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鳥類と哺乳類はなぜ大量絶滅を生き残れたのか?│鳥類のチート能力の鍵は「砂肝」だった!?

はじめに:「鳥は恐竜の子孫」のフワッとしたイメージ

「鳥は恐竜の子孫である」という事実は今や熱心な恐竜ファン以外の一般層にもかなり浸透してきた感があります。学術的にも羽毛恐竜の発見や系統解析の進展によって、もはや疑いようがありません。

しかし「恐竜」という主語のインパクトが強すぎるせいか、私たちは何となく、
「鳥は凶暴な肉食恐竜から進化し、白亜紀末の大量絶滅を生き延び、現代に至る空の支配者になった」
という、いかにもエリート街道な物語を思い浮かべてしまいがちではないでしょうか?
(実際にネットでは、「鳥はヴェロキラプトルから進化した」、「ニワトリはティラノサウルスの子孫」といった誤解や誇張表現もよく見かけます。)

しかし、鳥類の進化の歴史を丁寧に読み解いていくと、どうも様子が違うということが分かります。
そして鳥は強かったから白亜紀末の大量絶滅を生き残ったのではなく、むしろ哺乳類と同じく弱者の側だったからこそ生き残れたという構造が見えてきます。


第1章:鳥の祖先グループ「マニラプトル類」とは?

現代の鳥類につながる恐竜の系統は、獣脚類の中でもマニラプトル類という一群に属しています。
されにそのマニラプトル類の中の鳥翼類(Avialae)という系統の一つが現生鳥類(Aves)という位置づけになります。

マニ"ラプトル"と聞くと、映画「ジュラシック・パーク」でおなじみの「ラプター」ことヴェロキラプトルのような、ドロマエオサウルス科の肉食恐竜を思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし、ドロマエオサウルス科は鳥翼類と系統的には姉妹関係ではありますが、鳥類の直接の祖先ではありません

「Raptor」(ラプター、ラプトル)には、ワシやタカ等の「猛禽類」の意味があり、イメージが重なり混乱しやすいこともあるかもしれません。
「Raptor」はラテン語が起源で元々は「略奪者」や「強奪者」といった意味でしたが、猛禽類が空から獲物を掻っ攫ていく姿が元々の言葉の意味のイメージと重なり、「猛禽類」という意味も後から追加されたという成り立ちになっています。恐竜の「〜ラプトル」はほとんどの場合、元々の意味の「略奪者」の方です。


さて、マニラプトル類の系統全体を見渡すと、その多様さに驚かされます。
以下ざっくりとした系統図です。(分類には諸説あります。)

Maniraptora(マニラプトル類)
 ├─ Therizinosauria(テリジノサウルス類)
 ├─ Oviraptorosauria(オヴィラプトロサウルス類)
 ├─ Alvarezsauroidea(アルヴァレスサウルス類)
 └─ Paraves(パラヴェス類)
   ├─ Deinonychosauria(デイノニコサウルス類)
   │  ├─ Dromaeosauridae(ドロマエオサウルス科)
   │  └─ Troodontidae(トロオドン科)
   │
   └─ Avialae(翼鳥類)
     ├─ 基盤的鳥類
     │  └─アンキオルニス、アーケオプテリクス(諸説あり)など
     └─ 派生的鳥類
       ├─ エナンチオルニス類など
       └─ 現世鳥類

マニラプトル類には、ヴェロキラプトルでお馴染みの肉食性のドロマエオサウルス科の他に、

  • 雑食性で最も知能が発達していた恐竜とされるトロオドン科

  • 嘴(くちばし)を持ち、硬い木の実や貝類を食べていたとされるオヴィラプトロサウルス類

  • 植物食性中心と考えられる奇妙なメタボ体系のテリジノサウルス類

  • そして今回の主役である現世鳥類につながる鳥翼類

などが属していました。
食性も生活スタイルも実にバラバラですが、皆一つの共通祖先(基盤的マニラプトル類)から派生した一族と考えられています。
マニラプトル類の共通の特徴として「半月状手根骨」による可動性の高い手首の構造があります。

オヴィラプトロサウルス類 シチパチの復元骨格
人間で言うと小指側方向にカクっと折り曲げられた手首に注目。これがマニラプトル類の特徴です。鳥の翼も同じ構造を起源としています。
(国立科学博物館にて撮影)

このような手の構造は、マニラプトル類の共通祖先の樹上での移動への適応(木の幹や枝に掴まるための行動)から始まったと一説では考えられています。
ざっくり言うと、

  • 鳥翼類はその器用な手を翼に転用して、森の中で「鳥」の方向へ進化したグループ

  • その他のグループは地上に降り、その手を狩りや威嚇、ディスプレイなどの道具として進化させたグループ 

ということになります。
また、マニラプトル類の共通祖先は雑食性だった可能性が高いと考えられています。
獰猛な完全肉食動物と化したドロマエオサウルス科は、雑食性が本流のマニラプトル類の一族の中では例外的に尖った存在だったと言えるでしょう。


第2章:恐竜と鳥の境目は?

