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翼竜はなぜ「薬指」で飛んだのか?│爬虫類の設計図に隠された秘密

翼竜は恐竜と同じ時代に生息していた空飛ぶ爬虫類です。ランフォリンクス、プテラノドン、ケツァルコアトルス等が有名でしょう。
古生物に興味がある方にとっては有名な話ですが、翼竜の翼の大部分は第4指(人間で言う薬指)のみで支えられていました
翼の骨格を見ると、もともとは指の1つだったとは思えないほど異様に太く長く発達しており、翼を支えるフレームの役割を果たしています。

それでは翼竜は一体なぜそんな突飛な構造を採用したのでしょうか?
本記事では爬虫類の身体構造や、現生動物の例などをもとに考察してみたいと思います。


翼竜の翼の構造

まずは飛翔動物の代表である翼竜・コウモリ・鳥の3者の翼の構造を比較してみましょう。

上から翼竜、コウモリ、鳥類の骨格図
  • コウモリ:前肢の第2〜5指を大きく伸ばし、その間に皮膜を張る

  • 鳥:前肢の第1~3指(第2指が最も発達)から羽毛を伸ばして広げる

  • 翼竜第4指だけを異様に長く発達させその1本の指で被膜を支える

見慣れているせいもあるかもしれませんが、コウモリと鳥類の翼の構造にはどことなく安定感があり、「良く出来てるな」という納得感があります。
対して翼竜の翼の構造は、見れば見るほど
どうしてそうなった!?」
という違和感が止まりません。


なぜ第4指だったのか?

なぜ翼竜は異常に発達した第4指のみで翼を支えるという突飛な構造を採用したのでしょうか。
実はそこには爬虫類の身体の基本設計が関係しているようなのです。
一般的に爬虫類の手は、第1指(親指)は小さく・可動性が低い一方で、第3指(中指)や第4指(薬指)は比較的長く、可動性が高くなる傾向あるのです。

例えば、イグアナ類は第3指と第4指が最も長く発達しており、木の枝のグリップに重要な役割を果たしています。以下のサイトに掲載されているイグアナの写真を見ると指の長さの違いがよく分かると思います

また現世のワニや、コエロフィシスのような原始的な恐竜類の指についても同様の傾向が見られます。

このように、爬虫類はもともと手の外側の指が発達しやすい設計になっているのです。これには骨格の軸構造や筋肉のつき方など、発生的な要因が関係しています。

このことから、翼竜の「第4指だけを発達させる」という一見突飛な構造は、実は爬虫類にとっては自然な進化の流れだったと考えられるのです。


第4指の発達から飛翔への道

爬虫類である翼竜には、もともと第4指が発達しやすいという下地があった、ということは分かりました。
それではそこからどういう経緯で第4指を支柱とした飛翔可能な翼へと進化していったのでしょうか?

実際のところ翼竜の飛翔の起源については証拠が乏しく、まだ解明されていません。
①地上性起源(跳躍から飛翔へ進化)と②樹上滑空起源の両方が検討されている状態で、地上性起源説の方が主流のようですが、まだ決着はついていないようです。

樹上滑空起源説

筆者の個人的な感覚としては樹上滑空起源の方が理に適っているような気がします。翼竜の樹上滑空を起源とする段階的進化について、私の勝手な見解を以下に述べたいと思います。

  • 初期段階:樹上生活のために枝の把握や跳躍に有利な第4指が長く発達

  • 中期段階:第4指跳躍や滑空時の姿勢制御に有利に働いたことにより、第4指がさらに発達

  • 後期段階:第4指が翼の支柱になるまで発達、飛翔を可能にする翼構造が完成

翼竜が本当にこのような進化の過程を経たのかどうかは分かりません。
ただし、このように同じ部品や構造が繰り返し再利用され、各段階で別の機能に転用されていく、という進化のパターンは、羽毛や魚類の顎骨などでも確認される自然な流れです。

翼竜はいきなり飛べるようになったのではなく、このような進化の原則に従って、配られたカード(第4指)をその場その場で活用しながら生き抜いてきた結果、飛翔能力を獲得する流れになったのだろうと考えられます。

なお、初期段階にて示したような樹上生活における指の構造の進化は、現生の中南米の森林に住む生物:アノールトカゲにも見られます。後肢に注目すると、第5指の生え方が他の指と明らかに異なり、構造的・機能的な分化が見られます。実際にこの第5指は木の枝を掴んだり跳躍するのに重要な役割を果たしています。

アノールトカゲの姿。後肢の第5指は枝を樹上での移動に適した形に進化。

まとめ

翼竜の「薬指1本で翼を支える」という構造の背景には、「第4指が発達しやすい」という爬虫類の基本設計が隠れていました。翼竜の一見奇妙な翼の構造は、実は爬虫類としては自然な進化の流れの結果だったのです。
また、翼竜は第4指という配られたカードをフル活用し、他の生物とは違うユニークな方法で飛翔能力を獲得した偉大な存在だっとも言えるでしょう。


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使用画像クレジット一覧

1.記事見出し画像
・タイトル:Ptero-condor
・作者:Frederic A. Lucas
・出展:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Homology.jpg?uselang=ja
・ライセンス:パブリックドメイン
・改変の有無:左右に余白を追加

2.翼竜・鳥類・コウモリの骨格図
・タイトル:Homology
・作者:John Romanes (1848-1894)
・出展:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Homology.jpg?uselang=ja
・ライセンス:パブリックドメイン
・改変の有無:無

3.アノールトカゲの写真
・タイトル:Anolis carolinensis by Jeff Heard
・作者:Jefferson Heard
・出展:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Anolis_carolinensis_by_Jeff_Heard.jpg

・ライセンス:CC BY 2.0
・改変の有無:無



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