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第14回牧水・短歌甲子園に行きました

ディベートや評が映える歌について考えさせられる回でした。


以下、気になった歌を引きながら、思ったことを書いていきます。

思い出を気持ちを話を残してく皆何かの語り部となる
/余湖咲良(武蔵高等学校)

リズムよく畳み掛ける上の句がシャープな下の句への綺麗な助走になってると思う。こういう風に、誰かが残したものを誰かが語り継いでいく、みたいな内容はまっすぐで気持ちいい。とはいえ歌全体に大掴みなところがあり、内容が肯定できるかどうかや細かい意味の確認でディベートの時間が使われる感じがします。「皆何かの」のところに具体物が入ると、それを読む評者に見せ場が作れるのかなと思いました。

Sie sagen durch die Blume, ドイツ語の花がぼくらを分かつ 風吹く
/安田湖夏(武蔵高等学校)

直訳すると「あなたは花を通して言う」となり、これは「遠回しに言う」という意味の慣用句らしいです。日本語訳バージョン(「遠回しにあなたが言って」)とドイツ語バージョンで読み上げをしていて、それが楽しかった。日本語訳バージョンの音数を定型に合わせるために「,」が使われていて、手が込んでいた。俵さんの「ぼくらは分かれているけど、風でつながっている」という旨の評がよく、たしかにこの歌にはそういう風が吹いてると思う。「ドイツ語の花」以降は雰囲気で読んでいけそうだけど、ここに注目が集まると厳しいところがあるかも。実際、そこを突かれて苦心していたように思った。
安田さんの去年の提出歌に"求めてた言葉出るまで脳内で告白ガチャを回す爆死す"という歌があって、同じリズムだ〜と思った。4音で締める歌、勢いがついていいね。

寂しいに小さくなった敬語着せ三月ぶりの後輩になる
/沖野七海(武蔵高等学校)

相手チームの読みと同じく、「寂しい……です」みたいな発話をして、その語尾が小声だった、という意味だと思った。自陣の評で「(卒業した先輩との再会をした際に)寂しさが膨張して敬語という服がキツくなったように感じる、という意味」と言ってた覚えがあるんだけど、そうするなら下の句で補強しないと読みが確定できないのが難しかったかも。沖野さん、表現がおもしろくて、去年も気になった作者です。
"好きになる ぼくの恋心で熟れて美しくなるあの日の君を/沖野七海"

熱心に語る唇見つめつつ咥えた抹茶味のポッキー
/木村暖心(星野高等学校)

爽やかさと耽美さを感じる歌。下の句の語順でスピード感を持たせたことと、名詞でスタイリッシュに終わらせたことで、唇を見る視線のウェット感を上手く回避しているように思う。味の選択への指摘があったけど、「抹茶」と「ポッキー」の軽やかな音が響いてるからこの味でよかった。

おばあさん去った更地のたんぽぽが何か語っているような朝
/福田想菜(宮崎商業高等学校)

いい朝の歌でした。「体言止めは体言止めした言葉の歌になるから気をつけて」とは俵さんの発言で、この歌はちゃんと朝が全体を受け止めてる。

二次元のキミを迎えに飛び降りて臨海超えたラストリモート
/糸谷志睦(富山中部高等学校)

ラストリモート←かっこいい。ベイルアウトとかラストエグザイルとかのダイブ感があるね。

人間は濡れたらきれいゆるやかに恋は樹林のように果てるの
/知念ひなた(興南高等学校)

湿った黒い狼みたいな歌だと思った。二句切れがかっこいい。「果てるの」がとてもよくて、これが「果ており」みたいな言い方だとキメキメすぎて興醒めに転じてしまう気がする。「高校生の歌」というのは短歌甲子園においてプラスに働くと思うんだけど、詩的なスケールの大きさと語調の高校生感(高校生かどうかはさておき、大人ではない感じ)がすごいバランスで成立してる。

携帯のコードとイヤホンが絡まる 恋人のように伏線のように
/宮井智明(灘高等学校)

紐がただ絡むんじゃなくて、充電コードのインプットとイヤホンのアウトプットが絡み合うんだという評に感心しました。下の句がオシャレ。恋人と伏線は質感も語のレイヤーも違っていて、そのずらし方が上手い。

愛は永遠恋は刹那というけれどじゃあ恋愛は矛盾じゃないか
/帯谷到子(尚学館高等学校)