鳥翼類がマニラプトル類から派生したのはジュラ紀後期だと考えられています。その当時、地上は巨大な竜脚類やアロサウルス類、ステゴサウルス類といった超メジャー恐竜たちが闊歩していました。

一方、鳥翼類の祖先は、「森の中で地上と樹上を素早く動き回る、羽毛を持った小型の雑食性の恐竜」だったと考えられています。
近年続々と発見され、鳥の祖先筋として紹介される鳥翼類は「既にかなり鳥っぽい」ことが多く、その前段階のまだ恐竜らしさが色濃い頃の鳥の祖先の姿は想像しにくいかもしれません。
残念ながらそのような鳥翼類の直接祖先の恐竜の化石は発見されていませんが、鳥翼類と近縁であるトロオドン科の最初期の種である「シノベナトル(Sinovenator)」に近い姿のイメージだったと推測できます。
(良い感じのライセンス画像が見つからず、私にそれを描く力も無いため、以下リンク先「古世界の住人・川崎悟司のイラスト集」の画像を参照ください。)

当時の巨大恐竜たちが生態系という舞台の主役なら、鳥類の祖先は小さな脇役的な存在にすぎませんでした。


近年、中国などから鳥型恐竜の化石の発見が相次いでるように、鳥翼類の系統から多くの「鳥っぽい恐竜」が誕生してたことが分かってきています。
これは鳥と恐竜の境目の問題というより、鳥は恐竜そのものであり、鳥は恐竜のバリエーションの一つだったということを物語っています。

ジュラ紀後期の基盤的な翼鳥類 アンキオルニスの復元図
恐竜と鳥の中間のような姿。滑空がメインでまだ羽ばたき飛行はできなかった模様。

恐竜時代も終わりに近い白亜期末には飛翔能力も高そうな多様な「鳥型恐竜」の系統が進化していました。そして現生鳥類の祖先はそのうちの一つに過ぎませんでした。
しかし、白亜期末に起きたK–Pg大量絶滅を乗り越えることができたのは、現生鳥類の祖先のただ一系統だけでした。


第3章:大量絶滅を乗り越えた鳥類と哺乳類の共通点

約6600万年前の白亜紀末期、直径約10kmと推定される巨大隕石が現在の北米ユカタン半島の辺りに衝突しました。
衝突時の速度は通説では秒速20km前後。その運動エネルギーはTNT換算でおよそ 7,000万メガトン。これは広島型原爆50億発分、史上最大の核爆弾ツァーリ・ボンバ140万発分に相当し、その破壊力は想像もつきません。

衝突地点周辺は跡形も無く消滅し、形成されたクレーターの直径は約200kmにも達しました。その直後、爆風、地震、津波などによる大災害が地球規模で発生、さらに衝突の衝撃で飛び散った熱い岩石が空から降り注ぎ、世界は一面焼け野原になります。
しかし本当の地獄はそこからでした。

衝突によって大量に発生した粉塵や硫酸塩エアロゾルが大気を覆いつくしたことにより、太陽光が遮断され、地球上の光合成がほぼ停止するという事態となりました。その結果、地球規模で生態系が崩壊し、地球全体が深刻な食料危機に見舞われたのです。
これがいわゆる「K-Pg境界の大量絶滅」のシナリオです。
この大惨事により地球上の生物の実に70%の種が絶滅したと言われています。

それでは絶滅した者と生きのびた者とを分けたものは何だったのでしょうか?
実際には多くの複雑な要因が絡んでいると考えられ、未解明な部分も多くあります。
しかし今回、鳥類と哺乳類に視点を絞って着目してみると、
①体の小ささ、②少数育成型の繁殖(K戦略)、③雑食性
というざっくりとした共通項が浮かび上がってきます。


①体の小ささ

絶滅したものと生き残ったもの分けた大きな要因は一つは「体の大きさ」にあります。(ごく当たり前の話ですが大事なことなので…)
体が大きな生物ほど生命を維持するのに多くのエネルギーを必要とします。そのため大型恐竜などの体の大きな動物から真っ先に脱落していきました。

