今日のジャズ: 4月24日、1962年@ニューヨーク “Undercurrent”
Apr. 24, 1962 “I’m Gettin’ Sentimental Over You” by Bill Evans & Jim Hall at Sound Makers, New York City for United Artists/Blue Note (Undercurrent)
トミードーシー楽団のテーマ曲となった本曲は、西部劇ドラマの有名テーマ曲”Rawhide”や以下スタンダード曲を手掛けた作詞の大家ネッドワシントンと、『オズの魔法使い』の映画音楽にも携わったジョージバスマンの作曲によるスタンダード。ネッドワシントンが手掛けたスタンダード曲は多数あり、その幾つかは以下の通り。
“When You Wish Upon A Star”
“On Green Dolphin Steeet”
本作のエバンスによる名演“My Foolish Heart”
本アルバムでは、”My Funny Valentine”が有名ですが、一騎打ち的にピアノとギターが真っ向から対峙する緊張感の高い演奏は、聴き応えはあるものの、背筋を伸ばして聴き入る感じなので、あまり寛いでは楽しめない側面が否めません。それは、意図したものなのか気負ったためなのか、エバンスの肩に力が入り過ぎているように感じられるからです。そんなアルバムの中でも協調的なスタンダード曲の演奏が本曲です。
ニューヨークの4月の冷たさを体現しているようなエバンスのタッチと、人間味溢れて温かく寄り添うジムホールのギターのトーンが絶妙なバランスで春の昼下がり的なリラックスした雰囲気を生み出しているように聴こえます。
組手次第では急かしい演奏の多いビルエバンスも、本曲ではジムホールの奏でを傾聴しながら丁寧に音を選んで弾いているように感じられて好感が持てます。和声を重んじる二人が目で合図を取りながら共に音を紡いでいくスタイルが心地良く感じます。
本作は、ビートルズの映画も手掛けた主に映画のサウンドトラックを輩出したUnited Artistsレーベルによる作品です。映像も手掛けていた観点からの発想か、女性が水の中で浮かぶジャズとは縁遠いようなアルバムジャケット写真と共に、作品としてはクールな静寂感というまとまりがあります。
その印象的なジャケットは、白黒や青版、タイトル表記の有無等、複数版が存在していますが、オリジナルは白黒でタイトル表記の無い純粋な写真だけだったそうです。その写真はアメリカ人女性写真家、トニフリッセルがマーメイドのアトラクションで有名なフロリダの自然公園、Weeki Wachee Springで1947年に撮影したものとのことです。

同年の女性ファッション誌、ハーパーズバザーで初お目見えした作品だけあって、アルバムジャケットを飾っておきたくなるほど、とてもお洒落てわす。この写真の発想や構図もマーメイドに発想を得たものかもしれません。因みにこの写真、逆さまにすると印象が驚くほどにガラリと変わるのです。

同じ物でも見る角度によって見え方が異なる、という分かりやすい例で、それがまさに本アルバムの”Undercurrent”の意味と合致するかと思いますが、これが撮影者の意図だとすると、その才能には頭が下がります。

そのフリッセルは、ファッション誌向けの写真撮影で従来のスタジオ撮影はせずに、屋外での撮影を手がけた先駆者の一人として、同分野における基礎を作ったと言われています。

本アルバムに話を戻すと、これが好評を博して、続編が四年後に制作されています。
さて、耽美なエバンスをさらに味わいたい方は、フルートとのこちらの共演作をどうぞ。
最後に、ホールとピアノのミシェルペトルチアーニによる本作をオマージュしたかのような、親密な対話型スタイルで紡ぐ心温まる極上のデュオ演奏をどうぞ。
笑顔溢れる素敵な一日をお過ごしください。
