【子育てエッセイ】#26 ふとチカラが抜ける朝
朝の光が、ドアの隙間から少しずつ溢れてくるころ。
それまで眠っていた5歳の長女・いっちゃんが、
ガバッと勢いよく起き上がって、
「トイレー!おしっこー!」
と慌てふためく。
「おー!いけいけー」
そばで寝ていた妻が、
まだ眠りの残る小さな声で応援する。
僕も少し遅れて、
もぞもぞと布団から抜け出しながら、
いっちゃんの背中を見送る。
そのまま妻の方へ寄ってみると、
1歳もいよいよ終盤にさしかかった
次女・つーちゃんが、
妻のすぐ横で、ころりんと眠っている。
思わず、その横顔をじっと眺めてしまう。
しばらくして、
その視線に気づいた妻と目が合う。
「……かわいいよね〜」
『うん』
「耳が……なんだっけ、妖精? 妖精みたいだよね」
『あぁ、エルフ、みたいなね』
前の日、久しぶりに公園で
めいっぱい遊べたつーちゃん。
そのおかげか、
夜中に大声をあげて壁や襖を蹴り、
暴れながら泣くことが、なかった。
かなり久々に、
たぶん1ヶ月ぶりくらいに、なかった。
『……そういえば、暴れて泣いたりはしなかったね〜』
「そうね。暴れるまではなかったね。
軽く、ふんふん唸ってたくらい」
そんな会話を交わしながら、
僕は流れに任せて続ける。
『2月にも入ったし、今夜から、
また僕ひとりで2人の寝かしつけ、やってみようか』
「そっか。私が毎晩の寝かしつけ役を
一旦引き取るの、1月までって言ってたもんね」
少し間をおいて、続ける。
『でさ、もし今日うまく
寝かしつけできたら、起きてくるから。
一緒にまったり過ごそうよ。久々に』
「いいね」
子育ては、だいたいいつも前のめりだ。
少し急いでいて、
少しチカラが入っていて、
気づくと肩や背中がこわばっている。
でも、こんなふうに、
ふとチカラが抜ける瞬間がある。
布団のぬくもりや、
子どもの寝息のリズムに引っ張られて、
身体が「いまは動かなくていい」と思い出す朝。
今夜、うまくいくかどうかは、正直わからない。
それでも、
『やってみようか』と言えて、
「いいね」と返ってくる。
そのやりとりがあるだけで、
なんとかまた、楽しめる気がする。

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