13.友達は彼方【ツバメはどこに行くんだろう】最終回
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ぶっころがいなくなって、そのうち私は41歳になった。
ぶっころは38歳で死んだ。
私は今でも時々、その事を思い出して、目の前にあるものを全部ぐちゃぐちゃに壊してしまいたくなる事がある。
けど、そんな事をしても、何も解決しない事は分かってた。
命に、終わりが来る。
それは当たり前の事だった。
忘れられないし、乗り越えられない。
そして受け止めきれなかった。
それでも季節はどんどん進んでいくし、子ども達もどんどん大きくなっていく。
ぶっころを思い出さない日は一日もなかった。
なのに、だんだん私はそれに慣れていった。
やがて、ぶっころの顔を思い出すまでに、一瞬の間ができるようになった。
だけど、ぶっころは、
『おっすー。』って挨拶した事を覚えてる。
『スマン。』とばかり言ってた事も覚えてる。
気分が良くて、話が一致した時に、『だろぉ?』と言ってた事も覚えてる。
声だ。
私は、ぶっころの声をよく覚えてた。
私は時々、誰もまわりにいない時、ぶっころの名前を呼んだ。
いつも返事はなかったし、そういうもんだって事を、ちゃんと分かってる。
届かないって、知ってる。
意味がないって、知ってる。
でも、私には意味があった。
私はいつも、あいつを名前を呼んだ。
あいつは割と、お前、って私を呼んだ。
『お前さぁ』
から、いつも会話が始まった。
私はそれを覚えてる。
いつまで覚えてられるのか、わかんないけど。
私には、何にも偉そうな事は言えなかった。
ぶっころがいなくなって、私はあんまり釣りに行かなくなったし、仮に行って、魚を釣っても、
(もう自慢する相手がいねぇ)
って思うようになった。
あの頃に仲良くしてた会社の人とは、もう、ほとんど遊ばなくなった。
彼らは何も悪くないけど、私が距離を置いた。
ぶっころがいたから、みんなと安心して遊べていたんだと気付いた。
いなくなったら、不安になった。
本当の俺の事を知ってる奴が、もういないんだ。
私は、もう誰もいらなくなった。
人は死ぬから。
私は、すぐ側にいてくれる人だけを大切にしようと思った。
よそ見をしてたら、気付かないうちに、水たまりに沈んでいってしまうかもしれないから。
時々、どうしようもなくぶっころに会いたくなって、私はいつもみたいにLINEしたりした。
【今日遊べるよ!仕事何時に終わる?】
そんな、既読がつかないLINEが増えた。
あと、昔読んでたマンガみたいに、腕を使って人体錬成できないもんかな、みたいなアホな事をよく考えた。
でも、腕を失ったら子どもを抱っこできないし、足を失ったら山に登れないし、内臓を失ったら妻が泣くと思った。
だから人体錬成はあきらめた。
私は国家錬金術師じゃなかった。
保育園の入り口に、ツバメが巣を作ってる。
私はそれを見て、落ちないでねって思った。
そんな事を思っていると、4歳の娘が立ち止まって、悲しい顔をした。
そして何もないところに、
『バイバイ。』
と言った。
私は聞いた。
「誰にバイバイしたの?」
娘は答える。
『ゆいなちゃんとあそんでたけど、パパが途中で迎えにきて、もう帰らないといけないから、寂しかったの。
だから、またあした遊ぶのを忘れないように、バイバイしたんだよ。』
私は、ぶっころを思い出した。
ツバメが私の少し上を飛んでいった。
ああ、もう6月なんだ。
私たちの夏休みは、終わったんだ。
私は言った。
「そっか、じゃあバイバイしたから、きっと忘れないよ。
明日また遊べるといいね。」
そう伝えて、私は心の中で、ぶっころにバイバイした。
おわり
…そんな風に、綺麗に片付けよっかなって思ったけど、やっぱり、俺はあいつに言いたい事があるんだ。
「100万回生きてみせろ!!」
ってさ!!
じゃあ、ほんとにおしまい。
どうもありがとう!
バイバイ!
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