そもそも、写真OKでも、動画禁止にしている美術館が多いのはなぜでしょう?(他の鑑賞者の写り込みや、鑑賞の妨げになるからでしょうか)

また、森美術館は、平日・休日、事前購入・当日購入で、チケットの値段が変わるダイナミックプライシングを採用しています。2段階で価格を設定しているのは初めてでした。

予算が比較的多いからかもしれませんが、さまざまな観点で「美術館商売」が徹底されている点はさすがだと感じました。

▶︎ まとめ

買ったポストカード《ラルブル・ブラン(白い樹)》

いかがだったでしょうか?私は藤本壮介について無知でしたが、実例とともに藤本壮介の考え方がよくわかったことに加え、展示方法にも工夫が満載だったため、藤本壮介について理解がとても深まり、今後も、藤本壮介の建物をたくさん訪れたいと思いました!なお、大阪万博とセットで訪問するのが強くオススメです。

▶︎ 今日の美術館飯

★3.3/スターバックス・コーヒー 六本木ヒルズ メトロハット・ハリウッドプラザ店 (東京都/六本木駅) ー スターバックスラテ (¥464)、シュガードーナツ (¥255)

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