作者がとても元気な人で、そのパーソナリティと歌のはっちゃける感じがハマっててよかった。灘チームから「恋が愛になったり、ならなかったりというまとまりを恋愛と呼んでいて、恋であり愛であることを恋愛と呼ぶわけではないと思うから矛盾するというところに納得ができない」という指摘があり、「それをあえて矛盾と思いたい、斜に構えた作者がいる」という返答で上手く返せたと思ったら、「斜に構えているにしては素直すぎる気がする。もっと尖れるはず」という搦め手が決まり、おお~と思った。

海原のマンタのように天高く君との恋を叫びたいんだ
/古川眞帆(光陵高等学校)

「叫びたいんだー!」って叫ぶ朗詠、サイダーのように言葉が湧き上がってました。
ディベートで「イルカのほうが合ってるのでは」という意見があり、そうかもと思いつつ、でもイルカはありきたりだし、ここはマンタで行きたいよね。

青バラのリキュールチョコを食べて見る月9ドラマの偽装恋愛
/糸谷志睦(富山中部高等学校)

糸谷さん、持ってくる固有名詞が少し独特でおもしろかったです。

波だけがうるさく僕たちをつつみ(望郷)裂けて木はひこばえる
/知念ひなた(興南高等学校)

僕なら(望郷)をやんわり牽制しつつ、「だけがうるさく」の限定の仕方と、海と木が景でぶつかるところを指摘すると思うけど、倒し切れないだろうな……

きつくなる言葉望んでいなくとも姉が大阪を持ち帰ってくる
/加藤湊人(灘高等学校)

下の句がよかったです。笹さんが551の肉まんの話をしていて笑いました。姉が肉まん持って返ってきたら嬉しくなっちゃうね。

孤独なるハッブル宇宙望遠鏡基地なき世界の道を探して
/岡本龍太郎(灘高等学校)

自陣の評で「既知なき世界の未知を探す」と言っていて、シンプルだけど気の利いたギミックだと思った。あとこれ、牧水への歌ですよね。

望月の夜をふたりで踊ってるBeRealには載せないホント
/相模奈緒(光陵高等学校)

この書き方だとインスタとかほかのSNSでも代替可能だからBeRealの固有性が弱い気もするけど、チャレンジングで好感が持てる。望月とBeRealはギャップがあっていい取り合わせだと思う。笹さんが言ってた「望月が題詠「望」に引っ張られた」という指摘は肯定的に捉えたい。

灯を落とすメリーゴーランドを君と夜風にあたりながら思った
/下園茉央(興南高等学校)

興南側の知念さんが評の中で言った「ふたりは同じ夜風の中にいて、それぞれの鼻先で風を分けている」という表現がよかった。夜を走り抜けていくメリーゴーランドの馬の凛とした鼻先を想像させる。興南は評も含めてひとつの作品になるように作り込んできてた印象を持った。相互に補完するように整えられていて、想定される指摘もかなり読み切ってたと思う。あっぱれです。

「サンキュー」と君から返ってきたペンは温かいままケースにしまう
/福田想菜(宮崎商業高等学校)

「サンキュー」の是非を問われたときに、この軽さをよいと主張できていたのがよかった。なんでもない軽いやり取りが自分にとっては無二の思い出になったりするんだよね。

天国で借りる予定のアパートは日当たりのいい海岸にある
/與那嶺陽大(興南高等学校)

宮商からの「なんで一軒家じゃないんですか?」という鋭い質問に「天国にも、人から賃借りするという人間味ある営みがあって、そういうことを思う律儀さに主体の思考のおもしろさが見える」みたいな返しをしていた。わかる。いいラリーだと思う。大口さん「天国とは何か? 私は天国に厳しいんですけどこれはアリだなと納得」←おもしろかった。

夜はすぐ来てハロハロは溶けきって君に白髪がある月明かり
/知念ひなた(興南高等学校)

素晴らしい。

興南高校優勝おめでとうございます。
災害で来られなかった学校もあったけど、無事に開催されて良かったです。
来年は15回の節目だそうで、何やらこれまで以上に盛り上がりそう。今から楽しみです。

おまけ

初日の夜は、牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」の面々に交ざって歌会をしました。題詠「恋」、提出歌はこんな歌でした。

恋獅子と俺は名乗った金箔の浮いたポン酒をスンと煽って
/うげつな

8人参加の一首選で、結果は0票←なんでやねん!


組み合わせ表

↓一緒に観戦した、だやさんこと吉田恭大さんの記事

昨年のうげつなこと井口の記事↓


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