トカゲやカメなどの変温動物は長期間飢えに耐えることができるため、僅かな食料でもなんとか生き残ることができたと考えられます。
しかし鳥類は恒温動物であり、常に高い活動量が得られる代わりに、変温動物に比べて燃費はかなり悪い(常に餌を必要とする)というトレードオフがありました。このため、隕石衝突後の食料が極端に少ない環境は恒温性の動物にとって根本的に不利な状況のはずです。
しかし、現世鳥類の祖先は体そのものが小さかったため、必要エネルギーの絶対量は少なく済みました。数少ない食料を探し集め、自転車操業的に何とかやっていけるギリギリのサイズ感だったのだと考えられます。
当時の鳥類の祖先は、体長20〜40 cm 前後(尾を含まず)で、ウズラ〜ハト程度の大きさだったと推定されています。
哺乳類も恒温動物であり、当時の大きさはネズミサイズ以下でした。

②少数育成型の繁殖(K戦略)

生き物の繁殖には、r戦略K戦略という見方があります。
簡単に言うと、
r戦略は「たくさん産んで後は放任タイプ」
K戦略は「少なく産んで大事に育てるタイプ」というイメージです。

哺乳類は、胎生・授乳というK戦略の典型です。子どもは親の体内で守られた安定した環境で成長でき、出産の後も独り立ちするまで大事に育てられます。

恐竜は種により差はありますが、多くは卵をたくさん産みその後はあまり世話をしないr戦略寄りだったと考えられています。(大型であるほど顕著)
r戦略は大量生産向きで、安定した環境では繁殖に有利に働きますが、不安定な環境では弱点が露呈しやすくなります。
卵は逃げることも隠れることもできません。また、せっかく孵化しても幼体は小さくて弱く、誰からも守って貰えないため、幼体が成長するまでの生存率は著しく低下します。
K-Pg大量絶滅の環境下において、物量作戦的なr戦略は、それを遥かに上回る未曾有の環境悪化という飽和攻撃によって正面突破されてしまったのです。

鳥類は卵生ではありますが、K戦略寄りになるような工夫を随所に見せています。大きめの卵を少数産み、抱卵と給餌を行うことで幼体の生存率を上げることを可能にしています。
K戦略としての洗練度は哺乳類には及びませんが、過酷な環境の中でも子を大事に育て上げる、という共通した構造が両者にはあります。

③雑食性

そして何より重要だったのが、食性の柔軟さです。
今でこそ鳥類と哺乳類には種によって肉食、植物食など多様な食性の分化が見られますが、K-Pg大量絶滅の前後の時期では雑食性が強かったと考えられています。

絶望的に食料が無い状況では「おれは肉しか食えないから」とか「硬いものはちょっと⋯」とかいうタイプは生き残れなかったのです。
植物の根や種子、昆虫、ゾワゾワした虫、生物の死骸など、何でも貪欲に食べることが生き残りの極意でした。

哺乳類も鳥類も「雑食性」が重要な共通ワードですが、今回調べた結果、鳥類の雑食性への適性は哺乳類とはレベルが違うことに驚かされました。
その秘訣は嘴(くちばし)と砂嚢(さのう)にあります。


第4章:チートな鳥の摂食・消化システム

翼鳥類にはエナンチオルニス類のように歯を持ったものが多く見られました。
一方で、現世鳥類の祖先は歯を完全に退化させ、現在の鳥と同じ「嘴」と、焼き鳥の砂肝でおなじみ「砂嚢」を用いた消化システムを進化させました。

歯の消失の理由は、飛翔のための軽量化や、胚の成長サイクルの短期化といった側面も考えられますが、硬い食べ物(植物の種子や甲虫など)や、砂や泥にまみれた質の低いもの食べるための適応の面が強いと考えられます。

硬いものを食べるには、普通は歯による咀嚼が必要です。しかし、硬かったり、砂まみれのものを噛むということは、歯を激しく消耗させることに繋がり、自分の寿命を削ることになります。
実際、歯による咀嚼に頼る哺乳類は、「歯の消耗や損傷→餓死」という宿命を背負ってしまっています。

ところが現世鳥類の祖先は、「歯」をそこら辺からいくらでも入手可能な「砂」で代用するという天才的な発明を生み出しました。それが砂嚢です。
食べ物は口(=嘴)では咀嚼せずに丸飲みし、砂嚢の中で砂を使って粉砕するという、いわば歯のアウトソーシング化です。
この画期的な仕組みにより、鳥は固くても砂まみれの質の悪い餌でも問題なく摂取できるようになりました。(むしろ消化のために砂の摂取を必要とします。)


それではK-Pg大量絶滅の真っ只中、一面焦土と化し植物も枯れ果て荒廃した世界で、鳥たちは一体何を食べていたのでしょうか?

