漆器が苦手なこと #2/4「熱」

漆器が苦手なこと、2回目は「熱」だ。

電子レンジ・食洗機・食器乾燥機が使えない。これは事実で、避けようがない。でも正確に理解すると、「それだけか」とわかる。

熱いものを入れること自体は、問題ない

まず誤解を解いておきたい。
熱いものを漆器に入れること自体は、まったく問題ない。味噌汁、スープ、温かいお茶。これらは漆器の本来の用途だ。断熱性の高さは漆器の大きなメリットの一つでもある。

だいたいお味噌汁やお吸い物が美味しくいただける温度が70〜80度くらい。これくらいが漆器にもやさしい温度だ。

気をつけるのは、沸騰したての料理を直接注ぐことだ。煮えたぎっているお湯を直接注ぐのは避けた方が良いだろう。やかんなどから直接お湯を注がないようにしよう。急激な高温は塗膜にダメージを与える可能性がある。
100度以下なら問題ないというデータを見たことがある。だから、僕個人としては、お湯の温度を調整するのは難しいので、お湯を注ぐ前に先に水を1,2割を入れておいてから沸かした手のお湯を入れて、熱湯がそのまま直接漆器に触れないようにしているが今のところこれで変化したこともないで良いと思っている。

なぜ電子レンジが使えないのか

電子レンジが使えない理由は、「高温」と「乾燥した熱」の組み合わせにある。
電子レンジは食品内部の分子に電磁波のエネルギーを与えて加熱する仕組みだ。ガラスや陶器は電磁波が透過するが、漆器は塗り面や木製部分に反応して電磁波が透過しない。漆器を電子レンジにかけると、塗り面や木製部分が食品と同様に熱くなる。木地と漆の塗膜はそれぞれ膨張率が異なる。急激に熱せられると、その差によってひずみが生じ、塗膜が割れたり最悪剥がれてしまう恐れがある。
さらに電子レンジ内は乾燥しているため、前回話した「乾燥ダメージ」も同時に起きる。

なぜ食洗機・食器乾燥機が使えないのか

食洗機の問題は二つある。
一つは乾燥機能だ。食洗機の乾燥機能は素材を変形させてしまうことがある。高温の風で一気に乾かすことは、前回触れた乾燥ダメージをそのまま起こす。
もう一つは洗浄力の強さだ。研磨剤などが入った食洗機の高圧水流は漆にとってストレスが強く、劣化を早める。漆の塗膜は柔らかいスポンジで優しく洗うことを前提に設計されている。高圧の水流と強い洗剤は、それを想定していない。
これらの対策として、一部で「食洗機可能」となっている漆器も最近では作られているが、こうした製品は木の伸び縮みや水分吸収の影響を減らすために木地を木粉と樹脂を固めた素材にしたり、耐熱・耐薬品性を高めた塗りを使うことで 食洗機の熱や洗剤で剥がれにくく工夫されている。表面に漆が使われていれば、漆器としてのメリットは担保される。僕自身はあくまで、伝統的な漆器の良さをお伝えしているけれど、この食洗機・食器乾燥機が漆器を使う上で大きな懸念になっているならば、そうした選択肢も見てみるといいだろう。

漆器は、あなたの肌と同じだ

漆器のお手入れは、自分の肌のケアと同じだ。
肌も、急激な高温にさらされると傷む。サウナや熱いシャワーの後にそのまま放置すると乾燥して荒れる。漆器も同じだ。急激な高温と乾いた熱が重なったとき、ダメージが起きやすい。
逆に言えば、その二つを避ければいい。普通に使って、普通に手洗いして、柔らかい布で拭く。それだけだ。

対処法は、本当にこれだけだ

整理すると、気をつけることは三つだ。
一つ目。沸騰したてのものは直接注がない。 少し冷ましてから、または先にぬるま湯で器を温めてから使う。
二つ目。電子レンジは使わない。 温め直す場合は別の器に移す。
三つ目。食洗機・食器乾燥機は使わない。 漆器だけ先に手洗いして、柔らかい布で拭く。手洗いは一分もかからない。

手洗いの時間を、自分の時間にする

食洗機が使えないことを不便に感じる人もいると思う。
でも考え方を変えると、漆器を手洗いする一分間は、食事の時間をきれいに締めくくるルーティンになる。キュッキュッという感触と共に綺麗に仕上げる達成感を味わいながら洗う。柔らかい布で拭きながら磨く。器の艶を確かめる。それが自分の時間になる。
不便の中に、小さな楽しみがある。漆器との付き合いには、こういう逆転がある。

まとめにかえて

電子レンジ・食洗機・食器乾燥機が使えない。それは事実だ。
でも理由を知れば、避けることは難しくない。急激な高温と乾いた熱を避けるだけだ。普通に使って、手洗いして、拭く。それだけで、漆器は長く使い続けられる。

次回は、漆器が苦手なこと3つ目、**「紫外線」**について話す。

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