漆器が苦手なこと #3/4「紫外線」
すぐ壊れるわけじゃない。でも、じわじわ艶と色を奪っていく。
漆器が苦手なこと、3回目は「紫外線」だ。
これは4つの中で最も地味な弱点かもしれない。すぐに何かが起きるわけではない。でも、じわじわと確実に進む劣化だからこそ、知っておきたい。
漆が紫外線に弱い理由
漆は、酸にもアルカリにも塩分にも強い。これほど耐性の高い天然塗料はほとんどない。でも唯一、紫外線だけは苦手だ。
なぜか。
太陽光や蛍光灯などの紫外線が当たると、漆の重合が切断されて光沢がなくなっていく。その後、濡れたタオルで拭くと茶色い泥のようなものがタオルに付き、粉をふいたようになっていく。
漆の塗膜は、重合という化学的な結合によって成立している。紫外線のエネルギーがその結合を少しずつ切断していく。結合が弱まるにつれて、光沢が失われ、表面が粉化していく。
じわじわ、というのが厄介だ
熱の場合は、使い方を誤ればすぐに変化が起きる。乾燥も、極端な状況では比較的早く影響が出る。しかし、紫外線の劣化は違う。毎日少しずつ、気づかないうちに進む。
窓際に置きっぱなしにした漆器が、半年後・一年後に明らかに艶が落ちている。そのとき初めて気づく。でも紫外線による劣化は、一度進むと元には戻らない。「じわじわ」だから厄介なのだ。
蛍光灯も、影響する
注意したいのは太陽光だけではない。蛍光灯にも紫外線は含まれている。直射日光ほど強くはないが、長時間近くに置き続けると影響が出ることも0ではない。ただ、普通に食器棚にしまって毎日使う分には、蛍光灯の影響は心配しなくていい。問題になるのは、光が強く当たる場所に長期間放置する場合だ。
対処法は、本当にこれだけだ
対処法は一つだ。
直射日光の当たる場所に置きっぱなしにしない。 窓際、屋外、日当たりの良いカウンターの上。こういった場所への長時間の放置を避ける。普通の食器棚にしまっておけば、それだけで十分だ。
僕自身のやり方を紹介すると、洗って乾拭きした後、キッチンで少し乾かしてからしまう。特別なことは何もしていない。日光が直接当たらない場所に戻すだけだ。
漆器は、あなたの肌と同じだ
このシリーズで繰り返している言葉だが、今回も同じことが言える。
肌も、紫外線に長く当たり続けるとじわじわ劣化する。シミやそばかすは、一日で突然できるのではなく、日々の蓄積で現れる。日焼け止めを塗るのは、その蓄積を防ぐためだ。
漆器も同じ。一度の直射日光で壊れるわけではない。でも蓄積すれば、艶と色が少しずつ失われていく。肌を日光から守るように、漆器も光から守る。食器棚にしまう、それだけでいい。
育てながら守る
漆器を長く、より良い状態で使い続けるために、紫外線から守る。
それはただ劣化を防ぐというだけでなく、経年変化を正しく楽しむためでもある。使い込んで艶が増していく変化は、紫外線によるじわじわとした劣化とは全く別のものだ。使うほどに育つ変化を楽しみながら、余計な劣化は避ける。その両方を意識することで、漆器はあなただけの器になっていく。
まとめにかえて
漆は紫外線に弱い。でも対処法は、直射日光を避けて食器棚にしまう、それだけだ。じわじわ進む劣化だからこそ、知っておけば防げる。毎日使って、毎日しまう。それが自ずと紫外線対策になっている。
次回は、漆器が苦手なこと最終回、**「傷・衝撃」**について話す。
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