その一つは植物の種子です。大火災によって多くが灰になりましたが、地表や地中にはまだ多くの種子が残されていました。
当時存在していたと考えられる種子は、シダ種子、被子植物の小型種子(クスノキ・ユーカリ・ブナ類)、針葉樹の球果の種(マツ類・ナンヨウスギ類・ヒノキ類)などで、大きさは1〜5mm程度が中心です。

また、闇に閉ざされて光合成が止まった世界でも、動植物の死骸などをエネルギー源とするもう一つの生態系「腐食連鎖系」は健在で、むしろ大量に発生した動植物の死骸により活発化していたと考えられています。
「生物の死骸 → バクテリアや菌類 → 線虫や微小節足動物 → 昆虫 →小動物⋯」
地表や地下では、このようなミクロな世界の食物連鎖は細々と回り続けていたのです。


これらの植物の種子や、腐食生態系の生物のサイズはmmミリメートル)レベルが中心でした。
そしてこのレベルのサイズ感のものは、鳥と競合する動物の主要な捕食対象には、基本的にはなり得ませんでした。

当時のネズミサイズの哺乳類にとって、それらの極小サイズの餌は食べられないことはありませんでしたが、地面や土の中から見つけ出す手間、泥や砂とより分ける手間、砂による歯の摩耗のリスクなどがありました。そんな苦労をしても得られるのは僅かな量のしかもエネルギーの単価が低い小さなの種子や虫だけ。かけるコストに対して得られるエネルギー量が見合わな過ぎるのです。
哺乳類は主にある程度の大きさ(cmレベル)の昆虫や幼虫、植物資源などに頼るしかなかったと考えられます。


ここで、ここまで地味だった現世鳥類の祖先のチート能力が本領を発揮します。

鳥はmm(ミリメートル)サイズの種子や微小生物でも、嘴をピンセットのように使って正確に摘み上げることができます。(もちろんそれより大きな物も普通に食捕食可能。)
また、発達した視覚や触覚を駆使して、最小で0.5mm程度までの地面の微小生物(ダニ、微小昆虫、線虫など)を狙い打ちで捕食することができます。
ついでに一緒に飲み込んだ砂や泥に偶然付着してくる顕微鏡レベルの微生物でさえも、砂嚢ですり潰して無駄なく栄養として回収することもできました。

普通なら食べられないようなエネルギー単価の低い、ミリメートル以下レベルの砂や泥混じりの餌を、ひたすらコツコツ集めて効率よく消化吸収できる。
鳥類は究極の極限環境適応生物と言えます。
このチート能力は、歯による咀嚼に大きく依存する哺乳類には真似できない芸当でした。


第5章:鳥翼類の中でも弱者だった現生鳥類の祖先

K-Pg大量絶滅の直前、白亜紀に繁栄していたエナンチオルニス類は、歯を持ち、飛翔能力にも優れていました。
しかし彼らは森林への依存度が高く、昆虫や小動物の捕食に特化した歯を持っていたため、隕石衝突後の環境崩壊に耐えられなかったのだと考えらます。

エナンチオルニス類の復元図
左:Longipteryx, 中央:Bohaiornis 右:Pengornis
歯があることを除くと素人目には現世鳥類と見分けがつかない。

一方、現世鳥類の祖先は、森林への依存が低く、地上性の強い生活をしていたと考えられています。地面をツンツンしながら歩き回って餌をついばみ、必要なときだけ飛ぶという、現代のキジやウズラなどに近い生活スタイルです。
そのような現生鳥類の直接の祖先の化石は見つかっていませんが、その姿を考える上で白亜期末期に生息していた「アステリオルニス(Asteriornis)」という小型の鳥が参考になります。
アステリオルニスが大量絶滅を生き抜いたかどうかは不明ですが、同時期の現世鳥類の祖先たちはアステリオルニスとよく似た姿をしていたと考えられています。
(現代のワシやタカは飛翔能力に優れ、完全肉食性ですが、元々はこのような地味で地上性寄りの雑食性の祖先から進化・派生したものです。他の全ての多様な現世鳥類についても同様です。)

アステリオルニスの復元図
K-Pg大量絶滅を生き抜いた現世鳥類の祖先に近い姿とされる。
現代のキジっぽい生態だったと考えられている。

もしかしたら現世鳥類の祖先は、エナンチオルニス類などの他の翼鳥類との競争に敗れ、豊かな森を追われた存在だったのかもしれません。
せっかく祖先が得た飛翔能力をフル活用できず、地上を徘徊して何でも食べないと生き残れないまでに追い込まれた、翼鳥類の中の敗者だったのかもしれません。

しかし、白亜期末の隕石衝突によって全てがひっくり返りました。
皮肉なことに、飛ぶのが上手いことは隕石衝突後の世界では強みになりませんでした。どこへ飛んで行こうと、エナンチオルニス類がその歯で捕らえられる獲物も、巣作りができる森もほとんど残されていなかったからです。

現世鳥類の祖先にとっても厳しい環境であったことは間違いないですが、普通なら見向きもされない地面のゴミみたいな小さな餌をコツコツと食べ続ける地味さ、巣も地面に適当に作ったものでOKといったタフさこそが、現世鳥類の生き残りの最大の理由だったのではないでしょうか?


