漆器が苦手なこと #4/4「傷・衝撃」

傷がついても、それが歴史になる。漆器と傷の、正直な話。

漆器が苦手なこと、最終回は「傷・衝撃」だ。
4つの中で、日常の使い方に最も直結するテーマだ。でも結論から言えば、普通に使っていれば過剰に心配する必要はない。

漆は硬い。でも、割れるときは割れる。

漆の塗膜は丈夫だ。酸にもアルカリにも強く、長年の使用にも耐える。でも、硬いものが当たれば傷がつく。これは事実だ。

しかし、ガラスや陶器、金属などの硬いもので漆器を引っ掻くと傷がついてしまう。漆器を洗う時は硬いものと分けて洗い、柔らかいスポンジを使うと傷が付きにくい。むしろ、焼き物にしてもガラスにしても、硬すぎるスポンジだと小さな傷をつけ続け、くもりの原因になることになるのでお勧めしない。大掃除の時に使うような「激落ちくん」などのメラミンスポンジは漆器はもちろん食器洗いには絶対に使用しないこと。細かな研磨剤が入っており、あっという間に漆の塗膜を削り落としてしまう。

漆器を痛めるタイミングで一番多いのが、洗っている時に落としたり、陶磁器や鉄製のカトラリーなどの硬いものとぶつかって塗膜が欠けてしまうことだ。金属製の洗いカゴも置く時に器のフチを傷つけることがあるので注意が必要だ。

落としても、案外大丈夫なことが多い

漆器は「割れやすそう」というイメージがあるかもしれない。

漆器は他の食器と比べると「割れにくい」「欠けにくい」という特徴を備えている。丈夫さに加えて軽いので、落ちても衝撃が少ないのだ。この割れにくいという縁起の良さから、結婚祝いなどに漆器が選ばれる理由にもなっている。

僕自身、2回床に落としたことがある。幸い、どちらも全く問題なかった。もちろん落とさないに越したことはないが、「落としたら即アウト」ではない。木という素材が衝撃をある程度吸収してくれる。

対処法は、これだけだ

気をつけることは三つだ。

1つ目。金属カトラリーは避ける。 フォークやナイフのような鋭利なものは塗膜を傷つける。箸や木・竹製のカトラリーが漆器との相性がいい。とはいえ、どんな素材であってもナイフをギーコギーコやるのは避けたほうがいいだろう。

2つ目。柔らかいスポンジと中性洗剤で洗う。 漆器だけ先に別にして洗う習慣をつけると、陶器や金属との接触による傷を防げる。

3つ目。重ねる時は布や紙を挟む。 これは、最も丁寧な扱い方だが、ある程度の期間使わずにおいておく場合には、漆器と漆器の間に布や紙などを挟むと、傷や衝撃を防ぎやすい。食器棚での収納時も、漆器同士で重ねるか、間に何かを挟んであげられるのがベスト。

傷がついても、終わりではない

それでも、長く使っていれば傷がつくことはある。

傷がついてしまってがっくりきたら、塗り直してもらうこともできるので、あまり神経質になりすぎる必要はない。漆が剥げた部分に漆を塗り重ねる修理はもちろん、木地に傷がついた場合でも、傷に糊と木の粉を混ぜたもので補修できることがある。

ただし一点、早めに対処した方がいいケースがある。漆器の塗膜が剥がれて木地が見えている場合放置したまま使い続けると、そこから水分や油が染み込み、傷みを早める。木地が見えるほど欠けてしまった場合は、早めに購入元に修理を相談しよう。

傷がついても、修理して使い続けることができる。その傷の跡もまた、あなたの器の歴史になる。

漆器は、あなたの肌と同じだ

このシリーズで繰り返してきた言葉で、このシリーズを締めくくりたい。

漆器には塗る薬もクリームもない。だから、まず大事に丁寧に使うことが基本だ。

でも、傷がついたら塗り直せる。それは肌の傷が治るように、漆器も直せる。完璧に扱わなくていい。傷んだら直す。その繰り返しの中で、器との関係が続いていく。

モノを大事に丁寧に使うあなたの所作が、あなた自身を品よく美しくしてくれる。漆器との付き合いは、そういう時間の積み重ねだと思っている。

4回シリーズのまとめ

4回にわたって、漆器が苦手なことを正直に話してきた。

乾燥・長時間の浸水、熱、紫外線、傷・衝撃。

並べてみると、どれも「知っていれば避けられる」か「万が一起きても対処できる」ことだ。このシリーズを読んでもらったことで、「漆器は繊細で扱いが難しい」という印象とは、あなたの中で変わっていたら嬉しい。

#1/4「乾燥・長時間の浸水」
#2/4「熱」
#3/4「紫外線」

「普通に使って、普通に洗って、普通に片づける」。神経質になる必要はまったくない。それだけで、漆器は長く、あなただけの器に育っていく。

頑張らなくていい。ただ、本物を選ぶだけ。
時間は増やせないけれど、質は変えられる。

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『丁寧な暮らしを』と頑張らなくていい。
ただ、本物を選ぶだけ。
時間は増やせないけれど、質は変えられる。

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