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第15回牧水・短歌甲子園の歌

今年も宮崎の牧水短歌甲子園に来ました。吉田は特に関係者でもOBでもなんでもないのですが、毎年現地まで行ってウォッチャーしています。
ちょうど今、初日の一次リーグが終わったところです。例年通り、配布されてる対戦歌一覧から、これはと思った歌を何首から引きました。10日の決勝リーグについてはまた後日追記します。→しました!

○9日・一次リーグ

耳川にさらすこころは水心さらさらまんざらでもない君へ

帯谷到子

第三試合、尚学館高校。耳川の戦いの耳川。地元校ならではのローカル地名に加え、下の句の意味よりも音感で押すスタンス。加点要素が多い、良い歌だと思いました。とても試合のアピールしがいがある。

訛ってもサ行鋭く響くだろうアナウンサーが〈処理水〉と言う

重黒木俊陽

第四試合、NHK学園。題詠詠み込みの『水』で時事詠やるのって結構勇気がいるとおもうし、良い意味で目立っていた。同じチームの滋井瑛太さんの『雨に濡れまた雨に濡れ水災の足跡辿る能登細道』もそうですね。ディベートで「だろう」の当事者性について言及していた岡山朝日のコメントもかなり重要で、ハイレベルな議論だった。

休講のリモート授業のわれわれは宇宙人なりたまに本棚

小倉佐紀

第六試合、星野高校。星野は今年は全員一年生チームでしたが、例年ピーアールの火力が強くて、読みが噛み合うと強いイメージ。zoomの背景画像の大多数が宇宙で、というのがそもそも面白いな。流行ってるのかな。結句のずらし方が、途中の情報の省略をうまくフォローしている。

こすりつつ校正の眼をこすりつつ真夜の網戸の太き蛾の腹

細田連太郎

第七試合、名古屋高校。今年は例年より(アララギ寄りの)地味でテクい歌が少ない印象。名古屋は歌の作りも評の仕様も俳句甲子園仕込みだって話を凱さんがしてて、なるほどと思う。去年の沖縄興南もそうでしたね。下の句のリズム感が良いんだけど、網戸も蛾もテクスチャが特徴的なことを踏まえたら、かなり視覚的な歌でもあると思いました。

校門の前でお辞儀をするルール犬が私を追い越してゆく

白川愛華

第八試合、宮崎商業。試合としては相手チーム、NHK学園の読み筋が冴えていた。特に、相手方のディベートを拾って評に結びつけるの大事ですね。この歌については三句目のルールに指摘があったけれど、下の句の軽快さを活かすことを考えたら、むしろどうなんだろう。もっと重くする、ってパターンもあるかもしれません。

恋文に貼った切手の朝顔があなたの胸で咲きますように

森岡千尋

第九試合、光陵高校。切手に感情を仮託させる歌って、類想は多々あると思うんだけど、アピールもディベートも歌の上手いところをしっかり言及していて良いチームワークでした。相手方として敢えて突っ込むなら、胸で、が相聞歌としてはオートで不用意に見えるかも、とか言えるだろうか。

○明日の決勝トーナメントは
宮崎北と光陵、名古屋とNHK学園。
3/4が初出場です。

○10日・決勝トーナメント

決勝トーナメントの歌を追記しました。

生肉のように赤いぞ僕の頬 快晴の夏に焼いてかくそう

海野蓮

宮崎北高校準決勝用作品。題詠「生」で振りかぶった歌が多い中、ユーモアのある歌があるとチームの詠草に幅が出て良いですね。「赤いぞ」が省略できるのでは?という指摘もあったけれど、二句と結句の発話があるからこそ生肉が生きる。海野さん本人の自注のスタンスも含めて、いいチームバランスだと思う。

原点をpと名付ける ねぇぴーちゃん右上行けば夏があるかな

藤井綾音

光陵高校決勝用作品。決勝は自由題。毎年一定数ある数学の歌の中でも、これが抜けて良かった。教科書的な既存のフレーズ/戯画化/ポエジーワードで呼びかけ。完成度が高すぎる。光陵は準決敗退だったんだけど、壇上でどういう評されるか聞きたかったですね。→追記→急遽講評に参加したので、壇上で言及しました。フレーズを導入する歌は先行も多い茨の道だけど、今後も攻めていただきたいです。

炎天に立つひまわりよ啼きたくはないか産まれるときだけはただ

重黒木俊陽

NHK学園、準決勝作品。名古屋対NHK学園、クリティカルな評がバチバチ行き来していて、間違いなく今回のベストバウトの一つでした。『生』直球の歌の中ではこれが一番良かったと思うし、アピールできっちり格好良さを押し出していたのも印象に残っりました。この歌の問いかけの形式には功罪があって、題詠なんだけど構図としては上の句までで完成されてしまっている。

引っ張ればパン生地千切れ なんていうか、君は千切れやすそうなパン生地

福田匠翔

名古屋高校準決勝。評だけじゃなくて破調もリフレインも使えるんか。名古屋は『生』題詠詠み込みに対して、三首とも概念に行かずに事物でアプローチしていて、それが作戦として綺麗に刺さっていた。甲子園が上手すぎる。

言いかけてやめた理由はなんとなく入道雲が止まって見えた

石田千夏

宮崎北決勝。歌会でやるなら三句目で切る、切らない、の判断を両取りしたいところ。自チームの海野さんのピーアールも良かったけど、相手チームの福田さんの評のまとめ方も良かったですね。

将来のことは知らない知りたくない シンバルの人ずっと立ってる

近藤理仁

名古屋決勝。近藤さんは準決勝の「俺って君のなんだったっけ 炒飯の生姜の紅が滲みだしている」も印象に残りました。事物の出し方に隙がない。

決勝の結果は2-1で宮崎北高校。笹さんと俵さんが宮崎北、大口さんが名古屋。どちらをとるか、すごく難しい試合だと思いました。名古屋の方がテクニカルで作品の方向性が揃っていたけれど、むしろ宮崎北の直球の上でのバリエーションの幅が評価されたかな。上手すぎて選者の評が辛くなってる。隙のなさ、の話を俵さんがしていたけど、名古屋は決勝より準決勝のほうが完成度高くて、それが裏目に出た印象もありました。

○全試合終了後。

伊藤一彦さんに言われて、急遽表彰式の前の講評の時間にステージに登壇することになりました。去年パフォーマンス賞が制定されたのもそうなんだけど、この大会ではいろんなことが伊藤先生のノリで決まっていく。

審査委員長の伊藤さん、ゲストの宮田愛萌さんに加え、たまたま宮崎に帰省して観戦されていた吉川さんと、一緒に来た廣野さん、郡司さんと作品についてコメント。ふらふら喋ってしまいましたが、作品はいい感じに分担して言及できたんじゃないでしょうか。

舞台上眩しかった。ここでバトルするの大変よな…


出場の皆様、審査員の皆様、運営の皆様、長丁場お疲れ様でした。あと、今年もみなとの方々と歌会できてよかったです。

井口さん、毎年車出してくれてありがとう。

○去年の記録

○一昨年の記録

○広告欄

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