第6章:大量絶滅後の世界

K-Pg大量絶滅の直後、壊滅した地上生態系でいち早く回復し最初に主役となったのは、実は哺乳類ではなく鳥類でした。その雑食チート能力や、鳥類ならではの飛翔による移動能力のおかげで、哺乳類に先んじて復興を遂げることができたのです。

苦難を生き抜いた鳥類の祖先は、空の世界に回帰するだけでなく、地上にも急速に拡散し、古第三紀前期(およそ6600〜4700万年前)には大型の飛べない鳥や地上性捕食鳥が各地に現れる「鳥の楽園」とも言える時代が訪れます。
一方、当初は小型で目立たず遅れをとった哺乳類も、環境の安定化とともに胎生や歯の進化、感覚の高度化、群れの形成などを背景に徐々に大型化・多様化し、漸新世(3400–2300万年前)から中新世(2300–500万年前)にかけて地上の大型草食・肉食動物のニッチを確立、徐々に地上の鳥類たちを締め出していきました。
その結果、現在の地上の覇権は「ほぼ」哺乳類が握る形となっています。

しかしこれは哺乳類の方が鳥類より強かった、というような単純な話ではありません。時系列をよく見ると、地上で哺乳類が鳥類を完全制圧するまでに数千万年単位の時間を要しており、鳥類は地上においてもかなり手強い相手だったということが分かります。
また、地上の覇権は哺乳類に譲りましたが、鳥類は空を取り、水辺を取り、島を取り、都市にすら進出し、地球上のあらゆる場所で繁栄しています。
ある意味、鳥類すなわち恐竜は今でも地球を支配し続けているのかもしれません。


おわりに:鳥を見て過去と未来に思いを馳せる

「鳥は恐竜の子孫」というのは事実ですが、鳥の祖先はヴェロキラプトルやティラノサウルスのような大きくて強い恐竜ではなく、巨大恐竜の影で森の中を生きる小さな恐竜でした。
そしてそこから数多く生まれた鳥型恐竜の中でも、大量絶滅を生き残れたのは飛ぶのが上手い訳でもない、地上を徘徊して何でも餌をあさるような者だけでした。
鳥は決してエリート街道を生きてきたのではなく、哺乳類と同じく弱者だったからこそ現代まで生き残れたのです。

外を歩いていると、カラス、ハト、スズメ、ムクドリなど様々な鳥を見かけます。
彼らは6600万年前の大量絶滅をともに生き残った哺乳類の戦友であり、新生代の地上の覇権を争ったライバルでもあります。
また、鳥たちが嘴で地面をツンツンしている姿を見ながらその意味を思い出してみると、いつもとはちょっと違う風景として見えてくるのではないでしょうか?

もし次の大量絶滅が起きたとしても、きっと鳥類の一部は変わらず地面をツンツンしながらたくましく生き残っていくことでしょう。


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他にもふと思いついた疑問を掘り下げた以下のような記事を書いていますので、是非ご覧ください。

・三畳紀の恐竜の台頭にも、実は弱者の逆転劇がありました。

・恐竜の手についての話。マニラプトル類と鳥類の手の繋がりについても触れています。

・飛翔動物の先駆者、翼竜。鳥とは違う異様な翼の構造について考察。

・ヴェロキラプトルはヴェロサラプター?恐竜の英語発音の話。

画像クレジット一覧
・見出し画像:生成AI画像

・アンキオルニスの復元図:
Anchiornis TD.png by TotalDino, Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

・エナンチオルニス類の復元図:
Life reconstruction of enantiornithine birds feeding.jpg by Case Vincent Miller, Jen A Bright, Xiaoli Wang, Xiaoting Zheng & Michael Pittman, Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

・アステリオルニスの復元図:
Asteriornis on the beach.png by Daniel J. Field, Juan Benito, Sarah Werning, Albert Chen, Pei-Chen Kuo, Abi Crane, Klara E. Widrig, Daniel T. Ksepka, and John W.M. Jagt, Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

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