漆器が苦手なこと #1/4「乾燥・長時間の浸水」

漆器には、苦手なことがある。

機能性・精神性・社会性のメリットに関してお話ししてきた。しかし、当然苦手なこともあるので、それを正確に知ることが、漆器を長く使うための一番の近道になる。この苦手を4回に分けて、一つずつ話していきたい。
1回目の今日は「乾燥と長時間の浸水」だ。

漆器の素地は木

まず前提として、漆器がなぜ乾燥と浸水に気をつける必要があるのかを理解しておきたい。
漆器の素地は木でできている。木は生きた素材で、周囲の湿度に応じて収縮と膨張を繰り返す性質がある。漆はその木の表面を保護しているが、極端な乾燥や過剰な水分には対応しきれない。
この一点を理解しておくと、「なぜこれがいけないのか」がすべて腑に落ちるだろう。

乾燥が苦手な理由

乾燥した環境に漆器を長く置くと、何が起きるか。
木地が収縮する。そこに漆の塗膜がついていくことができず、ひびや歪みが生じる。見た目にもしっとりとした艶が失われ、表面がくすんでくる。
漆は湿度65〜80%、温度25度という環境の中で最もよく固まる。乾燥した環境に置くことは、漆器にとって一番つらいことだ。
エアコンの風が直接当たる場所、冬場の暖房で乾燥しきった部屋の窓際。こういった場所に置きっぱなしにすることが漆器にとって一番よくない。

長時間の浸水が苦手な理由

逆に、水に長時間つけておくのも良くない。
漆の塗膜は微量の水分を吸収したり通したりするため、長時間水に漬けておくと、木地にまで水分が染み込み、器が歪んだり割れたりする原因となる。 つけ置き洗いが習慣になっている人は、漆器だけ別にして、先に洗ってしまう方がいい。
ただし、「数時間」というのが問題なのであって、普通に使って普通に洗う分には過剰に気にしなくていい。

対処法は、本当にシンプルだ

ここまで読んで、難しそうだと感じた人に伝えたいことがある。
対処法は二つだけだ。

一つ目。洗ったら、柔らかい布で水分を拭き取る。 自然乾燥より乾拭きが基本だ。水道水に含まれるカルキが水滴として残ると、白い跡がつくことがある。拭き取ることでそれを防ぎ、同時に塗膜を磨くことにもなる。
二つ目。保管するときは、乾燥しすぎず、湿気もこもらない場所に。 普通の食器棚で十分だ。エアコンの真下や、窓際の直射日光が当たる場所を避ける。

漆器は、あなたの肌と同じだ

面倒くさいな、と思った人へ。

漆器のお手入れは、自分の肌のケアと同じだと思えばいい。

肌も、乾燥しすぎると荒れる。水に長時間さらされると荒れる。適度な水分と、適切な保湿が必要だ。漆器も同じことだ。そう思えば、なぜ乾燥も浸水もよくないのかが、自然に理解できる。
そして肌のケアも、毎日続けることで効果が出る。漆器も同じだ。毎日使うこと、毎日洗うことが、使うことで必要な水分を補給してあげることになり、何よりのメンテナンスになる。

特別なことは何もしなくていい。毎日使って、毎日洗う。それが自ずとメンテナンスになっている。

おまけのメリット

食後すぐに洗う習慣ができると、もう一つ良いことがある。
食卓がすぐに片付く。その後の時間を、気持ちよく使える。漆器を洗うことが、食事の時間をきれいに締めくくるルーティンになる。苦手なことへの対処が、暮らしの質を上げる習慣につながる。漆器との付き合いには、こういう連鎖がある。

まとめにかえて

乾燥と長時間の浸水が苦手。でも対処法は、洗ったら拭く、普通の食器棚に保管する、それだけだ。毎日使えば、それが自ずとメンテナンスになる。特別なことは何もいらない。

次回は、漆器が苦手なこと2つ目、**「熱(電子レンジ・食洗機)」**について話す。

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